第7章 過去
「おっお前らは・・・」
「えっ知ってるんですか?先生」クラスの女子が言った。
「ああ。お前らは確か、阿部真一と本田祐介じゃないか」
「先生、誰なんですかこいつらは」
「忘れもしねー。こいつらは・・・俺の教え子だ」
クラス中が言葉を失った。ハイジャック犯が先生の教え子だったとは、圭介はある程度予測していたが他の者はそんな予測を立てる余裕がなかっただろう。
「教え子ってどういうこと?この人たちの担任の先生だったってこと?」学級委員の米沢絵美が先生に訊いた。
「ああ。こいつらは五年前の俺の教え子だったんだよ」
「どういうことなの先生?詳しく聞かせてよ」
「それは・・・・・・」先生が口をつぐんだ。言いづらい話なのだろうか。
「ははは。橋本よ話す必要はねーよ。代わりに俺らが話してやるよ俺たちの過去をよ」
橋本は止める気はないようだ。
「俺と阿部は五年前、南原高校の生徒だった。だが、ある事件がきっかけで高校を退学させられることになったんだ。その事件に深く関わってんのがこいつ橋本だよ」
事件?退学?一体何が起こったというのだ。緊迫した状況だったが生徒たちは冷静に犯人の話に耳を傾けた。
「俺と阿部はお互いに野球部に入っていて、自分で言うのも変だが、至って真面目な生徒だったんだ。ただある日その事件が起きたんだ」
「簡潔に言おう。ある日、ええとあれは11月ぐらいか?まぁ月日は関係ねー。クラスのごみ箱の中からタバコの吸い殻が出てきたんだよ」
「タバコの吸い殻?」またクラスの一人が言った。
「あぁそうだ。タバコの吸い殻がゴミ箱に入ってるのを学級委員の奴が見つけたんだ。当然高校生はタバコは吸っちゃいけねーだろ。そいつは担任の橋本に告げ口をした。まぁこれは別に正しい行為だ」
本田は淡々と続ける。
「お前らも知っている通り、この橋本は正義感の強い奴だ。タバコの吸い殻が出てきたのなら、吸った犯人を突き止めたかったんだろう、帰りのホームルームでその話題になった」
「小学校でよくあるやり方だよ。全員で目を伏せて、やった人に手を挙げさせるというやり方だ。だが、そんなやり方で当然犯人が手を挙げるはずもない。ましてや、うちのクラスで見つかったとしても他のクラスの奴が吸った可能性もあるかもしれない。だが、何故か橋本は俺らのクラスに犯人がいると断言していた」
「そっそうなんですか?先生?」米沢が訊いた。
「あぁそいつらの言う通りだ。犯人を捕まえたい一心で前が見えなくなっていたのかもしれない」
「まぁそれはいい。結局犯人はうちのクラスにいたんだからな」阿部が言った。
「犯人は女子だったんだよ」
「女子だと?まさか」クラスの清水が言った
「事件の三日後ぐらいに誰かは知らねーが先生に告げ口があったらしい。私○○さんが吸っているところを見ました的なことを言ったんだろう。その後いろいろな証拠が出てきて、その女子が犯人だと確定した」
いまいち、話の筋が分からないが、ここからこいつらがハイジャックに至る理由が出てくるのか、と圭介は思った。
「タバコを吸っていたと分かれば、普通は停学。最悪の場合退学だ。しかし、その女子には何の処罰もなかったんだよ」
「なっ何でだよ」また、清水が訊いた。
「忘れたなんて言わせねーぞ、橋本先生よ。その女子の名を」
「・・・・・・」橋本先生は黙り込んでいる。
「その女子の名は、白石恵梨花。知ってるはずだぜ先生。もう言っちゃっていいよな」
「ぐ・・・・・・」先生は黙り込んでいる。こうなったのも自分に少し責任があると感じているのか、覚悟はできているようだ。
「先生、アンタと当時付き合ってた女子だよ」
「なっ・・・・・」クラス中が言葉を失った。先生が教え子と付き合っていただと。




