第5章 着陸
「い、今何と言った」担任の橋本が声を振り絞って言った。
「あん?聞こえただろ。先公を全員ぶっ殺すっつったんだよ」目の前に立ってる犯人の一人が言った。
「なっなんだと。それはこの修学旅行に引率で来ている先生全員ってことか?」
「あぁそうだ。沖縄に着き次第、生徒全員と、一般の客は開放する。先公は機内に残ってもらい、俺ら二人で殺す」平然と犯人の一人が言った。
「なっ何故だ。何故先生だけを」
「うるせー。黙ってろ。自分の可愛い教え子さんたちが助かるんだぜ。本望だろうよ先公さんよ」
橋本は言葉を失った。犯人の言っていることは冗談とは思えなかった。しかし、何故先生だけなんだ、と圭介は思った。そうなると、この南原高校に個人的な恨みが?いや、それなら、わざわざハイジャックなどしなくても、普通に武器を持って高校に侵入すれば済む話だ。こんな方法はリスクがありすぎる。それとも、俺たちの恐怖を煽るためか。ますます分からない。
そうこうしているうちに、アナウンスのために先頭の方へと向かっていた、もう一人の仲間が帰ってきた。
「おう。よくやった」犯人の一人が言った。
「ああ。後は、沖縄に着くのを待つだけだな」そう会話をして、再び機内は沈黙に包まれた。沖縄到着まであと、二十分。
沈黙が続いている。一体担任の先生たちは一体どんな心境なのだろうか。恐怖なのかそれとも・・・。
すると、そこで再び犯人が、一人に指示している。軽く会釈したあと、犯人の一人が再び前方へと向かった。しばらくして、機内アナウンスが流れた。
『ええ皆様、到着まで残り十分となりました。シートベルトを締め、着陸の準備をお願いします』
あと十分。あと十分で沖縄に到着してしまう。先生たちの運命はどうなってしまうのか。
CAは特に拘束とかはされていないため、CAが着陸の準備の仕方を説明しにきた。ハイジャックされているのにあまり緊張感がないなと感じた。
着陸まであと、八分。
犯人の一人が前から、戻ってきた。
「もう少しだ。もう少しで復讐が完成する」そう言った
「バカお前・・・。ってもういいか。どうせ先公は死ぬんだからな」
復讐だと。やはり南原高校の先生たちに恨みがあっての犯行か。ならば・・・、もしかして二人は。圭介はある推測が成り立った。
着陸まであと、五分。
「先生・・・」
後ろの方で、声が聞こえる。この声は関口だ。関口は柔道部で、県大会でも好成績を残す実力者だそれが先生になにか、相談している。大体内容は分かった。おそらく・・・犯人を取り押さえるつもりだ。その方法は・・・圭介もある程度推測できた。犯人二人が立っているからだ。着陸のあの瞬間を狙うつもりだろう。かなり危険な賭けだが、犯人たちの素人ぶりを見ているといけそうな気がする。
「分かった。やろう」担任の橋本もそう言った。どうやら決心がついたようである。
着陸まであと、三分。
『間もなく着陸します。シートベルトの確認をし、頭を下げてください』パイロットの声が聞こえた。
前の座席についてるモニターにも、もう滑走路が見えている。
着陸まであと、三十秒。
車輪が、地面に着いた。その瞬間飛行機が大きくグラついた。そう、飛行機の着陸とは結構な衝撃なのである。平然と立っていられるはずがない。犯人二人がよろけた、その瞬間、関口と橋本が飛ぶ出してきた。
橋本はグラついた犯人に思いっきりドロップキックをかませた。キックは犯人の腹に命中し、犯人がよろけた。しかし犯人も負けておらず、拳銃を所持した状態で橋本と取っ組み合いになった。
一方関口の方は、犯人に一本背負いを決め、そのまま、固め技で犯人を抑えた。
一方、橋本と犯人の取っ組み合いはまだ続いていた。
「いい加減に・・・しやがれ」と言って犯人が拳銃を橋本のこめかみに当てた。
次の瞬間・・・発砲音が機内を切り裂いた・・・。




