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御挨拶、
ドキドキ、と心臓が五月蝿いほどに高鳴る。
…ここだけ聞くと胸キュン恋物語の始まりに聞こえてくるが、全然、そんなフラグは立たない。
有栖川 亜理沙……、この物語の主人公である私の両親は、もういません。
母は、小一のときに病で亡くなったし、父は会社が倒産したと思ったら、借金を残して、雲隠れ。この一ヶ月、警察と一緒に探して、見つかったときには川原で冷たくなってた。
つまり、私は天涯孤独なわけです。寂しい? そりゃあ、心に穴がぽっかり、空いている様な気がしますが、動かなきゃ、生きていけないのでその穴は無視してます。
…、
いい加減に現実逃避はやめましょうか。さすがに人様の家の前で一人で脳内自己紹介やってるのはアウトでしょう。
でね、私は、その父親が金を借りていた所から、手紙が来て、呼び出されたので、そのまま、どうすることも出来ないのでやってきたわけです。
まあね、父が金を借りてた所ですから、怖い所だろうなあ、とは思ってましたけど、こんな露骨にヤバいオーラが出てていいの!?
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やっぱり、金が借りれる所って怖いようです。