第99話〜逆鱗〜
~火の大陸南の山中~
・・・暫しその辺りを探索していたものの目ぼしいものは何もなかった。
「もういいだろう。早く彼のお方のところへ私を連れていけ!」
「・・・そう焦るな。ふむ、とは言えこの辺りに留まるというのも時間の無駄ではあるな」
私はこの場を離れることを判断して、連れの者の言に従うことにした。
この連れの者は自身が力を失ったことを憂いそして焦っているのか、ことあるごとに私を急かしてくる。もっとも・・・それも無理からぬことなのかもしれない。ことに我等のように戦に従事してきた者にとっては力こそ強さこそ己のが寄る辺、それを失った状態とあっては平常心などは何処かへと行ってしまう、というのも道理だろう。その上私のようにある日突然手に入れたものとは違いこの者は生まれつき持っていた力であるだろうからそれは特に顕著に感じる部分、なのだろう。
「ダークナイト?何をぼさっとしているのだっ」
「五月蝿い奴だ・・・」
今は人の姿をしている連れに私は嘆息した。
「だがアルカードよ?真に貴様の力を取り戻せるのか、そのような者の元へ訪れるだけで?」
このアルカードという者は何故だか確信めいたものを持ってその狼の長とやらの力を信頼している。そもそもこの冷静さに欠けている狼のなれの果ての男は何故そこまでそのフェンリルという者の力を信頼しているのだろうか。
・・・いや、奴の口ぶりからすればその長の力それ自体というよりも何か、
「・・・貴様の疑念は分かる。しかし何故かこの大陸に来た、というのが私にとって何かの符号のように思えるのだ」
「なに?・・・貴様それはどういう意味だ。この火の大陸には何かがあるのか」
この私の故郷、そして友が愛したこの地に何か格別な力があるとでも。
「・・・ヒの大陸には原始の力が、」
「何だと?」
「原始の力が目覚める場所がある、と言われているのだ。この話は我が一族のみならず、他の獣人・・・例えばあのランザー・レオパルドの血族にも伝わっていたらしい・・・もっとも奴は私を半端者と見下していたが・・・」
「原始の力・・・獣人、ということはこの大陸に何か系譜に纏わる由来のようなものでもあるのだろうか?」
「さあな・・・ただ1つ言えることは、あの人間の小娘・・・王の話では狼の長は間違いなくこの地に居わすということだ。なので、直接会えれば何らかの事実は判明するだろう」
「まあ、そうだな」
とにかく急いで案内しろということだろう。それにもしそれが実際に可能であるのならば私の失った力もあるいは・・・
兎に角、私達は火の大陸の王、(の代理)から聞いた場所を目指すべく大陸の南へと急いだ。
・・・それと些細なことではあるのだが、アルカードの今の話で1つ気になったことがある。だが、それは今は置いておこう。
それに・・・
私は周囲を眺めながら一人の女性の事を考えていた。かつて私の館で給仕をしていた一人の女性のことを・・・
〜〜〜
こいつに初めて会ったのはいつのことだったかな・・・
▽▽▽
「ニルちゃん、今日からこいつも一緒に稽古するからよろしくな」
何となく憶えてるのは親父のそんな言葉だった。
「にるちゃんってだれだとうちゃん」
「あたしよ、ししょうのこども」
「ふうん、おまえが」
「おまえじゃない!あたしはにるな!」
あれは確か俺が二歳か三歳の時か・・・生意気な奴が居るなと思ったっけ。
〜〜〜
「違うったら!こうよこう!」
「あれ?こうじゃないのか」
「違うったら!ああもう!」
それから何年か経って、やっぱりそいつは生意気なだけでなく短気な奴だと分かったんだったか・・・
「ねえたんこわい・・・」
そういや、その妹も其処に居たっけな・・・
〜〜〜
「じゃあ、一足先に旅に行くわ」
「おお、なんか旨いもんがあったら教えてくれよなニル姉」
「またあんたは食べ物のことばっかり・・・」
そして俺より年上のそいつは俺より先に元服を済ませて旅に出たんだった・・・
〜〜〜
△△△
ニルナ・・・俺の姉みたいなもんで、俺達は姉弟みたいなもんで、家族みたいなもんで、同門で何かと相手することが多かった稽古相手。
・・・3年ぶりに会ったと思ったら、変な場所で変な格好をしてて、
久々に一緒に居れる、と思ったら・・・
ニルナ・・・
なあ、なにやってんだよ・・・
なに寝てるんだ・・・
お前らしくないだろそんな恰好・・・
なんで血流してるんだ・・・
〜〜〜
不発に終わった闇の牙のあの一撃・・・しかしその結果生じたこの千載一遇の好機に奴は何をしている・・・!奴は、火炎の牙は闇の牙を喰らっていない、にも関わらず何故か呆然自失といった呈だ・・・それならばこの隙を突いて再び闇の牙を放て・・・!
そう我が想いを込めてオルレアンを見詰めてみるも、何故かオルレアンすらも微動だにしない・・・?
そのまま、止めを刺せばよいものを・・・!!
『オルレア・・・』
・・・っ!!!?
こ、この悪寒は・・・?
オルレアンのほうへと呼び掛けようとした我が肉体が、押し留められた?
こ、この場にいったい何が・・・?
〜〜〜
本能が警鐘を鳴らしている・・・これはいったいなんという感情なのだ・・・!
「・・・・・・」
そして。
最強の存在、として私が認識しているこの者は何故先程から身動ぎ1つしなくなった・・・?
今、ヒノカ流の使い手であるあの女の身体を絶ち斬ったときから、まるで獣のような慟哭を放ち、(ということはこの男と女は親しい関係だったのだろう。それは同じ技を使うというだけではなくおそらくはもっと親しい関係だったと推察できる)それからその女を見つめたままに動かなくなったトウヤ・ヒノカ・・・
「・・・しかしこの圧力は何だ」
強さではなく勝利・・・それのみを目指すのならば今を措いて他にこれ以上の機会はないのではないか、と思えるほどに奴は隙だらけだ。それなのに何故私の身体は動かぬ・・・!
本能に押しとどめられているというのか、私のこの闘争本能が今の奴に手を出すべきではない、と警鐘を鳴らしているとでもいうのか・・・
否!!!
その程度の感情、疾うに何処かへと置き忘れてきたこの私に、あるはずもない!!!
なればこそ、この好機に・・・最強の者を倒せる好機に躊躇っている場合などでは、
「っ!!?」
「貴方も油断していたようね・・・?」
奴に気を取られていたら、突如自身の周囲に黒い囲いのようなものが生じている。
そして目の前には年端もいかぬ少女が立っていた。
「貴様は・・・」
「私の記憶にある貴方はもう少しまともな神経を持っていたと思うのだけれど・・・?」
この少女・・・?微かに私の記憶を刺激する・・・?この魔導、そしてあの手に持っている杖は・・・?
「お婆さんとは違う、私が貴方を・・・止めてあげる!」
「・・・っ!デュカ・・・リーナ・・・!」
記憶によると・・・以前自身が敗北を喫した魔導の使い手がその杖を此方に向けた。
~~~
あの人間・・・?オルレアンと相対しているだと・・・?
だがあの波動・・・只の人間では、
『災厄の王・・・』
『・・・っ!?』
オルレアンのほうに近づく者を見ていると、気づけばもう一体人間がこの場に現れていた。
『我に接近を悟らせぬだと・・・?お前はいったい・・・?』
人間・・・?の年老いた者か・・・?
だが、
『この魔力・・・?もしやお前は彼の血・・・』
『儂は限越者・・・そしてお主を世界に蔓延らせまいと使命を負った・・・』
っ!?・・・矢張りこの魔力の威圧はっ!
『龍じゃっ!!』
『小賢しい・・・!』
魔力を高める、と同時に息吹を放ってくるということはこの者は矢張り龍の血族・・・!
『むうっ!ブレスでは駄目か・・・』
息吹を手で打ち払い彼の血族に殺意を向ける。その間に我はこの者の正体に思い至った・・・と言うよりも思い出した・・・
『お前は存在していたな・・・以前も・・・』
『憶えていたか災厄の王・・・あの時止めを刺せなかったのが我が過ち・・・もう一体の者と策を講じていたのじゃ・・・お主が再び現れることを懸念し・・・』
『我は不滅・・・!幾度この仮初めの肉体が滅びようとも・・・』
『負の想念あるかぎり復活する・・・じゃったか?』
『・・・っ!そうだ、それ故に我は火炎の牙を・・・滅す・・・!!!』
『やらせん・・・!』
龍の魔力が更に高まる、それに合わせるかのように我が魔力も高め・・・
っ!?
我が魔導・・・エーテル量が!?
『以前よりも衰えているぞ、災厄の王っ!!』
『・・・くっ!』
先程の神魔滅光の一撃で減少した、のか・・・!否、あの火炎の牙の業の所為で・・・?
この程度の者に我が押されている、だと・・・?
『・・・どうやら奴の預言とやらもあながち間違いではなかったようじゃの?』
『預言・・・だと?・・・それに奴とは・・・あの時の』
『そうじゃ、龍神界の長である』
『・・・押し切られ!?』
『我が友のことよっ!!』
『・・・ドラグ・・・!』
龍の魔力の奔流に呑み込まれながら以前のことが頭を過ぎる・・・
▽▽▽
『・・・忌まわしき者どもよ、我の前から消えるがいい!』
その時自身の肉体は今のように小さき者ではなく、黒き魔物のものだった・・・
そしてその我の目の前に立ちはだかる者どもは・・・
「やらせはせん!我が世界に巣食う悪しき存在よっ!此の地で滅する!」
『・・・戯言だな。お前程度の者が何体束になろうとも・・・』
・・・若かりしその生き物、まるで勢いのみで我が前に立ったようなそれは、
『・・・?お前のその姿は・・・!』
何やら不快な雰囲気を放つ肉体を持っていた。
『我等が援護する!行くぞドラグノフ!』
『応!ベヒーモス!抜かるなよ○○!』
その者の名か、聞き取りづらいその言葉にかまけている場合ではなくなった。
「アンリ・マユ!俺達の想いを受けろ!これが・・・牙、だあああっ!」
『・・・!!?何だっ!?牙!?や、焼きつくされっ!?・・・う、うああああああああああっ!!!!!』
その牙が我が肉体に刺さり、そして自身の肉体が消えていく感覚を悟らされた我は、
『こ、このまま消滅してなるものか・・・!せめて・・・お前をおおおおおおおおおおっ!!』
「っ!!?巻き込まれるっ!!」
『『っ!!?』』
・・・そして我が消滅にその者を巻き添えた。
△△△
あの記憶があればこそ・・・!
『地軸龍撃が跳ね返されっ!?』
『・・・お前にも終焉が訪れる!ベヒーモス・・・!!』
ドンッ!
『な、に・・・!?』
彼の血族の業を逆手に取り・・・そしてそのままお返しした筈が、
『これは?』
『小賢しい・・・!』
その魔導・・・業が消失、した・・・?
『刀が動いた?それに内在するこの魔力は・・・?』
『・・・厄介なものだ・・・矢張り人の業というものは危険極まりなし・・・!』
何処からともなく飛んできた人の造りし物体が阻んだのだ・・・
『しかし?何故儂を助けた?』
『・・・それはお前がヒトと懇ろだからだろう・・・それよりもまずはその鬱陶しい物体を破壊・・・』
させないわ!
『・・・!?その物体?』
不可思議な力を感じるその物体は我が肉体の中心を目掛けてくる・・・!
〜〜〜
この感覚・・・!
かつての戦いの記憶が喚起される自身、
「ミシル・タイナ、貴方は変わってしまったわ」
この、目の前で杖を振るう少女によって。
「変わっただと?それにミシル・タイナ・・・それが私の名なのか」
「・・・そう。こうして私が貴方と直接話すのは初めて。でも、それでも以前の貴方はなんというかもっとまともな・・・」
「・・・下らん」
「何ですって?」
「下らん、と言ったのだ。以前のことなど些末なこと・・・例えそれが私の記憶に関わることだろうがなんだろうがな・・・!」
「あ、貴方はっ」
「それよりも・・・貴様は葬ってやるぞ!」
「っ!?・・・させない!光爪!」
「速いっ!」
キキキキキンッ!と私の剣と鎧へと手応えがあった、がその正体は目には見えぬものだった。
不可視の刃のようなものか、と見当はつくが何よりその速さは、
「光の刃、だと・・・?」
「私は、」
この魔力の高まり、
「あのお婆さんとは違うのっ!」
「っ!この火炎っ?」
黒炎が私の身体を呑み込んだ。
〜〜〜
▽▽▽
「応用技って?」
あれは去年ぐらいか・・・
「そうだ。九天とは基本の九つの技。その使い手各々が自分に見合った自分だけの応用技を造り出してこそ、本当に自分の技にしたと俺は考えている」
「ふうん。何か難しそうだな父ちゃん」
「そうでもないさ。新しい技を生み出す感覚が分からなければ取っ掛かりもないだろうが」
そう言いながら親父は剣を上段に構えた。
「ふんっ!」
「このオーラ?」
牙が膨張、していくようなその技は
「ふう・・・な?今のは只の牙じゃなくてーーーーーー」
それから親父は技の応用について自分が気づいたことや、経験を積まなければその発想も出ないこと、あとは何故か外に出た時に可能な場合はあまり全力を出すな、等の話をした・・・
△△△
なんであいつは親父の、だけの技を使える・・・なんで知っているんだ・・・
なんであいつはニルナを・・・
なんでこんなにも、俺は・・・
〜〜〜
「甘いな・・・!」
「くっ!?黒炎がっ」
私は目の前に迫りくる黒い炎を斬り裂いた。
「・・・物珍しさや殺傷力だけは大したものと見た、が所詮は魔力で造り出されている技。私には通じん!」
「悪魔の、チカラ・・・」
「そうだ!だが元はと言えば貴様が原因だ!貴様さえ・・・貴様のような悪鬼さえ攻めこまなければ・・・!」
私もこの域に辿り着くことは決してなかった・・・!
「っ!それは私じゃ・・・・・・いいえ、私にも責任はある・・・か」
「・・・?何のことだかは知らんが・・・貴様を生かしてはおかん!」
私は取り戻した記憶にあるこの少女の皮を被っている悪しき存在へと剣を向け魔力を込めた。
「・・・私では相手にならないのね。それで?その魔力の剣で私を殺すの?」
「貴様には幾度となく辛酸を舐めさせられた・・・だからこそ、報いと知れっ!」
更に剣へと魔力を注いだ、一刀の下に斬り捨てる殺意を併せて。
だが・・・1つおかしなことがある。私は以前にもこの悪しき存在を斬った。その後に復活した、ということをも思い出した。ならば何故私は改めてこの少女を斬らずに・・・?
「・・・お婆さんとの約束は破るのね」
「約束?・・・知らんな・・・此処で生の幕を閉じるがいいっ!!」
「っ!お姉ちゃんごめんっ!!」
私は躊躇うことなく剣を薙いだ。
「なにっ!?」
「・・・・・・」
だが、横に薙ぎ払おうとした魔剣の刀身が突如消失した。
そして、目の前に奴が立っている・・・
「貴、様・・・?」
「・・・・・・」
私の最大の敵である奴は、だが言葉を発せずに感情の読めない顔で私を見詰める。
だが、
「・・・雌雄を決するのは今この時を措いて他にない!」
私は再び魔剣の刀身を形成すべく魔力を込めた。
『・・・加勢する。何より火炎の牙を滅しないことには他の者も・・・』
「ふん・・・貴様の相手はどうした」
私の横に並んだアンリは今の今まで強力な魔力の持ち主と戦っていた、筈だ・・・
『・・・奴は既に抑えた。だがいつ他の血族がやって来んとも限らぬ・・・それよりも最優先で火炎の牙を・・・・・・滅すっ!』
アンリの宿敵が我が宿敵と同じ存在とは知らなかった、が倒す相手は同じ・・・ならば、
「絶斬っ!!それが我が最強の一撃だっ!!!」
「絶、斬・・・?」
まるで幼子のように我が最強の敵は鸚鵡返しに言葉を繰り返した。
「そうだっ!全てを絶ち斬る我が最強の一撃・・・その身で以、て・・・?」
『この・・・力は・・・?』
「絶ち斬る・・・か。その剣でお前が・・・」
「貴様・・・?まあいい、兎に角何よりも私のこの身体が求めているのだっ!この手に、この剣に最強という名の栄光を!だからこそ貴様を倒すっ!」
「倒す・・・倒す・・・か・・・」
「むっ!貴様、何故構えんっ」
私のこの覇気に気圧されたわけはない筈だ、がトウヤ・ヒノカは剣を持とうともしていない。それどころか私ではなく在らぬ方向を見ている。
「そうやってお前は、倒したのか・・・俺の親父を・・・」
「親父・・・?・・・そうだ!タチオ・ヒノカは私が斬った!」
「そう、か・・・そして・・・」
話ながら奴は後ろを振り返った。
其処には両断した一体の人間が転がっている。
「どうでもいいのだ、他の輩などはっ!私が斬りたいと・・・否、越えたいと願ってやまない存在はトウヤっ!貴様唯一人のみっ!!」
構えぬというのならばそれもいいだろう。このまま奴を絶ち斬るのみ。
・・・しかし、
「何故だっ!この鈍があっ!」
剣に刃を形成することができない。先程から形成しては消えていく刃・・・魔剣とやらも当てにはならん・・・!
『・・・そんな筈は・・・』
「言い訳は要らん!元は貴様のものだぞ!」
この剣を私に与えたアンリを詰っている場合ではない、とは分かっているのだが・・・私は焦りを覚えていた。
「現にこうして刃を失うではないかっ!魔力がどのように作用して刃を形成するのか知らんが・・・っ!?貴様・・・?」
・・・そう言えば。
そもそもヘルヘイムの刀身を造り出すために必要なものは私自身の魔力だ。それを鑑みると、刀身が形成されないのはヘルヘイムに魔力が供給されていない、ということになる。しかし、だ、私は自身の体内からのものと併せて周囲から無尽蔵に魔力を吸収できる術を持っている。だから剣へ魔力が供給できないというのは考えられないことだ・・・本来ならば。
・・・つまり刀身の形成が不可能ということは魔力供給が阻害されている、ということになる。平たく言えば魔力を、
「盗られて、いる・・・?」
とある事実に思い至った私は剣からばっ、と顔を上げて目の前に立っている男を見た。
「俺は・・・」
「貴様・・・もしや・・・いや、そのような真似が可能なの、か・・・?」
「どうやらお前を・・・」
『っ!?・・・もう動けるか・・・中々に強力だ・・・龍!』
「貴様・・・使えない奴だ。何故止めを刺していないっ」
『・・・龍のみならばあるいは可能だっただろう、だがあの物体の阻害が・・・』
「物体・・・?何のことかは知らんが・・・仕方があるまい。まとめて斬る、だけだ・・・!」
私は此方に向かってくる魔力の持ち主を見た。その者はその風貌にそぐわぬ程に強力な魔力を持っている。只の年寄りというわけではないようだ・・・
それよりも剣をどうにかせねば、
っ!!?
「な、なんだとっ!!?こ、これは・・・!」
「許せそうに、ないらしい・・・!」
身体が遥か彼方へと吹き飛ばされそうな、その場に留まることすら困難な、そのような力の奔流をこの身に浴びる感覚を受けた。
「貴様・・・何故、魔力を・・・」
その力の出所を探ると他でもない奴から放出されていた。
解せぬのはその力が魔力だということだ・・・
『・・・次は加減せずに滅してやる、ベヒーモス・・・!』
『ほざくな災厄・・・先程はこれに阻まれただけであろう?』
『ぬう・・・小癪な物を・・・!っ・・・!!?こ、この力・・・火炎の牙がっ・・・?』
『これはっ!?・・・・・・もしや預言の者がっ?』
先程アンリの相手をしていたらしき老人がアンリの目の前に居る・・・抑えることすらできぬアンリの失策はともかく、
「何だ貴様!貴様は何を知っている!」
その年寄りが訳知り顔をしていたので、敵ながら思わず詰問した。
『・・・そなたが因か・・・?あの預言の者の触れてはならぬ部分に触れてしまったのは・・・』
「・・・触れてはならぬ・・・?」
『・・・あの者の怒り・・・儂にすらどのような事態になるのか想像すらできん・・・』
「怒り・・・だと」
っ!?
魔力の高まり、それと同時に獣のような雄叫びが間近に聞こえた。




