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第15話〜少女〜

〜〜〜



鬼族(きぞく)である自分は生まれつき魔力が高い。それに加えて他の仲間にはない能力、すなわち他者や自分の魔力の内包量を見ただけで分かる、離れていても誰の魔力かも分かるという能力を持っている。その能力を使い仲間同士で誰が一番高い魔力を持っているかを調べてみたら・・・私だった。

勿論、戦いの優劣や立場の序列などは魔力のみで決まるわけではない、が鬼族の中でも最も魔力が高いということを私は誇りに思っている。また、知能も高いと自負している。現在、島の中央で神獣を見守っている4柱の中でも神官という立場としては私より上の奴にも私に指図することはできないため、私は島内で自由に行動している。侵入者の生殺与奪も私の気分次第だ。(もっともロナンの奴も自由に行動しているが)


今日は数十年ぶりに侵入者(おそらく人間のものであろう魔力)の気配を感じ、軽い期待を込めて島の正面入り口から比較的侵入しやすいと思われる、島のとある集落の門の陰で待っていた。すると予想どおりに5人の人間がやってきた。(ただ、島の数か所でも侵入者の魔力は感じるのでどこで待っていても同じ結果だったとは考えられる)

私は別にわざわざ戦う必要のない相手と戦いたがる戦闘狂というわけではないので、久々に出会う人間の侵入者との会話を少し楽しんでいた。

だが、話をするうちにどうもおかしなところがいくつか出てきた。神獣を探しにやってきたと言われたときは人間に扱えるチカラではないが、まあ長い年月が経てばそんなことを考えることもあるだろうなと軽く考えていたが、何故神獣を求めるかその目的そこに至るまでの経緯を聞いたとき私は今まで生きてきた中で一番驚いたのではないかと思う。

何故なら、私は確かに魔力が高いほうではあるし、それによって様々な強力な魔法も使うことができる。しかし、聞いた話の中でウォルス王国という1つの小国をたったの1晩で滅ぼすほどの強さはない。(やろうと思えばおそらく数ヵ月はかかるだろう)私にも無理なことなのでこの島に居る仲間の誰でも間違いなく無理だとも断言できる。そんなことができるのはせいぜい、失われた魔法ロストマジック、と呼ばれる闇属性の魔法が使える者ぐらいだ。ただ、その闇属性の魔法の使い手というのは私の知る限り1人しか居ない。いや、居なかった。そのお方は現在、といっても300年ぐらい前に聞いた話だが遠くの場所でそう簡単には移動できない状態にあるはずだ。我々の中では創造主、始祖、など敬意を込めて呼ばれ、人間達の間では魔神と呼ばれて畏怖されているそのお方であるはずがない。だから、数日前にそのような強大なチカラを持つ存在がここからそう遠くない水の大陸に出現したことが俄かには信じられない。


私が侵入者の人間と話しながらそう考えていると、突然目の前に少女が現れた。

銀色に輝く杖と絶大な魔力を携えて・・・


~~~



「ねえ。私にも聞かせて頂戴、その面白そうな話。」


俺が目の前の鬼族の男と話しているとどこからともなく黒いローブを纏った少女が現れ、此方に話しかけてきた。声や口調こそその見た目通り少女のようだが・・・


「おい、お嬢ちゃん・・・あんたは何者だ・・・いつ、どうやってここに来た」


見た目にはそぐわないその少女から放たれる圧倒的なプレッシャーに俺はその場に倒れそうになりながら尋ねた。


「へえ。貴方は結構強いのね。私を目の前にして気絶すらしないなんて」


少女は微笑んでそう言った。というのも俺以外のリクオやレヴィアスの奴らは少女が現れたときに気絶していたからだ。


「ああ・・・あんたがとんでもなく強い化け物っていうのは何となく分かるぜ・・・あんたも鬼族なのか?」


「化け物とはひどいわね。でもそうね。貴方の言っていることは間違いじゃないわ。私は鬼族といえば鬼族になるわね。」


と言いながら、その少女は被っていたフードを脱いだ。そこには、火の大陸の者特有の黒髪黒眼ではなく金色の髪に碧い眼をした異常に肌の白い小さな顔があった。しかもその額には鬼族のような角が生えていた。


すると先ほどまで話していた鬼族の男が、怯えながらそれでも納得がいかないように、


「バカなっ!私は500年この島に住んでいるし、仲間の存在も全て把握しているが貴女のような方は見たこともないぞっ!」


と言った。どういうことだ?この少女は鬼族ではないのか?

すると少女が、


「ふふふ。それはそうよね。坊やはまだ500歳程度ですもんね。私がこの島に居たのは少なくとも2000年以上は前なのよ。もっとも正確には今の100歳程度の私じゃなくてかつての私という意味だけれど」


このお嬢ちゃんはいったい何を言っている・・・?

確かに鬼族というのは人間に比べて遥かに長寿らしいが、自分で今100歳程度と言ったぞ。それなのに2000年以上前にこの島に居た?意味が全くわからんぞ。


俺が頭を悩ませていると鬼族の男が、


「なっ!?もしや貴女は・・・いや、そんな筈は・・・だが・・・」


何かを言おうとして躊躇っていた。

すると少女が、


「貴方が何を考えているかは大体分かるわ。まあ、この姿ですものね。金髪に碧眼それに幼い。確かにすぐ信じられないのも無理はないわ。でも貴方が今考えている通り、私が貴方達鬼族の創造主よ」


!!!?


「そうね、私は少なくとも数万歳のお婆ちゃんの筈ですものね。信じられないというのはよく分かるわ。でもね、闇の魔法には色々と禁断の術があるの。」


「あ、貴女は本当に創造主様なのですか?」


「そうよ。でも、もっと正確に言うのなら以前の肉体が消滅して闇の大陸に居たこの子の身体に転生したのが私、鬼族の創造者、デュカ・リーナなの。」


「転生・・・」


「そう。転生。まあ、以前の身体が消滅したのは闇の大陸でちょっとした出来事があったからなのだけれどね」


「伝説のデュカ・リーナさま・・・た、確かにその魔力を見ればそんな気もしますが・・・」


俺は、気になるところが多々あったので


「まてっ!ということは、お嬢ちゃんは魔神の生まれ変わりなのかっ?それにこいつが魔力とやらなのか?この凄まじいプレッシャーがっ!?」


「成る程。プレッシャーね。魔力を扱えないモノは意外と分かりやすい言葉に置き換えるものなのね。」


俺が言うとデュカ・リーナと名乗った少女が1人で納得していた。さらに、


「また魔神か。貴方逹人間には何時の時代にもそう言われてきたわね。あとは鬼とかね。でもほんとうは・・・」


寂しそうにそう言い、続けた。


「それで、先ほどの話に戻るのだけれど、私は少ししか聴いていないの。だから坊や、よかったら何を話してたのか教えてくれないかしら?もしかしたら力になれるかもしれないわよ」


鬼族の男に先ほどの話をせがんだ。何故気にするのかは分からないが。


「ハイッ、分かりました。そ、それと坊やはやめていただけないでしょうかっ!」


「ああ、御免なさいね。鬼族は全て自分の子どもぐらいに思ってるから・・・貴方、御名前は?」


「ハイッ。私は火喰い島4ちゅうが1人、ジン・ガトウと申しますっ」

「4柱?っていうのはよく分からないけれど・・・名前はジン・ガトウね、分かったわ。じゃあ、貴方が現在の守護者になるのかしら?」


「いえ。そういうわけではありません。我等4柱はそれよりももっと大きな役割があります。主に島内の治安を護り、神獣を護る鬼族の最高幹部であり、この島全体を色々な面で治めております。守護者の役割のほうは精気兵(プラーナマシン)に任せておりますので侵入者程度ならあれ一体あれば十分でしょう」


「ふうん?それは今何処に置いてあるのかしらね?あれが持っているプラーナを探って見たのだけれど見つからないわ・・・まあ、そのうち分かるでしょう。それよりも、」


「あ、はい。先ほどの話ですね。ーーーーー」



この鬼族2人の話をぼーっと聞きながら俺は今からどうするかを考えていた。

何しろ他の奴はまだ皆気絶しているので逃げることもできないし、この2人と戦って勝つのは間違いなく無理だろう。かといって神獣を探しに島に侵入してきた俺達をこのまま見過ごすとも思えない。どうするか・・・


そして、先ほど俺が説明した話を男が少女に伝え終えたのか、


「成る程ね。それでこの島に大勢やって来たというわけね。レヴィアス国の人間か・・・ねえ、人間の貴方?」


少女が俺に話しかけてきた。


「・・・なんだ?」


「貴方はおそらく火の大陸の人間だからわかるでしょう?この島にレヴィアタンが存在しないことを。それをレヴィアス国の人間逹は知っているの?」


と言うので、俺は先ほど話してなかった、俺達とレヴィアスの奴等が手を組むに至った経緯を説明してやった。すると、


「へえ。人間にも変わった術を使う者がいるのね。ちょっと見てみたいわ。

あ、でもそう言えば昔も結構変わった術を使う人間も居たのよ。まあ、レヴィアスの人間逹は運が悪かったわね。いや、良かったのかしらね?結果的に強力な仲間が増えたのだから」


少女はそう言った。

俺は、


「いや、運は悪かっただろうさ。何せ俺が聞いたことのある伝承通りならほぼ間違いなく目的の神獣はこの島には居ないからな。結構無駄な時間を使わさせられるぞ。本人逹は納得していたみたいだが・・・」


「ふぅん。ということは貴方はこの島に居る神獣が何か知っているわけね?」


「ああ。お伽噺みたいなもんだが、聞いたことはある。神獣フェニックスだろう?不死の神獣フェニックス」


「そうね。それは正しいのだけれど、何故急に神獣が現れたと思う?」


「急に現れた?いや、それよりもその口ぶりは神獣フェニックスが本当にこの島に居ると言っているようなもんだぞ。何故それを俺に言う?」


「ええ。言っておくけれどフェニックスは間違いなくこの島に居るわ。今はまだ幼獣だけれどね。そもそも私が約2000年ぶりにこの島に戻った目的がそれだもの。何故教えるか、というのはせめてものお詫びよ」


「そうか。一目見てその姿さえ確認出来れば俺達はすぐにでも立ち去るが・・・一つ気になったがお詫びとはなんだ?」

「ああ。簡単なことよ。私のせいでレヴィアスの人間、つまり水の大陸の人間に余計な心配をさせ無駄な時間を取らせてしまったから」


それを聞いてもよく意味が分からなかった。が、この少女の言葉の意味をよく考えてみると・・・


!?


俺は一つの答えにたどり着き、そして、


「ま、まさかお前が・・・?」


「そう。つまり私がウォルスを一晩で消滅させたモノの正体、というわけ」


驚愕した。


「な、何故?」


「何故消滅させたか、ということ?そうね。一言で言えば邪魔だったからよ。私の目的のために」


「も、目的だと?さっき言ってたフェニックスが目的というのは?」


「まあ、この島に戻った目的もウォルスを消滅させた目的も同じではあるのだけれど・・・」


「同じ目的・・・」


「まあ、その目的自体は貴方たちには関係ないと思うわよ。辿り着けば別だけれど」


「辿り着く?どういうことだ?」


「此方の話よ。まあ、それは特に気にしなくていいわ。本当に辿り着けるのなら自ずと分かることでしょうから。」


「自ずと分かる?いったい何を言っている・・・?」

「そうね。今はまだ私が何を言っているかは分からないでしょうね。でも・・・」


「なんだ?」

「・・・いえ、なんでもないわ。まあ兎に角、其処の寝ている人間逹にも、この島に来ている貴方のお仲間の人間逹にも神獣を手に入れるのは諦めるように言っておいて頂戴。」


「ああ。それは構わない。そもそも俺達の目的はこの島に見えた光り輝くモノの調査だっただけだ。それに仮に神獣を持って帰ってもどう扱えばいいのかも分からないしな」


「そう。聞き分けがいいのね・・・」


少女は少し残念そうに言い、


「・・・この人間は違うのかしら・・・?」


と、何やら1人ごとを言っている。

その時、遠くのほうからなにやら話し声らしきものが聞こえた。



〜〜〜




俺達は銀色を倒したあと、奥に見えた森に入りしばらく進んでいた。さすがに岩山の道ほど険しくはなく、進みやすい道だったが、この森がまたやたらと長かった。それでも二時間も歩いただろうか、漸く森の切れ目みたいな場所に出た。

そして、



「見て下さいみなさんっ!あれは門じゃないでしょうかっ?」



アズトが興奮したようにそう言ったので前方を見ると巨大な門が見えた。だがさらに近づいてみると、俺は門とは別に気になるモノも見えていた。


「ねぇ、あれって人が倒れてない?」


ネクも見つけたのだろう、100mぐらい先の門の辺りには人らしき倒れている奴が何人か見える。立っているやつも。


「あれは・・・レンジさんの班では?」


アズトが言う。確かに今立っている3人の人物のうち1人は長い槍を持っている。あれがレンジだろう。

だが、


「あの小柄な人と大きな人は誰なんでしょうか?

ま、まさか鬼族っ!?」


俺と同じ疑問をアズトが言った。喋りながら少し早足で俺達は門へ近づいており、あと十数mまで近づいたとき漸くその人物達の顔が視認できる距離となった。


・・・やはりレンジの班の連中だった。だがレンジ以外の4人は皆倒れている。俺達の話し声が聞こえたのか立っている3人は皆此方を向いていた。

妙に顔色が悪いレンジに、おそらく鬼と呼ばれる所以だろう、額から二本の角が生えたやたら大きな男と、額から一本の角が生えた金色の髪の小柄な少女が其処にはいた。


と、誰かがその3人に向かって物凄い勢いで駆け出した。ミシルだ。あの鎧来てあの早さとは凄いな、と見ていると、


「ウォォォォォォーッ!」


ミシルが叫びながら背中から抜いた大剣にオーラを纏わせて、小柄な少女に斬りかかった。

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