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第13話〜柱〜

クロカゲ家は元々護衛を生業としている。

アリナとユリナの父親は2人の娘が物心ついた時から同じように護衛の為の術を教えているが、双子とは言え生来持って生まれたものが違うのか、成長するに従いその2人の性格と共に能力、性質の違いがはっきりと表れ出した。例えばアリナの場合は運動神経が良く格闘も出来るがユリナはあまり良くなくあまり戦いには向いていない。アリナにはオーラの流れがよく見えないが、ユリナは自分のも人のも良く見える。などとわかりやすいところで例が挙げられる。

鍛え方としては、父親は初めの頃こそ同じように教えてはいたもののお互いが出す結果に余りにも偏りがあるため、やり方を変えてそれぞれの長所を伸ばす方針にした。その長所つまり本人達にとっては得意なことのみをやった。その結果、12歳になる頃には、アリナは格闘や何種類かの武器の使い方を、ユリナはオーラを利用するための基本的な下地が出来ていた。とは言えまだまだ、発展途上にある2人をさらに上達させるため、甘えを無くすため、あわよくばお互いに足りないものを身に付けさせるため、知り合いの家へ2人とも預けることにした。

預けるには理由があって、まずそこが心安い知り合いの家だということ、そしてその知り合いは退魔術という戦いや魔物退治に大きな対抗手段を持って生業としているからである。

リシナ・トゴウが預けられた2人の少女を現役退魔師である父親から面倒を見るように言いつけられて、自らの身に付けている術を教えたのにはそういう経緯があった。


〜〜〜


「ーしょう。ししょう。」

初めて二人の姉妹が家に弟子入りしに来た時のことを振り返りながら歩いていると、後ろから声をかけられた。

「なにかしら?」

リシナはアリナのほうへ向き直り尋ねた。

「うん。さっきからユリナが結構きつそうで・・・出発してからもうかれこれ2時間は歩きっぱなしじゃない?もうそろそろ・・・」

アリナが遠慮がちにユリナのほうを見ながら言う。

「そういえばそうね、ごめんなさい気づかなくて。なら、そろそろ休憩にしましょうか?お二方もそれでよろしでしょうか?」

アリナと少し顔色の悪いユリナへ声をかけ、さらに後ろから歩いてくるレヴィアス団の男性二人にも尋ねてみた。

「我々は、貴女のご判断にお任せします」

と一人が言うので、休憩を取ることにした。


「それにしても、何もない場所だね。ほんとにこの島に何かあるのかな?」

アリナが周りを見渡しながら言った。

「そうね。上陸する前に見た感じだと島の両端が見えないぐらい広かったから、相当な広さだと思うわ。4班に手分けして探すというのは正しい判断でしょう。アリナちゃんが言うように何もないかもしれないわね。それに3日後には入口まで戻らないといけないから、あまり奥深くまでも進めないわね。」

私がそう言うと、

「・・・でも、生き物の気配もしない」

多少体力が戻ったのかユリナが言った。

「そうね。それは私も思ったわ。いくらこんな道でも虫とか小動物が居てもおかしくはないわよね・・・」

私は、歩いてきた荒れ果てた道を見ながらそう言った。無人というのはともかく生き物一体いないというのは不自然、というより変だ。まるで、

「・・・まるで結界が張ってあるみたい」

ユリナがそう言った。やっぱりそう思うわよね。そもそもトゴウ家の退魔術というのは、魔物を退治するよりもどちらかといえば不可視の物理結界を張り魔物を押しとどめたり封印したりするほうに本領を発揮する。なので、結界術や封印術の修行を重点的にすることになるため、自分でできるようになるのはもちろんのこと、他者が行った術も違和感を感じたりと結界が張ってあるかどうかが感覚的に分かるようになる。ただ、術者が己以外を排除する種類の結界を張っているなら、その場所は違和感どころではなく、前に進もうと思っても進めない程の圧力がある。ここまで何の違和感もなしに進めたから結界が張ってあるというのは考え難いけど、もしかしたら・・・

「・・・私たちが島に入ってから結界を張ったのかも・・・出られなくするため・・・」

「私もそれは考えたわ。でもそれだと、どうやって私たちが島に入った時が分かったのかしら」

私が、ユリナの考えに疑問を持つと、

「あのう、我々の砲撃音のせいではないでしょうか・・・」

と、現在私たちの班員である男性の1人がおずおずと言いだした。ああ、そういえば・・・

「そうだよねー。おじさんたちが有無を言わさず攻撃してきたもんね」

若干からかいの口調でアリナが答えた。

「ええまあ、あれはなんと言いますか・・・」

申し訳なさそうに男性が答える。

「そうですね。あの時結構大きな音がしましたね。いくらこの島が広いと言っても音が響いたかもしれませんね。ただ、あれはもう気になさらずとも良いのではないですか?結果的に皆無傷でしたし、やむを得ない事情がおありになったでしょうから。」

私が悪気なく微笑みながらそう言うと、

「はあ、そう言ってもらえると助かります。」

と男性が言った。

「結局、おじさんたちのほうが被害が大きかったしねー。」

言わなくてもいいことをアリナが言った。

「ええ、貴女とそしてあの少年に完膚無きまでにやられました・・・」

男性が私を見ながら言った。いや、あの少年はともかく私はただ砲弾を防いだだけなのですが・・・

「ま、まあ終わったことは気にせずにっ」

アリナが慌てたように言った。

「・・・でもあの子強かった・・・」

ユリナが思いだしたように言った。

「確かにそうだよねー。あれで私たちと1つしか違わないっていうんだから・・・」

若干へこんだようにアリナが言う。そこで私は、

「アリナちゃん、ユリナちゃん。人は人、自分は自分です。あの少年は確かに強いですが、貴女たちは気にせず自分の腕を磨いてください。もちろん私もまだまだ修行不足の身ですが。」

とりなすように二人へ言った。

「そうか、そうだよね師匠。修行頑張る!」

「・・・私も頑張る・・・」

と、男性が

「あれで修行不足と言われたら・・・」

「戦いが本業でないとはいえ我々は・・・」

二人して項垂れていた。

「まあねー。でもそれはしょうがないんじゃないかな。師匠の強さは化け物じみてるからね。だからこんなに美人なのに普通の男が怖がって恋人の一人もいないんだよねー。」

と、アリナが言ってくれやがったので私は

「アリナちゃん?あとでお話があるのだけどいいかしら?」

アリナへ微笑みながら言った。

「ヒィッ。ご、ご、ごめんなさい師匠。」

何故かアリナが私の方を見て怯えていた。

「まあ、ユリナちゃんも元気になったことだしそろそろ休憩を終えましょうか?」

「「「「ハイッ!」」」」

私がそう言うと全員が一斉に返事をした。何故?

立ち上がり、また荒れ果てた道を進もうとしたその時、突風が吹いた。


〜〜〜



リシナ達から約1㎞離れた場所に1人の男が立っており、その男は目を細めながらリシナ達のほうを見ていた。


「大きな音がするんでわざわざここまで様子を見にきてみれば、1、2、・・・5人か。久しぶりの客だ。精々もてなしてやるとするか。」


そう言って男はリシナ達のほうへ向けて飛ぶような凄まじい早さで飛んだ。


〜〜〜


一瞬巻き起こった突風でよろけて目を瞑っていた私が目を開けたらいきなり目の前に見知らぬ男が立っていた。

赤い髪の体が大きく屈強そうなその男は私たち全員を見ると、


「ようこそ火喰い島へ、侵入者よ。歓迎するぞ。」


と言った。この口ぶりだとここの住民でしょうね。

ただ、そんなことよりも・・・「ん?どうした侵入者どもよ。珍しいものを見るような顔をして?」


その赤い髪の男はそう言った。それはそうだろう。つい先ほどまで気配すら感じなかったし、その男の額には・・・


「ああ、ひょっとしてこの角が珍しいのか?」


と、男は自らの額にある角らしきものを指してそう言った。


「亜人・・・?」


アリナがそう言うと、


「はっ!人間ってのはどいつもこいつも同じ反応をするな。確かに俺たちは貴様らからすれば亜人と呼ばれる存在だろうよ。いや、何十年か前の侵入者は鬼とか呼んでいたっけなぁ。」


男は私たちを蔑むように見ながらそう言った。


「何十年か前?ということはやはり以前にも誰かこの島、火喰い島と言ったかしら、に来ていたと言うわけね・・・」


私がそう言うと、男は


「ああ、来てたぜ。もっとも、骨すら残っちゃいないがな。」


と言った。

その言葉に全員が警戒し、身構えた。さらに、


「まあ、その時の奴等の目的が亜人を捕まえて売り飛ばすとかいうふざけたものだったからな。何の躊躇いもなく消してやった。どうせ貴様らもそんなところだろう?」


男が言うと、レヴィアスの男性の1人が、


「違うっ!我々の目的は神獣だっ!この島に神獣の居る可能性が高いのでやって来ただけだっ!」


慌てたようにそう言った。すると、


「なんだとっ?成程な。どうやってアレの存在を嗅ぎ付けたかは知らんが尚更生かして帰すわけにはいかなくなったな。」


そう言うと、男は両手を前に突き出した。


「アレ?ということは、この島には神獣が居るん」


レヴィアスの男性がそこまで言ったところで、数十m後ろに吹き飛んだ。


「えっ・・・?」


それを見た全員が驚きで固まっている。


「ふん、脆弱だな。」


男がそう言うと、アリナが

「な、何今の?」


と言った。男は、合点したように


「ああ。そういやそうだな。人間たちの中では廃れたらしいが今のが魔法ってやつだ。俺は親切だからな。自分がどういう風に死ぬのかぐらいは教えといてやるよ」


私たちへ説明した。今、有無を言わさず吹っ飛ばしたけど・・・


「魔法?廃れた?その言い方だと人間でも以前は魔法を使ってたみたいね?」


私がそう言うと、


「ああ、そうだ。今もその名残があるじゃないか。人間の村に張ってある結界とかな。」


「結界?あれを魔法というの?昔に妖術師と呼ばれる人たちが使った術を?」


「呼び方は知らん。だが250年ぐらい前に来た奴等は確かに強力な魔法を使っていたぞ。」


「250年前?その時に誰か来ていたの?それに貴方はいったい何歳なの?」


「俺はまだ精々300歳ぐらいだが。誰が来ていたかは貴様らのほうがよく知ってるんじゃないか?」


「っ!スサノオ。ということは・・・」


「まあ、そんなことはどうでもいい。貴様らは消すだけだからな。」


「待って、まだ聞きたいことが。」


「お喋りはここまでだ。どうせ貴様らはここで消える。あと、最後に教えてやろう。俺の名はロナン・サタク。火喰い島4(ちゅう)が1人ロナン・サタクだ。この名を頭に刻み込んで・・・死ねっ!」


男が再び両手を前に突き出した。

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