思い出して、魂の誓いを。
──────ステージから舞い上がる歓喜の声。
「みんなーー、今日もありがとう…!!」
ステージには1人の少女が照れくさそうに微笑みながら、ファンたちに向けて、手を振っている。
とある小規模のステージでは、駆け出しの新人アイドルのライブの開催も多く、この少女もその1人だった。
ステージの舞台袖に消えるその最後までファンたちを見つめながら、少女はその日のライブも無事終えたのだった。
「ひめ、お疲れ様。」
30代くらいの髪をまとめ、スーツを着た女性はステージの舞台袖に入ってきた少女に声を掛ける。
「あぁ、ミカ。ありがとう。ミカもお疲れ様。」
少女の名前は夢乃ひめ。
芸名はひめだけで活動しており、周囲もそう呼ぶことが多い。
ひめは新人アイドルとして日々ライブを重ねながら着々とファンを増やしていた。
「ユーリ、今日のひめのライブどうだった?」
ひめが応答した女性の名前はミカ。
ミカはひめのマネージャーの1人であり、いつもひめと行動を共にする存在。
ひめにとってミカは家族同然とも言える存在だ。
ミカは次に奥でパソコンを使って作業する少年に声を掛ける。
「うん、数字も伸びてるしいいんじゃないかな。
さすが俺が見出した才能って感じだね。」
ユーリと呼ばれる少年はパソコンの画面を見つめたまま顎に手を当てながら、自慢げそうに笑みを浮かべてミカの問い掛けに答えた。
ユーリもひめのマネージャーの1人であり、ミカほどひめと行動を共にする存在ではないが、ひめにとってユーリも心強い仲間であり、ユーリもミカと同じ家族同然の存在としてひめはマネージャーである2人のことをとても大事に思っていた。
「わーい!ユーリ見る目あるぅ♪」
「まったく、ユーリはすぐそうやってひめを甘やかすんだから。」
ユーリの言葉に素直に喜ぶひめに対してミカはやれやれという様子でテーブルに置いていた水を手に取り、ひめに渡す。
「あ、ありがと。」
ひめは受け取った水をごくごくと喉を鳴らしながら、喉が乾いていたのか一気に飲み込んでいた。
「まあまあ、今日はひめも頑張ったことだし、俺も腹減ったしさー
飯でも食いに行こうぜー!」
がたん、とユーリが座っていたパソコンの前から席を立つと、ひめは半分以上減った水のペットボトルをカバンに入れて
「ごっはんー♪ごっはんー♪」
ウキウキしながら帰るために私服に着替える準備を始める。
「ひめ、まだまだあなたはこれからなの。
最初はみんなどんな新人なのか期待して数字も伸びるものよ。
だけどね、本当に大変なのはこれから…。」
ざわざわ、と次々に舞台袖を後にするスタッフたちがひめを見つめるミカの目の前を横切っていく。
それは少し離れた位置から用意を始めたひめと話を続けようとするミカを遮る形になった。
「ありがとうございます!皆様お疲れ様です!」
ひめは話を続けようとしたミカには気付かない。
次々に舞台袖を後にするミカとユーリ以外のスタッフたちに感謝を伝えている。
そして足早に更衣室に向かい、ひめもまたその場を後にしたのだった。
「ひめは新人の中でもずば抜けて逸材だよ。」
ひめが立ち去っていく背中をミカと同じく見つめていたユーリはぽつりと呟く。
「ええ、ひめの才能は私も認めているわ。」
ミカもそうユーリに返す。
「多分それで言うなら、ミカさんより俺の方がひめのこと分かってるぜ?」
「…そうかしら。」
ひめが着替えている最中に2人は会話を続ける。
「俺はひめの才能を疑ったことなんてない。
ひめには芯もあるし、どんなことが起こってもひめなら乗り越えていけるだろ。」
「私だってひめの才能を疑ってなんかいないわよ。
だって私はあの子のことをあなたよりもずっと昔から見てきたのだもの…。
ユーリ、あなたも自信があるようだけど、そういうことじゃないの。
私だって本当に誰よりもあの子の輝きは知っているし、芯の強さも分かってる。
別に何もあなたのひめへの評価を否定したいわけじゃないのよ、むしろ肯定派だわ。」
「じゃあ別に心配しなくたっていいじゃんか。
まあ…俺より長い間、俺と出会うよりも前からひめを見てきたからといって、俺よりもひめを分かってるっていう口振りには納得いかねぇけどな!
ふん、期間がなんだってんだよ、ボケ。」
一切表情を変えずに淡々と話すミカとは対照的に明らかに不満げにぶつくさと小言を漏らすユーリ。
「ふふ、ユーリは負けず嫌いだからね。いつもは譲ってあげないこともないけど、今回ばかりは私も譲れないわ、なんて。」
表情は変えないもののそう言ってミカはくすりと笑い、ジト目でミカを見つめるユーリを挑発するように冗談を言った。
「俺はな!一目見て、こいつは売れる、間違いないって確信したんだ!
だから社長に頼み込んで、社長直々にその逸材のひめを見てくれ!ってさ、頼み込んだってワケ!!」
ユーリの話に熱がこもる。
「俺がこんな付きっきりでさ?誰かのマネージャーに就くなんてことも本当はないんだぜ?
俺はひめのマネージャーの前に、まずリーリエの敏腕スカウトマン!
お抱えの人材はひめ以外にも多くいるからな。」
「そうね、別にひめには私もいるしひめもユーリを気遣っているじゃない?
忙しいあなたを自分だけに縛り付けるわけにはいかないって。」
「………。」
黙り込むユーリに対してミカはずっと疑問に思っていたことを続けて問いかける。
「どうしてなの、ユーリ。
あなたがいて助かっていることは間違いないけど、あなたがひめのマネージャーでいることは周囲からの反感も買うのではなくって?
そのリスクを負ってまで、あなたがひめのそばにいる理由は何?
…ひめのこともよく思わない人も出てくるでしょうね。
実際もう嫌がらせだってあるし…。」
「………そうだよな。俺のせいでごめん。」
しおらしく謝るユーリだが、ミカは淡々と言葉を返す。
「私に謝っても仕方ないわね。
ひめも謝罪なんて望んでないと思うわよ。
それに対してひめは
自分が嫌われたとしてもユーリが自分のそばにいたいとそう思ってくれるのなら、ユーリにも周りにも申し訳なさはあるけど一緒にリスクを一緒に背負いたいと、そう言っているのだから。
生半可にひめを気に入ってるだけじゃお話にならないから、この際ハッキリ答えて頂戴。
…私は事務所を敵に回してもひめを守るわよ。
まあそれは大袈裟かもしれないけど大事な事だから。
みんなが大切なのはわかるけど、ひめに危害を加えるのを止めるのもあなたの仕事よね。
さて、あなたにその覚悟はあるの?
あなたの覚悟って如何ほどのものなのかしら。」
そのミカの問い掛けにユーリの言葉は詰まり、止まったかと思いきや
「…みんなにもひめだけ贔屓していないかとも言われるけどさ。」
ポツポツと話し始めると、だんだんとまた先ほどの熱さを取り戻し
「…正直なところ贔屓するに決まってる!
だって…
俺にとってひめは…
これ以上出会えないかもしれない貴重かつ特別な人材なんだぜ?
……あの衝撃は忘れない、すごかったんだ。」
その言葉でユーリの脳裏に浮かび上がるのは、まだ芸能事務所リーリエに所属する前のひめと出会った頃の記憶。
焼き付いて離れないインパクトを残した、ひめとの衝撃の出会いの記憶だ。
──────半年前。
「みんな今日もありがとー!」
「…ん?」
何気ない仕事の帰り道、最寄りの駅の近くで突然にその衝撃の出会いは訪れた。
「すごーい!上手ーい!」
「もっと歌ってー!」
何やら人が騒がしい。
「(何かイベントでもしてるのか…?)」
俺はその場で足を止めて、騒がしく声のするほうへ目を向ける。
そこにはまだ始まったばかりなのかそんなに多くはないが数人の人だかりができていた。
…そしてその中心で何を話しているかまでは聞こえないが、ペラペラと人だかりと話している少女の姿がチラリ、と見えた。
俺は引き寄せられるようにその人だかりと少女に近づいていく。
「次は何を歌おうかなぁ♪」
少女の姿が鮮明に俺の目に映ると同時に、俺の心拍は急上昇。
まず1回目の衝撃が俺の心臓を貫いたのだった。
「…か、可愛い!!!!!」
それは引退した過去の推し以来の衝撃だった。
アイドルに特に興味があるというわけではなかったが、あまりの可愛さに俺は一度だけアイドルにハマったことがあったのだ。
その彼女を追いかけて、俺はリーリエに所属し、リーリエのスカウトマンになったが推しのような出会いなんてもう無いんだと思っていた。
「………あった、まじかよ。
あったよ、ここにぃぃぃ!!!」
俺は心の声が漏れていた。
その声で人だかりと少女は一斉に俺を見る。
我に返った俺は小さな声で
「…あ、どうも。続けてください。」
そう冴えない言葉を呟くのがやっとだったが少女は笑顔で
「ひめを見つけてくれてありがとう!
良かったらお兄さんリクエストありますか?」
そんなふうに優しく声を掛けてくれた。
「(ひめと言うのか……!!!)」
推し以来の衝撃、いや推しをも超えるかもしれない衝撃。
「(正直歌はどうでもいい!
…顔が!顔が!!
可愛い!!!!!
これだけでも金になる!)」
歌を聞く前に俺はこんな欲にまみれたことを考えていた。
あぁ、あの時の俺を殴りたい。
「あっ…あの……。」
おっと俺としたことがまたぼーっとしてしまった。
ひめは俺を不思議そうに見つめて戸惑っている様子だ。
「あっ!
…あぁ、えっと…どうしようかな。
ひめさんの好きな歌で、お、お願いします。」
俺は咄嗟にそう返事をした。
ひめは少し考えたあと、にっこり微笑み
「お兄さんにもそれでは1曲!
ひめの大好きなアイドル、アイちゃんの~…」
歌い始める前にひめは歌の紹介をしていたが、笑顔の可愛さに見とれてしまった俺は最後までその返答を聞かずに、またぼーっとしてしまった。
だが少女が歌い始めるとほのぼの談笑していた場の空気が一転して変わり、それはぼーっとしていた俺の意識を戻すことも一瞬だった。
ハッと再び我に返った俺は駅の近くのただの味気ないスペースのはずなのに、まるで大きな舞台会場のようなひめのステージに早変わりしたことに驚き、戸惑いを隠せない。
先ほど戸惑っていた少女とは思えない、今度は俺が戸惑う側になっている。
だけどそれも…仕方ないだろう……。
「…こ、これが…駆け出しだと…?」
俺の目の前で今歌い、踊っているこの少女はどう見たって駆け出しには思えない。
「(…なんだよ、これ。
完璧じゃないか。
もはやプロだよ、カリスマだよ。)」
すぐに売り出せるくらいの実力があると思えるくらいその少女は凄かったのだ。
例えるなら俺の目には星のようにその少女ひめを筆頭に眩くあたり一面発光し、キラキラと光って見える。
本当にひめのステージに…別世界に連れてこられたような気分になった。
それはさっきから見とれがちな顔の可愛さだけではない。
俺はあっという間に2回目の衝撃を受けることとなる。
「(こいつ…よく見たらスタイルもいいのか。
いや待て…
さっきから顔ばかりで気に止めなかったが声も可愛いよな…。
いやそういえば話し方も可愛かった気が……。)」
スタイルに声に、話し方も可愛い。
それは俺に1回目から2回目の衝撃で終わらず3回目、4回目といった衝撃を生むには十分すぎるほどの魅力だった。
「(…ん?…待て待て待て、
そんでもって何だ!!!
この歌の異常な上手さは……!!!!!
くそっ!
次から次へと情報処理が追いつかない…!)」
5回目の衝撃が撃ち抜く前にもう俺は…
気づけば光悦の表情でひめの虜になっていた。
それからというもののひめのライブは1回も欠かさず通ったものだ。
最初は男…いやっ!
スカウトマンとしての血が騒いだが、すっかり今はファンの1人となっている。
───────しばらく過去の記憶にぼーっとしてしまっていたユーリ。
「(何度思い出してもすごい、本当に衝撃的だったんだ。
あの時も今も、ぼーっとしてしまうのは変わらないな……。)」
「……ユーリ?」
ミカが固まったユーリの顔を覗き込む。
ユーリの瞳にミカのその覗き込む顔が移り、ユーリはまたその瞳にも熱い情熱が戻ると意を決したように
「生半可なんかじゃない。
俺はひめを必ず人気アイドルにしてみせる。
マネージャーとして、ひめのそばにいながら姫を守るさ!」
そう答えたのだった。
「…そう、それなら良いけれど。」
ミカは覗き込んでいた顔を離して、目を逸らした。
「そして俺は芸能事務所リーリエだってデカくする!
ひめのマネージャーをしながらな!」
熱く語り続けるユーリにミカは逸らした目を再び向けて
「両方手を抜かないと約束できるの?
覚悟は生半可じゃなくたって、実際行動が伴わずに結局集中力が途切れて両方中途半端に終わる、なんて未来が起こらない保証なんて無いわよね。
仕事が出来なければ意味ないわ。」
ピシャリと言い放つミカ。
しかしユーリも怖気付くことはなく
「分かってるさ。
ちゃんとやる、約束するよ。
ひめだけに集中できたらそれは俺にとっても望んでいることなのかもな…。
でも俺は…リーリエにも恩がある。
だから俺は…!全力で……
ひめのこともリーリエのことも俺は守り、大きくするんだ。」
神妙な面持ちでミカにそう伝えるのだった。
「…そう。
まあひめはあなたを信じているからね。」
「ひめの期待にも答えるさ。
リーリエが大きくなればひめにも必ず力になれるし。
…社長とだって約束してる。
ひめのためでもあるんだよ。」
「ほう?楽しみね。」
「そのためには1人でも多くの有能な人材を集めなきゃならねぇ…
まだまだリーリエは小さい事務所だからな。
俺が頑張らないといけない。社長からも期待されてる。
でもな、1人でも多くとは言っても…誰でもいいわけでもねーんだ。」
そう言うとユーリはシリアスな空気から一転、チッチッチッと人差し指を立て、首を振り話を続ける。
「ここで大事なのは数よりも質だ!
顔がいいとか、スタイルがいいとか、声がいいとかな?性格もそうだ。
人の魅力ってのは色々ある、でも俺は感謝のねえヤツや下品なやつはスカウトしねぇ!
そんなヤツ売れねぇかんな。」
「見た目や声がいいだけでも、単純に愛嬌がいいだけでもダメってことね?」
「もちろん!
会社の信頼に関わるからな!しっかり見極めねぇと。」
「真面目なのはあなたのいいところだものね。
…それにそれはいい志だと思うわ。
ひめもそう思ってあなたに付いてきたんだもの。」
ユーリにとっての会社、現ひめとミカも所属する芸能事務所リーリエは宝だった。
ひめは元々ミカと2人で、事務所にも属さずフリーで活動していたアイドルだったが、ユーリにスカウトされたことをキッカケに、リーリエのアイドルとして活動することを決めたのだった。
とはいえ、ユーリはすぐにひめをスカウトしたわけではなく、姫のライブに通い慣れて、ひめもユーリに心を許してきた頃に初めてその話を切り出したのだ。
気楽に楽しくやっていければいい、そんなふうに思っていたひめには事務所というのは少々荷が重いような気もしていた。
気づけば虜になって、ひめのライブをただ純粋に楽しんでいたユーリがいたことも事実だがユーリはひめのその気持ちにも気付いていたこともあって、話をなかなか切り出さなかったのである。
しかしそんなひめの気持ちを汲んでそっと近づくユーリとは逆に、そしてユーリが尊重するそんなひめの気持ちとは裏腹に、フリーでも伸びしろのあったひめには数多くのスカウトが来た。
条件がいい所や特別待遇を匂わせる事務所もあり、それはアイドルとして集中して活動を続けていくにあたりこれ以上ないくらいのサポートだった。
またひめの伸び代を後押しする魅力的な要素に他ならなかった。
けれども、ひめはどれも断っていたのだ。
事務所に入ればノルマや事務所の言うがままに自由がなくなってしまうかもしれない。
それでは楽しめるものも楽しめない。
ノルマもなく、自由を尊重すると謳っているところでさえも実際そうはいかなかったりもするもので。
酷いところは給料が支払われない、なんてこともあるらしい。
さらにといえば事務所から強引に闇営業を持ちかけられるなんてことも聞く世界だ。
結果が出るのに時間がかかったり、いくら売れるためとはいえ人材を利益だけのために捨て駒のように扱う事務所、会社から身を守るためにも、華やかな世界であればなおのこと。
向こうからスカウトが来たとしても浮かれすぎず慎重さというのは必要ではないか、とひめもミカも考えていたというのも事務所に入らないひとつの理由だった。
「当たり前だろ!
…俺はこの仕事に誇り持ってやってる。
妥協はしねぇ。
ひめはそういう俺が自信を持って最初に見つけた原石なんだよ。」
目を輝かせてそう語るユーリは、一瞬ひめが更衣室で着替えているということを忘れてひめの方に視線を向けようとして動揺するも、ハッと思い出しゴホン、と咳払いをして平静を装った。
しかし誰が見ても照れているのがバレバレである。
そんなユーリを着替え中のひめは何も知らずに今夜の夕食は何になるかな、なんて考えていた。
ひめには好条件、高待遇よりも先程から熱く語った挙句、姫が着替え中だということも忘れてふと悪気なく視線を向けようとして照れ隠し中のユーリのこの熱意が圧倒的に何よりも魅力的に映ったのだ。
だからこそひめは否定こそしないものの、迷いのあった事務所選びにユーリが所属し、勧めるリーリエを選んだのである。
「原石ね。
そうね、ひめは原石。それを磨くのが私たちの仕事。
ただね、私が言いたいのは……」
「お待たせー!!」
ミカの話を遮る形でひめが更衣室から出てきたので、ユーリは咄嗟に
「うわっ!」
と、またしてもそんな声を漏らしながら動揺しつつ、ミカも視線を向けて
「終わったのね、いいわ。」
話を続けようとする。
「ひめも大事な話だからよく聞いて。
あのね…あっ!ちょっと!
待ちなさい!」
ひめとユーリの2人はミカの静止も気付かずに、その場から立ち去っていく。
ミカの話は結局途中のまま、関係者用の裏口通路へと向かう2人を見つめながらミカはため息をついた。
「(ひめは知らない。)」
取り残された舞台袖で、ミカは言いかけた言葉を1人脳裏で呟いていた。
「(これからどんな試練が待ち受けているなんて…そうよ、まだあの子は知る由もないから……
果たして乗り越えられるかしら…いや大丈夫よね。
私はあの子を信じてる。)」
あえて自分の口からは伝えない言葉も
「(そう、アイドルとしてだけじゃない…
あの子の人生に関わることで
あの子の天命とも言えること……。)」
これから起こる壮大で、愛憎渦巻く物語。
それは決してひとつのこの世界の話ではなく、もっと大きな世界の、もっと大きな覚悟を試される運命。
その幕が開こうとしている現実をも。
ひめの生まれた理由はそこにあり、生きる意味もそこにあるのだと。
「……あの子は私が守らなければ。」
これからのひめに大きな覚悟が必要なように
それを1人わかっているミカもまた、
大きな覚悟をその温かいヘーゼルの瞳に宿し、つい声に漏れた決意を静かにそっと、胸に手を当て固めたのだった。




