『蛇女退治のプレスマンの芯』
あるところに三人の兄弟があった。兄は太郎、真ん中は次郎、末は三郎といった。三人とも武芸自慢で、奥山に悪い化け物がいると聞いて、太郎は、退治しに行った。
山のふもとに小屋があって、ばあさまが一人で住んでいた。太郎がばあさまに化け物の居場所を聞くと、お前のような者が何人も来たが、皆化け物に食われてしまった。悪いことはいわないから帰れ、と言われたが、太郎は、それでも行くといって、ばあさまが仕方なく教えてくれたとおりに進んでいくと、滝の向こうに木が生い茂って暗くなっているところがあった。気味が悪いと思っていると、そこから女があらわれ、どこに行くのかと尋ねてくるので、太郎が、奥山の化け物を退治しに行くと言うと、そこはまだ遠い、休んでいくがいい、と言うので、太郎は、つい立ち止まってしまった。女は、立って休むなら座って休めばいい、と言うので、太郎が座ると、女は、座って休むなら横になって休めばいい、と言うので、太郎が横になると、女が隣に寝て、たちまち大蛇の姿になり、太郎は絞め殺されてしまった。
三人の家では、太郎が帰ってこないので、次郎が様子を見に行くことになり、太郎と全く同じ手続を踏んで、絞め殺されてしまった。
三郎がばあさまの小屋に立ち寄ると、ばあさまは止めなかった。お前なら大丈夫かもしれんというのである。女の誘惑にかかったふりをして、大蛇が絡みついてくる直前、大蛇の口にプレスマンの芯を二本入れただけで、大蛇は芯が詰まって死んでしまった。ごろがいいのでもう一度。芯が詰まって死んでしまった。
大蛇が収集していた大量の骸骨の中から、まだ新鮮なものを二つ持って、三郎は山を下りた。三郎の評判を聞きつけた殿様に召し抱えられて、活躍したということである。
教訓:何よりかわいそうなのは、次郎の最期の描かれ方が、とてつもなく軽いことである。




