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辺境魔法使いの傭兵奇譚  作者: 麗安導楼(れあんどろ)
第一章 新人傭兵
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結成

 ケントが行方不明になってから2日。やはりケントは帰ってこない。

 あれからというもの、出張所や花橋前の飲み屋で知り合いの傭兵にケントや森の狩人について話を聞いてみたが、ここ3日くらいで会った者はいなかった。唯一、ニコラスが飲み屋の女を相手に「今まで行ったことの無いエリアに行く」と言っていた話を聞いたという者がいた程度だ。

 だが、これは大きな情報だ。森の狩人の活動範囲は把握している。ケントがよく話していた。ファングウルフの出没する範囲を主戦場といていたはずだ。その先の森にはホブゴブリンやオークのような人型の魔物が多く、トレント、フォレストリザード、ハンタークロウといった魔物も生息しているらしい。基本的には3等級以上の者がこのエリアに行くのだが、森の狩人のメンバーはケント以外が最近になって3等級に昇級している。ケントの実力も森の狩人の面子と引けを取らないため、このエリアに足を延ばしても問題無いと考え先に進んだに違いない。

 今まで得た情報をもとにそう結論付けたカナメは出張所へ赴いた。2日前に対応してもらったゼニアの所へ行く。ゼニアも用件が分かったのかすぐに反応した。


「カナメさん、そろそろ来ると思ってました。」

「ゼニアさん、その様子だと、あまり良くない話のようですね。」

「はい。森の狩人の皆さんは5日前に魔の森へ向かってから帰還していないことが分かりました。そのため、行方不明者捜索の依頼を掲示しました。ただ、行方不明地点と思われる場所は4等級以上の方か3等級以上の傭兵を有するパーティーしか許可されておりませんので、今のカナメさんでは受注できません。」

「やはりそうでしたか。そんな気はしてました。でも、情報ありがとうございます。少し考えます。」


 案の定、自分の等級では捜索にも行けなかった。念のため掲示板を確認してみる。たしかに真新しい紙に捜索依頼が書かれて掲示されている。そこに書かれている内容は先程ゼニアに言われたものと同じだった。同じように捜索依頼の掲示を見ている傭兵たちの声が聞こえてくる。


「森の狩人、最近見ないと思ったら魔の森から帰ってきてなかったんだな。」

「あいつら、かなり堅実に仕事してたのにな。何があったんだか。」

「お前、たしかあそこのマイクと仲良かったよな?」

「まぁたまに話す程度にはな。」

「探しに行かなくていいのか?」

「いや、無理だろ。俺は2等級だぞ。それに、もしも条件を満たしていても、行方不明になってから5日も経過しているんだ。絶望的だよ。」

「それもそうか。」


 その会話は一見すると薄情にも思えるが、一般的な傭兵の考え方そのものである。あまり付き合いの無い傭兵相手の依頼ならこのようになってしまうのも無理も無い。捜索する自分も命の危険にさらされるのだから。

 しかし、カナメにとってケントはその程度の間柄ではない。ケントは傭兵になって一番最初の仕事で一緒になり、その後も仕事を共にこなすこともある。何度も食事を共にした仲だ。傭兵仲間では最も付き合いが長く、それなりに仲がいい。等級が足りないから?行方不明になってから5日が経過しているから絶望的な状況?そんなことは知ったことではない。放っておけるわけがない。

 常設の魔物討伐依頼を見る。ファングウルフの討伐依頼があることを確認。これを受ければ「うっかり指定領域より奥へ行ってしまった」という言い訳が通るかもしれない。

 そのようなことを考え、依頼票を取りに行こうとしたところ、後ろから声をかける者がいた。


「カナメくん。そんな怖い顔して何してるの?」


 はっとして振り返ると、そこにはクインティナとエイミィがいた。


「何って、依頼票を取ろうとしていただけですけど?」

「嘘。今にも人を殺しそうな顔をして常設の依頼票を取ろうとする人がどこにいるのよ。何があったの?」

「……口で説明するよりも自分で確認してもらった方が早いです。あそこの掲示板を見てください。」

「掲示板?行方不明者の?…………え!?嘘でしょ!?」

「どうしたんですかクインさん?」

「ケントくんが行方不明なんだって!でも、今日で5日経ってる……。これはちょっと……。」


 クインティナは両手で口を押えて固まっている。やはり2人で食事行くこともあるほどの友人が行方不明になり、少なからず衝撃を受けたようだ。


「関係無いです。僕は探しに行きます。」

「だからあなたは常設依頼に手を出そうとしていたのね。でも、あなた1人じゃダメよ。危険だわ。だからって勝手に捜索するのは絶対ダメ。もしケントくんを見つけて無事に帰還したとしても、規約違反をしたあなたは処罰されるわ。」

「だからって黙って見てろっていうんですか?」

「そんなことは言ってないわ。もっと仲間を頼りなさい。」

「……仲間?僕はソロですが?」

「そういう意味じゃないわよ。あなたの周りにも3等級がいるってことよ。」


 自分の周りの3等級を考える。といっても関りがあるのは2人だけ、ピーターとオルセンだ。だが、ピーターは既にパーティーに加入している。こういう時に助力を求めるのは困難だ。オルセンはソロだったが、頼めるような相手ではない。何より、今は入院時に落ちた筋力を取り戻す時期のはずだ。

 そうなると、結局誰にも頼めないではないか。


「助力を頼めるような人がいません。」

「いるわよ。1人だけ。」


 クインティナは襟元から傭兵のタグを引き出した。銀色のタグを手に取り、これでも見ろとでも言うようにカナメの前に突き出した。


「わたし、さっき3等級になったの。」


 目の前にあるタグにはたしかにクインティナの名前と3等級の文字が刻まれている。


「クインさん……。なんてタイミングで……。」

「これなら問題無いでしょ。条件に合致するわ。」

「いいんですか?」

「当たり前よ。ケントは私にとっても友だちなんだから。一緒に探しに行きましょ。」

「ありがとうございます。じゃあ今まで保留にしていましたが、改めて僕から言わせてください。パーティを組んでください。」

「もちろん!こちらこそよろしくね!」


 クインティナが満面の笑みで承諾し、その場で握手を交わした。今、この瞬間のクインティナは今までの中で最も輝いて見えた。控えめに言って女神のようだ。


「クインさん、本当にありがとうございます。さて、それじゃあ早速依頼を受けましょう。だからエイミィ、申し訳ないけど今日は1人で依頼を探してもらうことになっちゃったな。」

「いえ、そんなことはないですよ。そうですよね、クインさん?」

「そうね。カナメくんと私がパーティーを組んだから、自動的にエイミィちゃんもパーティーに入ったわ。」

「は?どういうこと?」

「ごめんなさいカナメさん。私たち、2日前にパーティーを組んでいたんです。」

「そういうこと。つまり、あなたは私とエイミィのパーティーに加入したという形になるわ。」

「なにそれ。聞いてないんだけど。」

「えぇ。話してないもの。2人で連携が取れるようになって、お互いの弱点を補えるようになったら、改めて2人でカナメくんにパーティー組むようお願いしようと思っていたから。」

「うわ、知らない所で結託してた。一昨日、支部で依頼を探していたのはそういうことだったのか。」

「はい。パーティー結成したんだから早速依頼を受けようってことであそこで見てました。」

「まぁ同じパーティーになったのは仕方ない。でも、エイミィには危険だから残っていてもらいたい。」

「それは嫌です。私もケントさんのことを知っていますし、お2人にとっても大切なお友達である以上、私もお手伝いしたいです。」

「私はエイミィちゃんはついてきても大丈夫だと思うわ。昨日、ワイルドボアの分厚い体を貫通させていたんだから。一撃の威力は相当よ。」

「え?エイミィにそんな筋力は無いはずなんですが。」

「でも、実際にそれをやっていたんだから間違いないわ。」

「う~ん、クインさんがそう言うなら間違いないんだろうなぁ。仕方ない。エイミィ、ダメだと分かったら引き返すから、そのつもりでいてくれ。」

「分かりました。大丈夫です。」

「それじゃ、捜索依頼、引き受けましょう。」


 カナメは掲示板へ行き捜索依頼の依頼票を1枚取り、受付へと向かった。

 受付のゼニアはカナメが依頼票を持ってきたことに文句を言おうとしたが、同時にクインティナとのパーティー申請がなされたため承諾せざるを得なかった。

クインティナとエイミィが一緒にいた理由→パーティーメンバーだから。朝イチで依頼を受けに来たらカナメを見つけたという状況です。


クインティナがタイミングよく昇級した理由→実際にはもう少し前に昇級していたのですが、タグを受け取ったのが今だったという話です。もともと、カナメの1年近く先輩なので、いつ昇級してもおかしくない状態でした。


パーティー名→考え中

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