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蒼灰の叙録〜断魔の軌跡〜  作者: 麗安導楼(れあんどろ)
第二章 悪魔憑き
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住居問題

 住居問題。突然提示されたその問題点には疑問を覚えた。今宿泊している宿に不満は無い。端から見ている限りエイミィもこの宿で人間関係ができているので何の問題も無い。むしろ気にかけてもらえているので理想的とも言える。


「クインさん、僕は特に不便は感じていませんよ。」

「私もです。居心地がいいのが問題なんでしょうか?」


 2人で異論を唱えると、そういうことではないと言わんばかりに首を振る。


「違うのよ。私が言いたいのは、パーティーメンバーの宿泊先が全員違うのは問題だってこと。」

「それの何が問題なんですか?」

「デメリットだらけよ。まず、パーティーで相談したい時、すぐに話せないでしょ?一度どこかに集まらないといけない。」

「それはそうですね。レオの件の報告も今日中にできるか不安でした。」


 今回、たまたまクインティナが呼び出してきたから良かったものの、それがなければ2人に報告できるタイミングが別々になっていた可能性が高い。普段は仕事で会った時に報告している。そのため、どうしても情報の共有が遅くなる。この前の鎧修理の件がいい例だ。


「次に、誰かが怪我をした時にサポートできない。今回だとエイミィちゃんの手当てや生活の補助をできないの。こういう時、パーティーメンバーが近くくにいれば安心でしょ?」

「たしかに腕が動かせないから体を拭くのが大変でした。服を着るのも凄く時間がかかりますし。クインさんが手伝ってくれて助かりました。」


 エイミィは怪我をしてから今までのことを思い出す。最初はしっかりやろうと思っていたが、何をするにも肩が痛く普通の生活がままならなかった。また、服を脱げば肩の固定も最初からやり直すことになる。それが面倒だった。次第に全てが億劫になり、ここ数日は食事以外で外に出ないことをいいことに着替えや掃除を後回しにしていた。それを先程クインティナに見つかり、掃除、洗髪、洗体をされた。洗濯はまた後で手伝ってもらう予定だ。


「3つ目、全員違う所にいると危険。今の私たちの状況を考えると、バラバラだといつ襲われるか分からないのよ。あれだけ人の多い所で襲ってくるくらいだからあいつにとって場所や人数は関係無いんでしょうけど、1人でいるより3人でいた方が対処できるでしょ?」


 それは間違い無い。相手は単独なのだ。3人いれば1人が怪我をしても他の2人で対処すればいい。最初の一撃さえどうにかできれば後はなんとかなる。


「4つ目。秘密の話をしにくい。」

「秘密の話なんかないじゃないですか。」

「何言ってるの?カナメくん、あなたのやろうとしていることはどうしたって悪魔絡みになるのよ?他の人に知られちゃいけない話じゃない。そういう話をするのにいちいち個室の店を探したり街の外に出て話すっていうの?緊急の話になったらどうするのよ。」

「そ、それは……。」


 否定できない。森の中で話してしまえばいいとは思っているが、不測の事態になった場合はそんな余裕は無い。夜間なら街の外には行けないのだから否が応でも街中で話すことになる。


「5つ目。」

「まだあるんですか?」

「これで最後よ。お金を貯めにくい。」

「お金、ですか?」

「そう。あくまでもこれは家を借りた場合の話だけど、毎日かかる費用が抑えられるわ。ポーションを買う費用を貯めるのも簡単よ。」

「ちょっと待ってください。それは別々に借りるってことですよね?」

「今の話聞いててそう思う?」

「思えないです。だから確認したんです。」

「もちろん同じ家で住む前提よ。これについてはまた後で聞くわ。まずは住んでる場所を統一することについて、どう思う?」


 その点についてはクインティナの言う通りだ。全員が同じ宿にいた方がいいのは間違い無い。どう考えてもその方が合理的だ。


「クインさんの言うことはもっともです。少し名残惜しいですが、宿泊先に関しては異論はありません。」

「私もそう思います。お二人と同じ所ににいた方がパーティーとして活動しやすいのはよく分かりました。ここの方々には凄く良くしてもらっているので離れたくはないですが、仕方ない気もします。」


 エイミィも賛同した。少し寂しそうではある。


「決まりね。じゃあ、次は宿屋にするか、家にするか。どっちがいいと思う?」


 クインティナはエイミィの方を見る。カナメの答えは想像できるから後回しということか?


「私はどっちでもいいです。でも、みんなが同じ家にいるのって楽しそうだなって思います。家族みたいじゃないですか。」

「家族、ね。パーティーだから家族みたいっていうのはあながち間違ってないのかな。っていうことは宿じゃなくて家ってことでいいのかしら。」

「そうなりますね。」

「分かった。カナメくんは?」

「僕は宿屋がいいです。掃除と布団の洗濯の手間が省けるので。あと、男女が同じ家に住むのは良くないと思います。」

「あなた、そういう所あるわよね。女の子がいいって言ってるのに。」

「いや、考えてみてくださいよ。ただでさえ面倒な勘違いされてイジられたり絡まれたりするのに、同じ家に住んでいたらもっと言われますよ。それに、いずれ街を出るんだから家を借りる意味なんか無いです。」

「そのことなんだけどさ。私たちが街を移動するにはエイミィちゃんが4等級になる必要があるのよ。でも、それには最低でもあと1年は必要なの。1年よ?ここで全員が同じ家に住めばその分の宿代が浮くじゃない。その浮いたお金でポーションを買えば、いざという時に役立つと思わない?」

「それはそうですが……。」

「そもそもだけどさ、すぐに街を移動する必要ある?あなたの師匠の銀騎士はこの街の近くの街道で行方不明になったのよね?それなら、この街とか周辺の町に行って調べるのが一番最初にやるべきことよね?」

「ぐっ……。」


 たしかにそうだ。以前、ギルド長のモーガンはカミュの足跡が途絶えたのはこの街の近くの街道だと言っていた。そこで激しい戦闘があったようだと。それを考えるとこの近辺で探るのが一番のように思える。


「いや、エルシャールさんを知っていたアルベルトを探せば……。」

「そのアルベルトはどこに行ったの?この半年近く名前すら聞かないわよ。選定の円卓だっけ?そんな組織があるなら、下手に他の街に行って探すよりここで探していれば組織の下っ端くらいには会えるんじゃない?そこから辿っていけばいいじゃない。」


 ぐぅの音も出ない。現状、一番カミュに近いと思われるアルベルトに接触するためには同じ組織の人間を探すのが一番だ。あいつがこの街にいたことを考えると、組織の人間がここにいてもおかしくはない。その組織の規模が分からないから雲を掴むような話だが。


「た、たしかに街を出る可能性は以前より低くなりましたが、それでも可能性が無いわけではないんです。」

「でも、近い将来というわけでもない。」

「くっ……。分かりました。その点については負けを認めます。だからといって男女が同じ家に住むということについては反対です。」

「考え方が硬いわね。エイミィちゃんも言っていたけど、家族みたいなものなんだからいいじゃないのよ。」

「似て非なるものです。」

「う〜ん。カナメくん、エイミィちゃんにポーション使ってあげたくない?」

「使ってあげたいですよ。でもまだ買えないんです。」

「みんなで家を借りれば家賃負担も減って、買えるくらいすぐ貯まるわよ。」

「そりゃそうでしょうけど。」

「同じ宿にみんなで泊まるより同じ家にいた方が安全だし、怪我した時に助け合えるわよ。」

「分かってますよ。」

「変な噂を気にしてるのなら、やめた方がいいわよ。何かあったら確実に後悔するから。」

「そうですけど……。」

「男女が同じ空間にいるのに抵抗があるなら、男女が別の部屋にいるようにすればいいのよ。そんなものはどうにでもなるわ。」

「あーもう!なんでそんなに同じ家にこだわるんですか!」

「理由はさっき言ったわよ?」

「それはパーティーとしてですよね。クインさん個人としての意見です。」

「そうね。私はみんなに怪我をしてほしくないの。誰一人として欠けてほしくない。自分が近くにいても何もできないかもしれないけど、やれることをやらずに後悔するようなことはしたくないの。」

「そんなこと言われたら、ここで反対してるのがただの我儘みたいじゃないですか。……分かりましたよ。そこまで言われたら断れないです。」

「やっと折れたわね。じゃあ、物件を探しに行きましょうか?」

「え?今からですか?」

「そうよ。時間が開いて『やっぱりやめる』って言われないようにね。」


 予想外の行動力に動揺してしまった。これにはエイミィも驚いている。もしかしたらクインティナは最初から物件を探しに行くつもりだったんだじゃないだろうか。いや、既にある程度決めてきている可能性もある。どこまで考えてきていたかは分からないが、その計画性には驚きを禁じ得なかった。

色々考えていたら昨日の更新を忘れてました。

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