11-4:偽りから生まれた真実
11-4:偽りから生まれた真実
私は、彼の、傷ついた瞳から、目を逸らさなかった。ここで目を逸らせば、私の言葉は、全てが嘘になってしまう。
「始まりは、偽りだったかもしれません。貴方の心を、利用しようとしていたことは、事実です。そのことを、お詫びいたします。本当に、申し訳ございませんでした」
私は、彼の前に、深く、深く頭を下げた。床に、私の涙が、ぽつりと、染みを作った。
「ですが」
私は、顔を上げた。私の頬を、涙が伝っている。だが、その瞳は、真っ直ぐに、彼を見つめていた。
「貴方と共に、過ごすうちに、私は、本当に、貴方を、ただの人殺しの道具から、民を守る、真の英雄にしたいと、心の底から、願うようになりました。慈愛院で、子供たちを守る、貴方の姿を見て。軍営で、兵士たちのために、泥にまみれる、貴方の姿を見て。そして、私のために、我を忘れて、怒ってくれた、貴方の姿を見て。私の心は、変わったのです。始まりは、計略だったかもしれない。でも、そこから生まれた、この想いに、嘘は、一切ございません」
私は、自分の、転生者としての孤独、この世界を救いたいという、途方もない願い、そして、彼という存在が、自分にとって、いかに、かけがえのない、大切なものであるかを、初めて、飾らない、ありのままの言葉で、語った。
それは、もはや、計算された、聖女の言葉ではなかった。
一人の、不器用な女が、一人の、不器用な男に、必死に、その心を伝えようとする、ただの、告白だった。
呂布は、私の告白を、ただ、黙って聞いていた。彼の心の中で、何が起こっているのか、私には、分からなかった。彼は、私の言葉を、信じてくれるのか。それとも、また新たな、巧妙な計略だと、断じるのか。
彼の沈黙が、私の心を、締め付けた。もし、ここで、彼に拒絶されたら……。
「……なぜだ」
長い沈黙の後、彼が、ようやく、絞り出したのは、その一言だった。
「なぜ、今、そのことを、話す。黙っていれば、俺は、何も知らずに、お前のための、都合の良い剣であり続けたはずだ。なぜ、わざわざ、俺を傷つけるようなことを……」
「それは、貴方に、選んでほしかったからです」
私は、即答した。
「誰かに、操られるのではなく。私に、騙されるのでもなく。貴方自身の、意志で、明日、その戟を、振るってほしかったから。それが、私が、貴方を、英雄だと、信じている、証です」
やがて、私は、彼の前に、一つの選択肢を、提示した。
「明日、董卓を討つのは、私の、個人的な復讐のためでは、ございません。貴方を騙した、王允様の、野心のためでもありません。そして、奪われた許嫁を取り戻すためという、ちっぽけな私怨のためでも、断じてありません」
私は、彼の前に、静かに跪いた。




