最終回
彫刻も絵も売れて、あれほど欲しかった冨と評価を手にしたが、エドアルドが喜ぶことはなかった。何にも満たされず、それからは人物すら描くことができず、視力がなくなり完全な盲目になるまで、ただ柳だけを描き続けた。
日本に向かう欧州航路の上で、ソノは海を眺めていた。昨日までの天候の悪さがなかったことのように、甲板の日差しは暖かく、心をほぐしてくれた。海上は穏やかで波もなく、水平線がくっきりと見えた。
巴里を後にしてしばらく経っても、ソノはパメラの愛を考えていた。愛が苦しめるのではなく、嫉妬や感情や思考が苦しめる。愛には苦しみも悲しみも何もない。愛でしかない。善悪や深浅もない。ただ愛がある。愛するから苦しむのではない。愛は誰も苦しめない。
海の底が愛である。波立つのは表面だけ。海面に漂えば穏やかな太陽は優しいが、厳しい嵐もくる。海の底へ。波のない深い海へ。
ソノは哀しみを持ってパメラを思い出したが、自分の愛はきっと海の底にあると信じられた。パメラに出会えたから気付けたのかもしれない。彼女が気付くべきことだったのかもしれない。いや、きっと誰もが海の底にいればいいのだ。自分の思考に苦しめられているのを、愛だと取り違えたくはない。真の愛を持っていたい。
優しい風が全身を吹き抜け、ソノは頬を温める日差しを感じながら大きく息を吸った。




