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美術サークルの教室にはすでに6人の女生徒たちが、生成り色のオーガンジーや薄い桜色のタフタのドレスで、配置された席に着き小さな談笑を交わしている。
春色のまばゆい教室に入ってきたエドアルドは、挨拶をしようと生徒を見渡す。最後列に座る生徒の瞳に、彼の心は行き場をなくして吸い込まれた。
昨夜寝た女の名前すら憶えていないエドアルドが、慌てて名前だけの簡単な自己紹介を済ませ、落ち着きを取り戻すように生徒たちの名前を順に聞いていった。
彼女の名前はJoelleジョエル。長く濃い睫毛の中に青緑の硝子玉のような瞳が何処までも深くある。ざっくりとまとめた暗い灰みのある琥珀の色をした長い髪は、肌の白さを際立たせた。その細い首が、瑠璃色のビロードのドレスの襟から輝きを覗かせた。エドアルドはジョエルをモデルに頭の中で彫刻を作り始めていた。
講義が終わると、エドアルドは他の生徒に構いもせず、ジョエルに真っ先に話しかけた。
「モデルになってくれないか。」
ジョエルは、周りも気にせず真っ直ぐに突進してくるエドアルドを避ける間もなかった。
「・・私・・」
エドアルドの魂がジョエルの瞳から彼女の心に侵入したのか、ジョエルの瞳がエドアルドの魂を見つけたのか、二人の間に不可視の繋がりが築かれたことに互いが気付いた。そこに時間は存在しなかった。
「僕のアトリエがすぐ近くなんだ。一緒に来て。」
エドアルドは返事もろくに聞かずにジョエルの白い細い手を取って、強引に階段を駆け下りた。ジョエルは自分の中から微笑みが湧いてくるのに説明がつけられなかった。しかし確かに心の底に小さな喜びの感情が湧いて出てくるようだ。落雷に当たったように人生に選ばれたジョエルは、エドアルドに向かって加速していった。




