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皮肉なことにエドアルドの作品は、ジョエルの自殺が噂になって売れるようになった。今まで見向きもしなかった画商たちが、悲劇や悲恋の物語がついた作品を好んで買って行った。それまでに作ったジョエルの彫刻や絵画が、数か月のうちにエドアルドの手元から消えていった。エドアルドは頭の中のジョエルをも売ってしまいたい。いつまでもジョエルの美しい瞳は消えずに彼を見つめる。
ジョエルが亡くなってから、ジョエルをモデルにした注文も殺到したが、エドアルドはもう描けなかった。彼女の絵を描こうとしても、その瞳をどうしても描くことができない。顔のない婦人像の胸に、ジョエルの好きだった真っ赤なアネモネの花をつけてやった。それが最後のジョエルの絵となった。
巴里にいたたまれなくなったエドアルドは郊外に家を買った。それほど大きな家ではないが、広い庭がエドアルドは気に入っていた。三つの池があり、ひとつはとても大きく小さな橋が架かっている。手入れの行き届いた庭というより、野生のままのように木々が茂り、花が咲き乱れている。
エドアルドは思考から逃げるために、絵を描くことに没頭した。毎朝庭に出ては日が暮れるまで、目の前の草木を描き続けた。
姉を死に導き、パメラを廃人にし、ジョエルの命を奪い、子供までも摘んでしまった。自分が邪悪な生き物としか思えない。しかしただ愛しただけなのだ。その時、目の前のその瞬間を愛したのだ。そこになんの偽りもない。自分の情熱を拒絶できない。拒絶したなら、自分が自分である理由がどこにあるというのだろう。
エドアルドがエドアルドである根拠は、その瞬間のその情熱でしかないのだ。自分からは逃げられない。エドアルドは終わることのない自問自答を絶えず繰り返した。




