表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/51

46

数日は危険な状態が続いたが、十日もするとエドアルドの容体は安定して、はっきりと意識も取り戻した。安堵したフィリーチェには、ジョエルの死を伝えるという一番重い仕事が残されていた。


「エドアルド、ジョエルが・・」


エドアルドも体力を取り戻しつつあり、もう伝えなければと意を決して、フィリーチェが話し出した。


「生まれたの?男?女?」


フィリーチェの話を聞こうと、エドアルドは病院のベッドで半身を起こそうとした。子供の誕生のことに決まっている。


「・・・いえ・・・違うの。あの日・・あなたが倒れた日・・」


フィリーチェはエドアルドの背中を支えながら、腰に枕がうまく当たって体を起こせるようにしてやった。


「あぁ、ジョエルがいたような気がするんだ。錯覚かもしれないけど。」

「・・そうなの、ジョエルはあなたのところに行ったのよ。でもあなたが血を吐いて倒れているのを見て・・・死んでしまったと・・・きっと誤解したんだと思う。」

「死んでないよ。こうして生きているじゃないか。」


エドアルドには話が見えなかった。


「えぇ・・・あなたは意識がなくなっていて・・・彼女自身も弱っていたし・・」


フィリーチェは俯いたまま、エドアルドを真っ直ぐに見ることができない。


「なんだよ、どうしたんだ。何があったんだよ。」


いつもと違うフィリーチェの様子が、エドアルドにはもどかしい。


「・・・多分、あなたが死んでしまったと誤解して・・・窓から飛び降りてしまったの。」

「えっ?!怪我したの?!子供は大丈夫なのか?!」

「・・・」


フィリーチェは、ただ首を横に振った。言葉では出せなかった。


エドアルドの鳩尾に重い鉛が弾けて体を硬直させた。首筋も硬くなり、温かい血は頭に届かない。ジョエルだけがエドアルドの頭を埋め尽くした。ジョエルが死んだ?直ぐには信じられない。ジョエルがこの世界から、自分から消えた。


これも自分の罪なのか。纏わりついてくる死は自分の力では拭い去ることはできない。用心することも回避することもできない。必ずやってくる。ジョエルを愛していた。俺が殺したのか。俺の罪なのか。逃げ場所はない。逃げても逃げても、死が追いかけてくる。


子供を失ったことを悲しむ自分が、エドアルドには不可解だった。ジョエルの子供を望んでいたのか。妊娠を知って嬉しいと思いはしなかった。だから死んだのか。失ったから悲しいのか。エドアルドの頭の中の乱雑な思考は止むことなく続いた。過去を掘り返して解析し、様々な意味をつけてみた。思考の分析はエドアルドを断罪する。しかし責めることで、救われるようでもあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ