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血だらけで倒れているエドアルドが、フィリーチェの目に飛び込んだ。咄嗟に駆け寄って口に手を当ててみる。僅かではあるが口から弱い微かな息が手に当たる。生きている!フィリーチェはそう確信して外に助けを求めに走った。階下の住人に医者を呼ぶように頼んで、フィリーチェはまたアトリエのエドアルドの所に戻った。


「エドアルド、もう大丈夫よ。もう少し頑張って。すぐにお医者様が来て下さるから。」


意識のないエドアルドに声を掛けながら、フィリーチェは彼の体をブランケットで包み頭の下に枕を置いた。


開け放たれた窓から降り出した激しい雨が部屋に打ち込んでいる。フィリーチェは急いで閉めに行くと、家の前の道路の人だかりが見えた。野次馬の輪の中に倒れている白いナイトドレスの女性がいる。


「ジョエル・・・」


フィリーチェの呟きとも囁きとも取れる小さな声は、重く彼女の胸に落ちた。ジョエルの細い脚はあらぬ方向に曲がり、頭からは大量の血が流れ出していた。嵐のような一時の巴里の雨にも、周りにはまだ幾重に人が群がっている。


ジョエルの白い木綿のドレスは雨に濡れて彼女の体を浮かび上がらせている。雨が降るごとに赤い血は白いドレスから離れ、頭から地面に溢れる赤い血は、道に流れて薄められていく。フィリーチェは膝から力が抜けて立っていられず、その場に座り込んだ。


お腹の子供もきっと死んでしまっただろう。少しして頭が動き出すとフィリーチェはそう思った。きっとエドアルドが死んでしまったと勘違いして、身を投げたに違いない。どうして、どうして、そんな風に彼を愛してしまったのだろう。


「アルバン!アルバン!」


フィリーチェは出したことのない大きな声でアルバンを呼んだ。血まみれのエドアルドに怯えながら、アルバンは母に駆け寄って抱きついた。フィリーチェは、首に巻き付くアルバンの小さな腕の力を愛した。アルバンの柔らかく滑らかな頬の感触を慈しんだ。アルバンの髪の匂いを吸い込んで安堵した。そしてジョエルの理解しがたい愛に、悲しみだけを募らせた。


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