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買い物を終えたフィリーチェは、右手で籠を持ち、左手でアルバンの手を取り帰途に着いた。
「雲が出て来たわね。ちょっと急ぎましょう。」
空が暗くなり始め、雨を心配したフィリーチェはアルバンにそう言うと、少し速足で歩き始めた。
「パパはいつ来るの?」
「えっ?」
「パパの所に行くの?」
「・・・そうね、もう少ししたらね。」
予期せぬアルバンの問いに、フィリーチェは小さくて大きな嘘をついた。アルフォンソからは何も連絡はなく、置き捨てられた母子であることをアルバンには伝えられない。フィリーチェには過去に追いやれる夫であっても、アルバンには愛して信じる父である。例え血の繋がりによって愛されていなくとも、アルバンには父と信ずる男である。
しかしフィリーチェは信じていた。自分のこの愛こそがアルバンにあれば、何も怖れることはない。何があろうともアルバンは幸せに生きていかれるのだ。フィリーチェはアルバンの手を強く握って、雨雲に追いつかれないように家に急いだ。
家に近づくと、人だかりができているのに遠くから気が付いた。自ずとさらに足早に家に急いだが、アルバンを連れて人だかりをかき分けて中を見ることはできず、何が起きたのかわからぬまま家の中に入った。途端に外では激し雨が道に打ち付け、街中に音を響かせ始めた。
階段を上がり、まずジョエルのベッドを確認するが、彼女がいない。フィリーチェは慌ててアトリエまで駆け上がった。
「エドアルド!!」




