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ジョエルは真剣に質問したが、フィリーチェは眉を軽く上げて、交わすように答えた。
「どうかしらね。もちろん嫌いではないけど・・人を愛するってどういうことかしら。私にはわからないわ。」
フィリーチェは、経済力のある夫を尊敬し結婚した。家柄はフィリーチェとは比べ物にならなかったが、フィリーチェの両親はアルフォンソが実業家として成功し、かなりな財力があることで結婚を許した。
フィリーチェの結婚は、やがて時間によって愛に変えられていったのだろうか。愛ではなく当然あるものに対しての愛着だろうか。夫への愛を感じられないから、自分の前に現れた美しいエドアルドを愛したのだろうか。エドアルドを愛していたのだろうか。秘密の興奮に酔っただけだったのだろうか。
フィリーチェには区別がつけられなかった。区別をする必要すら感じない。突き詰めれば突き詰めるほど、無駄なことに思える。愛などというものに翻弄されるより、フィリーチェはその瞬間の自分を生きたかった。それが彼女の生きる方法だった。
「でも愛し合ってアルバンが生まれたんでしょ?」
アルバンの誕生は、故意ではなく、企図できない自然の法則の中に組み込まれていた出来事である。しかしそれは、フィリーチェを上辺でなく根底から掻き起こしたようだった。息子への愛は彼女にとって唯一の愛だった。
「アルバンは私の子供よ。私にはアルバンがすべてなの・・・あなたも子供が生まれればわかるわ、きっと。」
揺るがない愛の深さが、フィリーチェを動かしているようにジョエルには見えた。自分がエドアルドへの愛で生きているように。ジョエルはフィリーチェがエドアルドを自分が愛するほどには愛していないと奥底で確信した。フィリーチェにエドアルドを奪われることはないのではないかと思っていたジョエルにとってこの上ない安堵であり、喜びである。




