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自室に辿り着くや絵の具箱に手が伸びた。

阿片パイプでは連れて行かれないところに行きたい。

緑の絵の具の蓋を開ける。

エドアルドが好きだった私の緑。


パメラはエドアルドが自分から盗っていった緑を手にした。

私があげた緑。私があげた愛。

緑の顔料にはヒ素が入っていると聞いたことがある。

猛毒が何もない世界に連れて行ってくれる。


絵の具の先を口に含み一気に握り潰す。

冷たく柔らかい液体が舌の上に広がり、黴のような薬品の匂いが鼻腔から抜けて行く。

がらんどうの心の中を緑色で塗り固める。

猛毒の愛を飲み込む。

泣き続けた喉に緑が流れて行く。

むせ返りながら緑を飲み込む。

泣いて泣いて力尽きて、緑に落ちていく。


何度留守でもソノは時間を見つけてはパメラの部屋を訪ねていた。後で考えればその日は虫の知らせだったのかもしれない。ドアを叩いても返事のない部屋には鍵もかけられていなかった。


「パメラ!パメラ!」


豊かな黒髪は床に広がり、韓紅のドレスが鮮やかに横たわる。

パメラの青白い顔には口から濃い緑の液体が溢れて、その緑は頬を伝い耳から首まで染めている。

吐しゃ物と緑にまみれた彼女の肩を揺さぶるが、目覚める気配がない。ソノは慌てて医者を呼び、パメラを病院に運んだ。


かなり弱っていたが、自殺は未遂に終わった。幸運だったのかどうかソノには答えがわからなかった。完全に閉ざされた心は二度と開かれることはなく、パメラは精神科に移送されることになった。


クラロッシに連絡がいったせいか、パメラが阿片をやり過ぎて死んだとか、気が狂って街を彷徨っているところを病院に連れて行かれたとか、あることないこと噂された。ソノは噂を耳にする度に苛立ちを飲み込んだが、事実をもって噂を訂正しようとはしなかった。事実が一番惨いものだったから。


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