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妊娠を告げられていたエドアルドの選択は、彼に自分を真っ当な人間だと思わせた。パメラの愛を受け取るのではなく、自身を常識の世界で正当化するための選択である。


「・・・あんな女どこがいいのよ!絵の話も芸術の話もできないじゃない。金目当てなんでしょ!・・・愛してなんかないんだわ。・・・私を愛したように愛しているの?・・・私のことは愛してないの?・・・嘘なの?・・嫌よぉ!!!」


エドアルドの選択した言葉はパメラを打ち抜いた。選ばれなかった自分が塵にしか思えない。エドアルドの傍らにはジョエルがいる。自分の居場所はない。愛している心は砕けて床に落ちる。粉々になって元には戻らない。


不用意なエドアルドの言葉に絶叫して泣きわめくパメラを彼は抱きかかえようとするが、暴れる両手足を抑えつけることができない。パメラの顔は興奮で頬が紅く染まっていく。留まることのない涙が紅く染まった頬を幾筋も濡らす。ジョエルは壁際に立ち竦んで硬直したままパメラの狂った熱情に当たっていた。


「あぁぁ!!あぁ!」


パメラの絶叫が部屋に響き渡り、彼女の声帯から血が流れる。ありったけの声が屋根裏の横木から床から材木の隙間に差し込んでいく。ジョエルは両手で耳をふさぎ床に小さくなって座り込んだ。一つしかない席を勝ち取った誇らしさなど感じなかった。ただパメラの情念が熱く砕け散って降り注ぐのをよけられずに蹲る。恐怖だけが彼女にあった。


エドアルドの制止を振り切って、何も持たずパメラは外に出て走り続けた。エドアルドに捨てられたと思考がパメラをなじる。お前は選ばれないと苛む。私は愛されない。思考に小突き回されて、心臓の鼓動が体を切り裂いてくれはしまいかと願う。


もはや理性は機能せず、通い慣れた道を無意識に歩き自室に辿り着く。空洞になった体が満たされることはないと確信する。愛したエドアルドも、彼との時間も、すべてがパメラを苦しめる。楽しかった思い出すらパメラを斬りつける。幸せの源だった彼への愛が、今パメラを痛めつける。


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