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寂しい別れをしてからクラロッシに来なくなったパメラが気掛かりで、ソノはたまにパメラの家を訪ねてみた。が、何度尋ねてもいつも留守で彼女には会えなかった。学校も忙しくソノの心配は日々の生活に紛れていったが、パメラを忘れることはなかった。
パメラは嫉妬という化け物と絶えず戦っていた。化け物に全身を食われて、自らが化け物に変わっていく。エドアルドを思うとその脇には必ずジョエルが立っている。排除できない黒い妬ましさに魂を抜かれて、心は疲弊していく。痛々しく激しく彼女の内から張り巡らされていく棘は自分で自分を傷つける。
愛することは苦しむことに変化していた。ジョエルがいる限り赤黒い直情が心から消え去ることはなく、パメラの苦痛はやがて心を埋め尽くし、言葉に形を変えて外に溢れ出ようとしていた。
「いつジョエルと別れるの?」
自分でも無意識に口をついた言葉に、パメラは驚いた。心が体にそうさせたようだった。
「もう限界だわ。目障りなのよ!あの女といるのなら、私は一緒にいられない。あの女をここから追い出してよ!」
パメラの頭頂には全身の血が集まって顔は赤く高揚している。心はエドアルドへの愛とジョエルへの嫉妬で破れそうである。愛だけであれば破れなかったかもしれない。
「なぜこのままじゃダメなんだ?二人で楽しく過ごせるじゃないか。何が不満なんだ?」
「二人?あなたと私と二人だけではないでしょ!私が二番目なんて許せない!」
「なんだよ二番って?競争じゃないだろう?」
「あなたを他の女とずっと共有しているなんて嫌なのよ!一番じゃなきゃ嫌なの!」
「順番なんてつけたことないよ。」
「じゃあつけてよ。」
「つけられるわけないだろう!」
「あなたが決めて。どっちか選べばいいわ!!それとも私と結婚して、あの女を愛人にすればいい。」
「無理だよ。いい加減にしろ!」
エドアルドにはパメラの嫉妬など煙草の燃え滓ほどの意味も持たなかった。煩わしい厄介事でしかない。それが愛の変化したものだとは思えない。騒ぎ立てるパメラを抑えて手を挙げようとすると、彼女は涙の頬をわざとエドアルドが殴れるように向けてきた。エドアルドは腕の力がふっと抜けていくのを感じた。この無意味な闘争に嫌気が差す。
「・・・ジョエルと暮らすよ。」




