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「こんにちは。パメラの友だちで・・・エドアルドとも同じ学校で・・・」
ソノは刺すような女の視線をかわすために、急いで自己紹介をしながら階段を降りた。と同時にその顔に見覚えがあるとも思った。そうだ、彫刻の女性の頭部はこの人だ。その他の絵も彫刻もこの人である。それに気づいた途端にアトリエとパメラの裏にあった仕掛けを読み取った。
「こんにちは。」
ジョエルはソノが敵ではないと直感したのか、小さな安堵を持って挨拶した。
「ソノって言います。日本から来ました。」
「そうですか、遠くから。私はジョエルといいます。」
ジョエルは少しはにかんだ少女のような顔で微笑んで返す。ソノはその瞳の深い美しさに魅了された。
「ここに住んでいるんですか?」
「えぇ、エドアルドと。」
「・・そうですか。・・私、外套を取りにきたんです。」
「あぁこれかしら?」
ジョエルは壁に掛かった外套に手を伸ばし手鉤から外すと、ソノに丁寧に手渡した。
「ありがとう。」
短いやり取りからでも、ソノはジョエルの教養のようなものを感じた。
そして日本人に近い性質を持っていると分析した。内心の感情を不用意に表現することはなく、物静かで従順、礼儀正しい。ジョエルは静かにエドアルドを愛している。静かだが確固として揺るぎない。
パメラはジョエルに勝てないだろう。ソノは直感した。自分の激しさを制御できないパメラは、きっと壊れるまで燃え続けるしかできない。その炎は内側に収まるほど小さくもないし、制御できるほど予測可能でもない。ソノの心配はさらに大きくなった。




