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6.デメテルの気持ち

神さまだって誰かを好きになることあるよね?

 神さまも将来のことを悩むんだね。ますます人間っぽいなぁ。それにしても、デメテルは豊穣の女神さまだったのか。もしかしたら、ピッタリかもね。恰好は少し派手だけど、朗らかで両親思いの優しい女の子だもんな。

 それに、真面目で素直な性格してるし、きっと向いてると思う。将来は凄い女神さまになったりして!?……あ、まだポーズ決めてる。それって撮影タイムのつもりかな?


「で、デメテル……とっても綺麗だよ。目に焼き付いて離れないよ(たわわなメロンが)。でも、もう十分、心の奥深くに刻んだからね?そろそろ、ポーズ解除しよっか」

「そうね……流星。たくさん目に焼き付けた?私の……」


 !?……え?


「え……え?な、なにを……?なにが……?」

「男の人ってそういうものなんでしょう?こないだ買った日本のファッション雑誌に書いてあったわよ?『せくしーぽーずで彼の視線を独り占め!』って」


 あ、あれ、セクシーポーズのつもりだったのか。まあ、一部はとってもセクシーだったけどさ。なんてそんなこと思ってる場合じゃない!!見てたのバレてたんだ……。


「ご、ご、めん!つい、その……すごく綺麗で、おっきくて柔らかそうだったしって、僕は何を言ってるんだ!?あ、ち、ちがくて……つまり、あ……と、とにかく、ごめん!!」


 あ~……どうしよう……?デメテルは僕の魂を助けてくれた恩人の神さまなのに、そんな目で見ちゃうなんて。きっと怒ってるよね……?


「……ふふっ!……あははっ!!だ~いじょぶよ、私、全然怒ってないから。もうっ!流星ったら慌てすぎよ?そんなことで怒るわけないわよ。だって、今のって流星が私を異性として意識してくれたってことでしょう?」

「え?お、怒ってないの??」

「えぇ、もちろん!ねえ、もしかして、流星って私に天界(ここ)へ呼んでもらったって恩を感じてるんじゃない?でも、それはさっき話したように、むしろ、私が流星を助けるのを間に合わなかったからなのよ?だから、全然、恩に感じることなんてないわ。それこそ、私の方が申し訳なく感じてるんだから……」

「デメテル……デメテルは何も悪くないよ。僕が天界にいる理由は、まあそうかも知れないけど、魂が消滅するところだったって言ってたじゃないか。だから、呼んだって。そのことも感謝してるし、一緒に天界にいられることになってさ、僕、いま楽しいんだ。デメテルと一緒にいられることが、すごく幸せに感じてるよ」


 そうだよ。彼女は全然、悪くない。一緒にいられるのはとっても嬉しいけど、これからはなるべく見ないようにしなくちゃ……できるかなぁ??


「流星、ありがとう。私ね、流星が私に恩を感じてるから、天界(ここ)にいてくれるのかなって思ってたの。だから、さっきのはワザとなの。ごめんね、恥ずかしかったけど、少しでも異性として見てほしくて……」


 なんですと!?


「え……そ、そうだったの??ありがとね。確かにデメテルは綺麗だし、心が優しくて素敵な女性だなって思うよ。まだ出会ったばかりだけど、不思議と心が落ち着くしさ。ずっと一緒にいられたらどんなにいいかなって思うよ」


 偽りのない本心だった。でも――


「でも……今はまだ、正直、この気持ちが救ってくれた恩返しをしたいって思いなのか、それとも、デメテルに対する好意なのか、自分でもよく分からないんだ……ごめん、自分の心が自分で分からないなんて変だよね」

「そんなことないわ!私だって、流星を天界(ここ)に呼んじゃってこの先、どうなるかなんて深く考えてなかった。ただ、あなたの魂が消滅しちゃうかも!って思ったら無性に悲しくて……無我夢中だったの。私だって、あの時は自分の心が分からなかったんだから。でもね――」


 彼女は少し(うつむ)いて照れたように微笑んだ。そして、再び顔を上げ、僕の目を見つめながら言った。


「流星の優しさに触れて、あぁ、この人の魂を救えて心の底から良かったって感じたの。初めは妹を救おうとしてくれた流星のために何かしてあげたいなって思ってたわ。けど……」

「けど?」

「けどね、いまはそんなこと関係なく、私自身が流星を大切にしたいなって思ってるの。本当よ?まだ流星の心が定まってなくてもいいの。だって、私たち、まだ出会ったばかりだもんね。これからもっと仲良くなりましょ?」


 デメテル……。


「でも、さっき、私のことすごい見てたわよね?それに、女神さまじゃなくて『女性』って思ってくれてるんでしょう?」


 そう言うと僕の手を、その透き通るような白いしなやかな両の手でしっかりと握りしめた。


「ふふっ、今はそれで充分よ。近いうちにぜ~ったい!流星の気持ちが恩じゃないって分からせてあげるんだから!覚悟してね?」

「ありがとう、デメテル。お手柔らかにね……?」


 僕たちは手を握ったまま笑い合った。彼女の気持ちが嬉しかった。握り合った手の温もりのように心地よく、心がポカポカしてきた。こんな僕でも居場所を作ってくれて、ほんと感謝しかないよ。

 デメテルの気持ちにきちんと向き合おう。真剣に考えよう。近いうちにきっと、答えを出すんだ。


「ちゃんと答えを出すから待っててくれる?ほんとにごめんね。天界で目が覚めてから驚きの連続だったし、まだ気持ちの整理がつかないんだ」

「うん、待ってる!いい?豊穣の神はね、と~~~っても!一途なのよ?待ってるわ」


 彼女はこの上なく、優しく穏やかに、そして少し頬を染めて笑った。ありがとう、デメテル。ほんとにありがとう。デメテルと出会えて本当に良かったよ。

 照れた微笑みを浮かべながら優しい目をして僕を見る彼女は、とても可憐だった。

 

 僕は……彼女の側にいてもいいのかな。人と神さまって結ばれるんだろうか……?

いかがだったでしょうか?

次回はデメテルの妹、アルテミスについてのお話です。

ぜひ、次回も読んで下さるよう、よろしくお願いします。

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