47.流れ星と月と、芽生える気持ち(前編)
不思議な女性との出会いは会ったけど、それはさておき、
アルテミスとの楽しい時間の始まりです☆
アルテミスとのデートが始まり、神さまの街へ戻ってきた僕たち。そこで、彼女が見知らぬ女性とぶつかってしまった。その女性とは初めてお会いするし、おそらく神さまだと思うんだけど、なんかどこかで見たことあるんだよな。
でも、天界には来たばっかりだし、知り合いなんてデメテルたち以外にいるはずもない。とっても綺麗で明るそうな性格の神さまだった。不思議なことを言ってたのが気になるけど。僕とアルテミスを見て、デートと言ってたし、また後でね、とも。あれはどういう意味なんだろう?
「お兄ちゃ~んっ!早く~!こっちこっち~!!」
さっきの女性のことを考えていると、小さな淑女のはしゃぐ声が僕を呼ぶ。そうだ!いまはせっかくのデートなんだから、アルテミスに集中しなきゃね!
「ごめんごめん。いま行くよ!」
待ちきれないと言った表情でこっちに駆け寄ってくる彼女。
「もぅ、おっそ~い!……楽しいね、お兄ちゃん!」
「そ、そう?まだ何もやってないけど……」
「お兄ちゃんと二人っきりでいることが楽しいんだよ~!もう少しオトメゴコロを勉強してよね?」
ふふっ、と弾けるような笑みを見せ、手を繋いでぐいぐいと引っ張っていく。乙女心か。一番難しい分野だな。ま、とにかくいまはアルテミスと楽しもう。そうすれば、乙女心も少しは分かってくるかもね。そんなことを思いつつ、彼女に引っ張られるまま後をついていった。
◇◇◇
「ここは午前中来た通りとは違うところ?」
「うん!あの通りはこの街で一番おっきいとこなんだけど、ここもそこそこおっきいんだよ!」
「ほんとだね。そこそこ大きいね」
へぇ~!確かに大通りからひとつ中に入ったような感じだけど、それでも、店が沢山、並んでるなぁ。食べ物を売ってる店だけじゃなくて、洋服やアクセサリーの店も充実してそうだ。
「そこそこ大きな通りの中で、一番美味い串焼きはうちだぜ?よっ!嬢ちゃんに兄ちゃん、良かったら味見でもどうだい?」
「「えっ?」」
通りを見回していると、急に後ろから声を掛けられ反射的に振り返る。
「大極楽鳥のいいのが入ってるぜ?」
威勢の良い声といかつい顔、そして随分と体格の良いおじさんの天使さま。話し掛けてきたのはどうやら肉屋さんのようだ。焼いてるのとは別に、精肉も取り扱ってるのか。
「あ、こ、こんにちは。さっきはすみません。失礼なことを……」
「おじさん、ごめんなさい」
そこそこなんて表現が気に障ったのかな?そう思い、慌てて頭を下げる僕と、そんな僕を見てアルテミスも一緒に頭を下げる。
「ん?なんで謝ってんだ?あー!そうかそうか!そこそこか!」
そう言って、大笑いするおじさん。
「うん!そこそこだよ~!そこそこ~!」
なぜかアルテミスが連呼し始めて、おじさんと二人で大笑い。え!?
「はぁ~!おまえさんたち、面白いなぁ!あれ?そういえば、そっちの嬢ちゃんはもしかして、デメテルちゃんの妹さんかい?」
「うん、そうだよ~。おじさん、わたしのこと知ってるの?」
「おう!嬢ちゃんはまだ小さかったから覚えてないかも知れねえなぁ。お姉ちゃんに連れられて、前はよくうちに来てたんだぜ?たぶん、あの時は嬢ちゃんが幼稚園くらいの頃か?」
「へ~!そうなの?そういえば、わたし、この串焼きの匂い知ってる!お姉様がよく買ってきてくれたやつだもん。ここのお店だったんだね!」
「あの、天使さま?デメテルのこと――」
「天使様だぁ!?あっはっはっはっ!あんた、最高に面白いなー!」
突然、笑い出す天使様。どうしたんだろう??きょとんとしたアルテミスと顔を見合わせる。
「よしとくれよ。ここいらじゃ、『天使の本気』のゲンっていやぁ、誰もが思い浮かべる程、ちったぁ名が知れてると思うぜ」
ゲンさまかぁ!なんだかピッタリな名前だな。いかついと思ってた顔も笑うと妙に人懐っこそうだし、ちっても怖くないや。ダメだな、僕って。先入観でしか見れないなんて。
「失礼しました。ゲンさま。それで――」
僕の言葉にまたも吹き出す彼。アルテミスも僕を真似て、ゲン様~!と元気よく声を掛け、それが余計に大笑いさせていた。
「はぁっはぁっ……!あー笑った笑った!って、バカ野郎!笑い殺す気かっ!アンタもそこの嬢ちゃんも相当な笑いの神の加護を受けてるな?なーにが、ゲン様だよ」
言うなり鼻歌交じりに笑いながら、焼きあがったばかりの串焼きを数本取り出し、袋に入れて僕たちへと差し出す。
「え?あ、あの……?」
「ほら、持っていきなって。金はいらねえよ。こんなに大笑いしたのは、サリエルの……うちの娘なんだが、それの結婚式以来だ。こんなに気分がいいのは久しぶりだぜ。さぁ、持ってきな!美味かったらまた来て、今度は買ってってくれよ?」
「え~!いいの?おじさん!やった~!」
「おう!お姉ちゃんにもまた顔を出す様に伝えといてくれよな。それから、おれのことはゲンさんって呼んでくれや。ゲン様だなんて、背中がかゆくならぁ!」
「はい、ありがとうございます。また、絶対に伺います!」
「ゲンさ~ん!ばいば~い!」
僕とアルテミスの言葉に、笑顔で手を振ってくれるゲンさん。最初は怖そうだったけど、とっても気持ちの良い方だったな。ゲンさん、デメテルのこと知ってるんだね。戻ったら、ここの店のこと聞いてみようかな。
◇◇◇
頂いた串焼きをとりえず亜空間にしまい、再び歩き始める。
「面白い、おじさんだったね!」
「そうだね。あそこの串焼き、よく食べてたんだ?」
「うん、そ~だよ~!甘辛いタレもおいしいし、お肉も柔らかくってとってもおいしいの!」
そうなんだ。それは楽しみだな!さっき、焼いてるとこ見てたけど、きちんと肉の部位ごとにカットしてあったし、串に刺さってる肉の大きさも逆台形になってた。それに、たぶん備長炭みたいなやつで焼いてたっぽいし、つくねみたいなものも見えた。
あのゲンさんって、かなり料理の腕が立つんじゃないかなぁ?天使さまや神さまの中にもきっと、僕より料理が上手な方はいそうな感じがする。フォルもレーアさまも、練習したって言ってたし、探せば食事改善に協力してくれる方々が見つかるかも知れないな。
「そっか。それじゃあ、串焼きはまた後で食べようね。いまはさっき食べたばっかりだし」
「うん!」
「このあと、どうしよっか?」
「う~んとねぇ、じゃあ、気になってるお店があるんだけど、そこ行ってもいい?」
「もちろん!」
アルテミスに連れられて歩くこと数分、僕たちはとあるアクセサリーショップに辿り着いた。可愛らしい髪留めや綺麗なブレスレットなどが店外の陳列棚、それから、店内にも所狭しと並べられている。そんな店だからか、はやり多くの女性で賑わっていた。天使さまと神さま、どちらも入れ乱れており結構な繁盛振りが伺える。
「凄い人気なんだね。神さまたちもやっぱり、女の子なんだなぁ」
「ここね、お姉様やフォル姉様に前に連れてきてもらったんだ~。とぉっても可愛いのがい~~~~っぱい!あるんだよ?」
嬉しそうに話す彼女は僕の手を引っ張って、店内へと進んでいった。
「ねぇねぇ!こないだ言ってたのってこれ!?マジ可愛いんだけどー!」
「買っちゃう!買っちゃうおっか!」
「あ!見てみて~!これ、値下げしてる!?これならギリ買えるわっ!!」
「これ、欲しーいっ!マジやばっ!好きピだわっ!」
「マ!?これ!?ヤバたにえんじゃん!」
「可愛すぎじゃね!?あ~し、もう、ぴえん超えてぱおんだわ」
中は女の子たちでいっぱいでひしめき合っていた。僕、あんまりこういう店来たことないけど、なんだかものすっごい既視感。日本の女子中高生の会話みたい。聞いたことのある単語がちらほらあるけど、意味が半分くらい分からないんですけど……皆、たぶん、僕よりかなり年上なんだろうけど、これが天界の若者パワーなんだね!
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「う、うん。平気だよ。それで、どんなのが見たいの?」
「ん~とねぇ、髪をこうやって後ろでまとめる輪っかみたいなのと、お姉様がしてるようなネックレスが見たいんだ~」
「デメテルがしてるやつ……あぁ、あのハートのやつか。あと、輪っかだね?OK!」
ネックレスは分かるけど、輪っかってどんなのだろ?こんな時、千秋がいてれくたらすぐに分かって、色々、アドバイスもできるんだろうけど。
でも、僕も感想くらいは言えるし、アルテミスに似合うやつを僕もちょっと探してみようかな。彼女についていきながら、棚に並べられている商品をざっと見ていく。
「いらっしゃいませ~!店内、赤い札の付いた商品は、全品二割引きで~す!土日だけの大感謝祭やってま~す!!」
土日だって。そういえば、天界も曜日があって当然なのか。今日ってどっちなんだろ?
「ねぇ、今日は何曜日なの?」
「あれ、知らなかったの?土曜日だよ?だから、お姉様たちもお休みなの」
「そうなんだ。ありがとう」
ということは、お泊りパーティーした昨日は金曜の夜だったのか。明日は日曜で、明後日からデメテルたちもたぶん、仕事なのかな。
「あった~!わぁ!可愛い~!」
目的の物を見つけたみたいだ。どれどれ?
「輪っかってこれのことなんだ?あ~確かに街で髪の長い女の子がよくしてるかもな」
「そう、これこれ~!色んな色があって迷っちゃう~!」
一つ手に取って見てみると、ひらひらの生地が輪っかに繋げてあって、中にゴムが通してあるみたいだ。なるほどね。伸縮して髪をまとめたりするのか。普段、まじまじと見たり触ったりなんてしたことなかったから、なんだか新鮮だな。
「これなんてどう?この明るめの紫とピンクのなんてお洒落だと思うけど」
「きゃ~っ!可愛い!ちょっと大人っぽいかも~!ちょっと鏡で見てくるね!」
言うなり、誰も使ってない鏡を探しに行ってしまったアルテミス。ははっ、お洒落パワーはもの凄いな。さて、僕も邪魔にならないようにちょっと隅っこに行ってようかな。
そう思って移動しようとした時、店員さんらしきお姉さんが声を掛けてきた。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
純白の翼が艶やかでとても綺麗な天使のお姉さんだった。年はデメテルと同じか少し上くらいに見える。
「あ、いえ。その……連れと来ていまして、いまちょっと輪っかを見てたんです」
商品の名前が分からず、指でさっきの輪っかを指し示す。
「あれはシュシュって言うんですよ。若い女の子だけじゃなくて、私くらいの年代にも人気の品なんです」
あれがシュシュか!名前だけは聞いたことあったけど、現物が何か分からなかったんだよね。
「そうなんですか。教えて下さってありがとうございます。今日は妹みたいな女の子と来てるんですが、え~と、なんて言えばいいんだろ。1000万歳くらいの子が欲しがるようなネックレスってありますか?たぶん、少し大人っぽいようなものがいいのかなと思うんですけど……」
「まぁ!そうでしたか。それなら、すぐそこにございます」
彼女の案内でさっきの棚とは反対側の通路へと向かった。
「こちらです。ちょっと値段の張る品もありますが、下の棚の方はお買い求めやすくなっております。でも、お安くても品質は確かな物しか取り扱ってませんので、ご安心くださいね」
マニュアル一辺倒ではない、心の温まるような優しい気持ちが溢れる接客。仕事だから当たり前なんだろうけど、僕みたいなやぼったい男にもきちんと案内して、さらに説明までしてくれるなんて!なんだかとても嬉しかった。
「ありがとうございます。少し見てみますね」
「よろしければ、お手伝いしましょうか?」
「えっ?いいんですか?お願いします!」
「はい、もちろんです。こちらなどは――」
――十分後
「あ~!いた!もぅ、勝手にいなくなっちゃダメ~!」
アルテミス!?しまった!ついうっかり店員さんの話に聞き入っちゃった。
「ごめんごめん。ちょっとこの店員さんに教えてもらってたんだ」
「あら、可愛い!ごめんなさいね。私が声を掛けちゃったのよ」
「ううん、お兄ちゃんいたから平気だよ~!」
「あなた、お名前は?」
「わたし?アルテミス。こっちのお兄ちゃんは、流星お兄ちゃんって言うの」
「よ、よろしくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。私は……あら?あなた、アルテミスちゃん?もしかして……ちょっと待っててね」
アルテミスの名前を聞いて何かを思い出した様子を見せる彼女。すぐ後ろのスペースにあるレジカウンター横の金庫らしきものを開ける。
「これ、あなたのじゃない?」
そう言って彼女が差し出したのは――
「あ!お財布~!わぁっ、お姉さんが拾っといてくれたの~!?」
「やっぱり、アルテミスちゃんのだったのね?見つかって良かったわ。昨日の夜、店先に落ちてたんです。神衛隊の支部に届けようとも思ったんですけど、もしかしたら、探しに来るかもと思いまして今日一日だけうちで預かることにしたんです」
「そうだったんですか。それはありがとうございます。アルテミス、見つかって良かったね!」
「うん、やっぱり、名前書いた紙入れといて良かった~!お姉さん、ありがとう!」
名前の紙?そんなの入れといたんだ?
「だから、店員さんもこれがアルテミスのだって分かったんですね?」
「えぇ、そうなんです。悪いとは思ったんですけど、持ち主の情報が何かないかと思いまして。アルテミスちゃん、お金には触ってないから安心してね?」
「うん、もちろん!お姉さんはそんな悪い天使さんじゃないって分かるもん」
「本当にありがとうございます。これ、アルテミスが地球っていう僕の星に転生した時に手に入れたものなんです。それで、失くしちゃって探してたんです」
「お姉さん、ほんとにありがとう!」
「…………」
「……あの、どうかされましたか?」
「……お姉さん?どうしたの?」
アルテミスが再度、お礼を口にした時、彼女の表情が驚きに変わっていた。そして、みるみるうちに笑顔になり瞳を輝かせ、そして、その瞳に次第に涙をにじませる。
「ち、地球……?やっと、見つけたわ!」
いつもご覧いただき、ありがとうございます。
アルテミスとのデート回は、3話に分けてお送りします。
ラストでアクセサリーショップの天使のお姉さんが叫んだ言葉の意味とは?
次回もご期待ください♪




