27.みんなで朝ご飯!
ようやく出会えた流星と千秋。
積もる話はあるけれど、お腹が空いてはなんとやら!?
まずは、腹ごしらえ!
千秋と会えた。もう二度と会えないと思っていた千秋と会えた。こんな嬉しいことが起こるなんて!!なんだか一段と綺麗になったな。声も少し大人っぽくなってるし。でも、この笑顔は変わらないな。僕の大好きな千秋の笑顔だ。
そういえば、どうしてこんなに大人っぽくなってるんだろう?背だって伸びてるみたいだし……?
「ねぇ、千秋?ところで、なんでそんなに――」
――ぐぐぅ~~~~っ……!!
そう話しかけたところで、例の音が鳴り響いた。
「……な、何!?いまのもの凄い音は!?」
千秋がビックリした様子で叫ぶ。まぁ、確かに驚くよね。
「あーこれね。えーと、なんて言ったらいいか……」
返事に困っていると――
「お姉様ったら、相変わらずお腹は元気みたいだね!」
「……っ!わ、私じゃないわよ?」
無垢な笑顔で真実明かすアルテミスと、素知らぬ顔で嘘をつくデメテル。
「デメテルしかいねーだろ?」
追撃かますフォル。うーん、連携プレイがバッチリだね!
「え!?デメテルさん……あ、えーと、デメテルのお腹の音だったの?雷かと思った」
「~~~~っ!!」
ナイスリアクションの千秋。恥ずかしさで顔を真っ赤にして、ぷるぷる震えるデメテル。あーぁ、もうしょうがないなぁ。
「あー……昨日、夜ご飯少なめだったからね。そりゃ、お腹空くよ。朝ご飯、すぐ用意するからね!皆も食べよーよ」
「少なめ!?……あぁ、そういう事か。優しいやつだよ、全く」
フォルが即座に僕の意図を汲み取ってくれたようだ。
「千秋もアルテミスも食うだろ?さ、キッチンに行こーぜ」
千秋たちを誘導しながら、デメテルの肩をぽんと叩くフォル。そんな彼女の様子に、嬉しそうに頷くデメテル。やっぱり持つべきものは親友だね!
――ぐ、ぐぐうぅぅ~~~っっ!!
再び、大きな音が鳴り響く。今度は誰も何も言わなかった。誰もデメテルと目を合わせようとしなかった。
「だから、私じゃないんだってば~~~っ!!」
説得力のかけらもなかった。
――キッチンにて
自分の亜空間から食材を出し、早速、調理開始する僕。
「わぁっすごいすごい!流星、いつの間にそんな神様みたいなことができるようになったの!?」
僕が出した亜空間を見て、テンション上がりまくりな千秋。ちなみに、亜空間の使い方は昨日、オムライスを食べてる時に教えてもらったばかりだ。
「これはね、デメテルがくれたものなんだ。大収納だし、中は時間が止まってるんだって!食材入れとくと鮮度がそのままでずっと保てるから、とっても便利なんだよ」
「へー!日本でアルテミスが使ってるの見てて、私も欲しいなって思ってたんだよね」
「流星に喜んでもらえて、私も嬉しいわ」
羨ましそうに見つめる千秋と、ニッコリ笑顔のデメテル。
「なんだ、そんなに使いたかったのか?さすがに下界では共有できないけど、天界なら千秋にだって使えるぜ?今度、アタシの少し分けてやろーか?」
「えーっ!?いいの??ありがとう、フォル!」
思わぬ申し出に喜びまくる千秋。
「千秋、良かったね!下界では分けてあげられなくてごめんね」
「ううん、そんなの謝らなくたっていいって。ほんとに良い子なんだから。もう!」
そう言って、アルテミスの頭を優しくなでなでする千秋。
「何度も言ってるけど、わたしの方が年上なんだからね!?」
口ではそう言いつつも、ふにゃ~って心地良さそうな顔のアルテミス。千秋とのスキンシップを堪能してるようだ。なんだか本当の姉妹みたいだな。そんな2人のことを微笑ましく思っていると――
「ねえねぇ!お兄ちゃんってお料理上手なんだね。わたしも少しならできるよ。お手伝いいる?」
我に返ったアルテミスが可愛い申し出をしてくれた。ははっ、なんだかほんとに妹ができたみたいだ。嬉しいな。
「じゃあ、お願いしてもいい?。そこの器に皆の分のサラダを取り分けてくれる?昨日、仕込んどいた野菜がこれに入ってるからさ」
さっき、亜空間から出しといた大きめのタッパーを指差しながら、アルテミスにお願いする。
「私もやるよ。アルテミス、一緒にやろっ」
千秋も手伝ってくれるようだ。
「流星、アタシは何をすればいい?」
「そうだな……じゃあ、もうすぐフライパンにあるものが焼けるから、半分に切ってもらっていいかな?熱いから気を付けてね?」
「おっけー!」
「流星、私は~?」
手持ち無沙汰なデメテルがつまらなそうに聞いてくる。
「あ、えーとね。そしたら、人数分の飲み物お願いできる?」
――ぐぐっ、ぐうぅ~~~っっ!
「腹で返事するなんて、変わった特技だな?」
からかうフォル。
「お姉様……そういうのはお行儀が悪いと思うよ?」
至極、真っ当なご意見のアルテミス。
「あ、あははー……デメテル、お腹が鳴るのは健康な証拠だよ?気にしない気にしない。これが好きな男の子の前だったら、私なら恥ずかしくて死んじゃうけど」
全然、フォローになってない千秋。
――そして
「こんなもんか?我ながら上手く切れたな。良い焼き色だなー!すっげー美味そうっ!」
「お兄ちゃん、すごいすごい!おいしそうだね!」
「流星はね、料理すっごく上手なんだよ。日本でもよく作ってくれてたんだー。懐かしいな」
「わぁっ~美味しそう!流星ってほんとに凄いわよね!どうして、こんなに手早く料理ができるのかしら?」
目の前の料理に歓声を上げるみんな。料理といったって今朝のは、ゆで卵とチーズのホットサンド。それから、焼いてない普通のバケットサンド(中身はゆで卵にトマト、ハム、レタス、味付けはマヨネーズとケチャップを合わせたオーロラソースだ)。あと、簡単なサラダだけなんだけどね。
「これって全然、難しくないんだよ。それに、昨日、オムライス作ってた時についでにと思ってさ、フォルに食材もらって今朝用に仕込んどいたんだ。だから、いまは単に焼くだけだったんだよね。そういえば、昨日から卵が続いちゃったな。ごめんね」
「そんなの気にすることないさ。2食くらい続いたって大したことないだろ?なぁ、それよりもさ、アタシも仕込むの少し手伝ったんだぜ。へへっ」
嬉しそうな顔のフォルが得意げに話す。
「そうなのね。私はその時、何してたのかしら??」
少し残念そうなデメテル。
「え……なにって……」
「オムライスに夢中になってただろーが」
「あ……そっか。そうよね。いやん、私ったらっ」
本気で分からなかったのか。まあ、あの時のデメテルはオムライス以外、目に入ってなかったもんな。
「え!?昨日、流星のオムライス食べたの?いいなー!」
千秋が心底、羨ましそうな声を上げた。みんな、僕の作った料理を絶賛してくれて嬉しいけど、なんだかちょっと照れくさいな。
◇◇◇
「デメテル、フォル……食べながらでいいんだけど聞いてくれる?さっきはごめんね。その、嬉しくてさ。つい、あの……千秋と……」
2人の前で千秋に抱き着いてしまったことを謝ろうとしたが、上手く言葉が出てこない。
「いいのよ。そんなことで怒るなんて無粋よ。ね、フォル?」
「あぁ!流星と千秋の関係は聞かせてもらったからな。よく分かるぜ、その気持ち」
そう言って、にひひ、と笑うフォル
「流星、どうして謝ってるの?怒るって?」
「う、うん……あのね、実は――」
デメテルたちに謝ったことを不思議に思ったのだろう。千秋が疑問を抱いたようだ。少し迷ったけど、千秋にもきちんと話さなければいけないよね、これは。
千秋にも誠実でありたい。そう思った僕は、デメテルとフォルとの今の関係を、これまでの経緯を交えてかいつまんで話した。
「そうだったの!?……流星の魂ってバラバラになっちゃって危なかったんだ!?それで、デメテルが保護してくれたんだね。その後、なんやかんやあって、デメテルとフォルとの恋の三角関係が絶賛、進行中なんだ!?」
「わぁ~!お兄ちゃんたち、大人の恋ってカンジ!いいないいな~!」
うん、まあ、そう……かな。なんやかんやとは説明してないけどね!?あと、三角関係のとこなんで英語で言ったの?ネイティブっぽくしてたみたいだけど、思いっきり日本人英語の発音だったよ?
しかも、なんだか嬉しそうじゃない??アルテミスなんて、瞳をそれこそ、星みたいにキラキラさせちゃってるけど。
「あの……千秋?なんか喜んでない?」
「ふっふーん!それはそうだよ!だって、流星が大好きなんだもん。そんな流星が実は、女神様たちにもモッテモテだったなんて!私の目に狂いはなかったってことだよね!」
「え!?い、いま僕のこと好きって……」
「ううん。私、そんなこと言ってないよ?」
え!?
「流星、千秋はそんなこと言ってないわよ?」
「大丈夫か?しっかり聞いとかないとダメだぞ?」
「お兄ちゃん、聞き間違えるのはだめだよ?」
えぇ!?皆が全否定してくるんだけど……確かに『好き』って言ってくれたように聞こえたんだけどな。僕、自惚れてたのかな。
「千秋はこう言ったんだぜ?……そら、皆!せーの!」
フォルが音頭をって女性陣に促す。
「「「「流星(お兄ちゃん)が大好き!!」」」」
うわっ……すっごく恥ずかしい。嬉しいけど。千秋はじめ、皆がニヤニヤして僕を見てくる。
「あ、ありがとう、千秋。嬉しいよ。照れるけど」
「ねえ、千秋。聞いての通り、私たち、流星のことが好きなの。それで、3人で仮のお付き合いを始めたばかりなんだけど――」
デメテルが僕と千秋の手を取り、重ね合わせる。
「千秋の気持ちは言わずもがな、よね。流星はどうしたいの?」
僕の気持ち……。
「僕は……千秋が好きだよ。大好きだ!」
「……っ!」
目を見開いて驚く千秋。そして、頬を染めて、嬉しい、と一言。
「でも、流星、それだけじゃないでしょ……?本当の気持ちを話してみて?お願い」
千秋に促され、ハッとする。そうだ。僕がうじうじしてたんじゃ、それこそ皆に失礼じゃないか。そう思い、今の気持ちを包み隠さずに話すことにした。
「デメテルのことも、フォルのことも……好きなんだ。とっても大切な存在だよ。今朝、2人が僕から離れていく夢を見たんだ。すごく悲しくて怖かった……変だろ?自分でも誰が一番好きかよく分からないなんて」
「そうなんだ。ま、なんとなくそんな雰囲気はしてたんだけどねー。私たちが感動の再会で抱き合ってた時、デメテルとフォルが微笑ましそうにしてたけど、ほんの少しだけ嫉妬が混じってたもん。それにさ、その後、流星が2人のこと気にしてたしね」
千秋が言いながら、デメテルとフォルの方を見て悪戯っ子そうな笑みを浮かべた。
「あ、あら?気が付いてたのね?」
「なかなか、鋭いじゃねーか」
意外に千秋って観察力あるんだね。デメテルとフォルが苦笑いしてるよ。
「ねえねえ!それなら、千秋もお兄ちゃんとお付き合いしてみたらどう?チャンスあるかもよ?」
アルテミスがとんでもないことをさらっと提案してくる。
「それはいいわね!私、千秋なら大歓迎よ!」
「え……!?で、でも、それは……」
「流星、千秋だって本気なんだぜ?なー?千秋」
「もちろんだよ!ね、流星、いいでしょ?こんな可愛い幼馴染、離したらもう二度と捕まえられないかも知れないよ?」
僕の手を握ったまま、嬉しそうな恥ずかしそうな、でも、どことなく自信のある表情で、どうする?と目で訴えてくる千秋。
「……そうだね。答えが出るまで少し時間がかかっちゃうかも知れないけど、それでも良ければ、僕と付き合ってくれますか?」
「うん!もちろんだよ!ありがとう、流星!」
花の咲くような満面の笑みで喜び、抱き着いてくる千秋。嬉しいな。こんなに喜んでくれるなんて。
「皆、これが今の正直な気持ちなんだ。こんな僕だけど、3人とも精一杯の愛情を送らせてもらうよ。だから……これからよろしくね?」
デメテル、フォル、千秋、それぞれの顔をしっかり見ながら、気持ちを伝えた。
「えぇ!もちろんよ!絶対、一番好きにならせてみせるわっ。豊穣の神はね、一途なだけじゃないのよ?恋愛マスターと名高いアフロディーテ!アカデミー時代にね、私、彼女と同じクラスの全然、知らない神と委員会が同じだったんだから!」
髪をふわっと掻き上げ、お得意のドヤ顔をさらすデメテル。うん、何が凄いのか全っ然、分かんないよ。アフロディーテって神さまとの関係、めっちゃ遠いんですけど……。
「へっへーん、私だって負けないんだからね?幼馴染枠って恋愛じゃ鉄板なんだから!」
「お?千秋、それって『神恋』シリーズ第5弾のヒロイン対決時の台詞じゃねーか!?アタシ、そのエピソードが一番気に入ってるんだ!」
「あれ?フォル、知ってるの?いまこれ大人気なのよね。アルテミスとも日本でよく読んでたんだー!」
「フォル姉様、読んでくれたの!良かったぁ。わたし、あれ大好きだから、どうしてもフォル姉様に読んで欲しくて」
「あぁ、まだ途中だけど、読ませてもらってるぜ。貸してくれてありがとな」
「え~私だけ読んでないの!?ねぇ、フォル!読んだのから私にも貸してくれないかしら?」
「だってよ?どーする?アルテミス」
「え~どうしよっかなっ?お姉様が買って自慢してた最高級のコテを貸してくれたら、考えてもいいかな~?」
皆、すっかり仲良しだね。千秋のコミュ力には、ほんと驚かされるよ。日本でも神さま相手でも抜群だね!
「ねぇ!そのフォルが気に入ってる『神恋』の5番目ってそんなに面白いの?」
「お!流星も読みたいのか?いいぜ、あとで貸してやるよ。いいだろ?アルテミス」
「うん!もちろん!お兄ちゃんも気に入ってくれたら嬉しいな」
「流星も少女漫画に興味あるんだね?日本にいた頃はそうでもなさそうだったのに」
「それ、何ていうタイトルなの?コテは貸すから私にも読ませてよね」
デメテルも興味津々といった表情だ。
「わたし、言えるよ!全作、覚えてるもん」
ドヤ顔のアルテミス。ははっ、デメテルにそっくりだな。
「えっとね~……『神様だってキュンキュンしたい!幼馴染のお兄ちゃんと本命と2番目・3番目!?』だよ!」
すっごく嫌なタイトル付けたな、この作者。それ、キュンキュンじゃなくてドロドロの間違いじゃない!?少女漫画ってこういうんだっけ?
純粋無垢なアルテミスに、そんなにこやかに言ってほしくないタイトルだったよ……。
ここまで読んで下さって、本当にありがとうございます。
千秋とアルテミスも加わって更に賑やかになりました。
そして、千秋も三角関係に加わり、まさかの四角関係!?
この先、流星は誰を選ぶんでしょうか?
次回もご期待下さい!




