表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/38

27.みんなで朝ご飯!

ようやく出会えた流星と千秋。

積もる話はあるけれど、お腹が空いてはなんとやら!?

まずは、腹ごしらえ!


 千秋と会えた。もう二度と会えないと思っていた千秋と会えた。こんな嬉しいことが起こるなんて!!なんだか一段と綺麗になったな。声も少し大人っぽくなってるし。でも、この笑顔は変わらないな。僕の大好きな千秋の笑顔だ。

 そういえば、どうしてこんなに大人っぽくなってるんだろう?背だって伸びてるみたいだし……?


「ねぇ、千秋?ところで、なんでそんなに――」


――ぐぐぅ~~~~っ……!!


 そう話しかけたところで、()()()が鳴り響いた。


「……な、何!?いまのもの凄い音は!?」


 千秋がビックリした様子で叫ぶ。まぁ、確かに驚くよね。


「あーこれね。えーと、なんて言ったらいいか……」


 返事に困っていると――


「お姉様ったら、相変わらずお腹は元気みたいだね!」

「……っ!わ、私じゃないわよ?」


 無垢な笑顔で真実明かすアルテミスと、素知らぬ顔で嘘をつくデメテル。


「デメテルしかいねーだろ?」


 追撃かますフォル。うーん、連携プレイがバッチリだね!


「え!?デメテルさん……あ、えーと、デメテルのお腹の音だったの?雷かと思った」

「~~~~っ!!」

 

 ナイスリアクションの千秋。恥ずかしさで顔を真っ赤にして、ぷるぷる震えるデメテル。あーぁ、もうしょうがないなぁ。


「あー……昨日、夜ご飯()()()だったからね。そりゃ、お腹空くよ。朝ご飯、すぐ用意するからね!皆も食べよーよ」

「少なめ!?……あぁ、そういう事か。優しいやつだよ、全く」


 フォルが即座に僕の意図を汲み取ってくれたようだ。


「千秋もアルテミスも食うだろ?さ、キッチンに行こーぜ」


 千秋たちを誘導しながら、デメテルの肩をぽんと叩くフォル。そんな彼女の様子に、嬉しそうに頷くデメテル。やっぱり持つべきものは親友だね!


――ぐ、ぐぐうぅぅ~~~っっ!!


 再び、大きな音が鳴り響く。今度は誰も何も言わなかった。誰もデメテルと目を合わせようとしなかった。


「だから、私じゃないんだってば~~~っ!!」


 説得力のかけらもなかった。



――キッチンにて


 自分の亜空間から食材を出し、早速、調理開始する僕。


「わぁっすごいすごい!流星、いつの間にそんな神様みたいなことができるようになったの!?」


 僕が出した亜空間を見て、テンション上がりまくりな千秋。ちなみに、亜空間の使い方は昨日、オムライスを食べてる時に教えてもらったばかりだ。


「これはね、デメテルがくれたものなんだ。大収納だし、中は時間が止まってるんだって!食材入れとくと鮮度がそのままでずっと保てるから、とっても便利なんだよ」

「へー!日本でアルテミスが使ってるの見てて、私も欲しいなって思ってたんだよね」

「流星に喜んでもらえて、私も嬉しいわ」


 羨ましそうに見つめる千秋と、ニッコリ笑顔のデメテル。


「なんだ、そんなに使いたかったのか?さすがに下界では共有できないけど、天界(この世界)なら千秋にだって使えるぜ?今度、アタシの少し分けてやろーか?」

「えーっ!?いいの??ありがとう、フォル!」


 思わぬ申し出に喜びまくる千秋。


「千秋、良かったね!下界では分けてあげられなくてごめんね」

「ううん、そんなの謝らなくたっていいって。ほんとに良い子なんだから。もう!」


 そう言って、アルテミスの頭を優しくなでなでする千秋。


「何度も言ってるけど、わたしの方が年上なんだからね!?」


 口ではそう言いつつも、ふにゃ~って心地良さそうな顔のアルテミス。千秋とのスキンシップを堪能してるようだ。なんだか本当の姉妹みたいだな。そんな2人のことを微笑ましく思っていると――


「ねえねぇ!お兄ちゃんってお料理上手なんだね。わたしも少しならできるよ。お手伝いいる?」


 我に返ったアルテミスが可愛い申し出をしてくれた。ははっ、なんだかほんとに妹ができたみたいだ。嬉しいな。


「じゃあ、お願いしてもいい?。そこの器に皆の分のサラダを取り分けてくれる?昨日、仕込んどいた野菜がこれに入ってるからさ」


 さっき、亜空間から出しといた大きめのタッパーを指差しながら、アルテミスにお願いする。


「私もやるよ。アルテミス、一緒にやろっ」


 千秋も手伝ってくれるようだ。


「流星、アタシは何をすればいい?」

「そうだな……じゃあ、もうすぐフライパンにあるものが焼けるから、半分に切ってもらっていいかな?熱いから気を付けてね?」

「おっけー!」

「流星、私は~?」


 手持ち無沙汰なデメテルがつまらなそうに聞いてくる。


「あ、えーとね。そしたら、人数分の飲み物お願いできる?」


――ぐぐっ、ぐうぅ~~~っっ!


「腹で返事するなんて、変わった特技だな?」


 からかうフォル。


「お姉様……そういうのはお行儀が悪いと思うよ?」


 至極、真っ当なご意見のアルテミス。


「あ、あははー……デメテル、お腹が鳴るのは健康な証拠だよ?気にしない気にしない。これが好きな男の子の前だったら、私なら恥ずかしくて死んじゃうけど」


 全然、フォローになってない千秋。



――そして


「こんなもんか?我ながら上手く切れたな。良い焼き色だなー!すっげー美味そうっ!」

「お兄ちゃん、すごいすごい!おいしそうだね!」

「流星はね、料理すっごく上手なんだよ。日本でもよく作ってくれてたんだー。懐かしいな」

「わぁっ~美味しそう!流星ってほんとに凄いわよね!どうして、こんなに手早く料理ができるのかしら?」


 目の前の料理に歓声を上げるみんな。料理といったって今朝のは、ゆで卵とチーズのホットサンド。それから、焼いてない普通のバケットサンド(中身はゆで卵にトマト、ハム、レタス、味付けはマヨネーズとケチャップを合わせたオーロラソースだ)。あと、簡単なサラダだけなんだけどね。


「これって全然、難しくないんだよ。それに、昨日、オムライス作ってた時についでにと思ってさ、フォルに食材もらって今朝用に仕込んどいたんだ。だから、いまは単に焼くだけだったんだよね。そういえば、昨日から卵が続いちゃったな。ごめんね」

「そんなの気にすることないさ。2食くらい続いたって大したことないだろ?なぁ、それよりもさ、アタシも仕込むの少し手伝ったんだぜ。へへっ」


 嬉しそうな顔のフォルが得意げに話す。


「そうなのね。私はその時、何してたのかしら??」


 少し残念そうなデメテル。


「え……なにって……」

「オムライスに夢中になってただろーが」

「あ……そっか。そうよね。いやん、私ったらっ」


 本気で分からなかったのか。まあ、あの時のデメテルはオムライス以外、目に入ってなかったもんな。


「え!?昨日、流星のオムライス食べたの?いいなー!」


 千秋が心底、羨ましそうな声を上げた。みんな、僕の作った料理を絶賛してくれて嬉しいけど、なんだかちょっと照れくさいな。


◇◇◇


「デメテル、フォル……食べながらでいいんだけど聞いてくれる?さっきはごめんね。その、嬉しくてさ。つい、あの……千秋と……」


 2人の前で千秋に抱き着いてしまったことを謝ろうとしたが、上手く言葉が出てこない。


「いいのよ。そんなことで怒るなんて無粋よ。ね、フォル?」

「あぁ!流星と千秋の関係は聞かせてもらったからな。よく分かるぜ、その気持ち」


 そう言って、にひひ、と笑うフォル


「流星、どうして謝ってるの?怒るって?」

「う、うん……あのね、実は――」


 デメテルたちに謝ったことを不思議に思ったのだろう。千秋が疑問を抱いたようだ。少し迷ったけど、千秋にもきちんと話さなければいけないよね、これは。

 千秋にも誠実でありたい。そう思った僕は、デメテルとフォルとの今の関係を、これまでの経緯を交えてかいつまんで話した。


「そうだったの!?……流星の魂ってバラバラになっちゃって危なかったんだ!?それで、デメテルが保護してくれたんだね。その後、なんやかんやあって、デメテルとフォルとの恋の三角関係ラァヴ・トゥライアンゴゥが絶賛、進行中なんだ!?」

「わぁ~!お兄ちゃんたち、大人の恋ってカンジ!いいないいな~!」


 うん、まあ、そう……かな。なんやかんやとは説明してないけどね!?あと、三角関係のとこなんで英語で言ったの?ネイティブっぽくしてたみたいだけど、思いっきり日本人英語の発音だったよ?

 しかも、なんだか嬉しそうじゃない??アルテミスなんて、瞳をそれこそ、星みたいにキラキラさせちゃってるけど。


「あの……千秋?なんか喜んでない?」

「ふっふーん!それはそうだよ!だって、流星が大好きなんだもん。そんな流星が実は、女神様たちにもモッテモテだったなんて!私の目に狂いはなかったってことだよね!」

「え!?い、いま僕のこと好きって……」

「ううん。私、そんなこと言ってないよ?」


 え!?


「流星、千秋はそんなこと言ってないわよ?」

「大丈夫か?しっかり聞いとかないとダメだぞ?」

「お兄ちゃん、聞き間違えるのはだめだよ?」


 えぇ!?皆が全否定してくるんだけど……確かに『好き』って言ってくれたように聞こえたんだけどな。僕、自惚れてたのかな。


「千秋はこう言ったんだぜ?……そら、皆!せーの!」


 フォルが音頭をって女性陣に促す。


「「「「流星(お兄ちゃん)が()()()!!」」」」


 うわっ……すっごく恥ずかしい。嬉しいけど。千秋はじめ、皆がニヤニヤして僕を見てくる。


「あ、ありがとう、千秋。嬉しいよ。照れるけど」

「ねえ、千秋。聞いての通り、私たち、流星のことが好きなの。それで、3人で仮のお付き合いを始めたばかりなんだけど――」


 デメテルが僕と千秋の手を取り、重ね合わせる。


「千秋の気持ちは言わずもがな、よね。流星はどうしたいの?」


 僕の気持ち……。


「僕は……千秋が好きだよ。大好きだ!」

「……っ!」


 目を見開いて驚く千秋。そして、頬を染めて、嬉しい、と一言。


「でも、流星、それだけじゃないでしょ……?本当の気持ちを話してみて?お願い」


 千秋に促され、ハッとする。そうだ。僕がうじうじしてたんじゃ、それこそ皆に失礼じゃないか。そう思い、今の気持ちを包み隠さずに話すことにした。


「デメテルのことも、フォルのことも……好きなんだ。とっても大切な存在だよ。今朝、2人が僕から離れていく夢を見たんだ。すごく悲しくて怖かった……変だろ?自分でも誰が一番好きかよく分からないなんて」

「そうなんだ。ま、なんとなくそんな雰囲気はしてたんだけどねー。私たちが感動の再会で抱き合ってた時、デメテルとフォルが微笑ましそうにしてたけど、ほんの少しだけ嫉妬が混じってたもん。それにさ、その後、流星が2人のこと気にしてたしね」


 千秋が言いながら、デメテルとフォルの方を見て悪戯っ子そうな笑みを浮かべた。


「あ、あら?気が付いてたのね?」

「なかなか、鋭いじゃねーか」


 意外に千秋って観察力あるんだね。デメテルとフォルが苦笑いしてるよ。


「ねえねえ!それなら、千秋もお兄ちゃんとお付き合いしてみたらどう?チャンスあるかもよ?」


 アルテミスがとんでもないことをさらっと提案してくる。


「それはいいわね!私、千秋なら大歓迎よ!」

「え……!?で、でも、それは……」

「流星、千秋だって本気なんだぜ?なー?千秋」

「もちろんだよ!ね、流星、いいでしょ?こんな可愛い幼馴染、離したらもう二度と捕まえられないかも知れないよ?」


 僕の手を握ったまま、嬉しそうな恥ずかしそうな、でも、どことなく自信のある表情で、どうする?と目で訴えてくる千秋。


「……そうだね。答えが出るまで少し時間がかかっちゃうかも知れないけど、それでも良ければ、僕と付き合ってくれますか?」

「うん!もちろんだよ!ありがとう、流星!」


 花の咲くような満面の笑みで喜び、抱き着いてくる千秋。嬉しいな。こんなに喜んでくれるなんて。


「皆、これが今の正直な気持ちなんだ。こんな僕だけど、3人とも精一杯の愛情を送らせてもらうよ。だから……これからよろしくね?」


 デメテル、フォル、千秋、それぞれの顔をしっかり見ながら、気持ちを伝えた。


「えぇ!もちろんよ!絶対、一番好きにならせてみせるわっ。豊穣の神はね、一途なだけじゃないのよ?恋愛マスターと名高いアフロディーテ!アカデミー時代にね、私、彼女と同じクラスの全然、知らない神と委員会が同じだったんだから!」


 髪をふわっと掻き上げ、お得意のドヤ顔をさらすデメテル。うん、何が凄いのか全っ然、分かんないよ。アフロディーテって神さまとの関係、めっちゃ遠いんですけど……。


「へっへーん、私だって負けないんだからね?()()()()って恋愛じゃ鉄板なんだから!」

「お?千秋、それって『神恋』シリーズ第5弾のヒロイン対決時の台詞じゃねーか!?アタシ、そのエピソードが一番気に入ってるんだ!」

「あれ?フォル、知ってるの?いまこれ大人気なのよね。アルテミスとも日本でよく読んでたんだー!」

「フォル姉様、読んでくれたの!良かったぁ。わたし、あれ大好きだから、どうしてもフォル姉様に読んで欲しくて」

「あぁ、まだ途中だけど、読ませてもらってるぜ。貸してくれてありがとな」

「え~私だけ読んでないの!?ねぇ、フォル!読んだのから私にも貸してくれないかしら?」

「だってよ?どーする?アルテミス」

「え~どうしよっかなっ?お姉様が買って自慢してた最高級のコテを貸してくれたら、考えてもいいかな~?」


 皆、すっかり仲良しだね。千秋のコミュ力には、ほんと驚かされるよ。日本でも神さま相手でも抜群だね!


「ねぇ!そのフォルが気に入ってる『神恋』の5番目ってそんなに面白いの?」

「お!流星も読みたいのか?いいぜ、あとで貸してやるよ。いいだろ?アルテミス」

「うん!もちろん!お兄ちゃんも気に入ってくれたら嬉しいな」

「流星も少女漫画に興味あるんだね?日本にいた頃はそうでもなさそうだったのに」

「それ、何ていうタイトルなの?コテは貸すから私にも読ませてよね」


 デメテルも興味津々といった表情だ。


「わたし、言えるよ!全作、覚えてるもん」


 ドヤ顔のアルテミス。ははっ、デメテルにそっくりだな。


「えっとね~……『神様だってキュンキュンしたい!幼馴染のお兄ちゃんと本命()と2番目・3番(女友達)目!?』だよ!」


 すっごく嫌なタイトル付けたな、この作者。それ、キュンキュンじゃなくてドロドロの間違いじゃない!?少女漫画ってこういうんだっけ?

 純粋無垢なアルテミスに、そんなにこやかに言ってほしくないタイトルだったよ……。

ここまで読んで下さって、本当にありがとうございます。


千秋とアルテミスも加わって更に賑やかになりました。

そして、千秋も三角関係に加わり、まさかの四角関係!?

この先、流星は誰を選ぶんでしょうか?


次回もご期待下さい!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ