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26.再会

ついに、待ち焦がれた彼女が……!

 あの声はまさか……!?そんなことって!!僕は瞳から流れ落ちる涙を拭うことも忘れ、その場に立ち尽くした。


「ん?いまの声は……?」

「アルテミス、誰かと一緒なの?」

「うん、あのね……ってもう、出てきた方が早いよね。いいよ!入ってきて!」


 後ろを振り向き、半開きの扉に声を掛けるアルテミスさま。扉がゆっくりと開かれる。そして――


「おはようございます!朝からお邪魔して申し訳ありません。私、門間千秋(もんまちあき)と言います。初めまして!アルテミスさんとは日本で仲良くなって――」


 元気に挨拶する彼女。ふいに目が合う。彼女の驚く顔だけが見える。まるで、時間が止まったような感覚だ。僕は息をするのも忘れて、彼女に見入った。


「え?……りゅ……ぃ……?」

「……あ……き……」


 お互いの声にならない言葉だけが、かろうじて耳に届く。とめどなく涙が溢れ出てくる。


「りゅ、うせ……いっ……!りゅう、せい……な、の……!?ほ、ほん、どに……?」

「……ん……ぅ、ん……!ゔんっ……!!」


 声が上手く出せない。なんとか頭だけ頷いて必死に意志を表す。足に力が入らない。彼女に駆け寄りたいのに!動けっ動けっ!動いてくれっ!!


「ち……あ、ぎ!……ちあ……ぎっ!!……あっ……」

「りゅゔぜぃっっ……!!」


 彼女が飛び込んできた衝撃で、2人とも床に倒れ込む。間違いない。千秋だ!……千秋だっ!!


「ぢあぎっ!!会いだがっだっ!急にいなくなっで……ごめん!……ごめんね!」

「……っ、ううん!いいのっ!!また会えだんだもんっ!!りゅゔぜいがいなくなっでっ、悲じがっだ!寂じがったっ!()にだがったっ……!!」


 涙でぼやける視界。僕の額にふと、温もりが触れた。千秋の吐息がすぐそこに感じられる。彼女が額を擦り付けてきたのだと分かった。


「……とっでもっ!!会いたがっだっっ!!」


 僕たちは倒れ込んだまま、抱き合って泣いた。子供の様に声を上げて泣いた。涙が枯れる程、泣いた。


◇◇◇


 ひとしきり泣いたところで、僕たちは立ち上がり、お互いを見る。すると、千秋がまだ涙の残る瞳でじっと見つめてきた。そして、とっても嬉しそうにささやいた。


「……りゅうせい……きたよ……!」


 ……!?いまの、前にも聞いたことがある。確か、バイト先の『アルテミス』に彼女が初出勤してきた時だ。その時の光景がフラッシュバックする。

 愛しくなりたまらず、千秋を抱き締める。また出てくる涙。今度は声を押し殺して泣いた。彼女がどうして天界にいるのか分からない。どうして、そんなに大人っぽくなってるのか分からない。聞きたいことは山ほどあったけど、いまはそんなことどうでも良かった。

 ただ、目の前に千秋がいる。今の僕にはそれだけで十分だった。



――それから


「落ち着いたかしら?はい、飲み物。ここ置くわね」

「ありがとね」


 僕と千秋が散々、泣き散らかして、いまは皆でリビングにいる。デメテルが温かい紅茶を用意してくれたところだ。


「ありがとうございます。あ、えーと……」

「彼女はアルテミスさまのお姉さんで、デメテルだよ。豊穣の女神さまなんだ」

「ありがとうございます、女神様。失礼しました」

「ふふっ、いいのよ。ねぇ、女神様じゃなくてデメテルって呼んでいいのよ?流星の幼馴染なら、私たちのお友達も同然よ」

「あぁ、そのとーり!アタシはフォルトゥーナだ。フォルって呼んでくれよな!様はいらないぜ?アタシは運命を司ってるんだ」


 千秋が困ったように僕を見る。神さまたちがあんまりフレンドリーなんで困惑してるみたいだ。


「大丈夫だよ。2人ともすっごく心の温かい神さまなんだから。ね?」

「……うん。そういうことなら……あのー……それで、私、きちんと自己紹介してませんでしたよね。ごめんなさい。いきなり押しかけちゃって泣き喚いちゃったりして。私、門間千秋って言います。日本でアルテミスさんと一緒に暮らしてました。よろしくお願いします。デメテルさん、フォルさん」


 まだ恐る恐るといった感じの千秋。その言葉に2人の女神さまの表情がより一層、優しいものになって、嬉しそうに頷いた。


「あぁ、よろしくな!じゃあ、これから千秋って呼ばせてもらうぜ?千秋もアタシたちのこと、呼び捨てにしてくれて構わないからな。あーそれと、敬語はナシにしよーな?」

「私たち、神だけど、お友達と思ってくれたら嬉しいわ。よろしくね、千秋!」

「……うん、ありがとう!ぜひ!」


 ニコっと笑う千秋。変わらないな、この笑顔。


「わたしのこともアルテミスって呼んでいいからね?」


 朗らかな笑顔で隣に座る千秋に話しかけるアルテミスさま。


「うん、ずっとそう呼んでたよね?私。ちょっと黙ってて」


 笑顔で話す中にもツッコミと若干の厳しさを織り交ぜるなんて、やるな!千秋!……あっ、アルテミスさまが涙目になってる。まずいよ……!


「ち、千秋?アルテミスさまにちょっと冷たくない……?大丈夫ですか?すみません、千秋が」

「流星さん、お優しいんですね。ありがとうございます。でも、大丈夫です。千秋のイジメ、いえ、いびり……え~と、嫌がらせ?は、いつものことですからあぁ~~~っっ!ちょ、ちょっと!イタイッイタタタッッ!!」

「アルテミスぅ?随分と、甘えた声出してるじゃなーい?だーれが嫌がらせしてるってーの!?」


 人が神さまの頭を握りこぶしでグリグリしてる……い、いいのか!これ!?


「げっ!千秋!だ、だめだって!」

「まぁ!2人とも仲が良いのね~」

「ほんとだな!まるで、アタシたちみたいだな?あははっ」


 いや、あははって、アルテミスさまがっ!アルテミスさまが悶え苦しんでるんだけど!?


「イタイイタイッ!……~~~~っっ!!」


 ん?なんか……体から出てない?雷みたいなバチバチ光ってるものが出てきちゃってるけど!?アルテミスさま、それって――


「……()()()()()()()()()()()()()っ!」


 あれ?……アルテミスさま、()()()()もご存知なんですか!?読むジャンル、幅広いんですね!?


 アルテミスさまが天井に高々と人差し指を突き立てる。全身を覆う光がますます輝かしくなり、指先に力を集中させてるみたいに感じた。

 それでも、まだグリグリしてる千秋。千秋ってそういうところあるよね。その光、不思議に思わないのかな??


「……っ!?マズいっ!!」


 フォルの声がしたかと思った瞬間、凄いスピードで動く影が見えた。


「……っ!!【星降る夜に(メテオ・ストーム)・改(・アンリミ)……】」


 え!あの呪文ってまさか……!?


「おいっ!ストップだ!2人ともそこまでにしなっ!!」


 アルテミスさまの腕を掴み、2人を引き離すフォル。バチバチする光がゆっくりと消えていく。デメテルが拘束されたままのアルテミスさまにゆっくりと近づいていった。

 ほっ……良かった~フォルが止めてくれたよ。いまのって隕石落とすやつだよね?絶対。


「アルテミス?お姉ちゃん、言ったわよねぇ?むやみに能力を使っちゃダメって……忘れちゃったのかしら?()()()()()しましょうか?」

「お、お姉様……ご、ごめんなさいっ!もう絶対!!二度と!!しませんっっ!!」


 アルテミスさまが顔を引きつらせて硬直してる。ちょうどデメテルの表情が見えないけど、どんな顔してるんだろ。お話プラス!?……なんて恐ろしい響きなんだ。


「千秋もだめだよ?アルテミスさま、本気で痛がってたじゃないか」

「だってぇー……分かったわよ。アルテミス、ごめんね」

「ううん、いいの。私こそ、流星群を落とそうとしちゃってごめんなさい」


 おいぃぃぃっっ!!やはりか!!


「ねぇ、アルテミス。そういえば、登録してる呪文に何か加えたの?少し違ってなかったかしら?いまのって『(ゼータ)』のものよね?」

「うん。お姉様、あのね、地球に行ってる間に能力を無事に覚えなおせたの。その時に、ついでにパワーアップもしとこうかなって思って」

「え?」

「は?」


 デメテルとフォルがぽかーんとしてる。能力ってパワーアップするんだ?


「え?は?え!?……つい最近、転生したばっかで覚え直した!?しかも、パワーアップだと!?というか、そもそもなんで天界(ここ)にいるんだ?まだ戻ってこられるような期間じゃないだろ?」

「な、ななな……なんでパワーアップなんてできるのよっ!?そんなこと聞いたことないわ!!」


 2人とも、アルテミスさまの発言に驚き戸惑ってるみたいだ。


「アルテミス、始めから説明した方がいいんじゃない?時間もあと12時間くらいしかないんだし」

「そうだね。お姉様たち、最初から説明するね。あ!でも、その前に一つ大事な事があったんだっけ」

「え?どうかしたんですか?アルテミスさま」

「流星さん、お願いがあります。わたしのことは、アルテミスって呼び捨てにしてくれませんか?それと、敬語も止めて下さいね」


 無邪気な笑顔でそう僕に頼むアルテミスさま。やっぱりデメテルと姉妹だなぁ。目元がそっくり。しかも、すっごく可愛い。もし、こんな子が学校にいたら間違いなくモテモテだろうな。


「え!?あ、いや、それはちょっと……ねぇ、デメテル?」

「ふふっ、いいんじゃない?アルテミスもそう呼んでもらいたいのよ」

「そう……なの?うん、じゃあ、アルテミスって呼ばせてもらうね?こんな感じの話し方でいいかな?」

「はい、ありがとうございます!流星さん!」


 にっこにこなアルテミス。そして、急に真面目な顔つきになって――


「あと、()()()()()って呼んでもいいですか?」


 そのキラキラ輝く瞳にお願いされたら、断るものも断れないよ!……いや、断らないけどね!?()()()()()……なんて素敵な響きなんだろう!


「も、もちろんだよ!今日から僕がお兄ちゃんだ!あと、アルテミスも無理に敬語なんて使わなくていいからね?」

「……!?うん!」

「流星って昔からその呼ばれ方、好きだよね。私も昔はそう呼んでたんだけどなー。また呼んじゃおっかなぁ」

「え?そうなのね!私もお兄ちゃんって呼んでみようかしら!?」

「おいおい、どんなプレイだよ。やれやれ……アタシには理解できないね(アタシもこっそり、お兄ちゃんって呼ぼう)」


今回もご覧頂き、ありがとうございます!


ついに、千秋の登場です!流星とやっと再会できました。

1話を書いた時点で千秋を天界に行かせる構想はあったんですが、

その手段が中々、上手くストーリーと繋がらなかったんです。

でも、ようやく、天界まで連れてこられました。


千秋とアルテミスも加わり、より一層賑やかになった5人を

これからもよろしくお願いします!


次回もご期待下さい。

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