21.神さまたちの世界
女神様たちとの楽しい夕食の始まりです!
待ちに待った夜ご飯!2人とも、見たことのないオムライスに興味津々みたい。いざ食べ始めると、おいしいおいしいと言って食べてくれてる。こんな嬉しいことってないよね。
「~~っ!……~~~っっ!!」
「…………」
「…………」
始めの方は色々、話しながら食べてたんだよね。でも、そのうち、1人だけ無言&勢いMAXで食べ始める方がいらっしゃいました。
「あの~……どう?美味しい?オムライス」
「~~~~~~っっ!!」
夢中で食べる彼女に声を掛けると、幸せ全開、夢も希望もいっぱい、お腹はまだまだいっぱい入るわよ!といったドヤ顔を見せてくれた。言わずもがな、デメテルだ。ちなみに、彼女のオムライスは、いま食べてるので7皿目(始めに作っておいたミニサイズは除く)。
フォルがお代わり分のオムライスを作るの手伝ってくれて、ほんとに助かったよ。僕、お代わり分だけで連続10皿作ったのなんて初めて!
いまようやく、フォルもお代わり用のミニオムライスを食べ終わったところだ。
「ふぅ……あー美味かった!こんなに美味い飯は初めてだ。流星、ありがとな!」
心から満足そうな声を出すフォル。その表情は本当に幸せそうで、至福のひと時といった感じだ。
「お粗末様でした。皆で作ったお陰だよ。でも、良かった!気に入ってくれてさ」
自分で言うのもなんだけど、確かに過去最高ってくらい美味しかったな。チキンライスそのものも格段に美味しかったし、卵も味がすごく濃厚でビックリしちゃった。
日本で作った時も上手く作れたとは思ってたけど、今日のはなぜだか、一段も二段も味が上のような気がするよ。あ!もしかして、あれかな?デメテルの食材の旨みが増すっていう能力!それのお陰かも?デメテルも手伝ってくれたし、きっとそうなんだな。
「デメテル、まだあるからゆっくり食べなね?」
「はぁ~~~っ!……えぇ!ありがとう、流星!それにしても、ほんっと~~に、美味しいわねっ!さすが、流星だわ!あんまり美味しいから、私、驚いちゃったもの」
とびっきりの笑顔でそう話す彼女は、亜空間から次のお代わりを出すようだ。
「なあ、いくら美味いからってそんなに食べて大丈夫か?ま、デメテルがたくさん食べるのは、いまに始まったことじゃないけどさ」
「やっぱり?昔からそうだったの?」
「流星、そのやっぱり?ってのはなんか心当たりがあるのか?デメテルと初めて飯を一緒に食べるとさ、大抵、みんな驚くんだけど……そういや、流星はあんまり驚いてないな」
うん、まあ……ね。知ってたし。
「う、うん。フォルと会う前に、紅茶をご馳走になったんだけど、その時に山盛りの水ようかんをね……」
「あぁ……それでか。そういや、さっきの味噌汁も、がぶ飲みしてたの見てたもんな」
納得した様子のフォル。それにしても、ほんとに凄い食べっぷりっだよなぁ。あの細い体のどこに入るんだろう??神さまって不思議だ。でも、フォルは普通の食事量だから、デメテルだけの不思議なのかな……?
「そうだ。食事の時に聞こうと思ってたんだけど、ご飯作る前に話してくれたじゃない?迷子の魂のこと」
「ん?あぁ。まだなんか知りたいことがあるのか?」
「その時にちょっと言ってた、迷子の魂以外の魂にも体を与えるとかなんとかって……あれってどういうことなの?」
迷子の魂以外の魂ってことは、普通に亡くなった魂ってことだよね??たぶん……。
「あーそれか。そうだな、あの説明だけじゃ分かんないよな。腹もいっぱいになったし、少し休憩がてら話そうか」
「ありがとね、フォル」
「いいんだよ。なんたって、他ならぬ流星の頼みだもんなー」
そう言って、少し頬を染めた微笑みで流し目を送る彼女。嬉しそうに見つめてくるその瞳は、とても澄んでいて美しく、思わずドキリとしてしまった。
フォル、凄く綺麗だ。そう意識した途端、なんだか急に恥ずかしくなって、僕は誤魔化すように、横に座るデメテルに声を掛けた。
「デメテル?フォルがさっきの続きを聞かせてくれるって!」
「~~~っ!!んぐっ!……はぁっ」
大丈夫かな?聞こえてないみたいだけど……。
「デメテルのやつ、いま喉に詰まらしただろ……しかも、また食べ始めたし。ま、いいさ。とりあえず、放っといて後で聞かれたら、説明してやればいいんじゃないか?」
「そ、そうだね……」
ほんとにすごい食欲だな。飲み物、注いどいてあげよかな。
「~~~~っ!ぁり……ぅ!」
よく聞こえなかったけど、彼女がお礼を言ったのだと、なんとなく分かった。
「う、うん、いいよいいよ。喉詰まらせないように気を付けて食べててね」
「流星、何飲む?紅茶が好きなら、あったかいロイヤルミルクティーもあるぞ?」
「じゃあ、それもらおうかな。ありがとね」
「OK!そんなら、アタシも同じのにしようかな」
僕の返事を受けて、フォルが亜空間からスティック状のものとポットを取り出す。
「あ!これ、よくスーパーとかコンビニで売ってるやつだ。こういうのも通販で買えるなんて凄いね!」
「へへっ。だろ?便利だよなーこれ。カップにこの粉を入れて、お湯を注ぐだけでいいんだもんな」
話をしながら、フォルが2人分のカップに粉をあけて、お湯を注いでくれた。
「ありがとう。まさか、天界でもこれが飲めるとは思わなかったよ。僕、ロイヤル好きなんだよね」
「これ、美味いよなっ。気に入ってくれて良かったぜ。まあ、デメテルが好きな茶葉からのやつじゃないけど、これはこれで良いもんだよな。手軽だしさ」
2人してスプーンでくるくるとかき混ぜる。ほんと、ここが死後の世界だなんて信じられないよ。ははっ、ごく普通の日常みたいだ。
「ロイヤルも好きだけど、アタシはココアが一番好きなんだ。コーヒーってやつも試しに買って飲んでみたんだけどさ、苦くてちょっとアタシには無理だったな」
言いながら、苦笑いする彼女。うん、分かる。分かるよ、その気持ち。僕もあんまりコーヒーは飲まないしね。
「フォルは甘いのが好きなんだね。なら、僕と一緒だ!コーヒーはね、ミルクと砂糖を入れると飲みやすくなるんだって!……僕も実は、苦手なんだけどね」
そんなことを談笑しながら、2人でアツアツのロイヤルを飲み、一息ついた。
「ところで、スーパーってあれだろ?流星たちの世界で食料品を売ってるところだろ?前に、話に聞いたんだ。天界にも実は、そういう店はあるんだぜ?知らなかっただろ?」
フォルがニヤリと笑う。神さまたちの世界にもお店ってあるんだ!?まあ、神さまだってご飯食べるから当たり前なのか。もしかして、商売の神さまがやってるのかな??
「そうなんだ!?へぇ!なんだか僕たち人間と共通点があって、面白いね!お店もやっぱり、神さまたちがやってるの?」
「いんや、街の店は全部、天使たちがやってるんだ」
「え!?そうなの!?」
天使さま?って呼んだ方がいいのかな?天界に来て色々、衝撃的だったけど、いまの情報もかなりの衝撃だったなぁ。
「全っ然、知らなかったよ。フォルたちとはどんな関係になるの?」
「天使は、アタシたち神をサポートしてくれてるんだ。色々とさ。仕事の面でも生活の面でもな。だから、天使たちがいなきゃ、アタシらは満足な仕事はできないだろうな」
そう言いながら、ロイヤルのお代わりを入れてくれた。2人同時に一口飲んだところで、また話しだすフォル。
「アタシらと天使は、なんだろ?まあ、言ってみりゃ――」
「大切なパートナーってところかしらね!でしょ?」
いつの間に食べ終わったのか、デメテルが満足げな顔をして会話に入ってきた。
「え?あ、あぁ。そうだな」
「デメテル!全部、食べ終わったの?そんなに食べて大丈夫??」
「もちろん!おいしいからいくらでも入っちゃうわっ」
この世の全ての幸せを手に入れたような、溢れる多幸感に浸るデメテル。そんな喜ぶ彼女を見てると、作ったかいがあったなって心から思うよ。
「最後の一皿はね、お夜食にとっておこうと思って、しまってあるのよ」
自分の亜空間を指差しながら、得意顔のデメテル。
「そ、そうなんだ。そんなに気に入ってもらえて良かったよ。ほんと」
「流星のお料理、大好きになっちゃったわ!……それで、いまは天使のお話の途中なの?」
「あぁ。流星に、アタシたちの世界にも店があるって話してて、その流れでな」
「そうなの。そういえば、まだ何にも説明してなかったものね。ごめんなさい、流星。お世話するって約束したのに」
申し訳なさそうに頭を下げるデメテル。
「そんな謝ることないって!デメテルにはほんとにたくさん、お世話になってるんだからさ。感謝してるよ」
「ありがとう、優しいのね」
「流星!明日からアタシもお世話してやるからな?」
にひひ、と笑うフォル。
「明日、レーア様にお会いするだろ?その時、アタシも一緒に行くからさ。街を色々、案内できると思うぜ?その方がアタシたちの世界のことが分かっていいだろ?なぁ、デメテル?」
「まぁ!それはいいわねっ。お母様に確認しておくけど、明日はたぶん、夕方くらいに家に行けばいいと思うの。だから、それまで街を見て回りましょうよ」
「ホント?それは楽しみだなー!ありがとう、2人とも!天使さまにお会いするのも楽しみだよ」
「そうか、流星からすると天使様になるのか。アタシたちにとっては、どっちが上とか下とかはないんだけどな」
「え?そうなんだ。フォルたちの方が立場的に上なのかと思ってたよ」
意外だな。神さまが天使を従えてるんじゃないんだね。神の使徒みたいな感じの存在なのかと思ってた。
「あ~それは、結構、誤解があるわよね。前に流星たちの世界の文化を覗いてみた時に、神話っていうのがあったわ。いま流星が言ってたようなことが書いてあったもの。神の使いだったかしら?」
「それそれ!天使っていうと一般的には、そんなイメージだと思うよ。たぶんね」
「へぇ……神の使いねぇ。ま、実際はさっき言ったように上下関係なんてないんだけどな。もし、街や店で悪さするような神がいたら、天使たちの裁きの鉄槌が下されるんだぜ」
神さまなのに、悪いことするの!?
「え?え?……悪さって?神さまが??」
「そうさ。色んな神がいるから、中には自分の心に負けて悪事に手を染めるヤツもいる。そこら辺は神でも人でも変わらないな」
そうなんだ……神さまって善の塊みたいな存在なのかと思ってたよ。
「なんか意外……ねぇ、天使さまの裁きって、やっぱり能力なの?」
「いや、あれは能力じゃなくて、単なるパワーだな」
ぱ、パワーッ!?
「天使は可愛いらしい見た目に反して結構、パワフルだからな。文字通り、鉄槌が飛んでくるぞ。パワー全開でな。当たると相当、ヤバいと思うぜ?痛いで済めばいいけどな」
「私、1度だけそれ見たことあるわよ?あれは確かに、防ぐのも避けるのも難しいでしょうね」
デメテルが恐ろしい目撃情報を追加して、僕の心を攻め立てる。裁きの鉄槌ってそういうことなの?物理的に鉄槌が飛んでくるんだ!?
「あとな、良いこと教えてやるよ。天使たちを束ねる大天使と呼ばれる方がいらっしゃるんだ。すごく気の良い方なんだぜ。アタシにも気さくに接してくれるしさ」
「だ、大天使……さま?なんだか恐れ多いな……」
「大丈夫さ!ちっとも恐い方じゃないから。でな、その方の座右の銘は強烈だぜ!?」
「ど、どんな?」
「ズバリ……『パワーは力なり』!」
だ、大天使さま……それは直訳ですけども!?
「ねぇ、流星。勘違いしないで欲しいんだけど、さっきフォルが言ってた良くない神は、すごく少数派なの。ほとんどは善良な神ばっかりだから、安心してね?」
デメテルの穏やかで優しい声が、僕を包み込む。少しでも不安を取り除こうとしてくれたのかな?ありがとう、デメテル。
「あと、地獄にいる神々だって私の知る限り、とっても素晴らしい方ばかりよ?もちろん、治めてる方もね。その方はすごく環境美化に力を入れてるの」
え!?地獄って神さまいるの??それに、環境美化って……?
「だから、行けば分かると思うけど、例えば、道や広場なんかのお掃除は頻繁に行われてるのよ。あとはね、お花や木を植える緑化活動も盛んなの。清潔だったり緑豊な場所は水や空気の質もより良くなるし、それが自然保護にも繋がるわ。とっても素敵よね」
キラキラした笑顔で、地獄の良さを説明してくれるデメテル。なんだか、想像してたのと全然、違うな。鬼がいて、針山とかボコボコ沸き立つ血の池があってさ……そんな感じかと思ってたよ。
環境を大切にしてるクリーンな地獄か……え?それってほんとに地獄??
「流星、どうした?なんだか面食らってる感じだけど」
「う、うん。ちょっと想像してたことと違いすぎて……」
「大丈夫?一気にたくさんの情報を聞かされて、混乱しちゃった?フォル、流星にもう一杯お茶もらえるかしら?」
フォルが手早く、カップに飲み物を入れてくれる。この濃厚な甘い香りは……ココアだ。
「ほら、流星。飲みな?熱いから気を付けてな」
「ありがとう、フォル。デメテルもありがとね」
ふぅ~……あぁ、おいしい。なんだか頭がリラックスするなぁ。
「これから少しずつ天界のことを知っていけばいいんだもの。焦って理解する必要なんてないわよ。ゆっくりといきましょうね」
「うん、ありがとね。でも、これだけは聞いておきたいな……フォル?」
彼女に話を振ると、分かってる、と言わんばかりに目配せしてきた。
「あの話だろ?知りたがってたもんな。いま風呂を準備してるから、沸くまで話してやるよ」
「あら、な~に?何の話なの?」
「迷子の魂以外の魂に体を与えるって話だよ。僕がさっきお願いしたんだ」
説明すると、納得したようにデメテルが頷いた。
「さて、話すか。実はな、迷子の魂のストレス問題よりも、今から話すことの方が問題としては大きかったんだ。普通、生命は死ぬと魂になって天界に来る。そして、天国行きか地獄行きかの審査を受けて、どっちかに行くんだ」
最後の審判ってやつだね。
「ある時、たまたま1人の神が、転生先で知り合った親しい者の魂を見つけたんだ。どこでだと思う?」
「まさか……」
「審査の場所ね?」
「そう、その通り。その魂が死んじまった直後で、審査の列に並んでたんだよ。でさ、良くないこととは頭では分かってたんだろうけど、その神もまさか会えるとは夢にも思ってなかったんだろうな。あまりの嬉しさと懐かしさで、その魂を黙って連れ出してしまったんだ」
今回もご覧頂いて、ありがとうございます。
神様たちの世界の情報が少しずつですが、語られました。
流星は、思ってたこととのギャップに驚いてましたね(笑)
神様による魂の連れ去り事件!?
次回に続きます。




