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20.それぞれの想い

デメテルの妄想は、激しさを増すばかり……!?

 フォルの妄想劇、凄かったなぁ。それにしても、僕のことをそんな風に思ってくれてたなんて。彼女のことを恋愛的な意味で好きかどうかなんて考えたことなかったな……けど、確かに大切にしたいとは思う。でも、大切にしたいって気持ちは、デメテルに対しても同じなんだよな。


 僕……どうしたいんだろ……。


「りゅうせいったらぁっ、『僕に触れると、愛という名の炎で火傷するぜっ』だなんて……そんな燃えてるあなたもス・テ・キッ!」


 うん……一言も、1ミリも、全くもって、そんなこと言ってないよね?彼女の妄想の中で僕は一体、どういう設定なんだろうか。聞いてるこっちが恥ずかしくて燃えそうだよ!?


「デメテル?デメテルっ!?大丈夫!!?」


 妄想絶賛全開中の彼女の両肩を掴み、ゆさゆさと懸命に揺さぶるも効果なし。ん?あ……マズい。ひっじょ~うにっ、マズいことに気が付いてしまった!肩を揺さぶると、目の前のマスクメロンがダイナミックに踊ってるじゃないか!!

 あーっ!見てはいけない!ここは我慢だ!僕まで妄想に入っちゃったら、もう誰もデメテルを止められない!!


「デメテル!お願いだから、正気に戻ってよ!僕に出来ることだったら、何でもするから!だから、目を覚ましてっ!」


 踊るマスクメロンを(見たいけど)見ないように、目を閉じて必死に呼びかける。すると――


「流星!今の本当!?何でもしてくれるの~~っっ!?」


 輝かしい笑顔のデメテルが、僕を見つめていた。


「あ、あれ……?で、デメテル、正気に戻った……?」

「……!?あ、あら?そういえば、私、どうしてたのかしら……?流星が褒めてくれて、それで……う~ん、記憶が曖昧ね。でも……なんだか、とっても幸せな夢を見ていたような気がするわ」


 そう話す彼女は、少し困惑気味ながらも、熱を帯びた頬に手を当てて恥ずかしそうに笑った。


「とりあえず、大丈夫みたいだね。はぁ~ほんとに良かったよ!」

「迷惑かけちゃったみたいで、ごめんなさい。でも、さっき聞こえたのは、間違いじゃないわよね?ねっ?」


 あ~……無我夢中で言っちゃったやつか。何でもするって……。


「う、うん……まあ。あ!でも、僕に出来る範囲でね!?」


 あんなに呼びかけてもダメだったのに、どうしてピンポイントでそこだけ聞こえるんだろう?謎すぎる。


「やったぁ!流星、ありがとう~っ!エプロン姿を褒めて貰えただけじゃなくて、何でもお願い聞いてもらえるなんて!ほんと、こんな幸運滅多にないわ!元々、私の中に幸運を引き寄せる、もの凄い力があったのかしら?」

「ないだろっ!?」


 上機嫌で語るデメテルに、即座にツッコむフォル。


「フォル!もう大丈夫なの?」


 僕の声掛けに、片手をあげて応えるフォル。良かった。もう大丈夫みたいだね。


「フォル、どうかしたの?顔がなんだか赤いわよ?」

「デメテル……アンタの性格が羨ましいよ」

「なによ、それ?どういう意味??」

「……なんにしても、2人とも元に戻ってくれて良かったよ」


 ふぅ……なんとか、これで一安心かな。でも、なんでこんなに疲れるんだろうか。まだ、これからご飯作るんだけどな……。

 

「それはそうと、流星、ずるいぞっ。アタシだってなんかお願い聞いてくれよー!」


 あぁ……まあ、そうなるか。


「う、うん。分かったよ。フォルも僕が出来ることで良かったら、何かお願い聞くね?」

「ほんとか!?やったぜっ!!」


 嬉しそうにガッツポーズをとるフォル。デメテルだけお願い聞くってのもフォルに悪し、まあいっか。なにより、こんなに喜んでくれてるんだもんね。


「なぁ、流星!お願い聞いてくれる代わりに、アタシも何かお願い聞いてやるよ……アタシにして欲しいこと何でも言っていいんだぞ?」

「あ~!じゃ、私も私も!流星にばっかり悪いものね。本当に何でもするから……だから、考えておいてね?」


 2人の女神さまが顔を真っ赤にして、嬉しそうな何かを期待するような表情でそんなことを言ってくれた。


「え……あ、う、うん。ありがと。じゃ、じゃあ、せっかくだから、考えておくね?」


 僕も急に恥ずかしくなっちゃって、2人の顔を見れなくなっちゃった。超絶美人な女神さまたちから、何でもしてあげるってこれ、相当なご褒美じゃない!?なんだか胸がドキドキしてきちゃったよ。

 

 さて、それじゃあ、気持ちを切り替えて早速、料理をしようかなと思い、2人に声を掛けようとしたところ――


「あ、あのね、フォル、後でちょっと話したいことがあるんだけど……2人で」

「……!?……ぁ……ぅ……あ、アタシ……」

「で、デメテル!?」


 え!?ま、まさか……また、あの()()!?


「え?ちょ、ちょっと!?フォルも流星も、ち、違うわよっ。さっきみたいなのじゃなくて、ほんとに普通のお話よ!……フォル、あなたとちゃんと、話したいと思ったの」


 そ、そうなんだ。あー良かった。また、あの爆発音が響くのかと思っちゃったよ。デメテルの言葉を聞いて、フォルも心底、安心したように額の汗を拭ってる。


「……デメテル!あ、あのさ……実はアタシからも話があるんだ……」

「フォル……?もしかして、()()()()?それだったら、僕も一緒に――」

「流星!……お願い、フォルと2人だけで話したいの。ごめんなさい。私、多分だけど、()()()()()()()()()()……」

「!?……デメテル、そうなんだな。分かった。流星、アタシからもお願いする。2人で話させてくれないか?その後、きっと、きちんと説明するからさ。な?そうだろ、デメテル?」

「えぇ、そうね。だから、それまでは何も聞かないで欲しいの……お願い」


 デメテル……フォル……。


「分かったよ。何も聞かないでおくね。でも、さっきみたいな爆発はもうナシだよ?」


 僕の言葉に、デメテルが大きく頷いてくれた。


「振動もやめてくれな?」


 フォルが念押しすると、彼女はただ、黙って微笑んだ。え?それはどっちの意味なの??


「そしたらさ、晩飯食べて、その後、流星に風呂に入っててもらおーぜ?アタシらはその間に話せばいいだろ?」

「そうね、それがいいかも知れないわね」

「OK!じゃ、僕、パパッとご飯作っちゃうよ」

「わぁ~っ!楽しみっ。私、さっきからお腹が鳴るのをずっと我慢してたのよっ」

「デメテルの腹の虫は凄いんだぜ?猛獣かっての」

「え~!そこまでじゃないわよっ!」


 2人とも仲が良いよね。何の話をするのかは多分、僕が考えてることで合ってると思う。僕のせいで、2人の今までの関係が変に壊れたりしちゃわないかな……もし、そうなったら、僕は……。

 

――ぐぅ~~~~~……


「あ……」

「…………」

「…………」


 誰とは言わないけど、お腹の音が盛大に鳴った。


「じゃ、じゃあ、作ろうかなっ。フォル?材料、そこに出してもらえる?」

「お、おう!任せろ!必要な道具一式は、引き出しとか開けてくれたら入ってるから、勝手に見てくれな?」

「りょーかい!」


 僕とフォルは、お腹の鳴る音を合図に調理を開始した。


「も、もうっ!これじゃ、私が鳴らしたって丸分かりじゃないのよ~~っ!」


 うん、まあ……そりゃ、分かるよね。



――調理開始、30分後


 デメテルとフォルが手伝ってくれたお陰で、思ったよりずっと早くオムライスを作ることができた。しかも、デザートにと思って、豆腐のアイスクリームも作ることができた。いまはデメテルの亜空間で絶賛、冷凍中だ。


「デメテル、足りない材料を買ってくれてありがとね!お陰で、前から食べたいと思ってたデザートが作れたよ」

「お役に立てて良かったわ。流星のお料理してるところ、とっても素敵だったわよ?」

「ありがとう。デメテルも人参切るの上手だったよ?ちゃんと、猫の手にしてやれば、指を切ることもないからね?」

「そうね。もう覚えたわ!それに、あのトーフ?だったかしら?混ぜるのも楽しかったわよ」


 嬉しそうに微笑む彼女は、料理を始める前とは比べ物にならない程、良い顔をしていた。良かった。料理する楽しさを体験できたみたいで。手つきはかなり、危なっかしかったけど、落ち着いてやればデメテルもちゃんと出来ていた。単に、今まで基本をあまり教えてもらったことがなかったんじゃないかな?


「さっき、混ぜてくれたのはデザートのアイスだからね。きっと、気に入ると思うよ?」

「えぇ!楽しみにしてるわ」

「フォルもありがとう。料理、さすがに上手だね!チキンライス、ほとんど任せちゃったけど、具の混ざり具合いといい、パラパラ加減といい、最高だよっ!」

「流星が教えてくれたからさ。ご飯とケチャップを入れる順番にも気を付けるなんて、料理って奥が深いんだなぁ」

「そうだね。それを間違えちゃうと、同じように炒めてもご飯がべちゃっとなっちゃって、あまり美味しくならないんだ」

「なるほど……なんでも手順が大事なんだな」


 フォルが頷きながら、空中に文字を書いていた。あれは、メモを取ってるんだろうか?まるで、SF映画でよく見る、立体ディスプレイみたいだ。凄いな。


「ねえねえ、これで完成なんでしょ?早く食べましょうよ?」


 待ちきれない様子のデメテルが、いまかいまかと催促してくる。


「そうだね。でも、最後に1つだけやることがあるんだ」

「あら、そうなの?」

「まだ何かあるのか?」

「それはね……オムライスのこの卵のところに、ケチャップで好きな文字を書くんだよ」


 そう言って、僕はお代わり用に作ったミニサイズのオムライスに、ケチャップでそれぞれ『デメテル』『フォル』と文字を書いた。


「す、すごいわ!これ!!」

「な!?料理に文字だと!!凄い発想だっ!」


 2人とも目を丸くして驚いている。そ、そんなにかな?


「う、うん、まあね。でも、僕が考えたわけじゃないんだけどね。さ、自分のに好きな文字を書いてみなよ」

「…………」

「…………」


 ん?2人が無言で頷き合ってる。


「どうしたの?」

「あのね、私たちのには、流星が書いてくれないかしら?」

「で、流星のには、アタシたちに書かせてくれないか?」

「え?うん、それは全然、構わないけど……」


 そう答えると、2人とも大喜びしてる。え?そこまで?……あ!さっき書いた名前を気に入ってくれたのかな?


「2人はケチャップをそのままだと書きにくいと思うから、ちょっと待ってね」


 デメテルたちに待ってもらって、僕はクッキングシートを手に取る。フォル、こんなものまで用意してるなんてほんとに、料理が好きなんだなぁ。クッキングシートを半分の半分に切って、それを円錐状に丸めていく。そして、出来たものにケチャップを入れる。よし、OK!


「流星、それはな~に?」

「これを使うと文字が書きやすいんだ。まあ、見ててごらん?」


 2人のオムライスにケチャップで文字を書き始める。まずは、デメテルのから。


『  デメテル 

 いつもありがとう!』


「わぁ~っ!流星、とっても嬉しいわっ!私の方こそ、ありがとう!」


 続いて、フォルのも書いていく。


『   フォル 

 これからもよろしく!』


「りゅ、流星……ありがとな!今まで生きてきた中で一番、嬉しいかも!?」


 ちょっとオーバーだけど、喜んでくれて良かったな。2人の笑顔が最高のご馳走だよ。


「じゃ、次はアタシたちの番だな」

「そうね……フォル?()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「!?デメテル……やっぱり知って……ん、分かった。書く場所はどうする?」

「ん~……なら、流星の名前を真ん中にして、左右にそれぞれ、流星へのメッセージを書くのがいいんじゃないかしら?フォル、お先にいいわよ?」

「じゃ、アタシからいくぜ」


 2人で何事か言葉を交わして、お互いに頷いて微笑んでる。何を相談してるんだろ?気になるけど、ここは大人しく待っておこう。



 さて、僕の分のオムライスにも書いてもらって、準備万端だね。


「遅くなっちゃって、ごめんね?さあ、食べよう!」

「美味しそうね~!」

「卵がまるで宝石みたいに光ってる!美味そうだなぁ!」


 僕たち3人は顔を見合わせて、呼吸を合わせる。では!


「「「いただきま~~す!!」」」


 このオムライス、見てるだけで恥ずかしいな。でも、デメテルとフォルの気持ちがこもってるんだもんな。ありがたく食べよう。そして、しっかりと味わおう。2人の想いも一緒に。


『  りゅうせい 

 大スキ   大LOVE』

今回もご覧いただき、ありがとうございました。

デメテルとフォルの想いが交錯する食卓。

彼女たちの想いは、流星に届くのでしょうか?

そして、流星の気持ちは……?


次回もぜひ、ご期待ください!




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