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12.運命

運命って不思議ですよね。

 デメテルの幼馴染で運命の女神、フォルトゥーナに僕が『人』だって、バレちゃったけど、大丈夫なのかな……?彼女は僕のことどう思ってるんだろう?そもそも、なんで、魂が体を持って天界にいることがダメなんだろう??一体、過去に何が……?


「話を詳しく聞きたいが、ここじゃちょっとな……目立ちすぎる。とりあえず、どこかに……」


 フォルが独り言ともとれる呟きを発し、デメテルに向き直った。


「そういえば、デメテル。アンタ、家に帰るとこだったんだろ?流星もか?」

「えぇ、そうよ。お父様とお母様に流星のこと、一度、きちんと話しておいた方がいいと思うの。それで、一緒に来てもらうことにしたのよ。その途中であなたに会ったってわけ」

「は~ん……その途中でイチャイチャしてたってわけか」


 デメテルが軽く睨んで、それはもういいでしょ!とフォルを牽制する。


「はいはい、からかうのはここらでやめときますか」


 手をひらひらさせながら、軽く流すフォル。凄いな、通じてる。さすが幼馴染だね。どれくらいの付き合いがあるんだろう?今度、聞いてみようかな。


「帰るんだったら、アタシと途中まで方向は一緒ってことか。なぁ、それなら、レーア様に話す前にちょっとアタシんちに来ないか?3人で作戦会議といこーぜ?」

「作戦会議……?一体、何をするつもりなの?」

「それは、着いてからのお楽しみさ」


 フォル、絶対、面白がってない?さっきのあの真剣な表情は何だったんだろ?デメテルもきっと、同じことを思ったんだろうな。僕たちは顔を見合わせ、お互いに苦笑した。


「連いていくしかなさそうね」


 デメテルは肩をすくめて呟き、僕と腕を組み寄り添って歩きだした。



――それから体感で15分後


 僕たち3人は、神さまの街が程よく見える小高い丘の上に来ていた。そこには、大きな家が建っており、一見すると立派なログハウスのようだった。


「ようこそ、流星!デメテル!我が家へ!歓迎しよう!」


 フォルがやや、芝居がかった口調と仕草で僕たちを迎えてくれる。


「凄い立派な建物だね!これ、なんだかログハウスっぽいや」

「そうだろそうだろ?これな、デメテルに頼んで買っといてもらった本に載ってたんだぜ!一目見て気に入っちゃったからさあ!アタシが造ったんだ」


 ふふん、と得意顔のフォル。


「え?これ、フォルが自分で建てたの!?」

「あら、本当に造ってたのね?」


 凄っ!まさに神業とはこのことだよ!


「さあ、入りなよ」


 僕とデメテルの背中を押して、グイグイと進んでいく。


「へぇ!中も凄いね!まるでホテルみたいだよ」


 中に入ると、見た目以上に広く天井もかなり高い造りになっていた。それが相まって、ゆったりとした落ち着きのある空間を演出している。

 ほんとに凄いな。まるで、旅館やホテルみたいな立派な調度品もあるし、ああいうのって通販で買ったんだろうか?


「ねえねえ、何の本に載ってたの?建築とか住宅の本??」

「あら、それって結構、前に渡した本のこと?」


 デメテルがごそごそと、亜空間に手を突っ込みながらフォルに尋ねる。それにしても、亜空間って不可思議なものでも何度も見てると、見慣れてくるんだな。なんだか、当たり前の光景になってきた。慣れって凄いな。


「あの本だったら、私も気になったから同じようなの買ったのよね……んしょ、どこだったかしら?……あ、あったわ!これよこれ」


 流星、はいど~ぞ、と渡された本……それは、旅行雑誌だった。


「え?こ、これ??」


 なんで旅行雑誌?家とどう関係するんだろ?


「おー!デメテルも買ったのか?それ、いいよなー!!『旅行』って色んな場所に行けるんだろ?『温泉で一杯』ってなんか楽しそうだよなー!!行ってみたいぜ」


 心底、楽しそうな様子で語るフォル。 まあ、旅行は楽しいけどさ……神さまならどこへだって行けるんじゃない?そう、僕が疑問を口に出そうとすると――


「あ、あのね、流星。私たちの世界――天界や天国、あと地獄もだけど、『旅行』っていう概念はないのよ。そもそも色々な場所に行って観光するってこと自体、私もこの本を見て、初めて知ったんだから」


 デメテルがそう教えてくれた。


「え!?そうなの?」

「流星は地球育ちだけど、私たちって生まれた時から天界や天国にいるじゃない?こっちの世界には地球みたいな場所がないから、多分、他の神たちも知らないと思うわ」


 あーなるほどね。確かに地球じゃ当たり前の感覚だけど、旅行って考え自体がないんなら知らなくて当然だよね。


「それに、色んな星で転生はするんだけど、旅行なんて考えもしなかったわ」

「そっかぁ。なら、いつか皆で旅行に行けたらいいね!」


 軽い気持ちで言ったつもりだったんだけど……2人は――


「えーーー!!行きたい行きたいっ!!絶対だぞ!?」

「わぁ、素敵ね!色んな場所に行ってみたいわ~!海や山や空、それに、流星のお家!キャッ、恥ずかしいっ」


 ダブル女神さま、大興奮。あと、海と山は分かるけど、空と僕の家って?


 ようやく興奮が収まったのは、それから1時間後のことだった。結構、時間かかったな。まあ、僕も会話に参加しちゃったし、2人の楽しそうな姿が見られたからいいかな。

 それにしても、デメテルとフォルってやっぱり仲が良いんだね。親友か……羨ましいな。


「んんっ。わりぃ、つい盛り上がっちまった。『旅行』のことなんて他の神と話したことなんてなくてさ」

「私もごめんなさい。流星の地球でのお話、とっても楽しくて、つい……」


 2人とも申し訳なさそうにしていた。


「ううん、僕も楽しかったし全然、大丈夫だよ。それより、時間はいいの?デメテルのご両親はどのくらいで帰ってくるの?」

「時間なら大丈夫よ?いま19時だもの。お母様たちは、普段18時までお仕事なんだけど、最近はお帰りになるのが遅いのよね。大抵、家に帰ってくるのは21時ってところね」


 あ、気が付かなかったけど、もうそんな時間なのか。そういや、さっきまで夕焼けだったのにもう外暗いもんな。勤務時間、9時~18時なのかな?日本みたい。神さまも残業ってあるんだね。大変だな……。


「さて、それじゃ、作戦会議といくか!」

「ねえ、フォル。お母様たちに普通に話すのではダメなの?」


 そうだね、僕もそれが聞きたかった。なんかマズいのかなぁ……?


「あのな、普通に事実を話したって、レーア様は母親としてはデメテルのことを信じるだろうよ。でも、大神帝様の右腕としてはどうかな?はいそうですか、と規則を破った者を易々、見過ごさないと思うぜ?例え、娘でもさ」


 ……!?なんだって!!?


「ちょっ、ちょっと待って!僕のことでデメテルが罰を受けるっていうの!!?」

「あるいはな」


 フォルが、当然、といった顔で頷く。


「そんなのダメだ!絶対にダメッ!!僕はどんな罰を受けてもいい!でも、デメテルはただ、僕を救ってくれただけなんだよ!?それなのに、処罰されるなんておかしいよっ!!」


 そうだよ。そんなことぜっっっったいに、させない!!神さまだろうがなんだろうが、デメテルを守らなきゃ!!


「りゅ、流星……ちょっと、落ち着いて?ね?まだそうと決まったわけじゃないのよ?」


 驚きと怒りで興奮してしまった僕を、宥めるように抱きしめるデメテル。その顔は初めて見る僕の様子に戸惑っているようだった。


「デメテル!こんな理不尽なことってないよ!?君は純粋な気持ちで僕を救ってくれただけなのに……!罰を受けるっていうなら、それは僕の方だ。ここにいちゃダメなのはデメテル、君じゃなくて僕の方なんだから!」

「だ、だめよっ!そんなのだめ!許さないわっ!流星は私が勝手に天界(ここ)へ呼んだのよ!?罰を受けるべきは私だわ!流星は……あなたは、妹を助けようとしてくれただけなんだから……」


 デメテルはいつの間にか泣いていた。必死に僕を庇ってくれるそんな彼女を傷つける奴は、神さまだろうと絶対に許さない!


「……アンタたち、本当に愛し合ってるんだな。もう、さっさと付き合っちゃいなよ」


 事も無げにフォルが言葉を投げてくる。


「…………」

「…………」

「…………」


 ……しばしの沈黙。それを破ったのは、フォルだった。


「悪かったよ。ごめんごめん、ちょっと2人を試したんだよ。事情を聞く前にアンタたちがお互いにどう思ってるのか、知っておきたかったんだ。ま、予想はついてたけどな」

「え……じゃ、じゃあ、罰っていうのは?」

「そんなものないさ。実は、なんの因果か迷子の魂が天界にくることはたまにあるんだ。で、魂だけだと、魂にもの凄く負担がかかるから体を一時的に与えたりするんだ」


 そうなの!?ふと見ると、デメテルも驚いているようだった。


「え?え?なによ、それ……私、そんなこと初めて聞いたわよ?」

「言ってなかったっけか?アタシ、運命を司ってるだろ?以前、レーア様から迷子の魂を保護するようにって仰せつかったんだ。その魂の運命を良い方向に向かわせてやってほしいって」

「そ、それじゃ……魂が体を持って天界にいるのが禁断って規則はなんなのよ……?」


 デメテルが若干、戸惑いながらフォルに詰め寄る。すると、フォルは平然と言い放った。


「あぁ、それ?レーア様とアタシで流したデマ」

「…………」

「…………」


 ニッコリ微笑むフォル


「「えーーーーっっっっ!!!!」」




今回も読んでもらえてありがとうございます。

フォルもまだまだ活躍します。

次回もお楽しみに!


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