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10.天賦の才

今回のお話は、流星の妄想がちょっと入ってます。

 アルテミスさまって本当に凄いんだなぁ。いくら女神さまとはいえ、写真を見る限り、まだ幼いのに『隕石落とし』って……半端ないな。

 一体、どんな時に使うんだろ??


「ねえ、デメテル。アルテミスさまのその能力って、どういう場合に必要になってくるの?」

「う~ん、そうよね。星を見守るって言っても漠然としてるから、流星にはいまいち分かりづらいわよね?」


 あんまり、そういったことに関わったことないからね。当たり前だけど。


「例えば、そうねぇ……分かりやすいのは、やっぱりあれかしら?巨大な隕石が星に近づいてる時に、それにぶつけて軌道を逸らすっていうのは、やったりするわね。そのまま星にぶつかっちゃったりしたら、大変じゃない?」


 おお!そんなことが出来るんだ!?すごっ!


「あとは、その星の生き物に関わることなんだけど、最初の生命の誕生だったり、進化の過程の時にある種の有機物が足りなかったり、そもそも存在してない場合があるの。そういう時に、必要な有機物を含んだ隕石を落とすってこともあるわよ?」

「へぇ!?そうなんだ?それは重要な役目だね」


 良かった!ちゃんとした目的や理由がやっぱりあるんだね。そうだよ、あんな無邪気な笑顔を見せるアルテミスさまが、そんな攻撃型なわけないよね。

 あー良かった。


「あとは、悪を滅ぼす時にも落とすわね。こう……ひゅ~ん、どんって!」


 いやいや、どん!じゃ済まないでしょ……っていうか、攻撃にも使うんだ。マジすか。


「じゃ、じゃあさ、その1つ上の能力も使えるって言ってたでしょ?そっちのはどんな能力なの??」


 まさか、連続して隕石ってことはないよね?……そうですよね!?アルテミスさま!!


「あら、気になるのね?うふふ、いいわよ~?教えてあげる。流星が私たちのことに興味もってくれるのって、とっても嬉しいもの」

「うん、まあ……ね。興味はあるよ?やっぱり」


 あと、アルテミスさまに攻撃型以外の能力があって欲しいっていう願望もある。


「本来、覚えるのがまだ難しい年齢で、上位の能力を発現させたっていうのはもちろん、凄いことなんだけど、あの子の才能の光るところは何より、同じ『(ゼータ)』クラスでもその威力が飛び抜けてるところなのよ!」


 ドキドキ。どうか攻撃型じゃありませんように。


「最近、覚えたばかりなんだけど、ちゃんと載ってるかしら?……あ!あったわ!登録されてるわね」


 僕からはタブレットの画面が光ってよく見えないけど、どうやらあったみたいだ。あー、ワクワクドキドキしてきた。そういえば、なんか試験の合格発表の時みたい。聞くのが怖いような、でも、聞きたいような。


「これね。【星降る夜に】よ。まあ!素敵な名前を考えたのね!」

 

 おおぉっ!やったっ!!すっごくロマンチックな感じ!これは絶対に、癒し系の効果でしょ!?


「ホントだ!とってもキレイな名前だね!それに、神秘的な感じもするし、なんかこう、空全体にバーッてたくさんの星が煌めいてる光景が目に浮かぶよ」

「ふふっ、そうね。あの子、意外とこういうセンスいいのよね。それで、呪文なんだけど……【星降る夜に(メテオ・ストーム)】って唱えるみたいね」


 ……なんですと!?いま『メテオ』って言ったの?それって某有名RPGによくでてくるけど、まさかソレ系じゃないよね?違うよね??


「流星のさっきのイメージ、大正解よ!これはね、数多の流星が集まり巨大な流星群となって、まるで隕石が嵐のように地表に降り注ぐ、そんな能力よ!」


 うん……その可愛らしい笑顔がいまはちょ~っと辛いかな。あと、全っ然、大正解じゃないからね?僕がしたイメージとかけ離れてるよ?それだと、僕が隕石を落とされる側みたいになっちゃってるから。



『……辺りは次第に、宵闇(よいやみ)から夜の闇へとその(さま)を変えていた。空を見上げると、まるで、宝石箱をひっくり返したように光り輝く満天の星々。肌をくすぐる軽やかな風がとても心地良く、昼間の暑さで火照った体を癒してくれるようだった。時折、キラッと光るものが見える。視線を向けると、流れ星がひと際明るく輝き、一筋の光を残しながら空の彼方へと消えていく。そんな穏やかでゆったりとした時間が流れていく、愛し合う2人だけの空間。


”静かね……世界中であなたと2人きりになったみたい。いまとっても幸せよ”

”光栄だね、僕もさ。君と2人ならいつだってどこだって天国だよ”

”じゃあ、私は天使かしら?”

”いいや……君は出会った時から女神さまだよ。僕だけのね”

”まあ!うふっ”

”はっはっはっ”

”ねえ、見て!流れ星よ!素敵ね”

”ホントだ。でも、君の方がずっとずっと綺麗で素敵さ”

”まあ!うふふっ”

”はっはっはっはっ”


とか、なんとか言っちゃって、そして、2人は肩を寄せ合い、それから……』



「――――せいっ!――うせい!?……流星ってば!?大丈夫??」

「……ハッ!」


 見ると、デメテルが心配そうに顔を覗き込んでいた。


「あ、いや……大丈夫だよ。ごめんね、心配しちゃった?あまりにインパクトが強かったから......」


 危ない危ない。あんまりイメージとかけ離れてたから、頭の中で妄想が始まっちゃってたよ。即興にしては台本、完璧だったな。


「流星が驚くのも無理ないわよ。だって、下手するとこの能力、更に上位の『(ニュー)』にも匹敵するもの。私の妹ながらもの凄い才能だわ」


 お母さんが大神帝さまの側近で、『極大(オメガ)』だったかな?それを使えるんだもんな。アルテミスさまだってその血を引いてるわけだし、凄い才能を受け継いだのかも知れないな。

 でも、ひょっとすると、デメテルだって僕がまだ知らないだけで、とんでもない能力の持ち主なのかなぁ??


「本当に凄いよね、アルテミスさまって。きっと努力もあったんだろうけど、こういうのを本物の天才っていうのかな」

「ね~え?アルテミスのことばっかりじゃなくて、私のことも知りたくな~い?」


 そう言うと、少しすねたようにグイグイと体を密着させてくる。デメテルって照屋さんなのに、こういうことしてくるよね。そんなところも可愛いけどさ。


「はは、ごめんごめん。もちろんだよ。デメテルのことは何だって知りたいに決まってるよ!教えてくれる?」

「あら、言わせちゃったかしら?」

「そんなことないよ。本心だよ?それにしても、アルテミスさまのことを話してる時って、いつも嬉しそうだよね?」


 妹大好き!って気持ちが伝わってくるもんな。


「え~?そうかしら?でも、そうかも知れないわね。だって、自慢の妹だもの!」

「ははっ、きっとアルテミスさまもデメテルのこと、頼りになる素敵なお姉ちゃんって思ってるよ」

「ありがとう!そうだといいな~。あ、そうだわ!私専用のページがあるんだけど、一緒に見ない?アルバムにもなってて、私の写真もたくさん載ってるわよ」


 そう言って、体をより強く密着させてタブレットを差し出してきた。デメテルの柔らかな感触と心地よい重みに思わずドキッとする。

それと同時に、周囲を薔薇の花のような甘い香りが優しく包み込み、彼女をより一層、強く感じずにはいられなかった。


「ん~?なあに?」


 デメテルは優しく微笑みながら尋ねてくるが、その頬は紅潮しており、どうやら夕陽のせいだけではなさそうだった。僕の心臓の音が信じられない程、大きく鳴り響き、彼女にも聞こえてしまわないか心配だった。


「デメテル……」

「流星……」


 彼女はまるで、 蒼 玉 (ブルーサファイア)を思わせるような美しい瞳で僕を見つめた。やがて、意を決したように(まぶた)を閉じ、心なしか顔を上に向け僕を待った。


「デメテル……」

「流星……ん」

「デメテル……」

「流星……じらさないで早くぅ……」

「デメテル……あの、とっても言いづらいんだけどさ、いつの間にか僕たちの後ろに女の人が立ってるんだ……」

「え?」

「な~に、やってるのかな?お・ふ・た・り・さん?」

「……!?きゃあっっ!!」


 そこには、夜空に煌めく星のように美しい白金髪(プラチナブロンド)を風になびかせ、1人の女性が立っていた。彼女は、まるで新しい玩具を見つけた子供のように、悪戯っぽく満面の笑みを浮かべていた。


「フォ……フォル!?あなた、一体、いつからそこにいたのよっ!?」

「んーとねえ、アンタがタブレットをそこのカレに見せようと、()()()()()()体を寄せてたとこからかな?」


恥ずかしそうに両手で顔を覆い、身悶えするデメテルを尻目に、フォルと呼ばれた女性は、からかうような声で続けた。


「でも、アンタたちの声はその前から聞こえてたよ。確か『私のことも知りたくな~い?』って、これまた、()()()()()()甘えた声を出してたとこくらいからね。んーふっふっふっ、アタシ、耳はいいんだよね。ま、耳以外もいいけどさ。」


 え……結構、前からじゃない?それ。割と長い時間、見られてたのか。どうしよう、すっごく恥ずかしいんだけど。

フォルと呼ばれた彼女は何者なんでしょうか?

次回にどうぞ、ご期待下さい。

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