草原での出会い
今度はきちんと地面に足がつく感覚がした。
期待をこめ、あたりを見渡す。
「おー。すご…」
今度は思っていたような街並みが広がっていた。
運営さん、作り込みがすごいね。ここまで作り込むのに何年かかったんだろう。
あ、変な感覚がすると思ったら羽が生えてるんだ。人間の身体にはないからね、違和感を感じるはずだ。
白で先端だけ黒になってる。案外でかい。
──ばさっばさっ。ばさっばさっ。
お、飛べる。ゲーム補正かな?初めてなのにバランスがとれる。これが足みたいな感覚だ。ふむ…バランスがとれなくなる感じではないね。バランス崩さない自信ある。
「そこのお婆さん。荷物運ぶの手伝いますよ」
「あら、ありがとうねぇ。歳を取ると力が入らなくて…」
「それは大変ですね。ぜひ若い人の力を借りてみてはいかがですか?」
お婆さんよぼよぼだもん。いつか転んじゃうよ。そしたら荷物がすってんころりん…大変なことになる。
「そうするよ。ありがとね。───ここが私の家だよ。少ししかないけど…」
「いいんですか?ありがとうございます。」
「じゃあ、またねぇ。堕天使さん」
「いえいえ。また機会があれば。」
《1200フィネを手に入れた》
5分くらい歩いたところでお婆さんの家に着いた。
よかった…。荷物重かったんだもん。これ以上は厳しかった。
「さてと…どこ行こうかな。」
やっぱりここは王道の冒険者ギルドに行くべきかな。
マップにピンさして…。わかりやすくなった。
すたすた、すたすた…。
よし、着いた。分厚いドアを開ける。
中はカウンターとその奥の部屋がある。なんの部屋なんだろ。
「旅人なんですけど、最初はどこに行くのがおすすめですか」
「そうですね…。やっぱり、"風なき草原"でしょうか。レベルを上げやすいです。でもその前に、冒険者ライセンスを発行いたします。カードの丸の中に血を垂らしてください」
そう言って目の前に針が差し出される。
なるほど、これでさせってことね。
──ぷすっとな。
穴が小さいからすこし待ってから垂らす。
垂らすと、ぴかーんと一瞬カードが光った。
「はい、こちらで冒険者ライセンスの発行を終わります。お受け取りください」
「どうも。……他の旅人はいないのですか」
「さっきまでたくさんいたんですけど、ピークが終わったみたいで。今は全然いないんですよね。」
「そっか」
「あ、ぜひクエストを見てから"風なき草原"に行った方がいいですよ。素材募集も張り出されているので、その魔物を中心に狩ることが出来るので」
「ん。ありがと」
クエスト一覧を見る。
………ウィンドラビットねぇ。
序盤はやることないし、そこで狩りするかぁ。
──というわけで、風なき草原とやらに来た。
人たくさんいるね。邪魔だから奥行くか。
奥は全然いないなぁ。助かる。
他のプレイヤーに魔法が当たるとめんどくさい。これが魔法職の悩みか…。
「ッてぇなぁ…!」
「…だれの声」
どこからだろう。序盤で詰まる人はあまりいないと思うし…ゲームによくある、エリアボスのところとか。
そう考えたってエリアボスがどこかわからない。
「ッチ」
「今度は舌打ち…あぁ、あそこら辺か。」
ちょっと手伝いに行くか。手伝われるのが嫌だとか、そういう場合ならさっさと立ち退くけど。
さらに奥に続く道を通ると、さらに声が大きくなった。
どうやらあたりだね。
「嫌だったら蹴って」
パーティ加入申請を送る。
するとすぐ受理された。反応速度早いね。
「…ん。手伝え。倒せれば何でもいい」
「【ヒール】。MP消費2ね…。他のも同様と。全然平気かな。【バフ:攻撃力】【バフ:防御力】」
「ふんっ。おらっ!!」
とりあえず傷だらけだからヒールをかける。
あとはサポートのバフ。
私、Lv.1なんだけど。なんでチュートリアル以降初めての戦闘がエリアボスなんだよ…。
「せっかくだし。【スター】重ねるような位置で【ノヴァ】」
「【インパクト】【バーサーク】【インパクト】!!」
スターもノヴァも消費MPは10と。重い。残り24か。まー行けるかな。
さっきの魔法でめっちゃ削れた。楽しー。
「さっきの使えねぇのか!?」
「使ってもいいけど。そうするとMPが4になる」
「ッチ…ならいい!」
こいつ、性格悪そうに見えて普通にいい人っぽい。うん。
「【エスフェルト】」
「【フレア】【ウォーターボール】」
ほぼ無心で口を動かしていると、エリアボス──暴風のスライムのHPバーがポリゴンとなって消えていった。
「…あー、なんだ、その。ありがとな」
「どういたしまして。」
「え、えーっと…フレンドになってほしい…」
そう小声で言った言葉はきちんと私の耳に入った。
「もちろん。…君の名前は」
「グレ。お前は」
「ステラ。フレ申送っといたから、またね」
「待てよ」
そうローブを引っ張られる。
…まだ何か用?