7
文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。
ユニシスの姿が見えなくなるとカーリムは候補に向き直った。
「今回はお咎めなしだったが、今後こんなことをすればただではすまないことを各々肝に銘じるように」
そう言って、改めてシーディの膳を祝い膳と交換するよう指示を出した。
そうは言ったものの、郷土料理を配膳した宮女は追放を免れなかった。それでも打ち首は避けられたことにシーディはほっと胸を撫で下ろしたのだった。
習い事が終わると、出された郷土料理は包んでもらい、部屋でリンたちと一緒に食べることにした。
部屋に戻り、引戸を開けるとリンがとても礼儀正しく待っているのを見てユニシスが部屋に来ているのだと気づいた。
部屋へ行くと思ったとおりユニシスが炬燵に入って寝転んでいる。
「陛下、そこで寝てしまうとお体に障ります」
そう声をかけると、ユニシスは起き上がりシーディに言った。
「私の体はそんなに柔ではない。ところであの料理を持ち帰ったか?」
目的はコジの郷土料理だったのかと思いながら、ユニシスに郷土料理の入ったお重を見せるとリンに器に盛って持ってくるように言いつけ、自分も炬燵に入った。
「今お出しします」
「そうか、楽しみだ」
そう言うとユニシスはシーディを見つめて言った。
「ところで、今日のことだが。お前が嫌がらせを受けていたから間に入ったわけではない。それをお前はわかっているか?」
当然だろう。きっとユニシスなら誰が嫌がらせを受けていようが間に入ったはずだ。それに、そうでないと示しがつかない。
「はい、ですがあのような場面であのような対応されたのは陛下の思いやりなのだと理解しております」
そう答えたところで郷土料理の入った器が出てきたので、シーディはそれを小皿によそってユニシスに差し出し微笑んだ。
それを受けとるとユニシスは言った。
「そうか、わかっているならいい。それと今回はあの宮女に対し大目に見てやったが、今後このようなことがあった時に甘い対応をしていれば示しがつかない。それもわかっているだろうな?」
シーディは頷く。
「理解しております。ですが、私に配膳した者は、配膳してもしなくとも同じ運命だったのではないでしょうか。おそらく家族にお金を払うことを約束し、自分が死罪になるのも構わずあんなことをしたのだと思います。それを考えると元々平民で断ることのできない同じような地位にいた私としては、放っておけなかったのです」
それを聞いてユニシスは少し考えると頷く。
「それは我々とは相容れない考え方だ。だが、そういった意見もあるということは理解した。さて、面倒な話はさておきこの郷土料理を楽しむとしよう」
そう言ってユニシスは嬉しそうにコジ芋を頬張った。
ユニシスが来ない時は、ほぼ宮女たちの休憩室になっているシーディの部屋の噂は、スエインたち候補の耳にも届いているようだった。
なにか嫌みを言われたとしても、自分の部屋をどう使おうと勝手だし上から注意されるならまだしも、ただの候補にどうこう言われる問題でもないので、堂々とすることにしていた。
そんな時、部屋にもどる途中でなるべく関わらないようにしていたスエインと不運にも廊下ですれちがってしまった。
軽く一礼し無言で立ち去ろうとしているところへ、いつもなら挨拶もしないスエインが声をかけてきた。
「こんにちは、シーディ」
「こんにちはスエイン様」
シーディは挨拶を返すと、面倒臭いことになりそうだと思いその場を素早く離れようとするが、スエインは簡単には逃がしてくれない。直ぐにもう一度呼び止められる。
「待ってシーディ、訊きたいことがあるの。貴女、ご存じかしら?」
「なんでしょうか」
「宮女たちが、誰かの部屋を溜まり場にして品のない集まりをしているようなの。私は卑しい、あるまじき行為と思っているのだけど。シーディはそれについてどう思うかしら?」
シーディの部屋に宮女が集まっていることを知っていて、そんな質問をするスエインに対し感じが悪いと思いながら答える。
「ですが、宮女にも息抜きは必要ですし、我々に迷惑がかからなければ問題ないのではないでしょうか。それに明らかに問題があるのなら、上からお達しがあると思います」
「あら、では乱れた宮女たちの行いを貴女は見て見ぬふりをするということ?」
そう言ってため息をつくと、残念そうに呟く。
「まさか貴女がそんな考えだなんて……」
そう言われシーディは少しムッとした。
その時、背後から声がかかった。
「ずいぶん楽しそうな話をしているな」
そう言って声をかけてきたのはユニシスの寵姫、スンだった。
シーディもスエインも慌てて頭を下げる。
「で、誰が誰の部屋に集まっていると言うのだ?」
スエインはニヤリと笑うとシーディを一瞥し答える。
「最近、私たちに付いている宮女が、その、ある候補の部屋に集まってサボっているという噂があるのです」
「ふ~ん。なら、そのせいでお前は困っているというのか?」
すると、スエインは少し苦笑いをしながら答える。
「いえ、今のところまだ困ったようなことはありません。ですが、風紀が乱れるというか、そういったことは放っておくと後々問題になったりもしますし。どうかと思ったもので、シーディに相談していたのです」
「そう。困っていないのなら特に問題はないだろう」
「え?」
「は?」
スエインとシーディは同時に驚いてスンの顔を見つめた。これにはシーディも驚いた。シーディの前世の記憶では、スンはとても厳しい方だったからだ。
スエインは慌てて答える。
「ですが、このままでは今後問題が起こるかもしれません」
「どんな?」
「えっとそれは、宮女たちが仕事をちゃんとしなくなったりとか……」
スンは微笑むと答える。
「実はこういったことは以前にもあった。だが特に問題は起きなかった。風紀が乱れたなら、それはそれで注意したしな。だからそんなに目くじら立てることでもないと思うが?」
スエインは黙り込んだ。そんなスエインにスンは優しく話しかける。
「まぁ、お前が心配する気持ちもわかる。だが、そんなに気を張る必要もあるまいよ」
そう言われたスエインは少し不満そうにしたが、頷くと答える。
「はい。そうですね」
そう答えると、スエインは頭を下げてその場を去っていった。それを見送るとシーディも頭を下げ、その場を去ろうとした。だが、スンに呼び止められる。
「まて、お前の部屋で炬燵に入りみながくつろいでいるのは私も知っている」
シーディは、先ほどスンはああ言っていたもののシーディにも注意するのかもしれないと思いながら頭を下げた。
「申し訳ありません」
すると戸惑ったようにスンは言った。
「どうした、なにを謝る」
誤字脱字報告ありがとうございます。
※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。
私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。