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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 着いたその日は、特に予定もなく言葉通りゆっくりさせてもらった。待遇は至れり尽くせりで、シーディの部屋から見える外の景色も美しく、それを眺めながらシーディはリンと一緒にお茶を飲んだりして過ごした。


 リンは最初『私がシーディ様のお茶のお相手をするなんて』と、距離を取ろうとしたが、できれば同じ年代のリンとは友達になりたかった。だから話し相手も仕事のうちだと説得した。


 以前寵姫として来たときも、そうやって牡丹付きだったランに無理を言って困らせたことを思い出す。


 彼女は元気だろうか?


 そんなことを思い出しながら過ごした。


 翌日も午前中は用事がなかったので、リンとおしゃべりをして過ごしゆっくり身支度を整えた。


 午後になりリューリが迎えに来て案内し、ある部屋の前で立ち止まる。


「こちらです。お入りください」


 そう言われ足を踏み入れると中はまるで学舎のような畳部屋で、十個以上の机が並んでいた。そこにシーディと同じ年齢ぐらいの少女たちが三人ほど先に来て座って待っている。


 彼女たちはシーディが来たことに気づくと、一斉に振り向いてシーディを見つめた。


 全員が明らかにシーディが着ている漢服よりも派手で、高級そうな装飾品を身に着けている。


 シーディは一瞬でここに集められた彼女たちが、平民ではなく貴族か豪族の娘だろうと気づいた。


 彼女たちは、シーディを上から下まで品定めをするように見つめるとクスクス笑いながら、他の娘たちと目配せしていた。


 嫌な雰囲気。


 シーディはそう思いながら前世で、後宮のこういった女同士のやり取りを何度となく見てきたことを思い出す。


 その時の経験でこんなことで気を揉む方が馬鹿馬鹿しいことはよくわかっていた。なので、相手を刺激しないようにしおらしく案内された場所に座った。


 それにしても、一体なんのために集められたのだろう?


 そう思いながら待っていると、ひとりのおっとりした感じの青年がやって来て前方にある一段高くなった場所に立った。


 そして全員の顔を見渡すと微笑む。


「はじめまして、私はカーリム。今後君たちにはこちらで様々なことを学んでもらうことになったんだけど、私はその教育係をすることになっている」


 そこで一番派手な格好をしている女性が軽く手をあげた。それを見てカーリムがなにかを思い出しているような顔をして言った。


「確か君は……、スエイン・ロ・シャリスだったね。なにかな?」


 スエインは微笑むと答える。


「はい。私は貴族の娘として、生まれてから今日までありとあらゆる教育を受けて参りました。もちろんだからこそ教養はとても大切なものだということも十分承知しております。ですから教養のないような……」


 そこまで言うとスエインはちらりとシーディを一瞥し、視線をカーリムに戻して続ける。


「そういった教育を受けられない可愛そうな方にこそ教育が必要だと思うのです。ですから、そのような方にカーリム様のご指導を集中された方が良いのではないでしょうか?」


 シーディ以外がクスクスと笑う中、カーリムは優しく微笑む。


「君は確か十五歳だったね、スエイン」


 思いもよらない質問に、スエインは驚いてカーリムを見つめる。


「はい、そうです」


「そうか、君はまだ十五年しか生きていないということだね? では、たった十五年で覚えた教育で十分だと君は思うの?」


「えっ? いえ、そういうわけでは……」


「うん、良かった。なら私の話が聞けるね?」


「はい」


「よろしい」


 カーリムは満足そうに大きく頷き、その場にいる全員を見渡した。


「さて、本題に入ろう。君たちにこうして集まってもらった理由を話さないといけないね」


 そう言って一呼吸する。


「君たちは、預言者サンタス様をご存知かな?」


 シーディはその予言者を知っていた。彼の予言は、九分九厘当たると言っても過言ではない。


 だが、予言したいことを予言できるわけではなく、突然お告げがあるらしい。だから、お告げがあったことしか予言できないそうだ。それでも凄いことは確かだった。


 そこでやっと、シーディは気づいた。サンタスがなにかを予言したから私たちはここに集められたのだろうと。


 シーディは思わずカーリムの顔を見つめた。カーリムはシーディを見つめ返すと頷く。


「何人か気づいたみたいだね。そう、君たちがここに集められたのはサンタス様がある予言をしたから。サンタス様は、運命の乙女が転生していると予言した。そしてその乙女たちが十六歳になる時、運命石を乙女に返すことで乙女は完全に目覚める。とね」


 それを聞いてみんな動揺した様子をみせた。当然だろう、急に集められ『貴女たちの誰かが運命の乙女です』と突然言われても信じられるはずがない。


 そこでカーリムは動揺する候補たちを落ち着かせるように言った。


「信じられないかもしれないが、サンタス様の予言は幾度となく当たってきた。だから、今回も当たる確率は十分にある。君たちも覚悟をしておいてほしい」


 そこでもう一度スエインが口を挟む。


「では、私たちはサンタス様が予言した乙女と特徴が一致しているから集められたということなのですか?」


「そういうことだよ。君たち候補の中の誰が乙女なのかは今のところ誰にもわからない。だから、これからここにいる四人には運命の乙女だった時に必要な教育を受けてもらうことになったわけ」


 ここでようやく納得する。リューリに訊いても歯切れが悪かったり、あの待遇には納得した。


 それにもしも、自分が乙女ではなくてもきっと優しいユニシスのことなので、悪いようにはしないはずである。シーディはそう思うとほっとした。


 乙女を知る方法はどうするのかまではくわしい話はなかったが、シーディの十六歳の誕生日はあと三ヶ月後なので、それまでにしっかり学んで手に職をつければ両親を楽させることもできる。


 もしも自分が運命の乙女だとしたら、その時はその時だ。そう自分に言い聞かせて、頭を切り替えた。


 こうしてシーディたちは出自が違うものの同じ境遇にある者として机を並べて学ぶこととなったので、順番に自己紹介をすることとなった。


「私はスエインと申します。父はスゥイで三品(さんぴん)と選定されております。短い間だとは思いますけれど、どうぞよろしくお願いいたします」


 三品とは階級だと上から三番目にあたる。そもそも一番上である一品(いっぴん)はほとんど選定されないので、三品というだけでかなり地位の高い人物だということがわかった。


 そのためかスエインはどことなく品があった。


「私はタイレル。父はトゥイで商人を営んでいます。カイ商会というのですけれど。あまり大きな組織ではないから、みなさんご存知ないですよね? とにかく、みなさん仲良くしてくださいね」


 彼女はいかにもお金持ちといった出で立ちだった。それにカイ商会と言ったら世界でも二位か三位を争う商会で、知らない人間はいないだろう。


「私はサイ。父はタントゥの二品(にひん)です。よろしくお願いいたします」


誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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