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文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。

 ユニシスは驚いてシーディを見つめる。


「そんなことは絶対にない。私はお前の魂しか愛せないのだから。あの時お前に話さなかったのは、心配させまいとしたのと、そんな豪族すら上手に抑えられないなんて、そんなみっともないところを惚れた女に知られたくなかったからだ」


 シーディはふっと笑って言った。


「今度から隠しごとはせずに仰ってくださいね?」


「もちろんだ」


 ユニシスはシーディの頬を愛おしそうに撫でると続ける。


「豪族の対処をするために私は後宮を不在にしていたが、やっとそれらを終えて戻ってきた時にはお前は去ったあとだった」


「ユン様を信じてもう少し待てば良かったのですね。でも、あのころは誰からも愛されていないと思ってましたから……」


「私が悪い。お前に誤解を与えてそれを解こうとする努力を怠ったのだから」


 そう言うと、ユニシスは悲しげに微笑む。


「お前が居ないことに気づいた時、侍医からお前の病気のことの報告を受け、運命石でならその病気が治るかもしれないと思った。だから運命石を持ってお前の姿を探し、そして思い出の丘の上でお前を見つけた」


「見つけてくださったのですね、つらい思いをさせてしまってごめんなさい」


 そう言って、今度はシーディがユニシスの頬を慰めるように撫でた。ユニシスはその手を取ると手のひらにキスした。


「いや、私ばかりがつらかった訳じゃない。お前にはもっとつらい思いをさせた」


 そう答えるとゆっくり大きく息を吐いて言った。


「私が丘の上でお前を見つけ抱きしめた時、持っていた運命石が反応し、光り、輝きだした。その時に一部お前の記憶のようなものが私の中へ流れ込んだ。それはシャンディが自分に呪術をかけ、何度となく生まれ変わり私を待って命を落としていった記憶だった」


 シーディはそれを聞いて思わず黙り込む。では、ユニシスは今度こそ必ず私を見つけるつもりでいたのかもしれない。


 そう思っていると、ユニシスはじっとシーディを見つめて言った。


「今回の予言をしたサンタスが偽物であると気づいた時は、とても落ち込んだ」


 そして、言葉を切って微笑むと話を続ける。


「そんな時だ、私はコジ村でシャンディがよく唄っていた歌を耳にし、その声に誘われて沢に行きお前を見つけた」


「もしかして、それで私を候補の中に?」


 ユニシスは頷くと前方を見つめた。


「あの時、あの瞬間から私はお前のことが忘れられなくなった。こんなことは私のシーディに会って以来だった。それで予言は嘘だったかもしれないが、お前はもしかしたらシャンディの生まれ変わりなのではないかと思った」


「やはりあの時点で気づいてくれていたのですね」


「そうだ。だが、お前はある意味完璧すぎた。作法は他の者より秀でていたし、宮女たちを味方につけ他の候補たちの情報を集めることもできる立場で、ダフネとクントの密会の場にも現れた。そしてあの舞に……」


 それに次いでシーディが呟く。


「あの組紐」


「そうだ。あの組紐が決定打となった。あの時、誰かがお前を私のところへ送り込んだかもしれないという疑念が生まれた。そうでなければ私のシーディの記憶を持っているということになる」


「だから、私が牡丹の記憶を持っているのか確認するために沢で『私のシーディか?』と言ったのですね?」


「そうだ。私のシーディはシャンディの生まれ変わりなのだから、もしお前が私のシーディの記憶を持っているなら、お前はシャンディの生まれ変わりということになる」


 そう言ってシーディに微笑むとユニシスは話を続ける。


「沢までお前を追ったあの時なにも起きないことで予言が外れたのか、それともお前はすべてを思い出したうえで私を拒絶しているのかわからず戸惑い、その事実に落ち込んだ。どちらにしろ私にはつらい現実だったからな。ところがお前がそこで、私のシーディであることを決定づけることを言った」


 シーディは首をかしげる。あの時は当たり障りのない会話しかしていないはずだ。不思議に思って見つめているとユニシスは嬉しそうに微笑む。


「覚えていないのか? お前はあの時私のことをユンと呼んだんだ。その呼び方をするのは私のシーディだけだ」


 そう言われてハッとする。そんなシーディを見つめユニシスは続ける。


「思い出したか? あの瞬間、お前が生まれ変わりであることを確信し、拒絶されようが、運命石が反応しなかろうとなんだろうともう二度とお前を離さないと思った」


 ユニシスはそう言ったあと、少し不思議そうな顔をした。


「だが、なぜ最初から運命石はお前に反応しなかったのか」


 それを聞いてシーディはいたずらっぽく笑って答える。


「それは私のせいです。もしも、ユン様が他に愛する人ができて私のことなど忘れてしまっていたなら、私は邪魔な存在になってしまいます。だから運命石を差し出しユン様が『迎えに来た』と言わない限り、私は運命石と反応しないように呪術をかけていたのです」


「そうか、そういうことだったのか……」


 ユニシスはそう呟くと、悲しげに微笑んだ。


「私がお前を忘れることなどできるわけがないものを」


「はい、そのせいで遠回りをしてしまいました。ごめんなさい」


「まぁ、いい。今はこうして私の横にいるのだから」


 そう言うとユニシスはシーディに口づけた。





 後宮に戻りしばらくしてから、シーディはスエインがその後どうなったのかが気になった。処刑されることは知っていたが、現在どうしているのかまでは知らなかったからだ。 


 おやつを囲んで炬燵に入っている時にそれとなくリンにそのことを訊いてみた。すると、リンは最初話すのを渋った。


 その様子を見て余計に気になってしまったシーディは、なにがあったのかと問い詰めると、リンは重い口を開いた。


「シーディ様が運命の乙女だったことがスエインの耳に入り、それを知ったスエインは気が触れたようになったのです」


「あの気位の高いスエインが?!」


「はい。あの、とても言いづらいのですが……」


「なに? 私は気にしないから教えて」


「スエインはシーディ様のことを『許せない! 私からすべてを奪うつもりなのね!!』などと言ったり、それ以外にもシーディ様のことを色々言って暴れたそうです」


「それは本当なの?」


「はい、結局そのせいで処刑日が早まったそうです」


 正直に言ってスエインからは酷い仕打ちを受けてきたし、とんでもない計画に荷担していたので処刑は仕方のないことだと思ったが、それにしてもそこまで恨まれていたのかとこれを聞いてなんとも言えない気持ちになった。


 そこへユニシスが部屋へやって来た。


「私たちの部屋にいないと思ったら、やはりここにいたのだな。なんだ? あの醜い娘の話をしているのか?」


 そう言ってシーディを膝に乗せ一緒に炬燵に入ると続けて言った。


「あの娘の戯言はただの嫉妬だ気にするな。しょせんあの娘の器が小さかっただけなのだから」


 横で聞いていたリンは大きく頷いた。






 ユニシスを待ち続けた二千年は長かった。だが、こうしてやっと二人で笑い合える日が来たのだから、今はこの幸せをゆっくりと噛み締めることにした。


 シーディの病気は、運命石を体に取り入れたことで急速に良くなり完治した。あの病は運命石を造り出したことによる弊害だったのだろう。


 もともと、シーディの一族は竜族と同じぐらい長寿な一族なため、人間として生まれたとはいえ運命石を取り戻した今、ユニシスと同程度には寿命が伸び、二人は支え合いながら末長く人間界を見守り続けたのでした。


誤字脱字報告ありがとうございます。


※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。


私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。


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