14
文章が稚拙なのでちょいちょい改稿します。
そして、二番目にサイが手をかざす。だが運命石はサイにも反応しなかった。
三番目にタイレルが前に出た。彼女は緊張のあまり手をかざす時に少し震えながら、なにやら祈りを呟いていた。だが祈りもむなしく、タイレルにも運命石は反応せず光ることはなかった。
タイレルは目に涙を溜めて分かりやすく落ち込んだ様子を見せながら元の位置に戻った。
最後に勝ち誇ったようにスエインが前に出ると、ちらりとシーディを横目で見てニヤリと笑いユニシスの前で恭しく一礼して運命石に手をかざした。
誰もがもうスエインが運命の乙女に間違いないと思い、運命石が輝くのを待った。
だが、運命石はただ光を反射するばかりでいつまで経っても輝くことはなかった。
周囲は騒然となった。特に一番驚いた顔をしたのはサンタスとスエインだった。二人はお互いの顔を見つめ合い、しばらくしてスエインが口を開いた。
「陛下、恐れながら申し上げます。この運命石は偽物です」
するとユニシスはニヤリと笑った。
「ほう、なぜそう思う」
「私が手をかざしても輝かないのがなによりの証拠でございます」
そこでサンタスも口を挟む。
「そ、そうです陛下。こんなことあり得ません」
するとユニシスは少し悲しげに微笑むと言った。
「サンタス、お前でも間違うことはあるだろう。仕方のないことだし、私は咎めるつもりはない。だが、正直運命の乙女が見つからなかったのは残念だ」
ユニシスのその台詞に、スエインが慌てた様子で叫びだす。
「ち、違います! 本当にこの運命石が偽物なのです。輝かない方がおかしいのですから。お願いします、運命石をお調べください! 私には偽物だとわかるのです」
取り乱すスエインを見て、サンタスもユニシスに訴える。
「恐れながら私からも陛下にお願い申し上げます。一度お調べになっていただけないでしょうか」
必死な二人の様子に呆気に取られて見ていると、ユニシスが突然笑い出した。
「お前たちは、私の運命石が偽物だと申すのか?」
そう言われサンタスは焦った様子で答える。
「と、とんでもないことでございます。まさか、陛下が偽物を本物と偽っていると言っている訳ではないのです。ただ、本物と入れ換えられた可能性も……」
「では、私の管理が悪いと?」
「いいえ、そういうことでは。ですが、運命石が輝かないのはおかしいのです」
「では、どういうことだ?」
すると、スエインが口を出す。
「ですが、陛下。輝くはずなんです」
そこでユニシスは腹心のタロスに目で合図を送った。するとタロスは素早くスエインに近づき、後ろからスエインを捕らえた。
「な、なにをされるのですか! 無礼にもほどがあります」
そう叫ぶスエインの手からタロスはなにかを奪い取った。そしてそれをユニシスに渡すと、ユニシスは受け取った物をスエインにも周囲にも見えるように人差し指と親指で持って見せた。
それは竜鱗だった。
「これは私の竜鱗だ。スエイン、こんな物をお前はどこから手に入れた? それに、この場でこんな物を持っているということは、お前は運命石が私の竜鱗に反応して淡く光るということを知っていたのだな?」
「いいえ、いいえ陛下。私はそんなことは知りませんでした。その竜鱗はお守りにと、父の元からこっそり持ち出し持っていただけなのです。申し訳ございませんでした」
「そうか、正直に話す気はないのだな。お前は先日の花見の宵の時もそうだったが、言い訳ばかりで醜い娘だ」
そう言われスエインは目を見開き口をパクパクさせた。そんなスエインを無視しユニシスは次にサンタスの方を見る。
「確か、お前はスゥイの役人で名はクントだったな。もうそろそろサンタスを返してもらおうか?」
戸惑った顔でサンタスは答える。
「陛下、なにを仰るのです? 私の顔を忘れたのですか? 私はサンタスです」
そう言い返すサンタスの顔を見据えてユニシスはハッキリと断言する。
「いいや、お前はクントだ」
そう言い放つと、ユニシスは立ち上がりみんなに向かって話し始めた。
「今回の運命の乙女の予言については、とある貴族が仕掛けた茶番だ。私はサンタスを取り戻すためずっとそれを秘密裏に調べていた」
そう言うと、怒りを露にしながら言った。
「その貴族は自分の娘を運命の乙女に仕立て上げるために、サンタスを誘拐し顔だけサンタスに似ているこのクントという男を送り込んだ」
スエインは首を振り大粒の涙をこぼしながら訴える。
「陛下、違います。違うのです。決してそのようなことはしておりません」
「お前はもう黙れ」
ピシャリとユニシスにそう言われ、スエインはその場に座り込んだ。そんなスエインを無視し、ユニシスは今度はクントを一瞥する。
「お前はサンタスには似ても似つかん。私にばれないとでも思っていたのか? 愚かな奴だ」
そうして、正面に向き直る。
「今回の件に関与した者は全て捕らえ、それ相応の処罰を与える。覚悟するように」
その台詞を合図に、一斉に関係者たちが捕らえられ始めた。
シーディたちは、それぞれを担当した中官たちに守られユニシスの前に連れていかれそこでしばらく大捕物が終わるのを待った。
やっと静かになり、なにがなんだかわからないと思っているとユニシスが説明を始めた。
「お前たちをこの茶番に巻き込むことになって申し訳なかったな。だが、相手を油断させるために必要だった」
サイが手を上げた。
「よし、今からお前たちの発言を許そう。なんでも訊け」
「ありがとうございます。今回の件はどこからどこまでが本当で、どこからどこまでが嘘なのでしょうか」
「全てだ。まず、予言自体が嘘であった。サンタスを誘拐し、後宮に入り込んだクントはサンタスになりきってあの予言をした。それはスエインの父親であるダフネが仕組んだことなのだと思う。そうやってスエインをここへ送り込むことに成功した。お前たちが選ばれたのは、たまたま誕生日があのスエインという娘と一致したからだろう」
今度はタイレルが質問する。
「では、運命の乙女が生まれ変わっていると言うのは嘘なのですか?」
その質問にユニシスは少し悲しそうに微笑むと答える。
「そういうことになるな」
タイレルはがっかりした顔をした。そんなタイレルを横目にサイがまた質問する。
「では、今回は最初からスエインが選ばれるように仕組まれていたということなのですね?」
「そうだ。運命石が竜鱗のそばで光るというのを聞いてそれを利用しこの計画を立てたのだろう。だが、運命の乙女になりきるなど大それたことをしようとするとは、本当に愚かなことだ」
そう言うと、候補の顔を見渡す。
「他には? ないならこれで終わりだ。部屋へ戻れ」
シーディたちはユニシスに頭を下げると、踵を返した。そこで突然ユニシスがシーディに声をかける。
「シーディ、お前には話がある。少し残れ」
なにを言われるのか少し不安になりながら、シーディはその場にとどまった。タイレルたちが立ち去ると、ユニシスは他の者たちにもこの場を去るように指示した。
誤字脱字報告ありがとうございます。
※この作品フィクションであり、架空の世界のお話です。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、階級などの詳細な点について、実際の歴史とは異なることがありますのでご了承下さい。
私の作品を読んでいただいて、本当にありがとうございます。