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現想異文奇譚。~One World One Life~  作者: 空殼 藍(そらがら らん)
3/6

第3話 クエスト。

注意。

一部内容に、傷害表現、性的な表現、それを匂わせる表現があります。

それでも良いよという方は

どうぞ「現想異文奇譚」を楽しんでください。



第三話です。


やっと書き終えた。

そろそろ、ちゃんとしないといけないな。


こんな怠惰な者が書いたものですが、よろしければ見てみてください。

火炎弾(ファイヤ-ショット)。訓練用の的が火を弾き、焦げ後が残る。どうやら、燃えにくい材質を使っているようだ。なるほど、当てる練習には最適だな。そこに、同じく訓練をしていた同期に、どうだ、と聞かれた。

「まぁ、いい感じかな。だいぶ魔法にも慣れてきたよ」

俺は役所で手続きした後に、テストと面接をやった。格闘技は? 武術は? 何か狩猟経験は? とか魔法学院に通っているか? または通っていたか? 等の冒険者に必要な技能について。あったら、後にやる訓練を数点免除できる。なかったら、こうして訓練をするわけだ。あとは、基本的な、いわゆる常識問題とか精神鑑定、改めての属性検査をやった。もちろん、血で。これで、正式に自分の属性が登録される。

俺は、テストはなんとかなったが、問題は技能が無いことだった。主に、魔法に関しての技能について。実戦がない。大半はここに来る前に、魔法学院には行かないまでも、暮らしの中で基礎的な魔法を、剣技や狩猟技術を身につけている。俺には、そういう経験が無い。だから、今こうして講義や訓練をしている。大半は登録したらすぐにクエストを受けられるらしい。

「しかっし、珍しいよなぁ。普通は少しはできるのに」と金髪の青年が言った。

名前はルグース・ダネッカ、歳は20代くらい。魔法属性は、俺と同じ火。彼も冒険者の基準値に達していない。彼の場合、基本的な事はできるが、魔法の使い方がなっていないらしい。確かに、彼の様子を見ていたら、危なっかしい所があった。素人の目で見ても。だからだろう。だが、俺より魔法を使いこなしているのが分かる。これが普通なのだろうか。

「そんなに?」とイテクが言う。

「まぁね。魔法を使わない人はいるけど⋯⋯。なんかお国柄とかそういうやつ?ここではあまり見ない顔だし」

やはり俺の顔立ちは珍しいらしい。珍しいと言っても、俺と同じ顔立ちの人はいる。本で見たし、街中にも見かけた事がある。俺の常識で言うとアジア系。

この世界の人種や国、魔物、環境等を調べたが、特に興味深かったのが、この世界の技術だ。医学は魔法学者のおかげで、かなり発達している。まぁ、と言っても治療の結果が変わらないってだけで、治療の技術はこの世界独特なものだが。同じものもあるが、医学の知識があまりないから、判断がつかない。判断がついたのは、筋肉とか骨の治し方、それと胃腸関連だけだ。まぁ、要するに日常で起こるものだけだ。

あとは、日常の技術。それは、電子機器の類いのものは俺が見た限りではないが、そういう挙動を思わせる物がある。例えば、初めて属性検査した時のあのグラフや記号が出てきたものだ。あれは魔法韻(マジックコード)、もといコードの応用で動いている。そのコードである共通コードを使っている。動かす、触れる、などだ。それによって、自分がいた世界と遜色ない技術が使える。というよりそれより発達している可能性がある。ただ、街には、あったはあったが、そんな印象は薄い。まだ調べ足りないのかもしれない。


まぁ、そんな感じで色々調べてはいるが、なかなかに大変だ。て、それより、今は明日やるクエストのために集中しよう。このクエストをクリアすると、ようやく冒険者の仲間入りだ。

「確か、お前と組むんだっけ?」とイテクは紙を取り出して言った。あぁ、あとは、とルグースが言いかけた時「俺と」「私です」と声がした。

腕を組んだまま手を挙げた男性は、ダイ・ダベカダ、クエストに参加するパーティの一人だ。歳は40代くらい。このパーティの中で最年長だ。魔法属性は土。彼は、元々農夫だったらしいが、若い時に夢みた冒険者になりたくてここに来たらしい。元農夫だからか体ができている印象を受ける。

剣やら戦闘での立ち回りなどは素人のようだが、俺より慣れているように感じる。仕事柄、魔物と出会うからだろうか。

そして、もう一人のメンバーである、ダイの後ろからひょっこりと出て手を挙げた長髪で金髪の女の子。名前はマミーミ・ミコッズ、歳は15、6くらい。魔法属性は水。彼女は、確か魔法学院の生徒だったか。本来、魔法学院の生徒には必要ないらしいが、冒険者になると得られる権利がなにぶん便利らしい。そのぶん危険な道だが。

このパーティは即席でできたものだが、かなり雰囲気が良いな。これなら大丈夫そうだ。最初聞かされた時は、少し不安だった。このクエストをやる事、このパーティでやることは事前に言われず、今日の朝に知った。運営側の意図として、ゴブリンくらいすぐに対応しろ、という事なのだろう。幸い、講習に来てる人達と喋っておいて良かった。

「よろしく。ゴブリンは俺に任せとけ。まぁ、と言っても俺らがやるのは、救助だからあまり俺の出番ないけどな」とルグースが腰に手を当てながら肩を落として言った。

「そんな事ないよ。この場合、役割分担は大事なんだから」と腰に手を当て、指を揺らしながらマミーミが言う。

「でも、あまり無茶はするなよ。俺が届く範囲にいてくれ」

分かってるって、とルグースが言い、そんな会話をしていると後ろから声をかけられた。

「おい、お前ら。明日までに装備を整えておけよ」とリコッツ教官が言った。リコッツ・ナガユキ、メガネをかけ、髪は適度に短い黒髪。身長が170を軽く超えていて、軽装な装備を身につけ、筋力と持久力、柔軟性、あらゆる地形に対応しそうな、正に冒険者に相応しい筋肉、身体をしている。

イテクは、冒険者は、みんなこうなのか。と眺めていると、その体には所々生傷が見えた。

「はい」と全員が言い、リコッツ教官が去るのを見送った。

「じゃあ、そろそろ買いに行くか」とルグースが言うと「そうだな」とイテクが賛同する。




早めに来た。どうやら俺だけのようだ。今は14時になる前か。集合は、15時って言ってたけど。やる事がないからって、早く来すぎたな。少しその辺ブラブラするか。あと図書館にでも行こう。

彼はポケットに手を入れながら街中を見渡した。

この世界の生活を見ていると、どこかワクワクする。所々に機械が有り、それは魔法を応用した物になっている。そのような物もあるし、純粋に科学の力を使っている物も有る。科学と魔法が共存している。面白い。確か、魔法機械具って言ったけ。コードを応用している物。なぜ、そんな事ができるのか。まず、コードとは、一言でいえば、魔力因子のセットだ。魔力因子とは、よっつの構成因子があり、それは遺伝子に含まれている。その働きによって魔法が発現する。それを再現した物が魔法機械具だ。こう聞くと、人体から細胞を摂取しているように聞こえるが、魔力が有るものは、なにも人だけじゃない。植物や果物、そして魔物や鉱物といった物にもある。そういうものから魔力因子を採取し、コードと同じ反応を作れば、魔法機械具(アルマ・マギア)ができる、という事だ。

彼は、改めてそれを見る。確か、もともとは戦争に使う技術だったかな? おっ、ホログラム。ホログラムが表示されるのは、魔法を使う時に火が出たりするのと同じ現象だ。だから、ああいう物になる。たぶん、俺の光の魔法もそうだ。


冒険者になって願いを叶える、か。あるかどうかは分からないが、冒険者になるメリットは色々ある。昔の冒険者の名残と需要があるからだ。冒険者になると、お金もそうだが、功績を残せば、色んな権利が得られる。一番良いのは、開拓の権利だ。これは、昔、冒険者がその先で適切な拠点やら環境を作った事に由来する。この権利は、一言でいえば国を作る事ができるものと言っても良い。実際は少し違うが、ある範囲を自分の好きにできる。

例えば、その範囲内で取れたものは国にも手がつけられなくなる、とか。マミーミが冒険者を目指す理由だ。

その行いが残り、冒険者は功績を認められれば、開拓の権利を得られる。だから、冒険者になる者の大半が、野望を叶える為に、その権利を求める。もちろん制限はあるが。あとは、極小数だが、俺みたいなやつとか。

そんな独り言をしていると、路地裏から悲鳴が聞こえた。

——なんだ。とそこに行くと女性が倒れていた。

「大丈夫ですか。怪我は」と駆け寄り「大丈夫です」と女性が言う。

「どうしました」

「取られて」

ひったくりか。と指す方向を見る。

「もう、大丈夫ですよ。すぐ捕まえます」

すると、彼の周りに鮮やか翡翠が舞った。

追跡者(ウルフ)展望者(バード)

ウルフが男を追う。彼は目を閉じ、バードを上にやった。あの人か。意外と早いな。魔法か? ウルフはバードを頼りに速度を上げる。

ちょっとやってみるか。

〔Cancel>Move:Bird-Shot__The Bird flies Around Him.〕と頭の中で唱え、バードは先回りした

「っ!なんだっ、この鳥!」と男が足を止め鳥と格闘する。もう少しでウルフが到着する時、バードの目の前から男が消えた。

「なっ」

どこだ、と見渡し後ろを見ると。

「捕まえてみな」と言った後、ジグザグに壁を蹴って行き、もう遠くへ行っていた。

くそ、こいつ。

「あの、大丈夫ですか?」

「大丈夫です。すぐ捕まえます」と呼吸し整え、動揺を押し殺す。バードを上にやり、男を捉えた。⋯⋯あそこか。ウルフは残像がでるほど、さっきとは打って変わってスピードを出す。スピードはこっちにもある。路地にいる人々がなんだなんだと声を上げたり、水滴の飛散がカランカランという音を形容したり、服が落ちたり倒れたりと、翡翠の狼が行く。男は、塀を越え、壁にのぼり、屋根を点々と跳び、落ちて地面を駆ける。クソっ! バードを加勢させたいが、今の俺じゃ無理だ。簡単な事はできるが、それじゃ立体的な動きに対応できない。もしできたとしてもバードじゃ拘束力が足りない。

だが、それでも。男がどんどん大きく映る。

男が気づいた時、噛み付いた。

「いっ、たくねぇ。なんだ。おい、離せ」

男の足に噛みつき、男が振り解こうと壁に叩きつけるが、魔力でできた狼には通用せず、噛む力が弱まらない。ウルフは体全体を使い、男を抑える。そこに、バードを加勢させ、その場に拘束した。

イテクは、安堵の表情を浮かべ、彼女に「じゃあ、行きましょうか」と平然を装った。

「え、もう捕まえたんですか?初めて見ました、あんなの」と興味を示し、観察するように彼を見る。そういった事に興味があるのだろうか。と思って行く矢先。

「あ、その前に警察呼びましょう」とイテクが言った。



彼は片目を閉じて、バードを見張りにし、匂いを頼りに迷いなく、彼女と共にその場所へ向かった。

足を乱す男に向かって「この人ですね」と警察が確認する。

「はい、間違いありません」と女性が言う。

「君」と警察が言うと「くそっ!」と男が大人しくなる。

警察官が彼女に財布を渡し「ご協力感謝します、少し話をしたいので、あとで署まで来てください」と自分に敬礼し「行くぞ」と男を連れて行った。

「良かったぁ。ありがとうございました」

「いえ、良かったです」

「良かったら、後でお茶でもしませんか」

「いや、すみません。待ち合わせしてるので」

「そうですか⋯⋯。残念です」

「じゃあ⋯⋯行きますか。警察のとこ」

「はい!」


彼らは、事情聴取を終え、彼女が「本当にありがとうございました」と手を振って、彼も振り返す。

その光景を見て、警察官はにこやかな表情を浮かべ署の中へと入って行った。彼は振り向き歩いて、影が掛かった鼻を軽く触った。




間に合うかな。彼は少し小走りで待ち合わせの場所に向かうと「ごめん、また?」と少し息があがった声で言った。

「いや、全然。ピッタリだ」とルグースがグッと手を出して笑る。彼は安心し、服を整える。

「よし、じゃあ全員揃ったことだし、どうする?」

「決めてないのか?」とイテクはルグースの発言に呆れを抱く。

「いやぁ、揃ったら決めようかと」

「じゃあ、私、ポーション担当ねっ!」とマミーミが元気よく手をあげた。

「そうだな。そういうのはマミちゃんが適任だな」とルグースが腕を組んでうんうんと首を振る。

「ダイは?」とイテクがポケットに手を入れて言った。

「ん、俺か?そうだな。俺は食糧にでもするか」

「それもダイが適任ね。農夫だし」と腕を組んだままルグースが指をさす。

「俺らは?俺ら2人剣士だし、俺ら以外別々だろ」と自分とルグース交互に指した。

「ない。装備しか買うことない」と堂々とした態度で言う。

「えぇ⋯⋯じゃあ、俺らはそれだな」

「そうだな。でも、それもそんな買う物ないけど。

そうだ、マミちゃん、ダイ、お金くれるか?一緒に買うから」

「ああ」

「あっ、そっか」とダイ、マミーミが各々返事をし、マミーミとダイ、ルグースがカードを取り出し、ルグースのカードにかざすと、施された直線的な模様が輝き、スクリーンが表示され、それを操作しだす。すると、数字が動きルグースの数字が増えた。

「要望は?」とカードを前ポケットに入れながら言った。

「なるべく細い鎧や盾を頼む。剣はこっちで買う」

「私は、なんでもいいかな」

「オーケー。お金、サンキュ。んじゃあ⋯⋯この喫茶店に集合な。そのあと、みんなで回ろうぜ」と後ろを指した。

「オッケー!」

「ああ」とマミーミ、ダイが言った後、ふたりは目的の場所に向かっていった。

「で、俺らはどこ行くんだ?専門店か?」

ルグースが含みのある笑顔で「ポーション売場」と言った。

は?とルグースについて行く途中で、足を止めた。

「ポーション屋と言う名のなんでも屋だ」

行くぞ、と言って振り回された気分のままついて行くことにした。なんでも屋ね⋯⋯。



その店に入ると「いらっしゃい」とここの店長と思わしき男性が客を手前にして言った。

「じゃあ、後はここに行けば、何とかなるから」

その店長は、体格が良く、くるんとした髭を生やし、小さい丸メガネを掛け、半袖からしっかりとした腕が出ている。大人の男性といった感じだ。その目の前にいる、店長とは違う類の体格をした高身長な男。暗そうな、自分が占い師ならオーラは黒ですね、と言いたくなるような男性に店長は紙を渡した。「助かるよ」と低く優しい口調で言う。

「よし、と。さて、君たち、新人かい?」

「はい」とイテクが言う。分かるものなのだろうか、と横目にその男性の黄色い瞳が映った。男は少し口角を上げた。綺麗な色に好奇心と怪しさを感じた。

「じゃあ、おすすめはこのセットだな。ゴブリンだろ。だったらこれ買って行きな」と片目を閉じニっと笑って親指でさした。

その先には、ポーション(解毒含む)、筆記用具、サバイバル用具一式があった。冒険者セット、と書いてある。良さそうだな。

「そして、あとは。あれだな」と指す。

武具一式だ。ゴブリンに、と言うより洞窟に特化した武具だ。その装備は防御面で特筆すべきことはないが、洞窟の闇に紛れる為に黒色をしている。

ゴブリンの目は特殊で、暗い所が見えるというより、黒色が細かく見えるというものらしい。まぁ、興奮状態、戦闘になるとゴブリンは目を赤くし、見えるようになるから、主に隠密がメインだ。それに加え、注目する物がもうひとつ有る。それが必需品のゴーグル。そのゴーグルは、あちら側からは見えず、こちら側からは見える特殊な機構をしている物で、一言でいえば、ゴブリンの目になる代物。

「これか。どうする?ゴーグルは要るとして、鎧は?」とルグースが鎧を指して言った。

イテクは値札を見て「いんじゃない。変に考えるよりは」と少し値が張るな、と思いながらも言った。

「だな、じゃあ、買う、の前に色々見てこうぜ。せっかくだし。あと買いたいもんあるからさ」

「ああ」

買いたいものか⋯⋯。


思ったほど色々あるな。多種多様な武具はもちろん。専門店には及ばないが薬やポーションがある。

薬とポーションの違いは、一言でいえば魔力が有るか無いかだ。原材料を見れば一目瞭然だ。薬には、普通の薬草やらを混ぜて作る普通の作り方だが、ポーションの方は、それらも使うが魔力が有るものを使う。魔力が有るものは、魔力の構成因子が浮き上がっている。もちろん、浮き上がったもの、その限りでないが、浮き上がったもの方が魔力が濃い。大層な傷じゃなければ、果物を食べるだけでも治るし、あとは身体を強くする事もできる。効果はそれなりだが。なるほど、だからあの時、狼の傷が早く治ったのか。彼は、最初に来たときの事を思い出し、左腕を撫で、右足を動かした。

横目に剣が入った。抜き取る。剣か、くるっくるっと剣を回し見たり、重さを使って手で軽く遊ぶ。

剣をなおして、ふと気になった物に手を伸ばす。なんだこれ、とインク入れのような容器に、粘り気のある黒いものが入っている物を手に取った。普通のインクか? いや、あれか、ドーランというやつだろうか。と容器に書いてある単語が所々目に入り、そう思った。

「あ、そうだ。ここで買うのも良いけど、せっかくだし、専門店の方にも行ってみるか」とイテクはその容器を戻す。

「あぁ、確かに。じゃあ、これ買って見に行くか」とルグースが、おじさん、と言ってゴーグルと冒険者セットを掴む。

あっあと、と言い「お前が手に取ったやつ。あれも」とイテクが何気なく取ったドーランだと思われる物も掴む。

「それもいるのか?」と疑問に思ったが⋯⋯なるほどな。そう使うのか。と使い道がすぐに分かった。

「ああ。どれくらい⋯⋯。5個⋯⋯いや、6個買っとこ」

そんなに買うのか、とイテクは眺める。

「俺が買っとくよ。あ、でも金はくれよ」

「わかってるよ」と黒がかった紫色をしたカードを出して、ルグースのと合わせる。サンキュ、と言ってルグースが店長の所に向かった。

「これギルドに」

「はいよ」と下から紙を取り出した。

「俺は外で待ってるよ」と扉の方を指した。

「おう!」とテーブルに肘をつけながらルグースは手をかざした。




カランカラン。「ん、いらっしゃい」と無口そうで落ち着いた短髪のお姉さんが言った。鍛冶をやっているのか、筋肉がしっかりとついている。自分の常識で言う、少しダボッとしたTシャツからその筋肉が分かるほど。だが、女性特有のラインを邪魔していない。

「どうすっかなぁ。なぁ、どれが良いと思う?」とルグースが適当に取った剣を眺めてイテクに言った。

「そうだなぁ。洞窟に行くんだし、小ぶりの剣が良いんじゃないか」とイテクは剣を取って見せる。

「なるほど。お姉さんは、どう?」

「右に同じ」

なるほど、と呟き「お姉さん、試し斬り良い?」と何気なく取った剣を持つ。

「良いよ、場所分かる?」

うん、と言って「じゃ、行こうぜ」「おお」とイテクも小ぶり剣を取り、ルグースが受付の隣にあるドアを開けた。


ルグースは、標的に向かって踏み込み、斜め左から剣を切り上げる。そして、一歩後ろにくるりと転がり、火を撃つ。それは、俺のとは違い、本当に弾丸のように放たれ、弾かれた火が渦を現し散った。

すごい。慣れている。大丈夫だろうか、明日のクエストは⋯⋯やれるだろうか。

俺も試すか。彼は、踏み込み、右斜めに切り下ろす。そして、左斜めに飛び、その直線上に踏み込み横に切る。その勢いを利用し正面を向いて、標的を捉え首を切る。なるほど。これは良いな。


そして、試行の末。

「俺はこれにするぜ」

「俺はこれかな」

ルグースは短剣の中でも切れ味が良い物を、イテクは突くのにも適した短剣を選んだ。

「あとは、盾とか防具だな。どうする?」とイテクは剣をしまった。

「そうだなぁ」とルグースは顎に手をあてた。




二人とも四つある椅子の奥へと座って、ルグースは、炭酸の効いた柑橘系のものを、イテクは、同じく炭酸の効いたものだが甘味があるものを頼んでいた。

「こんなもんで、良いよな?」とルグースが飲んで言った。待ち合わせ場所の近くにある喫茶店に来たが、どうやら俺らだけのようだ。結局、専門店で買った物は剣だけで、あとは最初に入ったポーション屋と言う名のなんでも屋で、皆の分の冒険者セット、鎧と盾を買った。しかし、かなりしたな。

一応、ギルドからある程度は支給されるし、研修中に受けられるクエストでお金は手に入るが、それでもギリギリだ。生活もかかってるし、役職にあった装備は、各々の懐から出すけど、それでもな⋯⋯。

専門店で買うと、これよりかかるのか。はぁ、大丈夫かな⋯⋯。でも、なんでも屋は、その点に関しては重宝した。なんでも屋の利点はこういった事にあるようだ。他にも色んなものがあったようだし。

「そうだなぁ、まぁいんじゃないか。多すぎても困るし、それにそこまで買えないし」とイテクはサービスのクッキーに手をつける。

だな、と返された所で、二人が来た。

「お待たせ。また?」「すまんな。待たせて」

「いや、全然」「うんふ」と交わし、マミーミはルグースの隣に座り、ダイはイテクの隣に座った。

「すみませーん」とルグースは定員に声をかけ、二人に注文を促す。

「俺らも頼むか」とルグースがメニュー表を出してイテクに言った。

「⋯⋯そうだな。じゃあ⋯⋯俺はこれかな」とクッキーを飲み込んで、イテクはフルーツ欄にある、大きな四角形のものに大小様々な綺麗な四角形が、倒壊したように積まれているデザート〈キュービル〉を手頃な価格だったから頼み、ルグースは、なにかのキャラクターの目元が施された骨組みの上に大きい目玉焼きが乗って、その下にサンドイッチが歯のように置かれ、その周りに輪郭を形成するようにスパゲッティが巻かれた、端に小さいステーキが数個置いてある。山を模したような〈ハットマウンテン〉というものを頼んだ。マウンテンと言っているが、そこまで大きくなくサンドウィッチを基準にした大きさだ。

ダイは、ほど良い甘さがあるビターなチョコケーキ〈ドレスチョコケーキ〉1ピースとサービスのクッキーをつまみにコーヒーを頼み、砂糖を少しだけ入れる。そのチョコケーキは、後ろに半円のチョコが重なったものが施され、傾斜がかかった先に、沿うように紅いジャムが垂れ溜まっており、ケーキの後ろの方を覆うようにチョコが鍾乳洞のジオラマの様になっている。

マミーミは、クッキーを食べ、何らかの魔物を型どった物が2本あり、1本は大胆に魔物が一体、もう1本は色とりどりな果物を魔物にしたものが数体、アイスに刺さっている中々凝ったもの〈ムービアイス〉をオレンジジュースと一緒に受け取った。

「どうだった、良いの買えた?」とルグースがスパゲッティを巻きながら言った。

「うん、ポーションのセットが売ってたんだけど、やめて、単体のポーションの方が効果が良さそうだったから、そっち買って、それに安くしてもらったんだ。可愛いからって!」

「そうなんだ。マミちゃん、美人さんだからね」と指をさす。

「まぁね」とふふんとマミーミは腰に手をあてる。

イテクは無心にフルーツを食べ、ダイはコーヒーを飲む手前でフッと苦笑した。

「ねぇねぇ、ちょっと気になってたんだけど。イテクさんっていくつ?」とマミーミがジュースを両手で飲んで言ってきた。

「え、いきなりだな」ともう一口食べようした時に言われた。

「いやぁ、ちょっと気になって。最初に皆と話した時、なんか大人ぽいわりに、若いなって思って」

「俺も気になる。実際いくつなんだ。まさか、50代とか言わないよな」

「いかねぇよ。22だよ。どんだけだよ!」

ルグースは、少し驚いた様子で「同い歳か」と言って、ダイは、ほぉと関心した様子で顎を触る。

「へぇ、ルグースさんと、同い歳なんだ」とマミーミがルグースを見る。

「なんだよ」

「ふーん」と前を向く。

「なんなんだよ!」

「はは」ルグースもいい男だと思うが。親しみやすさが裏目に出てるな。あれ、とういうことは俺は近寄り難いのか。今思い返してみれば、あまり人と関わってなかったような。友達は2、3人いたはいたけど。そいつらから、よく落ち着いてるとか大人っぽいって言われてたな⋯⋯。

⋯⋯どうしてるだろうか。

「ねぇねぇ、イテクさんってモテるの?」といたずらっ子の好奇心に満ちた顔をして言ってきた。

「え、うーん、どうだろう」

彼は、自分がいた世界のことを久しぶりに振り返えると、どこか懐かしさを感じた。




皆、クエスト前のひとときを過ごしていた。皆、イテクが最初に見たあの円形の広場でいた。

ふぅと息をつき「いよいよか」とルグースが燻製肉を食べる。皆、クエスト開始前に、少し食べていた。冒険者御用達の燻製肉と温かい飲み物を。

その燻製肉は、程よい歯ごたえをしていて、味はただの燻製された肉だが、消化に良く、なおかつ腹持ちが良いように改良されている。

飲み物は、飲むと意識が心地よく目覚めるほどの酸味があり、クリーミィで飲みやすい。それに加え、味を好きにでき、好みなものを各々飲んでいる。

「ンっクル。クっ」と足で肉を抑え、器用に裂いて食べるこの全長6.3メートルある鳥は、自分たちが帰って来ないときや、クエストを終え帰るときの馬車を呼ぶ役目、装備や道具の調達などに使われる。

通常は料金を支払わないと呼べないものだが、新人にはつけるのが義務づけられているため今回はタダだ。



皆、装備の再確認をする。皆の防具は、洞窟の闇に溶け込む黒色をしており、印象は同じだが、各役職に合った形をしている。

魔法機械具の一種であるアーメットは、マスクとゴーグルに合わせて形を変え、役職に合ったデザインにもなる。

イテクとルグースは、身体を捻りやすく作られた胴鎧(どうよろい)を身につけ、可動部は革でできている。そして、イテクは、丸い子盾に左腰に突きに適した剣とその後ろにポーチを身につけ、ルグースは、篭手のような盾を装備しており、同じく左後ろにポーチを付け、切るのに適した剣を左腰に身につけている。

ダイは、その役職にしては、防具の面積は少ないが、イテクとルグースに比べ、重装備だ。全方向から攻撃を受けても、どこかしら防具に当たる印象があり、可動部が鎖帷子になっている。装備は、上半身を覆うくらいの盾に、幅が広い剣を抜き身で携え、ポーチを左前腕につけている。

マミーミは、魔法使いの素質と素養を生かせる装備をしており、フード付きのマントを鎧の下に着て、その鎧は体の部分部分に装着している。イテクとルグースより動きやすそうだ。

そんな軽装備で布の部分が出ているが、その半袖短パンの下に防刃性のある服を着ている。盾には、スペルが施されており、任意で形態を変えたりできる。今は篭手のようになっている。武器は、身の丈ほどの杖と短剣を身につけ、その短剣にもスペルがあり、そのスペルは対象を攻撃すると、麻痺させる効果が有る。

イテクは、依頼書を確認した。依頼人、モナトリー・エモイト。対象者、妻と娘。名前は、ネイアとイコア、か。皆が準備を終えると「し、行くか」とルグースの声で、皆が立ち上がり、イテクは装備の着心地を整え、マミーミは袋の中身を確認し背負って「行ってくるね」と鳥を撫で回し、ダイは剣を担いだ。




「あれか」とルグースが言うと、皆一斉にそれを見る。その洞窟は、緑が牛柄のように広がっており、穴は湿っているように感じる。

「ここからは、サインと手話で行くぞ」とルグースが言い、それにマスクとゴーグルをして頷く。ダイを前にして、洞窟へと入って行った。



この洞窟は、地面が少しぬかるんで、壁はドロっとした感触を想起させる。水と土と血の臭い、そして肌寒い。皆の呼吸と装備、カサカサという音が頭の中で形を想起させ、輪郭を浮き出させた。洞窟の幅はそれなりに広いが、手を伸ばすと触れられるほど狭く感じ、後ろと前に壁があるようだ。まるで、穴のない箱にいる。

洞窟か、足が重い。怖いのか? それとも防具に慣れてないせいか。ん? 道がみっつ。ひとつは真っ直ぐ。もうふたつは両側にある。(どうする?)とイテク。 (とりあえず、左に行こう。対象を探すぞ)とルグース。皆が(了解)とサイン。

このクエストは救助だ。ゴブリンとは戦わない可能性もある。彼は、緊張を紛らわすためか、それとも自分でも分からないほど落ち着いているためか、前に読んだ本について思い出していた。

色々調べた結果、この世界は、神と人が共存していた時代より五億年も経っているらしい。だから、人々は神を()()と言うんだろう。これには冒険者にも関わっていて、長年、神の試練に到達した者がいないから、皆がもう信じなくなったってのもある。中には、神はいるし、試練もある、と言う者もいる。それで冒険者になる者も。だが、やはり冒険者が便利屋と呼ばれるのも頷ける。なぜ今も冒険者がいるのか。それは、慣例的なものなのかもしれないが、冒険者には魔物を倒すノウハウがある。それが一番の需要だ。おっと? 横穴だ。ダイが先に入る。剣士はそれに付いて行くように、辺りを警戒する。ゴブリンはいないか。どうやらここは使われてないみたいだ。ハズレか。次は右だな。


俺はどうしたら良いのだろう。本当に神はいるのか? たまたまこの世界に魔法があるだけなのか。だが、どちらにせよ、やるしかない。

そういえば、ゴブリンの平均身長は、だいたい胸の真ん中あたりに口が来るくらい高さだったか。個体によっては、軽く人間の身長を越す大きい者もいるらしいが、分布的に洞窟にはいない。あとは、多種多様な技能を持っているとか。専門家からは、ゴブリンは他の魔物とは違って社会性があるらしい。社会性がある、それは少し語弊があるな。社会性があると言うより、統率されている。他の魔物は、その魔物独特の社会があるが、ゴブリンは統率されている感じがあるらしい。知能はそれなりで、それは他の魔物の方が高い。だが、他の魔物と比べて特筆する点がひとつある。それは、人、特に女子供を繁殖のために攫う事だ。ゴブリンという魔物にメスはいない。

これも他の魔物とは違う点。なぜメスがいないのかは学者の数だけ説があるが、俺がその中で好きなのは、ゴブリンは、昔、神が罰を与えた姿、というが好きだ。


イテク達は戻り、両側のもう一方の道にも行ったが、その道にもなにもなく、残ったまっすぐの道を行った。ゴブリンの本に、なぜ女子供をさらうかのか、著者の言葉が印象的だった。

『ゴブリンは人間を求めてる。自分は人間だと証明するために。』



縦横無尽に入り乱れた道を進み、一方通行のその先に。横穴だ。さっきのように警戒する。

ゴーグル越しに人の形が見えた。ダイは、入口を警戒し、イテク達がその人影に駆け寄る。

「大丈夫ですか?」とイテクが優しく揺さぶりながら小声で言う。ルグースが魔法で火を点けて、イテクはゴーグルとマスクを外した。

その女性は苦しみながら静かに片目を開ける。火に照らされたイテクの顔を見て、少しビックリするが「ネイアさんですね。大丈夫ですよ」と優しく笑うと、顔がクシャクシャになった。

マミーミが、そばにいた女の子を起こし、マスクとゴーグルを取り、笑顔を見せた。その子もまたクシャクシャになる。親子で似るのかな。いや、冗談はさておき。親子を立ち上がらせて、ゴーグルをかけさせる。火が消え、イテクとマミーミはゴーグルとマスクをつけた。親子を見ると、服が紙を破いたような身なりをして、胸や下が丸出しだった。母親は前を隠すが、大きいのか乳房がはみ出る。脇や手の隙間から毛が見える。娘の方もそうだ。胸は母親ほどなく、形が保って隠れている。年頃なのか、胸より下が気になって、膝を内側に入れている。

ゴーグルの仕様上、そこまで分かるわけではないが、心情として隠したのだろう。おっと、と男性陣が目を逸らし、後ろを向く。マミーミは、警戒しといて、と小バエをはらいながら小声で言い、親子に黒い毛布を被せ「飲めます?」とリュックから温かい飲み物を出し、そしてドーランを塗らせた。

マミーミが、できたわ、と言うと皆が気を引き締めた。親子を真ん中に、前をタンクに、横を剣士が前と後ろを互いに見て、魔法使いが後ろで構える。速度を一定にし、気になる所があれば、一旦止まり、タンクが前に出る。




あとは出るだけだ⋯⋯。




なんだ? 何かがおかしい。道中、色んな道を来たがそんなに時間は経っていない。なのに。正確にどれくらい経ったかは、分からないが、おかしい。

いや、これは感覚を研ぎ澄ましているからか? 親子とルグースをちらりと見る。イテクは辺りを見渡し、横穴があるのを確認した。そして、イテクは(皆、一旦休憩しよう)と横穴を指した。

「正直、なんでこんなに時間がかかっているのかわかりません」とイテクが親子に言った。

「どういうことですか?」と母親が静かに言い、さらに「冒険者はマップを書くんですよね?」と言った。

「はい、もちろん書いてます。でも、なぜだか分かりませんが、マップの道がないんです」

「え?じゃ、じゃあ、このままですか!?」

イテクは苦い顔をし、パーティの元へと行った。ルグースが、どうすると聞いて、イテクが、無闇に進まない方がいいと返し、ルグースがそれに同意する。そして、ダイが、こんな事聞いた事があるかと疑問を投げかけ、それに皆は、いいやと言った。ここで、イテクは一つの疑問が浮かび上がった。

「調査報告書は、どうだ?冒険者に関する失踪の」

「正確な数字は覚えてないが、2桁だったはずだ」とダイが言う。

「俺もそんくらいしか」

「確か、34、5件だったはず」とマミーミが杖を抱きながら言った。

「34、5件⋯⋯もしかしたら、そのうちのどれかは、これかもしれない⋯⋯」とイテクが言う。

皆、沈黙、したがダイが。

「だったら、書いてあるはずだろ。こんなこと」

「⋯⋯俺らが最初かもしれない。それか、調査しても分からない隠す術を持っているか⋯⋯。それか⋯⋯」

皆がイテクを見る。

「ごめん」と壁の方に向かった。



くそ、どうすれば良い。食料は全員分でも一日持つか。冒険者がやる最初のクエストだぞ。それに救助だ。どうする。夜になったら、ゴブリンが起きる。そしたら。いや、ゴブリンの洞窟あたりの数は平均で52だったか。この横穴なら、ゴブリンを全滅できるかもしれない。でも、たとえ、そうしたとしても、出られない。ダイの魔法を使ったとしても。

分からないんじゃ、どうしようも。どうすれば、この状況を脱せる? クソっ! 嫌な臭いだ。吐き気がする。こんなとこ居たくない。外に、と思った時、風の匂いがした。っ! イテクは咄嗟に鼻を触った。なんだ、一瞬⋯⋯。イテクは集中した。外を思った。すると、絵が浮かんだ。葉が揺れる絵を。そして、匂い? イテクは、たちまち、あることが頭に浮かぶ。これは⋯⋯、道? 微かに()()()。これは、魔法、俺のか。

イテクは振り向き、食料を食べているパーティに小走りで向かった。

「出られるかもしれない」とイテクの一言で皆の頭が少し上を向いた。だが、ダイはさすが大人なのか冷静に、どうやって、と乾パンを飲み込んで言った。

「⋯⋯もしかしたら、俺の魔法でできるかもしれない」と半信半疑に言った。

「どういうことだ?」とルグースが言う。

「においが分かるんだ。それに、だんだん意識した途端、音も聞こえる。寝息が聞こえるんだ」

「⋯⋯お前の魔法か?光の」とルグースがはかるような顔つきで言った。

「分からない。でも、そんな確信のようなものを感じるんだ」

「やろうか」とルグースが言った。

イテクは顔を上げた。

「正直、半信半疑だが、このままじゃ死が遅れるだけ。やろうか」とダイが最後の一口を食べ立ち上がった。

「そうだよね。やろうか。それにイテクさんの魔法気になるし。出たたら色々と調べさせもらうからね」とマミーミが手をワキワキと動かす。

「あ、ああ、ありがとう」

「で、においを探ってそこに俺で良いのか?」

「ああ、ダイ、頼む」と言って、イテクは振り向き、コンソメスープのような栄養のある物を飲んでいる親子に向かって言った。

「すみません、不安にさせてしまって」

「聞きてました。⋯⋯本当に出られるんですか?」

イテクはその言葉に、完全には同意できないと思った。だが、自信はあった。

「はい。必ず」

そのイテクの強い言葉に、母親は少し力が抜けた感覚がした。

イテクは、無意識なのかそうじゃないのか分からないが、娘を見て「佇む者(ウルフ)」と言って、魔法を使った。その翡翠は暖かく輝いて娘の側に佇んだ。イコアはそれを「わぁ⋯⋯綺麗」と言って撫でた。「暖かい⋯⋯」と言ったイコアの表情を見て、母親はどこか安心して、娘をそっと抱きしめた。



準備をしながらダイが言った。

「それにしても、なぜゴブリンがこんなこと。できるもんなのか」と木の実を食べ、それを流し込むようにポーションを飲んだ。

「⋯⋯できる。と思う。ゴブリンにも学習能力があるし、一応、原理的には魔法が使えるんだ。俺らと一緒で。だから⋯⋯、教えたらできるさ」


——教えたら——


「だから、必ず生きて出るぞ」とイテクの一言でルグースは呼吸をして気を練り、ダイは今までの事を思い出し、マミーミは杖を回し床を優しく突いた。



「イテク、もう良いか」とダイに呼ばれ「少し、待ってくれ。あと少し」よし、これで良いかな、と紙を懐に入れた。「すまん、待たせて」とイテクがマスクを取った瞬間、蒸れた口元に洞窟の寒さを感じた。なるべく戦闘は避けたいな。イテクは出ようした時、皆を制した。

(どうした?)とダイ。(ゴブリンだ)とイテク。皆が身構える。俺がやる、とイテクは皆を右の岩陰に誘導する。

(やったら、すぐ行くぞ)とサイン。静かに近づき、手前でしゃがんでゴブリンを待つ。(他には)とダイがサインを送り、イテクが(1匹だ)と返す。

静まった時、徐々にザク⋯⋯ザク⋯⋯と近づいて来ている。見張りなのか? と頭によぎった時、ゴブリンの顔がのろりと出てきた。その一瞬、喉を刺した。よし。イテクは戦慄した。


笑ってる?


コッと何かが落ちた。途端、水が噴き出したように目の前が黒くなる。セミの鳴き声。——黒板を引っ掻いたような甲高い不快な、不安を煽るビープ音——がゴブリンたちを、皆を包み、洞窟の暗闇に点々と光が灯り出す。

皆が「——なんだ?!」と言う前に、イテクが「皆、こっちだ。早く。ゴブリンが来る」と皆を呼びかける。——もうか。前を見た。

「任したぞ。ダイ」と夥しい数の赤い点に向かって言った。

「ああ」とダイは力強く返し、おおおおぉっと太い雄叫びを上げ、道を切り開く。イテク達は、それに続きゴブリン達を、切り、殴り、逆手で突き、順手にしてまた突く。時には、ウルフで噛みつき、時には蹴り、時には盾で殴る。この反響。におい。形が変わってる⋯⋯! いや、別に問題じゃない。俺が教え、ダイが道を開ければ良い。


ただ、その繰り返しだが、そんな簡単な事をさせてはくれない。さっきより多い。——これは。どうする。くそっ、ゴブリンで道が分からない。においも。

「イテク、どっちだ」とダイが言う。

「分からない。ゴブリンのせいで、正確には⋯⋯」とイテクはふたつある穴を見た。どっちだ。どちらかは出口に近い。賭けだ。

「右だ!」

イテク達は、右の横穴に入った。そこは、部屋のような空間だった。くそ、ハズした。

「すまない、みんな」

「いや、大丈夫だ」

「いいよ。そんなの。ここで、ゴブリンをやれば楽に出れるな」

「もう、走りたくなかったんだよねぇ」とダイ、ルグース、マミーミが言った。親子は、お互い抱きしめながら奥に後ずさる。



ゴブリンたちが雪崩のように襲いかかり、洞窟の空間を染め始め、上空には赤い星が散った。

ゴブリンと皆の距離は、まさに一触即発。なんでも起こる。イテクは、片目を共有したウルフを使ってできる限り目を増やした。左目の翡翠が揺らぐ。

ゴブリンがイテクを攻撃する。イテクは、盾でいなし、喉を突く。その隙を、ゴブリンが切りかかる。が、ウルフの目は捉え、それを見たイテクは、何も見ずに体を捻り、刺す。

ルグースは、ここじゃ魔法は使えないと判断し、純粋な体術で戦う事を決めた。

ルグースが、ゴブリンの突きを躱し、懐に入って、膝で胸骨を折る。そのゴブリンを掴みに、もう一方のゴブリンに向けて、ゴブリンを盾にし攻撃を防いだ。刺したままのゴブリンを傾かせ崩し、攻撃したゴブリンの喉を刺す。ルグースは、慣れているのか一撃で殺す事を考えていた。

ダイは、仕事柄かゴブリンとの距離間に慣れており、攻撃を紙一重で躱し、関節部を攻撃する。その隙を、切る、殴る。だが、経験不足と修行不足のせいか、魔法との両立ができていない。それを痛感していた。ここだと自分が有利なゆえ、尚更。

マミーミは、それの対極にいる。ゴブリンを、杖で打撃し目を潰し、魔法を用いて水に破片を含ませ超高噴出にして切った。杖を地面に刺し、障害物としても使い、水で相手の目を潰す。それを防いだゴブリンが、マミーミに向かい、剣を振る。が、マミーミは、それを右、左、と躱し、右、左と拳を振るい、最後に右で拳を突き上げる。ゴブリンの顎が砕ける。

マミーミが目指す魔法使いというのは、冒険者の、魔法用いた戦闘の究極と言えよう。

あるゴブリンが、勝てないと判断したのか、ダイに脇目も振らず、親子の元へと駆けた。

ダイは、猫のような軟らかさで右に捻り、近寄り、勢いを乗せたまま蹴った。骨が砕かれる音が鳴り、ゴブリンが鳴き、低音と高音がこだまする。

それを見たあるゴブリンが、そうだ、人質だ。となにか言語のような音を叫ぶ。それを察知し、十のゴブリンがダイを襲った。皆も、なにか仕掛ける気か? と察知する。あれか、とダイは、コマ送りのように、ゴブリン達をなぎ倒し、砕いて行く。近づいて行く、かのゴブリンに。切った。だが、ギリギリで刃を殺したゴブリンが、転がる。

ゴブリン、好機。

見上げると、何度何度も目にした壺がふたつあった。跳ぶ——。飛ぶ。首が飛ぶ。盾で首が飛んだ。ダイは、見逃さない。

だが、ゴブリンも見逃さない。攻撃は隙だ。ゴブリンが駆ける。仰ぎ見る。親子は今までより、強く抱きしめる。


その瞬間を逃しはしない。


一歩、ゴブリンのもとに踏み込み、ゴブリンの脳天に鉄槌を下ろした。ゴブリンは、地面に叩きつけられ、頭蓋が地面と共に砕ける。それを見た親子は、尻もちをつき、隙間がなくなるほど身を寄せ合った。

そして、ダイは、振り向き、前へ出る。親子は、優に百八十を超える巨体が素早く動く光景を見て、彼を鬼だと思った。


親子の恐怖は終わらない。


ルグースが、ゴブリンを捌いていると、ダイの首元を後ろから攻撃するゴブリンを見た。それをルグースが、特殊な足さばきで浮き、距離を縮め、切る。

「助かった」

「どうも。でも、俺、剣士なのよ」

「ふっ」とダイが笑い、ルグースが離れたその隙を、あるゴブリンが捉えた。親子は、それに気がつき、また身構える。だが、ルグースも捉えている。

ルグースの背後で、ダイが、ゴブリンを空中で殴り、地面のゴブリンを突き刺した。

その一拍前にルグースが動く。蛇のようにゴブリンを薙ぎ倒して行き、腕をしならせ、落とす。かのゴブリンが斜めに落ちる。親子はルグースを見た。それの上半身が滑り落ち、それの下半身が片膝をついた、その隙間から。

娘の脚に尿が伝う。母親の密着した太ももに押しつけながら。彼は、次は、と言わんばかりにゴブリンに向かった。親子は、まるで、その為だけに血と肉と骨があるではないかと思った。

マミーミは、水を匠に使い、水で目を潰し、近ずき、水で切る。相容れない液体が飛び回る。あるゴブリンが、マミーミを襲う。マミーミは、距離を取り、地面に杖を刺す。ゴブリンが揺れる。瞼の裏に幅のあるモヤが現れる。左手で短剣を取った。慣れた手つきで腹を割る。腹に右手を突っ込み、大群に向かって突っ込む。ゴブリンは、マミーミに向かって声を出そうとするが、ゴブリンは事切られたかのように黙った。マミーミには一点の恐怖がなく、闇夜を覗く眼はゴブリンの恐怖を見ていた。

それは飛び散る。赤と青の棘が突き刺さる。娘は、自分と同じくらいの子が淡々とゴブリンを殺していくのを見て、何が違うのか、と疑問に思った。


親子は、また見る事になる。


マミーミは、右手でゴブリンの頭を押さえ背後の攻撃を躱す。そのゴブリンの腕を掴み叩きつけ、反発したそれを彼の方向に蹴る。

「イテクさん」とマミーミの声を聞いた。

イテク、切る。

イテクは、ゴブリンの攻撃を後ろに下がって躱し、その直線上に斜め下から拳を顎にもっていく。

ゴブリンが、吹っ飛び数体のゴブリンにぶつかる。

ゴブリンが臓腑の詰まった詰め物に手こずっていると、狼の尻尾が一網打尽に切った。イテクは、次の標的に翡翠を揺らした。その光に向かって、ゴブリン達は、あそこが頭だと、認識した。分かりやすい的だ、と飛びかかるが。こちらも見えている。

この目は、ゴーグルよりも、良く見える。左半身を入れてゴブリンのナイフをいなした。片腕を前に出し、腕を絡ませ、崩す。倒れたゴブリンの喉を刺す。引き抜く瞬間、棍棒を持ったゴブリンがこちらに来た。ゴブリンは縦に振り、イテクは盾を出し、いなし、左半身を懐に入れ、肘を胸に手を後頭部に引っ掛け、地面に叩く。狼が頭をもぎ取る。

構え直すイテクの隙をつく。が、左足を伸ばし、ゴブリンの胸骨を粉砕する。早く親子の元に向かわなくては。とイテクは親子の方を見た。。

また、ゴブリンが来る。足止めのために。ゴブリンがナイフを突いた。突く前に体勢を整え、左手でいなすと同時に掴む。反応したゴブリンは、反射で抜こうとする。

——刺された。倒されて、刺された。なにをした? こいつはなにをした?

イテクは、その流れのままに、手を自分の顔に近づけ崩し、刺した。刺す前に、もう技はかかっていた。

これじゃ駄目だ、と機会を伺っていたゴブリン達が決心する。無理やりにぞろぞろと親子の元へと襲った。ウルフは、見逃さず、一匹また一匹と倒すが、その強行手段は幸をなし、娘に触れた。娘は恐怖した。ゴブリンに——。ゴブリンは困惑する。なぜ、目の前に刃がある? それも血が剣先から滴り落ちて。娘は恐怖した。背後に現れた翡翠を携えた彼に。彼は、剣を抜き「——あ”あ」と掠れたがなりの入った声をだす。翡翠の人魂がゆらゆらと上がる。

人魂は、急な楕円を描き、ゴブリンの血が軌道にかかる。彼は、命を掛けている状況と膨大な処理による興奮で笑みを浮かべていた。

どちらが魔物なのだろう。猫のような動きをする鬼。蛇ような仕事人。水遊びをする少女。人魂に照らされ、狼と戯れる狂人。どちらが魔物なのだろう。いや、どちらも魔物なのだ。この親子だけが、人なのだ。



ゴブリンとの戦闘の末、なんとか大群から抜け出し、出口に向かうべく塞がれた道をイテクが探しダイが開ける。

あそこか。とイテクは、何かを察知し、先にその方向へと向かった。ダイに、そこだ、と出口の方向を指し、イテクは影に隠れていたゴブリンを引き付け、足止めする。

「みんな、こっちだ」とダイは塞がれた壁を開け皆が通る。イテク、と呼びかけ、ああ、と返しゴブリンを蹴って開けた道に入る。ダイは、追いかけていたゴブリンを盾で振り飛ばし、道を塞いだ。

皆、一旦止まり、息を整えながら、同じ方向を見た。その丸い光を見て皆が安堵する。

「みんな、もう少しだ」とイテクのかけ声と共に走り出す。出口に向かう。その時、何かゴロゴロと音が、イテクの耳に入った。出口にゴブリンの輪郭が照らせ、何か台車に積まれている。それに火花が散らされた。イテクは、鼻でそれを感じ取る。ゴブリンは笑い、それを蹴り飛ばした。向かって来るそれは、あれは——「爆弾だ」とイテクが空気を切り裂くように言った刹那——

遂行者(バード-ショット)

階層の壁(フェイズ-ウォール)」とイテクは、バードを出口に向かわせ、ダイは五重の壁を形成した。ダイは、壁を築いたのち皆を覆った。

皆が防御姿勢をとった⋯⋯。そのとき、洞窟が爆音と共に振れる。洞窟の外は焦げ、音で鳥たちが飛び去り、広場にいる鳥が目を覚ました。

その鳥は、何か悟ったような顔で、その方角を見る。

洞窟の壁が次々と土を降らせ、パラッパラッと止んだころ。時が止まったような感覚が襲う。イテクが「みんな、大丈夫か」と周りを見た。皆、大丈夫、と言って「どうやら、生きてな」とルグースが苦笑し「ああ」とイテクも苦笑する。

「ゴブリンは、今のでいなくなったみたいだ。でも、気は抜くなよ」と皆に言って「あと少しだ。行くぞ」とイテクは明るく言い、立ち上がる。そして、崩れて塞がった道をダイの魔法で進む。

これでようやく、出れるな。それにしても、火薬の使いすぎだ。それに、どこから手に入れたんだ?




「はぁあ、空気が美味しい。さいこぉお。もうダメぇぇ」とマミーミが腕を広げた後、崩れるように座り込んだ。

「はぁ、本当、死ぬかと思った。本当に」とルグースは四つ這いになり、ダイは「これがクエストか」としみじみしていると同時に焦りも見える。

娘が母親に抱きつき「ママぁ」「イコア」とお互いに抱き合ってる。イテクは皆を見て、微笑みながらバードに渡した紙をしまう。もしもはなかったな、よかった。

「本当にありがとうございました」と母親が会釈し、娘もならう。

「いえいえ。では、このままギルドまで一緒に行きましょうか」とイテクが言い「はい」と母親が言った。

ダイが、馬と鳥を象った笛を鳴らし、それを聞いた広場にいる鳥が羽を広げ飛び去った。

「じゃあ、ぼちぼち行くか」とイテクは体を伸ばす。

「えぇ、もう行くのぉ。もう少しいようよぉ」とマミーミが言う。

「ダメだ。早く親子を返すぞ」とイテクが言い「はーい」と杖を使ってしぶしぶ立ち上がった。そして、彼らは森の中へと入り、馬車が来る方へと向かった。




彼らは、道中、暇を持て余しだべっていた。

「イテクさんが、使ってたのって、えぇーと⋯⋯なんだけっ。⋯⋯あぁ、そう合気だ。あれって合気だよね!」とマミーミが言ってきた。

「え?」俺は、耳を疑った。まさか、とは思ったが。いや、実際、コードと呼ばれているそれがあるんだ。もし、何らかの現象や行動を表すなら、そうなっても不思議じゃない。言語とは、そういうものだ。

俺が驚いたのは、そこではない。まさか、合気という概念がある事についてだ。いや、まぁ別に合気はなにも不思議な力ではないし、人間が探究をしていたら、いずれはたどり着くものではある。あっちの世界のように。

「あっあと、首相撲のやつもやったな」とルグースがこちらを向いて言った。

「あ、ああ。あれな、そうだな。それの応用をな」とイテクは戸惑いを隠しながら言う。

「それでいうと、マミーミが使ってた⋯⋯俺にゴブリンを蹴飛ばす前にやった、あれ。あれは、合気を用いた柔術だよな」とイテクは悟れるを気にして話を逸らした。

「うん、そうだよ。私みたいな魔法使いは、変に武器を使うより、そっち方が断然良いからね。

だから、素手を使うような体術は必須なんだよ」あ、もちろん、武器術も学ぶけどね。と添える。

「確かに、棒術も使っていたな。俺が知っているとは、だいぶ違うが」

おそらく、魔法込みでの技だからだろう。

マミーミはそれに同意し、イテクはふいに疑問に思った事を聞いた。

「棒自体になんかあるのか?」

それにマミーミは、あるよと返した。

「えっとねぇ。まず、魔力がある素材を使って作られてて、私のは水属性を安定、増幅するものを使ってるね」

なるほど、と言ったのち、ルグースから話が切り出された。

「それよりさぁ、ずっと気になってたんだけど、お前、なんでこっち来たの」とルグースが投げかけた。

出身についてだろうと予想できるが、どうしたものか。

「え?ああ⋯⋯、そこは⋯⋯あんまり聞かないでくれ、色々と事情があるんだ」と素直に言う事にした。嘘はいつかバレるものだ。

「そっか⋯⋯、なんかごめん。変な事、聞いちゃったな」

「いや、いいよ。まぁ、そうだよな。命を共にした相手が、なにも分からないんじゃな」

「まぁ、それもあるけど。単純に俺の興味だよ。知りたくてさ、もっと。気が合うと思って」

「ああ、なるほどな。そうか⋯⋯」とイテクは、少し空を見た。そうか、俺は——。俺は、部外者だ。

いずれ順調に進んだら、別れる事になる。でも、ひとりじゃ無理だよな。

「なぁ、イテク、帰ったらみんなで飯食おうぜ。お前、なにが好き?」と頭の後ろで腕を組んで、当たり前ように言ってきた。

「そうだな、俺は⋯⋯」

彼らは、話した。色んな事を、これまで事を、これからの事を、好きな事を。彼は、ようやくここに来たのだと実感した。




イテクは馬車の後ろから頬杖を付いて過ぎ去る景色を見ながら考えていた。なぜ、あんな事ができるんだ。先ず、道を塞ぐ、これは魔法を使えばできる。そもそも、原理的には俺らと一緒だ。ゴブリンに頭が回る奴がいれば、できなくはない。それは、分かる。でも、あのカプセルのような物はなんだ。

あの中にセミを入れていた。あれがゴブリンにできるものなのか。しかも、あの虫はここらで生息していないものだ。と片隅で覚えていた図鑑のことを思い出した。一応、繁殖させる事はできるが、それをしたのか? ゴブリンが⋯⋯? それに加え、あの爆弾。あれは、どこから?

ゴブリンにも知能があるが、どれくらいなのかは、正確には分からない。未知数だ。フィールドワークをすれば良いが、そう簡単にはできない。冒険者でも、数件だが死亡報告が毎回あるほどだ。だから、そう易々とはいかない。

一応、ゴブリンはゴブリン特有の言語でコミュニケーションをとってると言われている。あの時もなんか言ってたなしな。社会性もあるから、それなりの知能は有しているとは思うが。

「何取ってんだ。こら」とルグースが取り返そうとし、マミーミがぬっふーんとルグースの体を手で押さえて、パンを咥えた。娘のイコアが、パンを食べながら白けた顔で見る。母親のネイアは、上品に笑い、娘と共にその光景を見る。以前、娘は白けたままだ。

「ちゃんとあるから」とダイが呆れたようにパンを渡す。

その光景を見て、イテクは、はは、元気だねぇ、と思った。

「イテクは、食わねぇの?」とルグースがパンをさしだす。

「わるい。今は、食欲ない。落ち着いたら、急にドっときてな」と手で遠慮を表す。そうか、じゃ、俺のな、と言わんばかりにマミーミに見せつける。

マミーミは、ずるい、ジャンケン、と言って手を出した。

ホント、元気だな。ここの人達の基礎体力は俺とは違うようだ。課題だな。

イテクの目にこの世界の水平線が映り、高低差がある木々が波打っている。

知能がある⋯⋯か。教えられたら、できるほど知能が。爆弾が来る前、足音がした。ゴブリンの足音だと思ったが。——あれは。人間の足音だ。軽かった。女性、か、子供。依頼にない拉致された人か?

⋯⋯それとも。彼は頭の中で思い出す。あぁ、やめだやめ。今考えても仕方がない。それより、魔法に慣れなちゃいけない。今回のクエストは、俺が最初からどんな魔法なのか知っていたら、良かったんだ。もっと魔法に触れて、当たり前にしないと。それに色んな音やにおいも分かるようにならないとな。せっかくの魔法が腐っちまう。イテクは、頬杖を遠くを見た。ここからかな、本当の異世界生活は。でも、当分、生活は修行尽くしか⋯⋯。

読んで頂きありがとうございます。


やはりこういうのはどこまでも書いてしまう。

正直、書き足りていない、描写が足りていない所もある気がしてならない。


それでも、読んでくれるだけでも、ありがたい。


しっかりと自分で判断しなければいけないな。


今後も、頻度は少ないが、書き続けていく所存。

楽しい事には変わりはない。


こんな作者、作品だが、改めて、見てくれてありがとうございます。

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