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現想異文奇譚。~One World One Life~  作者: 空殼 藍(そらがら らん)
2/6

第2話 冒険者。

注意。

一部内容に、性的な描写とそれを匂わせる描写が入っています。

それでも良いよという方は、

どうぞ「現想異文奇譚」を楽しんでください。


二話を書きました。


かなり説明が多くなってしまった。

こういうのって、どう書いたら良いんだろう。


取捨選択が上手くいってない気がする。


もしかしたら、くどくなっているかもしれません。

彼は日の光で目が覚めた。「うぅん、んっ」と彼は起き上がり、辺り見る。焚き火が弱々しく狼煙が上げていた。生きてたな。それに人は来なかったか。彼は、立ち上がり、背伸びをして、服をパッパっと払う。そして、ナイフを鞘に入れて、、昨日の骨を左腰に差し込んで、近くの川に向かい顔を洗った。気持ちいい。その次いでに、水で口をゆすぎ、地面に吐き、水を飲む。美味しい。こんな味だっけ? そして、川の水面を鏡代わりにして、髪を整えると、左手がふと視界に映る。どういうわけか治っていた。あれ、と昨日ついた傷を確認する為、袖と裾をまくる。それらもなぜか治っていた。深い傷じゃなかったけど。でも、噛まれた腕、正確には噛ませた腕だけど。それも、ほとんど治ってる。

彼は、腕を親指でさすって、傷跡を指で撫で沿う。

まぁ、良いか、治ったんだし、と広場に戻り、忘れ物がないかを確認して、木の実を取り、食べながら森へと入った。


彼はガサガサと木々の中を進んでいた。この方角にとりあえず進めば、道が現れるはずだ。ただ、問題はその後だな。たとえ道が見つからなくても、この方角、北西に進めばあの崖から見た街に、いずれは着く。だけど、その後。言葉だ。この世界の言語が分からない。同じだとありがたいんだが、と冗談まじり思う。ただ不安なのは習得できるかどうかだな。よく分からないうちは下手に反応しないほうがいいか。言葉が通じない分、即お陀仏だ。

そんな事を考えていると、彼は咄嗟に身を隠した。人だ。何か喋ってる。

「ナー コジョカゾ ゴブリン オン ファショ」と鎧を身に着けた少年が少女に問いかけるように言った。

ゴブリン? その一行は少年の他に、魔法使いと思われる可愛らしい少女と堅牢な装備を身に着けた一回り大きい男性で構成されている。あの身なり、もしかして冒険者ってやつなのか。ならば、パーティか。彼は身を潜めたまま観察する。まだ何か喋っている様だ。

「うーん ゴゴサジェン ファクォ オノウ ゲフォ」と地図とにらめっこをしている少女が言った。

「ポンサンジェ イェンゾウ アハ ジャイノウグ サソパ?」とやれやれとした感じに男性が言った。なんて言ってるのか分からないな。でも、発音は日本語に近い、かな。彼らが目の前を通り、そして遠くに行ったことを確認する。

やっぱり言語が分からない。でも、ゴブリンか。いや、もしかしたら、発音が似ている別の意味を持った言葉かもしれない。けど、地図を持ってたって事はそのままの意味か。この世界の生物は、俺の知る生物じゃない。だから、ゴブリン、が本当にいる、のか。いや、今は一旦やるべき事に集中しよう。彼は再び道を探すため歩き出した。


彼は、休憩スペースと思われる場所を見つけ、座って木の実を食べていた。人とまったく出会わない。でも、こういうのが在るってことは人が来るはずだ。朝早くに動いたから、人の通りが少ないのかもしれない。しばらく待ってみよう。どうせ、人と関わるんだし。


彼は左を向くと、遠くから馬車が来ていた。彼は身構えながら対面する。

「エデ ゴンパクォゴソ ワハタ ティゲンファ? モマエア オムイン カオース オゴポガ?」と活発で体格がそれなりに良く、優しいそうな老人が言った。全然、分からない。まだ、なにか言ってる。よし、こうなったら。彼は、木の棒で簡単な地図を描き、建物の方角を指した。そうすると、それを見た老人は納得した様に頷いてから、何か後ろに喋って、荷台を指した。人が居るのか? 乗っていいって事だよな。彼は後ろに行き、足をかけて身を乗り出す。すると、何かを描いている可愛らしい男の子とそれを見ている女性特有の骨格になりつつある好奇心がありそうな女の子、そして、筋肉と脂肪のバランスが良い良妻賢母を思わさせる女性がいた。家族かな。

大丈夫そうだ。その家族はこちらを向いて、彼は小さく会釈する。鞭が弾かれる音と共に座り、馬車が動き出した。


ガタガタと揺れながら、何があるのかなと辺りを見渡すと、その荷台の中には、左奥に固定された木箱が崩れたルービックキューブのように積んであり、壁には武器が括り付けられ、箱から透明度がある石がゴロゴロと入っている。あの木箱を何処へ運ぶのだろう。あの場所だろうか。それとも、行商人だろうか。この中は、木の匂いや、ほんのりとお酒の匂い、鉄臭さを感じる。そして、ギイギイと少し木の音が聞こえ、目の前で老人と家族が談笑をしている。それらはこの荷台の物語を脳裏に浮かばせた。

そんなことを思っていると興味深々に女の子が見ていた。やっぱり珍しいのかな。

「イェチ ポーフォアンス オム ヒルツォース?」と女の子が元気に質問した。

「ソウサマ ノー ジャパテクァリー」と老人が女の子に向けて説明するように言う。

「ロウサーノ?」とこちらに言う。そうなの? と言っているのだろうか。しかし、どうしよう。あまり無闇に反応しないほうがいいか。すると、女の子は何か考えた後、男の子と母親に何かを言って、その二人がスケッチブックに何かをかき出し、一枚また一枚と破った。そして、それを自分に見せてきた。そこには、この世界の言葉と思われる記号と、その下に絵が描いてあった。

「ホーンキニータ」と女の子がその絵を見せて何かを指している。

「ホーンキニータ」と再び言う。彼は、その記号と絵を見ると、手を互いに挙げている絵が描かれていた。こんにちはって言っているのか。

彼は恐る恐る言った。

「こんにちは」すると、女の子は「こんにちは」と言った。


その家族による言葉の一覧表を見ながら彼は会話をする。

「なにしに行くの?」なるほど、さっきはこれを言っていたのか。さて、どうするか。ここは、そうだな。「働きに」と言っておこう。これは、嘘ではない。実際、働かないと生活ができないし、あの街で見つけるつもりだ。

「そうなんだ。どんな仕事をするの?」

どんな仕事か。そうだな。あまり決めてないな。漠然と飲食が良いと思っているが。

「決めてない」と言っておくか。

「ふーん。じゃあじゃあ、どこから来たの?」

やっぱり、そう来るか。どう言ようか。異世界から、なんて言えるはずもない。ここは、当たり障りなく「遠い所」と言っておこう。

「うーん、遠い所かぁ」と女の子は釈然としない様子だ。

「じゃあ、お兄ちゃんって、アドベンチャーズ?」アドベンチャーズ、聞き慣れた言葉だ。ゴブリンといい、アドベンチャーズといい、この世界の言語はどうなっているんだ。アドベンチャーズは、そのままの意味で捉えて、大丈夫なのか。ゴブリンみたいに、短い単語なら分かるが、アドベンチャーズという、こんな長い単語で、偶然、一致するなんてないだろうし。

「冒険者じゃないよ。あの街で働きたいだけだよ」「へぇ、冒険者じゃないんだ。ナイフ持ってるのに」と女の子がナイフの方向を見る。

「これは、作ったんだ、自分が。途中でね」とナイフをそっと抜く。

ふーん、と何か思う事があるようだが、母親が何かを言って、女の子は「ごめんない」と言った。何か窘めたようだ。別に、気にしてはいないが。

「どうしました?」と彼は母親の視線が気になった。

「あ、いえ、すみません。良いナイフだなと思って」

「え、そうですか」とナイフをしまおうとした時、あ、少し見せてもらえませんか? と言ってきた。彼は、その道の人かなと思いながら「良いですよ」と渡す。その母親は、手馴れた手つきで、まじまじとナイフを見る。それを見た女の子が、男の子に「ねぇねぇ」と話しかけ、その子は、任せてと言わんばかりに頷く。そして、できた絵を女の子が自分に見せてきた。あ、やっぱり鍛冶屋の人なのか。どうやら父親が、その道の人らしい。なるほど、それで。

勉強熱心で家族思いな人だ。そして、母親が「あの、これ貰ってもいいですか?」と言ってきた。彼はそれに戸惑ったが、まぁ、あっても困るしな、と思い「いいですよ」と鞘も渡すと、母親の顔が、少し緩んだ、そんな気がした。

「少し思うんだけど、何を描いているのかな」と彼はスケッチブックの様な物を指して言った。

「あっ、こ、これは、ピメンの為に描いて、ます」と男の子が恥じらいながら言う。

「あー⋯⋯試験?」と男の子が絵を描いて見せてきた。

「はい、試験。ぼく、画家に成りたいから、その為に絵を勉強したくて、それで」と少し微笑んだ。

気弱そうで、恥ずかしがり屋だが、どこか目にしっかりとした何かを感じる。

「絶対なれるよ」と女の子が、男の子に抱きつき。男の子が笑い、女の子もまた笑う。

「それはすごいね。でも、大丈夫だった?描くのを止めて?」

「はい、大丈夫ですよ。まだ、何を描けばいいのか分からなくて。それに色々な絵を描けるので、勉強になります」

「そうか。それは、良かった⋯⋯、頑張ってね」と女の子に耳打ちされた言葉を言った。おそらく、そういう意味だろう。男の子は「うん」と照れながらに言う。女の子は「へへへぇ」と男の子に抱きつき、それを母親がにこやかに見ていた。



色々と会話をしているうちに目的地に着いた。家族と一緒に荷台から降りて、彼は空を見る。昼になる前くらいか。

「ありがとうございました」と母親が言うと「いいや、良いってことよ。昔からの縁だ。あのボウズによろしく言っといてくれ」と老人が言う。どうやら腐れ縁のようだ。俺は、一息ついてから行くか、と老人と一緒に家族に手を振った。そして、彼は「ガーイラオーツ」と言い、老人は「キィッテオート」と言った。



さてと、言語の一覧表を、老人から貰ったメモ帳に写したし、ここに来るまでかなり話したから用法が豊富だ。これで言語についてはひとまず大丈夫だろうだな。そのメモには、読みやすくする為、カタカナで小さくふりがなをつけている。落とさないようにしよう。

彼は、街に入ると、ここは異世界なんだ、と呆然としながら歩いた。この訪れた街には、なにやら機械があり、ホログラムを店の人が操作している。そのホログラムには、数字と思われる記号が映って、店の人がなにやらカードを切ると、記号が動き、桁が増えるのが見える。そんな近未来な光景を思わせる物の他に、竜の鱗ような物が店頭に並べられ、何らかの生物を素材とした防具、武器があり、自分が食べていた木の実や、また別の木の実が山になっていたり、吊るされたりと、原始的な光景も共に存在している。そんなどこか不思議な街。彼は歩きながら、化かされた気分を味わっていた。

この街、もといこの国は、世界第二位の国、カサナ・イハテ・セケク帝国ということを、のちに知った。皆から、カサナ・イハテと呼ばれているようだ。

どうしようか、いっそのこと聞いてみるか。彼は近くにあった八百屋の人に声をかけた。

「ん、どうしたんだい?」となかなか快活な女性が言う。

「あの、ここら辺で働ける所はありませんか?」

出来れば居酒屋が良いな。言語の取得がしやすいだろうし、情報が入るかもしれない。

「働き手かい?そうだねぇ。ああ、ちょうど居酒屋が募集をかけてるのを見たね」

居酒屋か。やった。本命だ。

「どこですか」と言うと「あそこだよ」と右手で指す。そこには看板があり、店の名前らしきものとビールジョッキが交差して書かれていた。

「あそこですね、ありがとうございました」



彼は、紹介された居酒屋に、働きたい、と言ったらその日の内に働く事になった。

その店長は、良い感じに歳をとったダンディさがあり、看板にあったマークがデカデカと真ん中に描かれたエプロンを着ている。店長から「そのままでも働けるね」と言われたが「でも、さすがにか」と汚れた所に目を合わせた。

彼は着替え、カウンターに手を置いて、店の中を見た。まだ、昼間だというのに客がいる。冒険者だろうか。それを合わせても6人か。客が少ないからか実際の空間よりも広く感じる。

「じゃあ、分かんない事があったら言って」とバイトである獣人の女性が言った。その人は少し猫を思わせる顔立ちとスレンダーな体型をしていて、明るい印象だ。服装はこの店の女性用の物なのか、ズボンを穿いていて、ラフさがある。なかなかスタイリッシュに着こなしている。

「はい、分かりました」

「じゃあ、よろしくね」と獣人の先輩は、他の客の注文を取りに行った。自分もそれにならおう。

「お待たせしました、ご注文はお決まりですか?」

「はい、俺は魚の塩焼きと」

「俺、唐揚げ」

「私は、スティックサラダとピチル酒」

「あ、あと枝豆とビール2つください」と誠実そうな青年が言った。その青年は、隣に剣を立て掛け、短剣を携えている。赤を基調とした鎧を身に着け、左胸にハンマーと剣が描かれたマークがある。軽々とした印象だ。スティックサラダとピチル酒の女性は、しっかりしてそうだが、まだどこかこどもっぽいところがあるように見え、皮と鉄の流線形の模様と形をした装備を身につけており、剣を左に立て掛けている。そして、えーと、唐揚げは、奥の真ん中にいる短髪の青年か。やんちゃそうで、他の二人と比べガッシリとした印象の鎧を身に着け、ハンマーと盾を両側に立て掛けている。皆、歳が近そうだ。

「かしこまりました、少々お待ちください」と言って、厨房に渡す。

「これ、お願いします」

「はいよ」と店長が言い、鶏肉を取り出し、粉を付けた。

バイトが自分を含めて2人、チーフ1人、店長1人と計四人が現場にいる。店長だけなのか。と厨房を覗く。

他にも来るのかな、と思いながら、注文の品ができるまでの間立って待ち、呼ばれて、できた品を持っていた。


彼はベッドに倒れた。帰った頃には、気づくともう夜になっていた。店長は良い人だ。自分が異国の人でお金がないとわかった途端、部屋を貸してくれた。事情を聞かず、何かを悟った様に。この部屋は、どうやら店長所有の建物らしい。店長はかなりの物好きだな。そういう人は本当にありがたい。

この部屋は、だいたい六畳くらいか、それに加え、部屋がもうひとつあり、大きくないが自炊ができる台所もある。風呂はないが、近く、ではないか。わりと近くに銭湯があるのを教えてくれた。それに、あの店長から、と言えば半額にしてくれるらしい。

店長に、良いんですか、と言ったら働いて返してくれれば良い、と言ってくれた。それに、家賃は、と聞くと、それも働いて払ってくれれば良いよ、と言ってくれた。あと、これで何か買いなさい、と言ってお金をくれた。本当にありがたい。店長は、人望があるのだろう。銭湯を半額にできるのも、それゆえにだろう。

本、読むか。買った本は、辞書と字典。魔法についての本を買った。なるべく安いやつを。別に、貰ったお金は、少なくはないのだが、だからと言っても気が引ける。

早速、魔法についての本を読むとしよう。やっぱりあるんだな魔法。



前書きがある。

先ず、この本を手に取ってくれた事に、最大の感謝をここに示す。

ここに書いてある事は、今の時代や前の時代を読み解くのに必要な知識がここにある。だから、これを読めば大体の事が理解できるようになるだろう。

特に、今起きていること、起ころうとしていることについても。

魔法や魔力について書くのだが、もちろんと言って良いほど、魔法や魔力ついては、分からない事が多いということだ。この本では、今まで研究してきたものの現象と前まで言われていた事について書いていく。

もし、この本で、この世界に興味が湧いたのなら、いち学者として、嬉しく思う。

最後に、この本を手に取った者に知識と新たな発展を贈る。


先ず、魔法を使う時に、必要なのが魔法韻(マジックコード)である。このマジックコードは、我々が使っている母国語。エクスキーヌ語でも使えるし、他にも種類があるが、研究により、今使われているマジックコードが一番安定して、なおかつ習得がしやすく、技術面においても使いやすいことが分かり⋯⋯、

なるほど、それが英語のね。

マジックコードを使ったらなぜ魔法が発現するのか。それは、コードを使うと、遺伝子に含まれる魔力因子が反応し構成され、それがある形になったら魔法が発現する。それが、コードを唱えると魔法が発現する理由だ。では、なぜ、コードを使うとこのような事が起きるのか。それは、体を動かす時、脳が反応し、それが神経によって体が動くだろう。それと同じだ。

マジックコードは、頭の中でも使える。これも頭の中で、動きや、もしくは想像するとその感覚になるのと同じだ。もちろん、言語としても使えるものだ。それは我々の言語でも同じ。

そして、魔力がない者がいる。そのような者がたとえコードとして使おうとしたとしても、それは単なる言語にしかならない。

それが魔力ある者とない者の違いだ。


ここからは、マジックコードについて書く。

なるほど、つまりマジックコードとは、言わば一つの箱の繋がりだ。箱ひとつひとつを繋げたら、コードが発現する。そして、その箱の繋がり方でも変わる。例えば、英語とラテン語の違いだ。英語は順番通りに並べれば、因果関係がはっきりする。だが、ラテン語は、文法上どう訳しても良いし、順番通りにしなくていい。だが、それ故に、いかようにも解釈ができてしまい、魔法の発現が安定しない。いや、安定しないというより、すべて出る、と言った方がいいか。そういう意味での安定しない。それは、なぜかというと、コードにはふたつのもので成り立っていると解釈できるからだ。

それが、文字という意味での文字(コード)と思考、想像である思と考(イメージ)からなると言われている。

例えば、ガルビリ、と聞いて何を思った、連想しただろうか。ちなみに、犬と言う意味だ。ちなみに、嘘だ。自分が今作った言葉だ。でも、それが本質。

何か言葉がある、それは実際のものを見ないと結びつかないものだ。そして、何かイメージがあったとしても、それを連想させる為にはコード、文字、言葉が必要だ。コードだけだと、イメージが分からず、イメージだけどものを表せない。それらは相互作用している。ただ、イメージが優位らしい。それは確かにそうで、さっきのように言葉だけだと、何が何だか分からない。でも、イメージが先ずあって、その言葉だと、もうその言葉はそれになる。

だからか、コードがなくても、イメージさえできていれば、極端な話、コードは必要ないらしく、魔法が使えるらしい。だが、それが安定して魔法が使えるかはイコールではない。だから、魔法使いは、英語のコードを編み出した。

使い方が違うところがままあるが、ほとんど英語なので、そう言って良いだろう。英語が安定している。それはさっき言った通り、関係性がはっきりしているからだ。

だから、ことマジックコードや技術で使うようなコードに関しては、英語のマジックコードが使いやすく、全世界共通になっているらしい。

なぜマジックコードが、共通なのかは、その事もあるだが、一番は歴史的な事があったから、らしい。

この本では、詳しく書いていないが、そういう旨が伝わる事が書いてある。



彼はベッドに入って内容を反芻した。一通り読んだけど、読んだ感想は、唖然、だ。言葉として使う場合は、カタカナ英語とかの延長線上で良いのだろうか。コードは、出力すれば使える。自分にも出力できるその回路、筋肉があるのだろうか。それに、魔力因子、か。

寝よう。彼は目をつぶり、明日を思いながら眠った。



居酒屋で働いて三日目となった。その頃にはバイトの数が増え、店内は客でほとんど埋まっている。

前と比べて狭く感じるな。夜になりかけの頃、ある客が来た。

「くそっ!!」と声を荒げる大柄な男。その男は、ひとつひとつの筋肉が綺麗に形を成し、動きやすさと頑丈さを兼ね備えた装備と、背中に細身の大剣を身につけている。顔立ちは店長とは違うベクトルのダンディさだ。なんだ?と彼は視線を向けた。

「にいさん、そう気を立てず」とそのにいさんをなだめた男性は、しっかりしてそうな面持ちと体付きを思わせ、周囲に気を配って会釈しており、そして、しなやかそうな装備を身に着け、小盾と剣を携えている。

「そうよ。別に気にする事じゃないわ」とそれに同意した女性は、色気のある見た目をして、物腰に少し好奇心を感じ、体のラインが分かる装備を身に着け、細長い剣、そしてステッキを携えている。

「そうだよ、早く座ろうよ」と席に促す男性は、この中では二番目に背が高く、筋肉はあるが身長なのか、どこか細い印象を受ける。動きやすそうな鎧を身に着け、剣を二本携え、のほほんとした印象だ。

四人かな。いや、五人か。後ろからあとをつける小柄な少女、フード付きの羽衣とその中に鎧が見え、短剣と杖を携えている。どこか独特の色気を持っている。


その五人が席に着くと、彼は注文を取りに行った。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「いつもの」と大柄な男性が言った。

「えっえっと、すみません。いつものとは?」

「だから、いつものって言って、ああ⋯⋯なんだ新人か?」

「はい」

「すまない、俺は、ビールとチーズを頼む」

「俺は、カイセ酒を、1樽と燻製肉を」と気を配った男性。

「僕は、ワインに白身を塩で焼いて」とのほほんした男性。

「あたしは、ビールに、キャベツの和え物で」とセクシーな女性。

「あれ、姐さん、いつものピチル酒じゃないんすか?」

「ま、いいのいいの」とサービスで出されている乾き物を食べながら言った。

「そちらの方は?」と彼は奥にいる小柄な少女に言った。

「私は、ピチル酒とポテト」

「以上でよろしいでしょうか?」

「ああ」と大柄な男性が、腕を組んで言う。

「あ、これさ、僕達が最初に頼むものだから、覚えておいて」と子分気質な男性が言った。

「はい、かしこまりました。では、少々お待ちください」とその席を離れて、厨房に注文を渡した。

店長が、気づいたようにさっきの席を見ると、その席にいる客たちが手を振った。やっぱり常連なのか。

できたものをその席に置いて、次の席に行く。

注文を取っていると、あの席の会話が耳に入った。

「機嫌直してくださいよ、にいさん」とカイセの入った樽にコップを突っ込んだ。

「悔しくないのか」と大柄な男性が、追加で頼んだサイコロステーキを食べる。

「いや、それは」とビールに口をつけながら俯く。

「あのガキ『あなた達は、なんで冒険者になったの?』だとよ」

「そうねぇ、でも、先にちょっかい出したのは、あんたでしょ。『はっ、願いを叶える為か。そんなものに命をかけるのか?バカかよ』って」

「あれは俺なりの優しいだ。そしたら、あのガキ」

『別に、否定しないわ。でも、あなた達は、なんで冒険者になったの?私は願いを叶える為に冒険者になった。ただ、それだけよ。あなた達にもそういうのあるでしょ。私は半端に諦めたりはしないわ。そういうものでしょ冒険者って』

「だとよ。生意気な」

「でも、珍しいよね。願いを叶える為に、冒険者になるなんて。あるかどうかも分からないのに」とのほほんとした男性が白身を崩しながら言う。

「そうねっ、藁にも縋りたいんでしょ。色々いるものね。冒険者なんて」とポテトを一つつまむと、フード少女が睨んだ。

「でも、小さい時に聞いた冒険者は、そんなわけの分からないものに、平気で命をかける連中だったわね」

のほほんとした男性が「そうだね」と優しくそれでいて哀しくつぶやいた。

大柄な男は、腕を組んで静寂している。どうしたの、とセクシーな女性は言う。

「俺らには、大層な願いなんてない。だが、冒険者になる理由はあった」

「願いを叶える事ができるなんて、信じちゃいねぇが、俺らには成し得たい事がある」と体を前に出した。

「だからよぉ。鬼、狩らねぇか」

「マジっすか」とカイセ酒を口に付ける前に言った。

「鬼ねぇ」とグラスの縁を撫でながら興味無さげに言う。

「それ無謀じゃない」とワインを片手に持って苦笑いする。

「かもな。だが、俺らの目標には必要だろ?もうこの階級にくすぶってないで、そろそろ一旗挙げようぜ。それにあのガキを見返すんだ。俺らもやってるぜ、やれるんだぜってな」

皆、一時無言になる。

すると「良いんじゃない」とセクシーな女性が言った。

「あんな子に、ああも言われたままじゃ、さすがにかっこがつかないわ」

「そっすね。それに鬼に勝ったら」

「一躍、最上級の仲間入り」

「あんたは?」とフードの女性に言った。

「私はみんなが良いなら良い」と小さく作られた何かの揚げ物をフォークで食べた。

「よぉし、決まりだ。だが、俺らの実力では到底及ばない。だから、明日、修行するぞ。いいな?」

「別にいいけど。てか、ノっといてなんだけど。いきなり、どうしたの?もしかして、あの子にあてられた?」

「ふん、そんなんじゃねぇ。俺は前々から決めてたぜ。ただ、準備に時間をかけただけだ。それで、やろうとしたら、あのガキが」

「はいはい」と笑いながらポテトをつまもうとするが、フードの女性が手を叩いた。

「それにしても、修行なんて久しぶりだね」と白身を食べた後、ワインを揺らして飲んだ。

「そうね。お酒、あとを引かなきゃいいけど」

「じゃあ、やめたらどうっすか。弱いんですから」

「えぇ、いいじゃない別に」とビールに口を付ける。

「酔っても、知りませんよ」

願いを叶える、か。彼は、品を置きながら帰れるかもしれないと思った。


「ねぇ、お兄さぁん、付き合ってよぉ」

どうしたものか。

「いや、仕事が」

今、自分は絡まれている。助けて。

「ちょっとぉ、うちのバイトくんになにすんの」と獣人の先輩が来た。助かった。

「良いじゃない、別にぃ。イケメンをつまみにして飲みたいのぉ」

別に、イケメンじゃないが、少し嬉しい。てか、イケメンなら、バイトに来たあの人に声をかけてくれ。なんで、俺なんだよ。酔って、美的感覚が狂ったのか。

「うちはそういう店じゃありません」

「ああもう、やっぱり。姐さん、お酒弱いから」

「だから、いつもピチル酒、頼むのにね。それでもちょっと酔うけど」

「にいさん、どうします?」

「まぁ、良いじゃねぇか。あいつもそうしたかったんだろ」

「まぁ⋯⋯、そぉすね」と何か思い当たる事があるのか、止める気力が少し薄れた。

「いやぁ、付き合ってぇ」と俺の腰にしがみつく。

「ちょ、ちょっと。注文」

ここまでされると、別の意味に聞こえるな。

「こらぁ、離れろぉ」とその女性の腰を引っ張る。「止めてきます」

「あぁ、頼む⋯⋯」


今日の仕事を終えベットに倒れた。帰る時に本屋に寄り、この世界の歴史が書かれた本を買った。願いを叶える事が歴史的なものと繋がっている思ったからだ。よし、早速見てみるか。

まとめるとこうだ。まず、マジックコードは神が使ってたもので、それを神自らが教え、それを人々が使いだした。そして、そこから願いを叶える事が冒険者のひとつの目標となったのは、案外早かったらしい。

それは昔、人々と神々が生活していた時代、ある日、突如としてドラゴンが現れた。そのドラゴンは皆の力をもってしても、倒す事ができないほどの強力だったらしい。そこで、ある者が言った。神よ、あれを倒した暁には、私の願いを叶えてはくれまいか、と。神は、分かりました、と言った。

これが冒険者の原型。その者は、ドラゴンを倒し、英雄となり願いを叶えた。その願いが何なのかは諸説ある。そのうちのひとつが、この国と言われている。その英雄は、国を望んで王となった。その者の子孫がこの国の王、と言われている。

それと神達は、皆が例外なく両性具有らしい。

一見、女性の見た目をしているが、その時代の人物がそれを目撃した事からそう言われている。

そして現在、願いを叶える時は、英雄に値する者が条件だ。英雄に値する者の条件とは、ふたつ、それかその両方。戦績と貢献。

一番良いのは、ダンジョンだろう。ダンジョンと言うが、自然発生した物で単に魔物の巣と化したもの。この世界の住民は、それに困ってる。だから、これをクリアすると、戦績も貢献も十分だと言えよう。もちろん、一回でとはならないが。

ただ今の人達が、ダンジョンをどう認識しているかと言うと、ただの巣だ。いや、巣のだが、それをやるのは、英雄の為じゃなく単に利益のためだ。領土を広げる、素材を入手する、お金を稼ぐ、出世する、それらのため。まぁ、ある意味、本来のダンジョンに戻ったと言えよう。それを英雄の条件にしたのは、そいつらで教会は何も言っていない。ただ、手っ取り早いからそうなったんだろう。

実際、それをクリアしたら、強さも功績も十分と判断してもおかしくない。

願いを叶えるなんていうのを、目標にしてるやつは、どうかしてる、と言われる。夢物語だ、と。それで危険な目に遭うなんて、と。それは、最初の頃は、英雄を求め、冒険者や国、貴族、平民と、色んな者が発起していたが、それをクリアしても、クリアして教会に行っても、叶えた者は誰もいない。

正確には、教会から報酬を貰うが、叶えてない。叶えたのは、本にいる者、ただ一人。ただ、それでもやる者はいた。英雄を諦めたのは、時代が相当進んだ時、つまり、今より前ぐらい。

英雄に値する条件、戦績と貢献。俺にできるのだろうか? だが、俺はやるしかない。その為に、俺はこの世界を生きていこう。



願いを叶える、か。俺の願いが叶えられるものかも分からないし、そもそもあるのかも分からない、か。でも、冒険者になるしか道はない。それか、魔法で戻れるかもしれない。

そういえば、この本に冒険者の意味が書いてあった。時代と共に呼ばれ方は変わってるが、意味は一緒だ。魅入られた者(アドベンチャーズ)、と言うらしい。



彼はこの街の教会に訪れた。朝早くに来て大丈夫だっただろうか。それにしても、すごいな、俺が知ってる教会とはだいぶ違う。頑丈そうだ。中に入ると、シスターを見かけた。

「あの、冒険者になりたいのですが」

「ん、はいはい、冒険者ね。ちょっと待ってて」と慣れた様に、奥へと行き部屋に入って行く。

その女性はスレンダーな体形をして、髪はロングで色は黒と青がメッシュの様になっている。顔立ちは少し強面だ。

「はい、これが、魔法使いの所。そして志望動機をここに書いて」

「はい」と紙を受け取る。

「それと、ステータスある?」

「いえ、ありません」

ステータス、それは自分の魔力の情報が書かれているものだ。冒険者は、誰でもなれるものではない。まぁ、ほとんど人がなれるものなのは確かだだが、やはり、冒険者になる為の最低限の素養は必要だ。その素養があるかを確かめるために必要となるのが、ステータスだ。

「ふーん、ないのね。じゃあ、それ書いて、ここで待ってて。ちょっと、連絡してくるから」

「はい、ありがとうございます。すみません色々」と言ったら「いいのよ」と奥へと行った。

普通は、出産届けと同じタイミングで、やるんだろうけど。俺はないしな。そもそもこの世界の人から見たら、俺はどう見えているのだろう。たぶん、行き場のない移民かな。とりわけ珍しいものじゃないらしいし。

彼女を待っていると、帰ってきたので立ち上がり、書き終えた紙を渡す。

「ん?へぇ、あんた願いを叶える為になるの」

「え?はい」

「そう、じゃあ、また会うかもね」とにこりと笑った。

「ああ、はい。その時は、よろしくお願いします」

そして、行こうとした時「ねぇ、あんた」と呼ばれ振り向くと顔が近くにあった。

「え、なん、です、か」

「あんた、何者?」

自分の心臓が跳ね上がったのを感じた。

「え、それはどういう?」としばらく、見つめられた。

「まぁ、良いわ。ごめんなさい、引き止めちゃって」

「い、いえ」



ここかな。それをパッと見た印象は家だった。だけど、普通の一軒家より、二回りほど大きい。

「あのー、すみませーん」とドアをノックすると「はいはい。しばし待たられよ」と扉の奥で、こもった声が聞こえた。

「ん、すまんのぉ。待たせて」とその老人はくすんだ青色の羽織を着ており、中の服が白を印象づける。活力溢れる老人が出てきた。

「えっと」

「ん?ああ、聞いとるよ。ほれ、入んさい」

「はい、お邪魔します」

その家の中は、かなりの広さと高さをしていた。空間を存分に使おうと、本棚や何かの道具が置いてある。彼は、見渡していると、上で女の子が本を読んでいるのを見かけた。

「ここで、待ってなされ。ちょっと準備してくるかなのォ」と言われて近くにあった椅子に座り、辺りを眺めていると、女の子が落ちて来た。

ええ! どうしよう、受けて止める、と立ち上がるが、そんな心配をよそに、女の子は浮いた。

彼は、行き場の無い手に釈然としない思いを抱える。彼は、人が浮いたのをまじかで見て、錯視を見ているような感覚を抱く。人が浮いた。なんだかワクワクする。

「大丈夫?」と声を掛けると「大丈夫です。すみません、心配かけてしまって」

その女の子は、丸メガネを掛け、あの老人と同じ服装をしている。そして、明るく、知的好奇心に輝いており、服から出る足が彼女の魅力を引き立てている。

「いや、それは良いけど。なんで落ちたの」

「いやぁ、本を読んで、考えごとをしていたら。このように」

「今度から気をつけてね」

「はい、面目ないです」

「そういえば、確か魔力が発現してないんでしたっけ?」

「うん。そうだけど」

「いったいどんな属性なんでしょうか。楽しみです」と勢いよく立ち上がる。

「好きなのかい、魔法」

「これは失礼。はい、とっても好きです。魔法は面白いですし。それに、新たなコードの反応が分かるかもしれませんから」

「良ければだけど、属性について教えてくれないか。前に本で読んだんだけど、いまいち分からくて。特に光と闇が」

「はい、喜んで」とキラキラさせて言った。

「あ、その前に、私の名前は、アソイア・マキヲリムです。よろしくお願いします」



「先ず、属性には、今の所、六つに分けられます」

「それが、火、水、土、風、そして、光と闇です」

「この中で特に重要、と言うより特殊なのが、光と闇です」

「光と闇以外は、名称の通りの意味で捉えて構いませんので、省きます」

「では、なぜ光と闇が特殊なのか。それは光と闇は他の属性と違って、属性=その魔法じゃないからです。

例えば、治癒魔法ですが、これは光属性になります。なぜ、光属性に部類されるのか。これは、昔、この光と闇の属性という枠がなかった頃に、治癒魔法が使える人が現れました」

「今までの魔法とは明らかに違うので、目に見てわかる属性に入れられない、なおかつ誰でも使えるものではなかった。そして、もしかしたら、今後こういう事が起きるかもしれない、ので、属性に光という枠を設けたんです」

「だから、光、そして闇に分類される時というのは、その魔法が伴って、光と闇に分けられます」

「まぁ、ぶっちゃけ火の魔法とかも光属性に入れよう思えば、入れられますし、他の属性も経緯は一緒です。そもそも、属性は、固有のものっちゃ固有のものですが、ただのラベル付けで、そんなに重く受けとらなくても大丈夫ですよ」

「これが光と闇が特殊な理由です。現在は技術が進み、データによる予想でどんな魔法なのか分かります」

まぁ、おおむねですが、と言った所で、老人が色々な物を抱えて机に置いた。

「確かに、それでも分かるが、光と闇の魔法は、ある傾向があってのぉ。それで、だいたいどんな魔法かが分かるじゃ」と座り一息ついて言った。

「その傾向ってなんですか?」と彼は聞く。

「生に近いか、死に近いかじゃ」


一通り持ってきた物の準備を終える。

「じゃあ、血を抜くぞ」

「はい」

血を抜いて何かの器具に入れた。すると、その器具になんらかの記号や図形、グラフ等が出てきた。

「ふーむ。おお、これは珍しいのぉ」

「うぅん、お主は、火と光の属性を持っておるのぉ」

「珍しいんですが?」

「いや、組み合わせは珍しいくはない。珍しいのは光属性の波形が今までにない動きをしておる」

「これは今後の為に、詳しく調べたいんじゃが、良いかのぉ?ちょうど、お前さんのカリキュラムも組みたいし」

「はい、構いません」

「おお、そうか。詳しく調べれば、どんな魔法なのかも分かるしのぉ。アソイア、準備じゃ」

「はい」

そうして、詳しく調べる為の準備にある人を呼んだ。



「どうも、初めまして。採取に呼ばれた、コルハ・リゥナッハです」と色気があるナイスバディな女性が来た。そう、今から自分は精液を取られるのだ。

属性、もとい魔力というのは、自分の身体の一部だ。確かに、本にあったけど、遺伝子に含まれるって、確かにあったけど。

そういえば、魔法使いは、医者の役割も担っているらしい。本業の医者の様に手術をしたりしないが、今の医者があるのは魔法研究の賜物と言える。

「ほいじゃあ、あそこの部屋に行ってちょ」

「はい。じゃあ行きましょうか」とコルハと言う女性が彼の手を握った。

「あの、マジでやるんですか」と老人に耳打ちする。

「うぅん、なんじゃあ、本当は嬉しいくせに」

うるさいわ。

「早く、行きましょ」

「は、はい」と手が引っ張られる。

「頑張ってください。楽しみしてます」とワクワクした様子でアソイアが言う。女の子でそれはどうなんだ⋯⋯。



「さぁ、リラックスして、緊張してたら終わらないわよ」

「いや、緊張といいますか」

「ほら、脱いで」

「はい」とズボンを脱いだら、愛しそうな目で自分の物を見つめる。

あ、あのと言いかけた時、なぁに? と胸を揉まされた。

「え、いや、なにって」

「緊張をといてあげてるの。ほら、リラックスリラックス。ふふ、柔らかいでしょ」

更に硬くなります。あ、いいのか。いや、でも良くない気がする。

「じゃあ、始めるわね」と自分の服に手をかけ、上にめくると、大きな弾力があるが落ち、先が綺麗に向いている。それは、大人の色をしていた。

「あ。ふふ。じゃあ、始めるわね」とそれが優しく包まれ、その先が彼に向いた。



「終わりました」と採取を終えたコルハが金属質の容器を渡した。

「えらい、時間かかったのぉ。遅漏じゃったか」

「うるさいです」

「じゃあ、私はこれで」

「おお、いつもありがとうのぉ」

「じゃあ、またね。坊や」と手を振る。

「⋯⋯」と彼は、低く位置で小さく振り返す。

「じゃあ、これ頼むわい」

「はい」とアソイアはそれを持って奥へと向かった。

「あの、女の子にそれはどうなんですか?」

「なんじゃ、別にやましい事じゃなかろう。スケベじゃなのぉ」

「このジジイ」

「だいたい、あの女の子は何ですか?孫かなんかですか?」

「いんや、拾ったんじゃ。帰りにな」とイスに座り、何かをやりだした。

「拾った⋯⋯、捨て子ですか?」と彼もイスに座る。

「おそらくそうじゃろう。なにも親について言わんし、それに聞くつもりもないわい」

「なんで、いや、良いです」と体を前に倒し、聞こうとしたが、背もたれによたれかかった。

「なんじゃ、気持ち悪いのぉ。かわんぞ」と何かをやりながら言った。

「じゃあ、なんで一緒に住んでるですか?」

「それは、最初は教会に行ったんじゃが、空きがなくてのぉ。空くまでの間、面倒を見ようと思ったんじゃが。あの子に才があると知って、おしいと思い、わしの助手兼弟子として、置こうと思ったんじゃ」

「才ですか?」

さいです、と言って続ける。

「あの子はすごいぞぉお。拾った時は7歳ぐらいじゃったんじゃが、15歳でもう論文を書き、それが賞を取ってのぉ」

「それはすごいですね」

「そうじゃろぉ。あの子は今後の魔法の発展や科学の発展に大いに貢献するじゃろう。だが、まだまだ青い、それを立派にするのが、ほぼ趣味で研究をしておる老人の最後の貢献じゃ」

「楽しみですね」と笑みを向けると、その老人も「そうじゃのぅ」と笑みを向けた。

その老人は何かをしている時は、鋭い気配を漂わせ、話す時は楽しそうに、まるで欲しい物が手に入ったかの様に喋り出す。

自分もこんな老人になりたいものだ、と思った。

「ところで、お主、属性ついてどこまで知っておる?」

「一通りは知っています」

さっき、アソイアだったか、その少女が属性について説明したが、もうひとつ、六属性に含まれない無属性がある。これは誰でも持っている属性で、衝撃や切る、打つ、動かす等が無属性にあたる。

「そうか、どれが面白いかった?」

「面白かったのは、どれも面白いですけど、やっぱり属性による身体の影響ですね」

「おお、目の付け所が良いのぉ。わしもあれは個人的に興味があって研究しとるわい。そうじゃ、そこの新聞に論文が書いてある」と彼の左側を指した。

「これですか?」

「うむ、属性による身体と環境の影響の詳細について、ってやつじゃ」

「今までの研究では、その属性のイメージが目立った、と言うより、それしか発見できなかったんじゃが、それはひとつの可能性を示しておる」

「確かに、面白いですね」とグラフや計算が目に入ったが、いまいち何の値を表したもの分からず、文章だけを読んだ。

今まで、研究というのは、経験則的な所があった。もちろん、昔も魔力因子の存在を知っており、体に影響を与える事も知っていた

これに書かれている事は、どこまでが魔力因子の影響を受けているのか、どこまでが魔力因子の影響を受けいないかという、魔力因子による影響を細かく調べたものらしい。

従来は、火だったら、体に耐火性がある、暑さに強い、温度が人よりやや高い、といった、研究しなくても分かるものだった。だが、今の時代で詳しく調べたら、火属性の者は、温度を詳細に分かったり、周りの温度や触れた相手の体温を上げたり、火を食事にできたりと、魔力因子の可能性と影響を示している。

ただ、これらの一部は経験則で人々は認知していた。例えば、周りの温度が上がる、とかは、戦闘や訓練の時に周りが気づいたり、自分の周りに意識を向けると分かった事だ。

冒険者の経験則で、そういう事は珍しくなかった。

冒険者たちや魔法学者たちは、単に火を使っているからだと思っていたが、この論文は、それを魔力因子が起因していると判明させた初めての事だった。

そして、この研究者は、魔法の今後についても言及している。

どうじゃ、と彼に感想を聞くが、無感情、とはいかないまでも、そう思わせるほど表情をしていた。

「お主は、分かったかの?この論文が」

「えぇ、まぁ、なんとなく」と自分が思った魔法とは少しだけ違う事を、できるだけ咀嚼した結果、こう言った。


老人と魔法や科学といった色んな事を話していると、アソイアが帰って来た。

「すみません、お待たせしました」と少し汗が出ているのが分かった。

「おお、来たか、どうじゃった?」

「はい、やはり今までにない反応を示しました」

「うぅん、やはりそうか。じゃ、早速照らし合わせて、判別しようかのぅ」

そうして、判別された結果が出た。

「ほぉ、これは⋯⋯」

「どうですか?」と止まっている老人に言う。

「うぅん、やはり火の方は普通じゃが、光の方が珍しい」

「どう違うんです?」

「そうじゃなぁ、一言で言えば、召喚、じゃな」

「召喚ですか?」

「ん。これには、動く、生き物、変形などと出ておる。あくまでワシの予想じゃ。実際使ってみないとわからんの」

「なるほど」と彼は顎に手を当て、どんな影響や魔法なのかと想像する。

「うーむ、そうじゃなぁ。魔力が形を成し、まるで召喚されたかように振る舞う、もしくは操れる、というものかもしれんな」

「これは、マジックコードが新た働きを見せる貴重なデータじゃ」

例えば、ウルフというコードがある。これを火属性の者が使うと、単に火がウルフ、狼の形になるだけだ。ただ、今の、俺の魔力はウルフと言えば、本当に狼のようになるのだろう。もちろん、火属性でも、火を狼にして、召喚されたかのように動かす事はできるが、おそらく俺の魔法はそれとは違うのだろう。

「少し時間が掛かるが、記録して良いかのぅ」

「はい、構いませんよ」

「そうか、じゃ、早速取り掛かるぞ」

「はい」

そして、老人と女の子はあらゆる器具を使って記録した。彼はその間、本を読んでいた。またに、聞かれた事に答えたり、カリキュラムの説明、魔力を体得した時の身体のこと、定期検査をする為の日程などを聞いてたら、いつの間にか昼になっていた。

「いやいや、久々にこんなに動いたわい。待たせてすまんのぉ」

「いえ、ありがとうございました」と座った状態で、頭を下げる。

「ほれ、これを役所に見せたら、冒険者になる為の試験と訓練がある。落とすなよ」

ありがとうございます、と言って受け取ろうと手を伸ばした時、老人が言った。

「して、お主、冒険者になぜなる?」

「え、それは、願いを叶える為です」

「その願いとは?」

彼は巡らせた。彼は本当の事は言えない、が決意を見せた。

「それは言えません。ですが、絶対に叶えたいものなんです。それが、俺の答えです」

「ふむ⋯⋯良いじゃろぉ。持って行きなさい。無粋じゃったな」

「いえ、そんな。ありがとうございました」

そうして彼は受け取り、その家から出た。なんか、本当に病院みたいだな。


「ん、どうした?」アソイアの態度に勘づく。

「べ、別になんでもない」と目をそらした。

「ぅん?別に危険なものじゃないしのぉ。いきなり使ったら、体がもたん。先ずは基礎じゃ」

少女は俯く。

「大丈夫じゃ、ちゃんと言ってあるしの」と仕事とに戻ろうと椅子に向かう。

「うん」と言って、ついて行く様に、奥へと消えて行った。



役所に着いた。かなりデカイな。役所を示す看板が吊り下げられている。この壁、鉄、じゃないか。

何を使ってるんだろう。そんなことを思いながら、扉がギィといって入ると、そこには、先ず目の前に受付があり、少し込み入っていた。右にはコルクボードなのか、色々な手配書やクエスト、なにかの募集が貼られてある。確か、貼ってあるものは国家依頼だったか。ゾマタルモニアの手配書。繧竜(うんりゅう)の討伐、支援求む。凶暴な魔物の誘導。姫の護衛。あとはキラカ・ザンケン帝国の冒険者の募集。色々あるな。こうして見ると、冒険者は必要な存在か。お、空いた。

彼は受付の女性にあの老人からの紹介状を渡した。その封筒は自分でも開けられないように、魔法が施されている。

「はい、確かに」と言って、女性は封筒を開封し、紙に目をやると、怪訝な雰囲気が感じられた。

ん?と彼は思うと、女性は奥へと行き、しばらく待っていると、彼女が帰ってきた。

「では、こちらに名前をお書きください」

名前は、字典にあったものでつけた。

イテク・アセナウィート。イテクは、決意。アセナウィートは、私の家、という意味だ。


最後まで、読んでいただきありがとうございました。


かなりの文量になりましたが、この文量を読んでいただき本当にありがとうございます。


物語を書くのは大変だ。


いざ書いてみると、この展開だとここが足りない、この展開をやりたいけど、どう書けばいいだろうとか、この文章で大丈夫かとか、色々やるべき事がある。


本当に大変だ。


編集者がなぜいるのかが分かった気がする。


でも、自分のセンスや審美眼を鍛えられるから、これはこれでかなり楽しい。

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