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わたがし

作者: 立花蒼華

「この花柄の浴衣が一番似合うのはきっと、君なんだろうな」


ある夏の日の朝、俺柳田翔斗はテレビで紹介されていた浴衣を見て、そんなことをつぶやいていた。


「俺も今日は着物でも着て行こうかな?」

「いや、やっぱり俺には似合わないだろうからやめよう、、、」


などと、一人で静かにそんなことを考える。


なぜそんなことを考えているかというと、今日が夏祭りだからである。

しかも、今日は十年に一度の大きな花火大会が開催されるらしいのだ。


それを知った俺は、昔からずっと好きだった幼馴染を祭りに誘ったのだ。


「本当に、よく誘うことができたな、、よくやった俺!」


などと、祭りに誘うことができた自分に賞賛の言葉を贈る


「今日こそは、君に思いを伝えられたらないいな、、、、」


なんて、いつもそんなことを思っているけれど、そんなこと言う勇気なんてないんだけどね、、、


「本当に、自分が情けないな、、、、」


自分に呆れた私は、思わず、ため息をついてしまうのであった、、、、





あれから時は流れるように過ぎ去り、俺は幼馴染との待ち合わせ場所まで来ていた。


辺りは、祭りを彷彿とさせる、どん、どんと太鼓を叩く音や、子供の甲高い声が辺りを包んでいた。


「なんだか、子供のころを思い出すな、、、」


このお祭りの空気感にあてられ。俺はつい子供のころを思い出していた。


「ほら!行くよ!、翔ちゃん!」

「あー!そんなに引っ張らないでよ!蒼ちゃん!」


俺は、小学生のころから、この幼馴染によくお祭りに連れていかれていた。

周りに無関心で、家でずっと読書をしていた俺を、適当な理由でよく外に連れまわしていたんだ。


最初は、本当に無関心で外に出たくもなかったし、外に連れられて嫌気すらさしていたが、無邪気な笑顔でいろんなことを教えてくれるうちにそんな気持ちは、いつしかなくなっていた。


射的にヨーヨーに金魚すくい、これらはみんなからは当たり前のことなのかもしれない。

けれども、子供で外のことを全く知らなかった一人の少年の気持ちを動かすには十分すぎるものであった。


そうして、俺はいつしか外のことに興味を持ち出したとともに、幼馴染のことも好きになっていったのだ。


そうして、俺たちは成長していき、中学生に上がったころ辺りから、蒼との関係がだんだんと薄くなっていった。


蒼からはお祭りにも誘われなくなり、俺から誘おうにも、いつしか話かけることができなくなっていた。


それから、高校、大学と上がっていき、蒼との関係が進展することはなかったが、俺の気持ちが変わることは決してなかった。


そうして、今日の祭りのことが耳に入り、俺はついに勇気を振り絞り、幼馴染を祭りに誘ったのだ。


「本当に、長かったな、、、」

「何が長かったの?」

「えっ?」


俺が独り言をつぶやいていると、幼馴染の姿がそこにあった。

久々にみる幼馴染の蒼を見ていると、なにかが胸に押し寄せてきた。


「久しぶりっ!翔ちゃん!」

「うん、本当に久しぶり、、」


数年ぶりに呼ばれるその呼び方に、俺は暫時胸を打たれた。


「それじゃあ、さっそく回ろうよ!」

「うん!」





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