六話 「大樹の試練」
描写加えました。7月31日
1層《己の知識を示せ》
とどこからか聞こえた。機械音声、温かみを感じない声。あれだな、i○honeのsi○iみたいだな。
それにしてもこれ、個人生成ダンジョンって奴?誰も居なさそうだし……。
「とりあえず進むしかないか……」
全体的に暗く足下がおぼつかない。なんてプレイヤーに優しくないダンジョンなんだ。と思った時、急に明るくなった。どこに灯りが在るのかは分からず、全体的に明るい。
ダンジョンの全貌が見えないが。大樹の中をそのままくり抜いたかのような大きさだ。階層毎に分かれており、外から見た大きさだと10層以上はありそうだ。
「広っ!知識を示せとかなんか言ってた気がするが具体的に何しやいいんだ……」
とりあえず見えている物に近づく。木製の看板だ、何か書いてあった。
『魔王に対抗する勢力のお約束は?』
は?それってどゆこと?俺ならもちろん”勇者”って答えるけど。そもそもこの世界に勇者の存在がいるかは分からないし、同じ概念なのかも分からない。そもそも魔王というのはテリアが言っていた何何之王ってやつか?
「っとここに解答を書けばいいのかな?勇者っと」
近寄ったのは電子機器がついた台。台自体は木製だが、i○adの様な物が嵌め込まれている。割と近未来的だ。
ピンポーン。
え正解!?ええ、えっとこれ簡単じゃね?
正解の証拠に、どこからか次の階層に行く階段が出ている。
2層
またまた看板『知らぬ星の名を答えよ』
とおかしな事が書かれている看板。
知らないんだから答えられなくない?無茶振りが過ぎない?
何かヒントがないかと部屋を見渡すと、壁に青い星と書かれていた。しかも日本語で。
どこから日本語を知ったのかが分からないが、今までの状況を考えるに……。人の記憶を読み取っているとかか?
「んんーこれで何ができる?あるんだから何かしら使うと思うが」
残り制限時間10分。先程の機械音声がそう告げた。
えっ?制限時間設けてんの?ダルいな。それにもう分からん。
「だぁーもう!知らぬ星だから応えられねっつの!」
残り10秒9、8、7…………1、0。制限時間内に答えられなかたったため、試練は失敗となります。10秒後、大樹前に転送します。
キュキュキュキュキュイーン。シュルシュルシュルシュル。
見えるのは相変わらずでかい大樹。まあでかくなかったら大樹じゃないんだけどね。
戻って来てしまった。ちくせう、1層目は簡単だったんだがなぁ……。
ほぼ同じタイミングでテリアとメリアも戻って来た。
「よう、その様子だと失敗か。俺も失敗したところだぜ」
1回目でクリアできる程甘くは見てなかったけど、次挑戦した時、問題の内容変わってたりしないよな……。
「ああ、失敗したよ。3層までは行けたんだけど、中々、精神の消耗が激しいね……」
どうやら激しく疲れている様子。そんなにも精神を使う層があるのだろうか。
「いきなり暗闇に放り出されて!アラタさんもテリアさんもいないんだから!怖かったですよぉ!」
こちらは激しく怒っている様子。そんなにも怒る層があるのだろうか。
「まあまあ、俺は2層までだけど、”知らぬ星を答えよ”とかいう問題が出てきた。解答分かるか?テリア?」
「え、知らないよ?そんなの出て来たの?」
「テリアって3層まで行ったんだよな?……まさか、それぞれ出される問題が違うとかか?」
「どうやらそうみたいだね。1層から2層は”己の知識を示せ”、だったけど3層からは”己の感情を表せ”だったよ」
「それは俺と同じだ。3層はまだだけど」
それぞれの状況を鑑みるに個々の適正に合わせて問題が出されるようだ。
「今日は……もう無理そうだな」
暗い空を眺めながら言う。もうとっくに夜のようだ。
「そうだね。メリアが言っていた村に行こうか」
と一行は大樹を去った。
◆◇◆
ボロい家。所々腐っている木が辛うじて屋根を支えている。周りの薄暗さもあって不気味にも思う。例の村の様子だ。
「おねぇちゃん達どうしたの?」
話しかけてくるのは小さな女の子。薄汚れた服を着ている。ここの住民だろう。
「俺達はここの人達にちょっと話があるんだ。どこにいるか知ってる?」
「うん、来て」
住民に会えてラッキーだが、ここはひどいな。この世界ではまだ、生活保護とかの保険制度は整っていないと見た。
「こんにちは!実は俺達宿がなくて困っていてですね……。よければ泊めさせて頂けませんか?」
とこちらも汚れた服を着ている長身の男に話しかける。上手くいくといいが。
「は?いやいや無理だよ。見たら分かるだろ?俺達にそんな余裕はない。どっか行ってくれ。それに何故男口調」
ですよねー。なんとなく分かっていた。男口調に関してはもはや答えない。それにエリカとの身長差がかなりあって、向かわれると怖い。
すると後ろから足音がする。
「ちょっと!あなた、そんな言い方はないでしょう!せっかくここまでいらしたんだから、せめて宿提供する位は出来るでしょう!」
「そうだよ、そうだよ!おねぇちゃん達困ってるのに!」
と突如現れたこの人の奥さんらしき人とさっきの女の子。どうやら俺達の味方をしてくれるらしい。
この人でなし!などと言われていてかなり可愛そうだ。そうしたのは俺達だけど。
そしてついに諦めたのか。
分かった分かったから!
親父は嫁や子供の言葉に弱い。その場合の方が円満になる確率が高いそうだが。
「仕方がない、こっちだ。さっさと来い」
「すみませんねぇ。この人ったらちょっと素直じゃないの。こんな見すぼらしい場所だけど宿くらいは提供できますよ。どうぞ此方です」
「いえいえ、こちらこそ急に押し掛けてすみません。ありがたく泊まらせて頂きます」
と宿に案内される。ここもボロいが提供してくれるだけありがたい。
どうぞごゆっくり。そんな言葉を残して去っていく奥さん。いやぁよかったよかった。それにしても、この1人と1匹は役に立たんな。じゃんけんで負けた身だから何も言えんけど。
実はこの前、誰が交渉するのかを俺の提案でじゃんけんをしたのだが、言い出しっぺが負けるというのがお約束であるフラグを見事に回収してしまった。
「よしそれじゃあ今日は休もう。僕はアラタの指輪に戻るよ。おやすみ」
戻っていくテリア。メリアに挨拶して俺も休もう。
おやすみ。
前回よりも短いです。終わり方が微妙ですみません。
次回は重要人物が一人少しだけ出てきます。それとほのぼの回。
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