四話 「陽気な娘の過去と行方」
描写加えました。7月31日
今居るのは森。葉が青々と生い茂っている。そんな中アラタはふと夢を思い出した。元の世界で憧れていた事が遂には現実となっている。これで俺も‘‘魔法’’を覚える事ができるのか!
「そういえば、ここ異世界だった。俺にも魔法覚えられたりするか?さっきの魔法とか」
「使えるよ。ただ彼女の魔法は使えない。技術というものは魂に刻まれるからね。後はアラタの技術と気力次第」
エリカの魔法を使えないのは分かる。いくら身体が同じでも入っているものが別ならばそうなるのも必然だ。
「基礎魔法をまず教えてくれ!」
魔法……!なんていい響きなんだろう。中二心を擽られる……!
「まず氷の基礎魔法、名はプリズン・スピン、これなら使えると思うよ。どうやら魔法適正もあるみたいだし。魔法を放つ為の要素として魔子というものがある。自分の身体をイメージして魔子の流れを感じる。まずをこれをやってみて」
魔子の流れね。
確かに何かを感じる。
「次に?魔子は感じれたぞ」
「魔子の流れを強くして、一気に放出させる。放出させる前に氷の針をイメージして」
最後がよく分からん。流れを強くさせるのはできるけど……。
色々と試行錯誤を重ねる。するとコツを掴んできた。
「んんんっ、はぁっ!プリズン・スピン!!」
ヒュッと飛んでいったのは氷の針。
やった!成功だ!
これぞ異世界ファンタジー!
「おお、成功だ。お見事」
念願の魔法も使えるようになって俺大満足。夢も叶った事だし、落ち着いて次にするべき事を考えよう。
「それで、メリアはどこ行くんだ?」
急にに現れて俺たちにさらに迷惑を振りかけてきやがった娘、メリアに問う。
「私はこの先にある、コウデン牧場におつかいに行きたいんですぅ。あそこの牛さんから採れるミルクから作ったチーズが美味しくて美味しくて!」
ふーん……。サッと脳裏を横切る悪巧み。チーズ、チーズかぁ、旨そうだな。じゅるり。
君が食べる物はないよ宣言されてから腹がペコペコ。腹は減らないけど。
そうだ、こいつからチーズをもぎ取ろう!!天才的な作戦思いついたったぜ。
「旨そうだなぁ、ああ食べたいなぁー」
チラチラ。メリアを見る。
「よかったら同行のお礼に差し上げましょうかぁ?」
それを待っていた!くくく!はははははは!我の作戦通り……!
「是非是非!ありがとう!いやぁーメリアさん優しいなぁー!」
「いえいえそんなことないですってばぁーもうぅ!」
はは、チョロい。チョロチョロのチョロちゃんだな!
同行の途中、メリアにも俺たちの目的の一端を話した。話し過ぎると警戒されるからな。最悪、通報される目もアリ。
「へぇースリアス様の末裔様の試練に挑戦されるんですかぁ。あそこは何人もの冒険者が挑んでいましたけど、未だに攻略した人いないんですよぅ」
試練?なんじゃそら、簡単に会えるもんでもないのか……。まあ、簡単に知識入手したり、森羅万象見通されたら、この世界破綻するから当然だな。
「試練か、確かにその噂は聞いていたよ。厄介だな」
「お二人は末裔様に会って何されるんですかぁ?」
「ん、特にこれと言って無いけど。ただ挑戦してみたいなってだけで」
それとなく誤魔化す。誤魔化す理由は先程の通りだ。
それから数10分後。
「着きましたぁー!ここまでありがとうございます!この御恩は一生忘れません!たぶん!」
たぶんかよ……まあいいとして。
見えるのは牛と緑色の屋根の木を特徴とした小屋。オシャレな雰囲気が漂っている。どうやらここがコウデン牧場らしい。微かに匂うのは如何にも農家っぽい干し草と自然の空気。周りは更地だが奥にはまだ森が続いているようだ。
「まぁー!今日もお疲れさん!いつもありがとうねぇ」
話しかけてくるのはコウデン牧場のおばあちゃんだ。麦わら帽を被り、肩にはタオルを掛けている。感じの良さそうなおばあちゃんだ。
「いえいえーここのチーズは絶品ですぅ!」
「ありがとねぇ、じゃあいつものでいいね?」
「はい!お願いしまあす。後いつもと2つ多めでぇ」
「分かったよぉちょおっと待っててねぇ」
厨房らしき所に去っていくおばあちゃん。ワクワク、ついに異世界初飯!それもメリア曰く絶品らしい!
はいはいお待たせさん。はいどうぞ!
差し出してくる紙袋を受け取りつつメリアは金を払う。
あれがこの世界の金銭か。中国の宋銭みたいな見た目だ。後で金銭の種類でも聞いてみよう。
コウデン牧場を出ると、ちょうどいい場所に設置されているベンチに腰掛ける。
「はいこれが私イチオシのチーズです。毎週一回は絶対買いに来ているんですよぅ」
「へーこれがか。それじゃあ早速頂きまする」
パクッと一口。!?!?
香ばしいチーズの風味とコウデン牧場産の牛乳のミルキーさが相まって最高の味を醸し出している。しかもとろけるで……。
これは正しく。
「うますぎる……!何これこんなの食った事ねぇわ!」
毎日コンビニ飯生活だったもんな。自炊経験無し、一人暮らし始める前から諦めていたよ。家庭科の授業の時、調理実習があったが、その時は酷すぎた。何この生ゴミ状態だったのを思い出す。
「でしょぅーう!私も我慢できないから今もう食べちゃおぉー」
パクパクパク。すげぇ速度で食ってやがる。そんなうまいなら味わって食えばいいのに。まあ俺の分じゃねえしいいか。
「どうだテリア、これうまいだろ」
「これはこれは僕もこれ程の品は食べたことないよ!」
休憩を兼ねてチーズを食べ終わる事数分。
「さて、そろそろ行くか」
「あのぅ、実は大事なお話しがあります」
「なんだ?もっとチーズ食べたいとか?」
チーズを食べ終わり上機嫌な俺は愛想よく応じた。間違いなくチーズの話ではないだろう。
「私もお二方の旅にご一緒したいなぁと思いましてぇ」
「ん?何でだ?」
俺の魅力に惚れたのか?冗談の様には見えず割と深刻そうな雰囲気だけど。
「私の両親が亡くなってずっと一人だったんです。でも久しぶりぶりに人間の温かさに触れてその、その、感動しちゃったんです。だからこれからもアラタさんとテリアさんと一緒に旅がしたいんです!」
そんな過去があったのか。考え無しにはっちゃけてた訳じゃないのな……。勘違いして悪かったよ。俺的には仲間が増えるのは大歓迎だけど、俺の身分の事を話してもいいだろうか?それとも隠し通すのか?おそらく隠し通す事はできないだろう。仲間になった以上試練に挑戦するだろうし、結果スリアスの末裔とも話しをするだろうから。ここはテリアにも相談しないといかん問題だろうな。
「俺的にはいいけど、テリアお前はどうだ?」
「僕も賛成だよ。だけどメリア、君の判断にもよる。僕たちの秘密を聞いて警戒しないかどうかね」
「どういうことですか?アラタさんは女の子の格好して男の子の口調で話す、そういう趣味の人でテリアさんはアラタさんのペットじゃないんですかぁ?」
うんだよね。勘違いして当然だよね、だってそう仕向けたもん。
「実はね、………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………との事があったったんだ。これでも一緒に来る気あるかい?」
一通り今までの事を話した。さてどんな反応か……。
「そんな事があったんですか。それでアラタさんが暴走する理由をスリアス様の末裔様に……。私お二人が悪さを仕出かすなんて思えません。だっていい人だもの。だから私はついて行きます!」
いつにもまして真面目なメリア。だけど暴れたの俺じゃないよ……。
どうなるかは少し、いやかなり不安だったが俺たちの事を信用してくれるらしい。それにしても、通報でもされた場合どうするつもりだったんだよテリアさん……。
まあ、結果論的には万歳だからいいか。
「重々しい雰囲気になってきたけど、そんな訳だから改めてよろしくなメリア」
「よろしくお願いしまぁす!」
「僕からもお願いするよメリア」
「よし、じゃあ早速出発するか?でスリアスの末裔の所まで後どのくらい?」
「このペースで行けば後2日くらいかな?」
「了解、割と近いのな」
近いかどうかの感覚は個人によるが、俺は重要そうな場所の割には近いと思う。メリアも加わった事だし、改めて旅に出るとしよう。
そんなこんなでメリアが新たな仲間になったとさ。
次回はほのぼのかも?
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