三話 「新たなアラタの生活」
現段階では10話まで描けていますが話を重ねる毎に描写不足等により文字数が減っていきます。10話毎に補いますので悪しからず。
描写加えました。7月31日100字くらい
訂正、傭兵→衛兵 8月2日
とりあえず、昨日は今後を会議して終わった。結論は俺はエリカの魂を取り戻す。それだけだ。
これから重要事項を確認する。勇気を出して非常に聞きにくい事を聞かなければならない。
「人間だから、飯も食わないといけないと思うけど、排泄ってどうすればいい……?」
普通に聞きにくい問題だ。俺は紳士だから決してやましいことなどしない、そう断言できる。
そう、紳士だからね。
「ああ、それについては問題ない、彼女に排泄は必要ないし、食事も必要ない」
マジかよ……。便利な身体だ。残念なような、ほっとしたような……。イヤイヤ、やましいことなどしないとも!
「よかったわ、正味どうしようかマジで悩んでた。でも味覚はあるよな?腹は減らないとしても人間の五感の内味覚だけでも癒したいんだが……」
さすがに何も食べないのは寂しいからな。それに気になる異世界の飯!何がどう違うのか、動植物は変わっている事があるのか、とても気になります。でも、問題は……。
「味覚はあるよ、でも食べ物を買う為のお金はないからどうしようもないと思うけど……」
だよね、飯要らないのにわざわざ味覚の為に金払うなんざ、無駄だからな。
「いいよいいよ、分かった、諦めるわ。それでこれからどこ行くんだ?どうすれば彼女の魂を取り戻せるんだ?」
飯が食えないのは残念だが、そんなこと言っている場合ではない。
魂を取り戻すにはその全欲之王とやらを倒すか脅すかして返して貰うしかないと思う。
「とりあえず、知識之王、スリアスの末裔にあたる人に会いに行こうと思う。何か方法がないか知ってるかもしれないからね」
確かに、何か知ってる事があるなら教えて欲しいもんだな。魂を呼び戻す術式かなんかあったら楽なんだが、そんな楽に取り戻せる程、全欲之王が雑魚とは思えない。
「了解、俺はお前について行く!全てテリア頼りだ!」
だって道も何も知らないもん。
◆◇◆
そうして街を出た。外はあの時と同じで、空が澄んでいて、気持ちが良いほどの真っ晴れだった。門前には衛兵が居て少々ドキドキしながら潜る、結果、何も問題はなかった。
バレない理由を聞くと、このマントには認識阻害効果のある糸が使われているとか。とは言ってもはしゃいだりはしません。
そういえば、以前は何を目的に旅をしていたのか聞いてなかった。道すがら聞いてみるとしよう。
「なあ、前はなんで旅してたの?狙われているんだから、慎ましく隠居生活してたらいいのに」
「以前は望欲之王の所縁ある地に行っていたんだ。少しでも望欲之王の事を知る為にね」
「知ってどうするんだ?台子を消したりとかできないかって事?」
「いや、違うね、望欲之王の能力、現異を調査していたんだ。何故だか分からないけれど彼女は時々暴走する事がある。それは無差別に暴力を振るい、相手の感情を失くすなどといったね。それらの原因を調べている。それに何故か望欲之王に関する情報が一切残されていないんだ」
なるほど、帝国から追われているのは知ってたけど原因は聞いてなかった。原因はそういう事だったのな。それにしても情報がないとか、一体何者なんだろう。
「望欲之王所縁の地巡りは一旦お預けだな。先にエリカの魂を取り戻す、それが今の目的だからな」
そうだね。テリアは相槌を打つ。
「深く考えて無かったけど、もしエリカの魂を取り戻したとして、俺の魂はどうなるんだ?」
何も考えて無かったがかなり重要な事だよな……。我ながら自分のバカさに感服するよ。
「それについても知識之王の末裔に聞く。新たな依代を用意してそこに憑依するとか考えたけど、そんな術式聞いた事がないから」
まあ今考えても無駄か。その時になったら改めて考えよう。
◆◇◆
しばらく歩いていると、森が見えてきた。ここを抜けるのか……。
見るところかなり草木が生茂っているけど。
「おいまさかここ突っ切るんじゃないよな。いくらなんでもこんなボーボーの草の中進みたくないぞ?」
「大丈夫、右に進むと道があるから」
ああ、こっちね。整備されててよかったわ。
またまたしばらく歩いていると、グルルルルルゥと如何にも魔獣らしき声が聞こえた。黒い毛に赤色の目のドーベルマンのような犬。サイズは普通くらい。特有なのか分からないが獣臭がする。もう既に何人か葬った様な感じだ。
「ちょっ!急にきたんだけど!?」
襲われているところをどうにか躱していると後ろからも声が聞こえる。
「ちっ、今度は後ろからか!テリア!魔法かなんか使えないのか?」
後ろからも魔獣か、と思いきや。
「助けてー!!魔獣が襲ってくるのー!!」
人間だった。赤髪で、髪は後ろで留めてある、如何にも活発そうな女の子。ていうかこっち連れてくんなよ……。
「そこ動かないで!アイシクル・スピン!」
ヒュンと氷柱のようなものが刺さる。グリュゥゥと魔獣は逃げ出す。
なんとか窮地は逃れたようだ。
「ふう、危なかったぁー」
とぼけた声がする。は?
「いやいや、連れてくんなよ!?」
へ?と何の事?と言わんばかりの表情。
「まあまあ、いいじゃないか僕がいるんだし。確かにあの魔獣はDランク相当だったようだね。この辺だと強くてE+ランクなのに」
「ですよねぇ!」
「魔獣にランク付けされてるのか?アルファベットで区別されているから俺と同じ地球から来た異世界人が居る可能性も無きにしもあらずだけど」
異世界人が居るとしたら是非会いたい。特に会ってどうとかはないけど。
「うん、ランクは下から順に E , D , B , A , S , SS , SSS とあるんだ細かい区別は -, + で表記される。SからSSSランクは厄災指定級の化け物だね」
あの魔獣ですらDランクだったのだ。SSSとかどんな奴だよ……。天候操ったりとか簡単にできそうだよな。
それにしてもテリアがいてマジよかった!召喚されてまだ一日しかたっていないのに、早くもお陀仏するとこだった。
「ああ!そういえば助けて頂いてありがとうございました!ついでにあなたもありがとう!」
「ついでかよ俺!?」
「あなたは何故女の子の格好して女の子の声で男の子の口調?そういう趣味?」
声はエリカのものだった。
確かに気付いてなかった。このカッコで男口調はおかしいよな……。
「それについては語ると長くなるから省こう。僕の名前はテリア。こっちの身体だけ女の子はアラタだよろしく」
身体だけ女の子とか妙に引っかかる言葉だな。余計な事は言わんくてよろし。
「これはこれはどうもどうも!私の名前はメリア・マータレード!よろしく!」
上手く躱せたようだ。
格好に似合いウインクするメリア。見てくれはそれなりにいいのだ。
「ああ、よろしくな……。でなんでこっち来た訳?」
「まだ根に持ってるんですか?私あの手の魔獣に対抗できないんですぅ。いつもならあんな凶暴な魔獣いないんですけどねぇ。それにしてもそちらの猫ちゃん、お強いんですね」
「これでも名の知られた精霊だからね。でこれから僕たちは先に進むけど、もし同じ道行くなら同行しないかい?」
「行きます!行きます!いやぁこんな心強いの初めてだぁ!」
余計な事を。俺はテンション高い系の女の子苦手なんだよなあ……。
「こほん、しょうがないから同行してやる。感謝しやがれこの娘!」
「感謝感激雨あられですぅ!」
そうして新たな仲間ができたのだった。
パーティー アラタ
テリア
メリア
次回はメリアの過去の一端が話されます。
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