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拝啓。壊れた世界より

作者: 酸化する人

黒く焼け焦げた建物。

壁に残された銃痕。

今にも崩れ落ちそうな、鉄塔。

よく分からないロボットの残骸。


第3次世界大戦が起こって以来、どこもかしこも廃墟と成り果てていた。


「この街にも…人間はいないみたいだな。」


無理もない。

地球上の大地は、ほぼ全てを放射能で汚染されている。

人間がいないことなど明白だ。


丘に登り、街全体を見渡す。


見れば見るほど哀れな光景だ。何年もの歳月をかけてきづきあげてきたモノを、一年たらずで全て破壊してしまったのである。これほど愚かな生物は、人間以外いないだろう。


「これが地球上で、一番の知能を持ったモノの末路…か。」


もうここには用はない。


次の街を目指して、瓦礫の道を進み始める。

もうどこにもいないであろう人間を探すために。


4日ほど歩き続けて、やっと隣町へ着くことができた。


こんなにも町と街の距離が離れているのは、できるだけいざこざを起こしたくなかったかららしい。

そんな思いをほとんどの人たちが持っていたのに、どうして人間は殺しあったのだろうか?

理解しがたい。


「ここも…他と同じような状態だな。」


町を探索してみるが、生き物の痕跡すら見当たらない。あるのは、瓦礫と無数の銃痕だけだった。

「ここもダメみたいだな。…さてと、また隣町まで行くとするか…。」


「待って!おじさん!」


聞こえないはずの人の声。

しかし今確かに聞こえた。


「…。」


振り返ってみると、一人の少年?の姿が目に映る。肌はなぜか緑色。人間と特徴があっている部分もあるのだが…。


「ボク以外にも生き残りがいたなんてね。びっくりだよ。それにしても、人らしき君が、どうやってこの濃度の放射能を耐えているのか、教えてほしいなぁ。」


「俺は人間ではない。ところでお前は、人間なのか?」


「人間だったって言うべきなのかな?環境に適応できるように、少し自分の体を改造したからさ…。今となってはロボットみたいなもんだよ。」


「では、人間ではないのか。まあいい。いずれにしても、会話できる生き物とは久しぶりに出会った。すこししゃべろう。」


くずれた瓦礫の上に座って、しばらく話し合う。

久しぶりの対話。

話した内容は、どれも悲しいものばかりだったが、楽しいという感情があふれてくる。





「なるほど。つまりおじさんは、人間を見つけるまで、人間捜しをやめることができないというわけかぁ。」


「そうだ。俺はそのようにプログラミングされているからな。」


そしてその目標が果たされることはない。

おそらく、人類は全て滅びているのだから。



そもそも人類なんていうものは存在しない方がいいのかもしれない…。



「そっかぁ~。…じゃあさ!協力しようよ。ボクも人間さがしているわけなんだしさ。」


「だめだ。」


「そんなこといわずにさぁ。」


「だめだ。」


「…そっかぁ~。残念だなぁ。」


これ以上話していると、別れ惜しくなる。この辺で終わらせよう。


腰を上げて、荷物をまとめる。


「あれ?もう行くのぉ?」


「ああ。じゃあな。博士さん。楽しかったよ。」


それから30分ぐらい歩いた。

振り返ると、町がずっと遠くに見える。


「あんな遠くにさっきの町がある!こんなに早く移動できるなんて…。人間の足って結構すごいねぇ。あ!そういえば、ボクら人間じゃなかったね。あははははっ。」


「…。」


さっきの少年が俺の前に立っている。まさか、追いかけてきたのか?


「おい。なぜついてきた?」


「なんのことでしょうか?“偶然”ボクたちの進む方向が同じだっただけですけど~。」


「…。そうか。」


徐々に歩く速度を上げていく。


時速60キロだ。さすがに追いつけまい。


「なかなか、速いじゃないですかぁ~!でも無駄ですよ。ボクもこのぐらいのスピードなら追いつけますからねぇ!…ちょ、ちょっと!まだ上がる感じ!?…それ以上速度上げないで!追いつけない!まってぇ~!」


こうして、ずっと1体で歩いていた道を、1体と1人?で歩くこととなった。


今日も永遠に終わることのない旅路は続く。


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