第一章 小説家・アイドル・王様 7
僕は夢見がちな少年だった。
だから、四十歳になってもバイトをしながら、小説を書き、新人賞に応募しては落選し続けてきた。
少年時代はよく特撮ヒーローにあこがれ、大人になってから特撮ヒーローものの中にも物語が大人向けの作品が多いことに気づき、再び、特撮ヒーローに憧れた。
「僕はこの戦いで負ける気がしていない――」
《夢を叶えるもの》は想像力を力に変えることができる。
だから――
僕は魔法少女エリコに手渡してもらった「平凡な剣」と「平凡な盾」を地面に落とす。
そして、僕は右手の掌を臍の少し下にかざす。
「ここでの魔物との戦いはきっと神様が僕にくれた最後のチャンスなんだ」
右手のひらの下に大きな丸い、大きなバックルが出現し、帯状のヒモが伸びて、僕の腰にベルトとして、巻き付く。
変身ベルトの誕生だ――
左手を天に向かって手を伸ばすと、左手には金色に輝く、ガジェットが出現する。
左手にガジェットを握りながら、ゆっくりと変身ベルトに左手を近づけていき、変身ベルトにガジェットがカチリとはまる。
後は変身ベルトのスイッチを動かせば、僕は絶対に負けないスーパームテキファイターとして、無双することができる!
ムテキ状態では相手の攻撃は一切無効になるんだから――
「変身! スーパームテキファイター! ノーコンテニューで魔物を撃破だ!」
僕は変身ベルトのスイッチを動かす。
しかし――何も起きない。
〔スーパームテキファイター発現条件を満たしていません(条件:消費可能な十万ラピスの保有。または、残存ラピス量十以下の危機的状況〕〕
「バーカ! 新人君! 大きな力を手にするためには、想像力だけじゃなくって、保有するムーンストーン量も想像力に相当する量を保有していなきゃいけないの」
僕は最強最終フォームのガジェットをつけた変身ベルトを巻き付けたまま、何も言うことができなかった。