表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/55

第6章 後悔・僕の凪・戦いの終わり 3

 僕は、また《欲望を育てるもの》と戦うべきなのだろうか。

 胸に手を当てた。


「真木英司! 青色のアワーリティアを目指すのであります。まずはタクティカルフィールドに侵入するのであります」

 黄色い猫が肩に乗り、耳元で喋る。


「鳴海霧彦の交通事故は心が痛む事故であったのであります。ただ、今この瞬間も青色のアワーリティアに取り憑かれた人間が、その欲望を満たすために周囲に被害を与えているのであります。《夢を叶えるもの》として自分自身の夢を叶えること、そして、《欲望を育てるもの》の欲望の芽を摘み取り、世界に平和を取り戻すことも、《夢を叶えるもの》の使命なのであります」


 よく喋る猫だ。


 いや、黄色い猫は、黄色のアワーリティア・フラムだ。

 これは当然の発言だろう。


 この戦いは《夢を叶えるもの》の夢を実現することと《欲望を育てるもの》の欲望を満たすことをするための戦いなのだ。黄色のアワーリティア・フラムは、《欲望を育てるもの》本体であり、同時に《夢を叶えるもの》でもある。黄色のアワーリティアなのだから、僕が自分自身の夢を叶えるために行動させなければ、《欲望を育てるもの》としての存在意義が失われる。


 しかし――


 僕は、また《欲望を育てるもの》と戦うべきなのだろうか。

 そう、また思った。


「真木英司! Web小説大賞を受賞して、書籍化が決定して、作家になるという夢を叶えることができたのであります。もっと叶えたい夢を願い、その夢を叶えるために、《欲望を育てるもの》と戦い続けることが、《夢を叶えるもの》の使命なのであります」


 僕の夢――

 十万部、いや、百万部のベストセラー。数々の文学賞の受賞。漫画化。アニメ化。映画化。実写ドラマ化。そして、王様のブランチでテレビ出演。


 僕はこの二十五年間ずっとひとりで作品を書き続けてきた。

 正社員にもならず、夢を追い続け、大学生と一緒にコンビニバイトを続けてきた。


 今、《夢を叶えるもの》になったことは、遂に掴んだチャンスなんだ。

 このチャンスを手放すわけには――


 僕は河川敷に向かうことを決断する。


 青色のアワーリティアがいる場所は、夢見駅から500メートルほど南にある大横川の河川敷だった。


 夢見駅前から南にまっすぐ延びる大通りを進めば、大横川にぶつかり、大横川に架けられた夢見大橋に到着する。大横川の河川敷は広く、スポーツ公園として、サッカーグラウンドや野球場が整備され、休日になれば地元のスポーツ少年団や野球やサッカーの社会人リーグの試合が開催される。


 夏になれば、大横川花火大会が開催され、最寄り駅から500メートルほどで会場に辿り着くという好立地のため、毎年大勢の花見客が訪れ、屋台などが大通りの両脇に並ぶ。


 僕は、DDSを見つめながら、大横川に向かう。


「そう。それでいいのであります。《夢を叶えるもの》は自分自身の夢を叶えることを猛烈に願い、その思いこそが力になる。どのような犠牲を伴うにせよ。そして、《夢を叶えるもの》が夢を願うことをやめた瞬間、《夢を叶えるもの》はその力を失い、他者の夢を叶えるための糧となる。真木英司! お前が戦うことをやめたとしても、ただ他の《夢を叶えるもの》に刈られるだけなのであります」


 黄色い猫は、満足そうな顔を浮かべると、消えた。


 ぴゅうっと風が吹き抜け、僕の髪の毛が揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ