パンツの性能
ブックマークされててびっくりしました。
(*´ー`*)ありがとうございます。
一行下げ忘れがちですね。すみません
先程の小屋に案内された俺は、やはりこの子こそこのパンツの持ち主であると確信し、歓喜の表情を隠すのに必死になっているところに
「このあまいの もっとおいしくなる?」
と、言いながら渡されたフライスイカを手にして、驚いていた。
フライスイカはスイカの亜種であり、大きいものでも直径10cmほどしかなく、表面が赤いのと種が一切無いのが特徴である。
常に高速で飛び続けるため、採集難度と危険度が高く、産地も極僅かであることから、市場価格は平均月収の三倍の900バンシだ。
だが、驚いたのはそこではない。珍しくてまじまじと見ていたら、突然脳裏にフライスイカの情報が流れ込んできたことだ。
自分が採った草も凝視してみると、
ショッピ草。
遥か昔に収穫後の輸送の光景が、罪人の連行と似ていたことと、しょっぱいことから名付けられた。
全体が白く、しょっぱい。ぬるま湯に5分浸けると溶ける。
用途:塩と同じでしょ。
最後が雑い!
が、便利であることには変わりない。
元々俺には鑑定能力は無いのだが、何時から使えるのだろう。最近何か変わった事でもあっただろうか。
うーん、分からん。
分からないことを何時まで考えてもなんの意味もない。
とりあえず目の前でワクワクしながら?無表情でじっと見つめてくるこの子の期待に応えなければ。
教えてやろうではないか、甘いものに少々のしょっぱさを加えると更に甘くなることを!!
「ぬるいお湯が欲s」
「はい」
かろうじて見えたのは、何処からともなく何かを取り出して火を起こし、一瞬で丁度良い温度になったお湯を差し出されたことだけだ。
「ありがとう」
――――ひょっとしてマズイのでは?
技量の高さにおののきつつもショッピ草を溶かし、フライスイカを星や三日月などの形に切った上にふりかけた。
「出来」
「はむ…………んー」
目の前に出すやいなや、電光石火の動作で口に入れ、なんとなーく幸せそうにしているのを見て、
「おかわりいるか?」
「ん」
細かいことはおいておき、幸せそうにしている子の相手をすることにした。
「なんで わたしのぱんつ かぶってるの?」
「パンツがあれば被るだろう?」
「?」
食べ終えると同時に変な質問をしてきた。
とりあえず口の回りを拭いてあげ、この小屋にくるまでの経緯を説明する。
「というわけで、パンツを被ったのだ」
「さいごだけ いみふめい」
何故わからないのか。これがわからない。
「かえして」
「それが外せんのだ」
「どういうこと?」
可愛らしく小首をかしげる。かわいい。だが無表情だ。
「昔に装着したことがある呪いの装備みたいに、一度着けたら外せない状態になってしまったのだ」
「ほんと?」
「あぁ」
「ためしていい?」
「いいぞ」
目の前で屈んで頭を差し出す。
待て、刃物はやめろ!燃やそうとするな!電気もヤメロォ!!
色々試した結果、やはり取れなかった。
「むぅ」
不満ではあるようだが、一応諦めてもらえたようだ。
「このパンツをはいたことがあるのか?」
「いつもはいてる」
や っ た ぜ
「きもちわるいかおしてる」
「気持ち悪い表情をしてると言いなさい」
「つよくいきて」
「むしろ大人しく生きてくれと言われる」
こんなイケメンで謙虚な人間は、そうそういないと思う。
「普段はいてて何もなかったのか?」
「ない」
「俺と君で何が違うのだろうか」
「あたま」
「はしょらない。そういえば、このパンツはいてるときに、鑑定が出来るようになったこともない?」
「ない」
どういうことなのだろうか。
呪われていたことすら忘れていたが、呪われたアイテムは装備のしかたや種族に関係なく呪われるはずだ。そして、何らかの効果を持っている。
このパンツの場合は、おそらく鑑定なのだろう。
ふむ、考え事は明日以降の俺に任せて、どうするかを考えよう。
呪いを解くには、かなり高位の神父でも探す必要がある。金もかかる。今のところは呪われていてもメリットしかないし、後回しでもいいだろう。
正直、一人で歩いていてもつまらないし、次に人が居るところへ出られるかも分からん。この子と一緒に行きたい。
――――――――それに、この子もなんだか楽しそうだ。
じっとしていると、生気も感じられないしどこを見ているのかわからない。
でも、話しているときは表情こそ変わらないが、楽しそうにしている。
――――一人なら好きに出来る。でも、二人なら何でも出来る。
師匠の言葉だ。その真意はいまだにわからない。
それでも、一人より二人の方が良いと言っていることだけはわかる。
この子が一人でいる理由はわからないが、望むなら、一緒にいてあげたい。
――――心の底からそう思っている。
蛍玄爺計画遂行には一緒にいる必要もあるしな!
主人公は自己評価高い系です