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錬金術師と道具と小話  作者: エルリア
2/9

ポーション(中編)

ダンジョン。


そこは現実の世界でありながらどこか別の場所とつながっている特異な空間。


そこには数多くの魔物と共に数多くの財宝が眠り、一攫千金を目指す冒険者達が先を競い合う。


ダンジョンはそんな彼らを喰らい、日々成長する生き物と同じである。


「でだ、どうすればいい?」


ダンジョンの入口の前に立つ三人の男女。


一人は軽装ながら防具を全身に纏い、腰に長剣をぶら下げている女。


もう一人は凶悪なまでに主張する胸を商店の制服に押し込んでいる女。


そして最後の一人は武装らしい武装を一切身に着けていない男だ。


「この黒い壁の向こうはダンジョンの内部になっています。お帰りの際は10階層ごとに転移門を設置していますのでそちらを御利用下さい。詳しくはジーナが知っていますので肉壁にでも使いながらお聞きいただければと思います。」


「見送りまでしてもらいすまんな。」


「当然のことをしているだけです、お帰りを楽しみにしていますわ。」


「夕食は精の付く料理で頼む。」


「まぁ、今日は寝れそうにありませんね。」


生々しいやり取りにジーナは眉をひそめるも、そんな事お構い無しの二人はこの後に待つ行為を楽しみにしているらしい。


「さっさと行くわよ!」


「勝手に突っ込んで死ぬなよ肉壁。」


「こんな所で死ぬわけ無いでしょ!」


「ジーナにとってここは庭みたいなものですから、薬草の場所も匂いでわかりますわ。」


「それは使える犬だな。」


「犬じゃないわよ!」


「ではお早い御帰還をお待ちしております。」


サーラに見送られ二人はダンジョンの内部へと進んでいった。


一瞬視界が闇に覆われるも、すぐに松明の明かりが目に飛び込んでくる。


いや、火は点っていない。


魔力で光る魔灯だ。


「随分とあっけないものだな。」


「貴方ダンジョンは初めてなの?」


「つい最近まで森で引きこもっていたからな、下界は知っていてもダンジョンの経験は無い。」


「森で引きこもって錬金術とかよっぽど暇だったのね。」


「師匠の家を守るのが俺の役割だったからな、だがそれも集団暴走(スタンビート)で住む家を失うまでの話だ。」


「ごめんなさい、失言だった。」


集団暴走(スタンビート)


何の変哲も無い魔物が何かしらの影響を受けて半狂乱状態になり、集団で暴れまわる現象だ。


通った後に生き物は残らず、廃墟と死体のみが残されているという。


男はその地獄から生き残った一人のようだ。


「別に師匠が死んだのは随分前の話だし、外に出るいい機会だと思っている。」


本人はそんな地獄もあまり気にしていないようだった。


ダンジョンの中を進みながら辺りを見渡すも薬草の気配はない。


その後会話をすることもなく二人は先を急いだ。


しばらく進むと、曲がり角の手前でジーなが立ち止まる。


「待って・・・。」


「あぁ、いるな3匹か。」


「まだ低層だからそんなに強い魔物じゃないけど、武器も何もないようだけど本当に大丈夫なの?」


「おいおい、俺が出なくてもいい為の肉壁だろ?」


「そうだけど・・・。」


「行き倒れのお手並み拝見といこうじゃないか。」


ダンジョンではいついかなるところで魔物に遭遇するかわからない。


ゲームのように広い部屋でわざわざ待っている魔物なんてごくわずかだ。


冒険者にはいつどんな状況でも戦えるだけの技量と集中力が要求される。


男に促され、ジーナは武器を抜くとゆっくりと通路を進み出した。


曲がり角で少しだけ顔を出し状況を確認する。


「コボレートとアシッドワーミーね、すぐ片付くわ。」


コボレート。


犬の顔をした二足歩行の魔物。


背は低く、一般男性の胸ぐらいまでしかない。


武器を使うが知能は低く、集団で行動することが多い。


アシッドワーミー。


毒々しい色をした巨大な芋虫。


口から吐く体液には武器をボロボロにする強酸が含まれている。


所詮芋虫なので動きは遅い。


ジーナは抜刀したまま大きく深呼吸をすると勢いをつけて通路から飛び出していった。


手始めに手前にいたコボレートを右肩から袈裟懸けに切り、返す刃でその隣にいた芋虫を水平に切り払う。


もう一匹のコボレートがジーナに気付くも時すでに遅く、鋭い突きに喉を一刺しにされ、成す術もなく絶命した。


一連の流れるような連撃に男がおもわず感嘆の声をもらす。


「どう、少しは見直した?」


「これは恐れ入った、あんなところで寝ているからてっきり使い物にならないかと思っていたが良い拾い物をしたようだな。」


「人を物みたいに言わないでよね。」


「落ちていたのは間違いないだろう?」


「あ、あれはたまたまで。」


「この感じでサクサク進んでさっさと終わらせたいものだな。」


「ちょっと、人の話聞きなさいよ!」


慌てて反論するジーナを置いてさっさと先を進む男。


剣に付いた血を振り払うと、ジーナも慌てて後を追った。


その後幾度か魔物に遭遇するものの、ジーナの剣に反撃することもなく倒されていく。


だが、いっこうに薬草が落ちている気配はなかった。


「おい、本当に薬草はここにあるのか?」


「もちろんよ、中層に行くと逆に少なくなるから10階層までをうろうろするしかないわね。」


「敵もこの程度なら余計な人手を頼むまでもなかったか。」


「武器も持たないでダンジョンをうろつくなんて私としては信じられないんだけど?」


「別に肉壁がいるから手ぶらと言う訳じゃないさ、必要ないから持っていないだけだ。」


「必要ないって、貴方ね・・・。」


ダンジョンに限らず魔物が溢れる場所で武器を持っていないのは自殺行為だ。


もちろん護衛を雇い戦闘に参加しない者もいるが、そういう人間でも護身用の武器は忘れない。


そういう点を考えても男の発言をジーナは信じられなかった。


「まぁ貴方が死んでも私は構わないんだけど。」


「肉壁が優秀なら俺が出るまでもない、しっかり頼むぞ。」


「薬草見つけるまでだからね!」


「その薬草が全く落ちていない件についてはどう説明するんだ?」


「別の人間が先回りしているのかも。最近街に入ってくる荷物も減ってるし、勘の良い冒険者ならそれぐらい考えてもおかしくない。」


ダンジョンには魔物の他に多くの薬草が自生している。


屋外よりも自生率が高いのは、ダンジョンが魔力で満たされているからとかダンジョンが冒険者を呼ぶために生やしているとか諸説ある。


どちらにせよ、今回は明らかに薬草の数が不足していた。


通常1階層に2~3個ぐらいは生えていてもいいのだが、現在3階層を踏破しようとしている彼らが1つも見つけられないというのは少々異常だ。


「とりあえず先に進まなければ話にならないか、しっかり頼むぞ。」


「ここは私の庭なんだから安心してよね。」


「自分の庭で見つけられない奴が何を言うか。」


「だからそれは・・・!」


反論できないジーナだったが何かを感じたのか動きを止める。


そしてダンジョン上部の空間の匂いをかぎ始めた。


「犬か・・・?」


「誰が犬よ!薬草のにおいがする、こっちよ!」


場所はちょうど三叉路。


どの道も3mぐらいから先は闇に閉ざされて何も見えない。


奥のほうで魔灯の灯りがボゥっと浮かんで見えるぐらいだ。


そんな道をにおいがするという理由だけで一気に駆け出すジーナを見つめながら男はため息をつくのだった。


ダンジョンには多数の罠が存在している。


ただの出っ張りもあれば、下に刃物が仕込んである落とし罠だってある。


それ以外にも麻痺や毒の状態異常を付与する煙であったり、矢が飛んできたりもする。


つまりはそんな危険なものが多数眠っているような場所でいきなり走り出すとどうなるのか。


それは言わずもがな。


「ちょ、ちょっとまってぇぇ!」


叫び声の主はそんな罠の餌食になったのだった。


「おい、自分の庭じゃなかったのか?」


勢い勇んで走り出したジーナがかかったのは落ちれば即、死につながるような刃物が仕込まれた落とし罠だ。


だが幸運にも落とし罠の大きさは小さく、うまい事お尻がはまるような形になり、落下せずに済んだ。


お尻が大きいとは口が裂けてもいえない。


「だって、前はこんな所に罠なんてなかったし、普段はもっと下の階層で戦っているから・・・。」


「そんな事で庭って言ってたのかよ。」


「良いから早く助けてよぉ。」


上手い事嵌りすぎたのか、身じろぎをしてもジーナのお尻が抜けることはない。


「助けるのは別にかまわないんだがな、手間賃分ぐらいは見ても構わないだろ。」


「見るって、何を?」


ジーナは改めて自分の格好を確認した。


前から見れば非常に情けない格好で穴にはまっている。


お尻が穴にはまり足を開くような形で踏ん張っている為に、身に着けたスカート状の防具がめくりあがり、その下に着用していた下着が丸見えになっていたのだ。


「見た目と違って随分と派手な下着を着けているんだな。」


「いやぁぁぁ!何見てるのよぉぉぉぉ!」


ジーナの叫び声がダンジョン中にこだまする。


慌てて防具を押さえようとするも手を離せば穴にずり落ちそうになるので両手を使うことが出来ない。


片手で隠せば別の部分がめくりあがり、結果として隠すことが出来ない状況だ。


男はそれをニヤニヤしながら見下ろすのだった。


ちなみに色は赤である。


「それで、手を貸して欲しいか?」


「当たり前よ見てないで助けなさいよ!」


「それが人に物を頼む態度か?別に俺はそのままで先に進んでも構わないんだぞ。まぁ、さっきの叫び声で魔物は気付いただろうからその後お前がどうなっても知らんがな。」


「な、見捨てるって言うの?」


「このぐらいの魔物なら肉壁なしでもどうにかできる。荒野での垂れ死ぬのもここで魔物に食い殺されるのも結果は一緒だろ?」


「一緒じゃないわよ!」


生きながら食い殺されるというのは想像したくないものだ。


誰しも死ぬときは苦しまずに死にたい。


「どうするかはお前に任せるがあまり時間はないみたいだぞ。」


先ほどの叫び声を聞きつけ通路の置くから不気味な音が多数聞こえてくる。


カサカサだったりカタカタだったり、普通の冒険者が発する音でない事は間違いない。


このままここにいれば奴らと遭遇するのも時間の問題だろう。


「はやく、はやくして!」


「何をだ?ハッキリしないんなら俺はもう行くぞ。雑魚でも数を相手にするのは面倒だからな、お前をエサにすれば時間ぐらい稼げるだろ。」


「お願いだから出してよぉぉ。」


「出してください、だろ?」


あくまでも上から目線の男。


ジーナは迫りくる魔物に襲われる恐怖と男にお願いをする自尊心を天秤にかけている。


正直お願いしたくない。


ジーナからしてみれば親友とこれから寝ようなんて男の手は絶対に借りたくなかった。


だが、このままでは生きたまま魔物の腹に収まる事になる。


それだけならまだいい。


もしある程度の知性を持つ魔物や繁殖系の魔物の場合、自分の腹を苗床にされる可能性だってあるのだ。


魔物を生み出す為だけに生かされ、衰弱すればそのまま捨てられる。


そんな魔物が来る可能性がある場所なのだ、ここは。


「ダシテクダサイ・・・。」


「何だって、聞こえないぞ。」


魔物の足音がどんどんと近づいてくる。


もう、時間はない。


「出してください、お願いします!」


天秤は傾いた。


男がジーナを引っ張り上げると同時に後ろから魔物が押し寄せてくる。


左右の通路からそれぞれ2匹ずつ。


片方は灰色の巨大な狼、もう片方はぼろぼろの鎧を纏った骸骨だ。


「俺は骨を相手する、お前はそこの犬を頼むぞ。」


「ちょっと武器もないのにどうやって!」


男はジーナを引っ張り上げた反動を使って体をねじるように反転し、勢いをそのままに拳を骸骨の胸に叩き込む。


今にもジーナに襲いかからんと武器を上段に振りかぶったままの骸骨は、振り下ろす事もできずにもう一匹の骸骨を巻き込みながら通路の奥に吹き飛んでいった。


あまりの出来事に狼と対峙するジーナが目を見開いたまま固まってしまった。


「おい、食い殺されるぞ?」


「え、あ、ちょっとぉ!」


そんな隙を魔物が見逃すはずもなく、ジーナの首元めがけて鋭い牙で襲いかかった。


だが所詮は低層階の魔物。


正気に戻ったジーナの剣がすんでのところで狼の牙を弾き受け流す。


そして狼が振り返る前にジーナの剣が首を切り落としていた。


もう一匹の狼はジーナの剣気に怯え来た道を引き返すように逃げていった。


「あっぶなかったー。」


「食い殺されるかと思ったが所詮狼だったか。」


「グレーウルフ如きに殺されるはずないわよ。」


「そのわりには動揺していたようだが?」


「それはあんな戦い方するから!」


「別に、ただ殴り飛ばしただけだ。」


確かにただ殴り飛ばしただけである。


だが、日々魔物と命のやり取りをしている冒険者からみればこの発言は信じられないものだろう。


何故なら素手で殴ると言うことは魔物と肉薄することであり、相手の攻撃を被弾する可能性が非常に高いと言うことになる。


ゲームのように回復すれば体力も疲労も回復する世界ではない。


戦えば疲れるし、攻撃を食らえば体が動かなくなる。


傷は言えても内部に蓄積されたダメージを減らすことはできないのだ。


あえてその危険な方法をとるというのは冒険者にとって考えられない行動なのだ。


「殴り飛ばしたって・・・確かに的確に急所をつくことはできるだろうけどスライムなんかの魔物はどうするのよ。」


「スライムだろうが何だろうが魔物には必ず急所がある。そこさえ狙えば別に武器などなくても戦えるさ。」


「スライムに手を突っ込めばどうなるか知ってるわよね?」


「消化液にさらされて手がただれるんだろ?」


「いくら急所を狙うからってスライムの核は体の中なのよ、其れはどうするのよ。」


「ただれる前に核を貫けばただの水に変わるだろ。」


「いや、そうなんだけど。もういいわ・・・。」


当たらなければどうと言うことはない理論と同じだ。


男からしてみれば怪我をしたら治せばいいと言う程度の考えでしかないのだろう。


「それで、薬草の匂いとやらはどうしたんだ?」


「そうだった!」


「おい、それが本命だろ忘れるなよ。」


「思い出したらそれでいいのよ。」


ジーナは再び回りの匂いをかぎ、今度は走らずに目的の場所に向かった。


通路の奥、ちょうど行き止まりになったその場所に緑色のトゲトゲした葉っぱが生えていた。


「やれやれこれだけ探してやっとひとつか。」


「ポーションを作るのにあといくつ必要なの?」


「薬草5つでポーションを作れるから4つだな。」


「だからポーションって高いのね。中層からは回復が追い付かないから仕方なく持っていくけど一つ銀貨1.5枚もするのよ。」


「それが高いか安いかは俺にはわからんが必要なら仕方ないだろう。ちなみにお前が飲んだ代金を俺が請求することもできるがどうする?」


「そ、それは今回の護衛料で帳消しと言うことで・・・。」


「そもそもお前が原因でここに来ることになったんだろうが。まぁいい、サーラにたっぷり楽しませてもらうとするさ。」


男からしてみればジーナのお陰でサーラと楽しめるわけなので別になんとも思っていない。


だが、ジーナからしてみれば自分のせいで親友がこの男に無理矢理抱かれるという感覚になってしまうのだろう。


「わ、私でいいなら・・・。」


「何か言ったか?」


「なんでもないわよ!」


「よくわからんやつだ。このまま探しても時間が足りなくなりそうだからな、探索ではなく討伐して薬草を集めるしかないか。」


この世界でアイテムを集める方はいくつかある。


一つ目は採取。


落ちている物や自生しているものを拾ってくる方法。


二つ目は剥ぎ取り。


魔物を倒し、死骸を解体して革や肉を回収する方法。


そして三つ目は討伐品。


この世界の魔物は倒したあとにアイテムを残すことがある。


ゲームで言うドロップ品と言うやつだ。


体内で生成するとかたまたま拾ってきたとか諸説あるが、同じ魔物が同じ種類のアイテムを落とすことからそのアイテムを狙って狩りをすることがある。


どの魔物が何を落とすかと言う情報はあまり出回っていない。


何故ならそれを暴露してしまえば同じような考えをす者達によって乱獲され、アイテムの価値が下がってしまうからだ。


薬草が高い理由もそれだ。


自生する量が少ないために需要と供給のバランスがとれず、必然的に値段が上がる。


もし薬草を落とす魔物が大量にいればそんなことにはならなかっただろう。


もっとも、いたとしてその情報を握っている人間が話すとは限らないわけだが。


「討伐品なんてそっちの方が効率悪いんじゃないの?」


「やみくもに狩り続けるから効率が悪いんだ。欲しい物に対応した魔物を狩れば、ありもしない薬草を探すよりか幾分はましだろう。」


「どの魔物が何を落とすか何てわかるはずないじゃない。」


「わかってなかったらこんなこと言ったりしねぇよ。」


「じゃあ、貴方はどの魔物が何を落とすか知っているって言うの?」


「だからそう言ってるじゃねぇか。何度も言わすなんてそこいらの犬より頭悪いんじゃないか?」


「誰が犬以下よ!」


ぐるるると唸り声をあげながら男を睨み付けるジーナを見て、声に出さないまでもやっぱり犬だと男は思うのだった。


「マンドラゴラかバインドリーフはこのダンジョンに出るのか?」


「植物系の魔物なら9階層に行けば出るわよ。お望みの魔物が出るかはわからないけど・・・。」


「別に固定種から出る訳じゃないからまぁいいだろう。それにそこにいくまでに犬が何個か見つけてくれるかもしれないからな。」


「だから犬じゃないっていっているでしょうが!」


「匂いで薬草探すなんざ犬にしかできないだろ。」


「え、匂いしないの?」


「しねぇよ。」


匂いの出る果物や花ならまだしも薬草からは基本的に匂いは発せられていない。


仮に匂いが出ていたとしてもダンジョンの匂いや魔物の匂い、それに自らの体についた返り血の匂いなどで区別がつくはずがないのだ。


そのような状況で薬草の匂いをかぎわけ目的の場所まで誘導する事ができるジーナは、誰が見ても犬と答えるだろう。


誤解を招くような発言ではあるが決して犬ではない。


犬耳もなければ亜人種でもない。


生粋の人間である。


ただ、少々常人よりも感覚がおかしいと言うだけだ。


「そうなんだ、しないんだ・・・。」


「そこで現実に打ちのめされてないでさっさと行くぞ。」


「いく、今いくから!」


「女がイクイクいうんじゃねぇよ。」


「え、なに、どういうこと?」


「・・・もうだまってろ、犬。」


「また犬って言った!ジーナって名前があるんだから!」


「はいはいわかったわかった。」


わめくジーナを無視して男は先を急ぐ。


ここはダンジョン。


数多の冒険者を飲み込み、今もなお成長を続ける不思議な空間。


そこを進むは一組の男女。


犬のような嗅覚を持つ女と、拳で戦う男。


「あのさ確認なんだけど。」


「なんだ?」


「貴方、本当に錬金術師なのよね?」


「あぁ、ただの錬金術師さ。」


二人の探索はまだまだ続く。


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