序章
あれは(春)いや、(夏)だったか。
でも、私には「春」という印象が強くて。
なんだか胸が苦しいような。
温かいようなでもやっぱり苦しい。そんな記憶。
あんまり覚えていない坂をのぼって
開けた通りには少し賑わっているのかな?商店街があった。
茶色い壁の比較的大きなデパートには、布製の大きな看板?が降ろされていて、
そこにはなんて書いてあったか忘れたが。
やっぱり私には
「無理」
そんな気持ちが悶々と胸の少し下に雲を巻いている。
今になってみれば涙が出る感じだけど、
その時の私は気持ちを抑えていたから、ほとんど何も感じなていなかっただろう。
車を走らせて15分ほど。
着いた。
私の実習先の中学校。
わりときれいな校舎で安心した。
---はじめて目にしたのは教室。
その前に職員室に通されて、いろいろ話を受け。全校集会に連れていかれた。
担任は細身で、私からしたら少しこわかった。
こわもてとかそういうのじゃなくて。
なんか深い闇をたたえている湖を連想する。
いつもすこし斜め加減で。
話すときは私の顔を通りぬけて、少し先の床を見ている。
…これは…?
私に対する精一杯の紳士的マナー、温かさ…それとも…
簡易的対応…
以下略。
これから私はどれだけの大衆を目の前にするのか。
しかも相手は見知らぬはじめて会う、
嵐の季節をむかえた若者たち。
きっと心の中にさまざまな気持ちを交錯させて、
ふとしたことで傷ついたり、憤ったり、
かと思えば冷酷なほど
…突き放してみたり。
そんな中に置き去りにされたら、
私はきっと一日とたたずに砂と化してしまうのだろう。
…味方は先生だけと思っていたが、未だ本心つかめず。
(まあ、担任からしても初対面の若僧の私に、本心もなにもあるわけはないだろう。むしろ建前しかない。)
ふわふわとしたあいまいな期待の部屋から、不安な部屋へと駆り出されてしまった。
(--こんな体験を書いていると、身元がばれるのではないかと思ってしまうが、
あくまで私だけが見た景色で。
あの時、あの場所に同じ空気をまとって居た人々でさえ、
この事実を知らない。
不思議な感覚。
でも、それで助かる。
ああ、短時間の記憶がこんな長い文章になるとは。--)