青と赤
ヒラヒラと舞い降りる。
籠の塔からマントがヒラヒラと舞い降りる。
「デイル様、サラ姫様から言伝てです!」
ルクアは塔から声を響かせた。
「『もうマントはいりませんわ。お返しいたします』とのことです」
デイルの手にマントが舞い降りた。クツナの塔でサラを受け止めたマントが。デイルは深呼吸し空を見上げる。
「『もう寒くはないのですから』と、そうおっしゃっていました」
デイルの目には北方のどよんだ空が見える。しかし、サラはきっと青き空を目指しているのだろう。
『俺は……』
デイルは顔を戻し、ちらりとキールを見た。
『俺の役目は終わった。しかし……』
「王様、鳥が逃げたようです。捕らえに行かれますか?」
そう、イザナは王に問うのだ。
「鳥籠が空ですよ?」
どうするのだと問い詰める。もちろんわざと。
「鳥を愛でるは……」
王がそうポツリと呟いた。そして、次に……
「鳥を愛でるは、羽ばたいてこそ!!」
その宣言にフタバの顔が破顔する。
「だそうですよ、デイル殿。愛でたければ、追うしかありませんね」
イザナはデイルの手からマントを奪う。
「貸してください。ラフトは寒い」
デイルはキールを見る。迷いはない。
「ヒャドのことは任せた。俺はサラ姫を追う!」
青きマントがひるがえる。ただ真っ直ぐに、実直にデイルはサラを追うのだ。
キールはデイルの背を見送る。デイルはもうヒャドには帰ってこないかもしれない。だが、キールには止められなかった。
「あの姫様は一国に値しますな」
呟いた。そのキールにシェードが歩み寄る。
「預言の解釈は間違っていたのですよ。青きは奇跡の鳥のサラ姫様でしょう。赤きはサラ姫様への熱情を持ったデイル様ですよ」
キールはフッと笑ったのだった。
次話更新本日午後予定です。
今週中に完結いたします(金曜日予定)




