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Episode9 "テンプレ主人公と異世界"

俺の名前は新海拓海(しんかいたくみ)


中一の春、通学途中で事故にあった。


目を覚ませば自分は病室にいて妹と母が涙ながらに自分の手を握っていた。妹とはあまり仲良くはなく母からも何時も煙たがられていたから不思議と嬉しく思い涙が瞳から溢れた。


「拓海っ!」


母は自分が目覚めた事に気付き抱き締めてくれる。それが何処か途轍もなく嬉しく感じられた。


「お兄ちゃん.....良かった....グス....」


妹は涙を流しながら笑う。そんな表情を見てか自分も彼女のように笑った。


「ごめん、心配かけた。」


それから暫くの間、入院をしていると周りの話し声やテレビなどのニュースが現実離れした内容だった事に驚き自分は違う世界にいるのだと理解した。


例えば他の患者達、主に女性達は下品な話しをよくするのを耳にした。


「ねぇ、入院中って性欲とか如何すんの?」


「カーテンしめてするべ?」


「匂いは?」


「家族か知り合いにファ○リーズ買って来て貰ってる。」


「頭良い!採用!」


などと男子中学生がする様な内容なのだ。最初は頭が痛かったが徐々にこの世界の特徴に対し好感が持てる様になってくる。


「新海さん、退院です。」


一月が経つ頃、男性の看護師からそう伝えられた。


「帰りましょう、拓海。」


母は病室に姿を現わすと自分の手を握りその病室を後にした。


「お兄ちゃん、お帰りなさい!」


家に着くと妹は自分へと抱きつきそう言ってくれた。あぁ、自分は家に帰って来れたんだと思い自分の部屋へと行くと其処は不思議の国のア○スの様にファンタジーでピンクな装飾がされた女の子部屋へと変わっていた。


美海(みう)、オレと部屋を変えたのか?」


「え?変えてないけど。「だって部屋がピンクだし」お兄ちゃん......まだ、頭が」


妹は心配した様に自分をベッドへと連れて行き寝かせた。


(そうだった.....ここは異世界なんだ......)


妹は母の元へと戻り事情を説明しているようだ。


「はぁ、お母さん、美海、オレはもう大丈夫だって!」


ベッドから降り直ぐに二人の元へと行くと安心した表情で自分を見た。


「あのさ、それとお父さんは......今、出張?」


一月の間、父は様子も見にこなかったのだ。寂しい表情でその質問をすると母は自分を抱き締め言った。


「お父さんは、貴方が小さい頃に出て行ったでしょ.......まだ、疲れているのね拓海....今日は休みなさい。明日は学校がある日だけれど、大事をとってもう一日休んだ方が良いわね。」


父が出て行った。その真実に驚かされるが果たして母は自分に対して此処まで過保護だっただろうか。


「うんうん、明日は学校に行くよ。」


それからシャワーを浴び水を飲みにリビングへと戻ると母と妹は自分の姿を見て赤面をした。パンツは履いているし家の中だから大丈夫だろうとラフな格好をしていたら母は自分へと注意をして来た。


「私達は女なんだから、拓海、格好には気をつけなさい。」


「家族だし、別に良いだろう。」


「良くないよ、お兄ちゃん......刺激が強いんだから。」


「そ、そうよ!」


「お、おう。」


二人の剣幕に負け自室へと駆け足で戻る。


(何だったんだ.....今の.....)


「異世界って事は分かったけど、女の人が男の人の反応をする世界なのだろうか?」


中一と言う事もあり貞操逆転世界だと言う言葉を知らない拓海は苦悩する。


(今日は寝よ。学校行けば友達に聞けるでしょ。)


この世界が男にとって過酷にも桃源郷にもなりうる世界なのだと言う事を彼は知って行く事になる。


「行って来まーす!」


挨拶をして玄関を出ると母は叫んだ。


「拓海!痴漢には気をつけなさい!」


だがその言葉は拓海には届かずそのまま電車へと乗る事となった。


「「朝ラッシュ混雑の影響をうけましてこの電車は○分遅れで運行しております。ご乗車の際は急がず押さずお乗りください。」」


アナウンスの通り駅は混み電車内も満員電車の様だった。


「はぁ、最悪だ。五駅行くのにも時間が掛かりそうだ。」


普段ならこれ程まで混まない筈なのだが今日は珍しく混んでいた。それから暫く待つと何とかぎゅうぎゅうになりながらも電車に乗り込む事が出来た。


「.......っ」


乗り込む事は出来たが周りの視線が凄く突き刺さる。良く見渡せば男は自分しかいないのだ。


「貴方、犯されに来たでしょ?」


拓海は耳元で呟いて来た女性の台詞に寒気を指しているとお尻を触られた。


「な、何を.......「シー、静かにして、気づかれたくないでしょ?」


拓海は自分の手を使いお尻を触る手を除けようとするが逆に掴まれ拘束された。


「貴方、前も触って欲しんでしょ?」


「あっ....」


「はぁ....はぁ.....可愛い声ね」


自分の陰部へとその女性の手が当たり声が出る。だがタイミングよく自分の駅に着きその女性と電車から逃げる様に出た。


(な、何だ.....今の.....お、男なのに......襲われている様な感覚.......怖い.....)


純粋に恐怖を感じたが逆に快感も感じると言う矛盾に拓海は頭を悩ませる。悩んでいる内に学校へと着く。


「おはようー、田中いるか?」


教室へと入り友人の名前を呼ぶが返事は返ってこない。クラスの女子は自分に下衆た視線を向けてくる。


(男子が......いない?)


拓海以外に男子がいないのだ。


「あの新海君、今日、一緒にお弁当食べよ?」


「あーズルい!私も誘おーと思ってたのにぃ〜!」


「あの、新海君、怪我大丈夫?」


「うわ〜この子、あざとい!」


自分が席に座ると女子生徒達が集まって来た。前は座ってもこんな事にはならなかった筈なのに。


(でも........正直に嬉しいな。モテ期到来って感じで。)


満更でもない拓海は笑顔で答えると女子達は嬉しそうに話しをしてくれた。


「拓海くん、入院する前はもっとおどおどした感じだったのに変わったよね!」


「そうかな?」


「そうだよ!凄い....カッコよくなった。」


「うわ〜ポイント稼ぎし始めたよこの子。」


「煩いなぁ、お前に言ってないから構うなよ。」


とこの様に自分に対し殆どの女子が姫様を扱う様に接してくれた。そして拓海はある決意をする。


(あぁ、この世界は俺がモテる世界なんだ。.........好きな子と遊ぼう。可愛い子と遊ぼう。ふふふ、俺の世界だ、此処は俺の世界なんだ!)


試しに何回か女子にセクハラ紛いの事をしても喜ばれた事に対し拓海のモラルは完全に消え去った。


(誰も俺を咎めない、咎められない!俺はいっぱい遊んでやる。女は全員、俺の物だ!)


それから数ヶ月後、拓海は学校へとは行かなくなり援交に近い物で性の喜びを謳歌していた。だが、気紛れで学校に登校した彼は知る事になる。


越えられない壁と言う存在を_


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