Episode6 "従姉妹と恋事情"
「長かったデース、やぁーと見つけましたヨー、ジョン!」
高額の金を払い身元を調べた家族の一人、金髪碧眼の少女はトランクケースを手に空港へと向かう為、車の後部席へと乗り込む。その瞳には一人の男の姿しか映っていなかった。
「あの子が心配だ、ってお前まで何してるんだ?」
「え?我が妹に会いに行くんだけど?」
その少女の父親と母親は空港へと送る為車を出そうとしたのだが母親もトランクケースを持参している事に気付き父親に止められる。
「いやいやいや、聞いてないよ?」
「うん、だって今言ったもの。それと私がいなくなるからって浮気はしちゃあダメよ?」
「いや、君が今まさに浮気行為をシに行こうとしてるよね?.......ジョン君に会うと君はセクハラをするんだから一さんにも出禁喰らったでしょ?」
「はて?何のことやら。」
可愛く首を傾げる母親に父親は頭を抑え取り敢えず車に乗り込み運転をする。
「許可は貰ったのかい?」
父親は運転をしながらそう聞くが二人は外の景色を見ながら口笛を吹いていた。
「はぁ、僕から連絡をいれ「「ダメ!」」.......一応は聞いておくけど何でだい?」
二人は台詞を被らせ連絡をするなと眼でも制してくる。
「だって、コレで3回目デスヨー!ケイトとママがJapanに行ってmy sweet lover Johnに会えてませーん!」
「Sweet loverって......従姉妹だろ?」
「Loveにはそんな事関係ないデースヨ!ケイトはPromise(約束)しました!将来ジョンはケイトのフィアンセになってくれるって!」
シートベルトを外し身を乗り出し力説するケイトに頭が痛くなる父親は取り敢えずシートベルトを付けるようにと注意する。
「そんな態度だから一さんに邪険にされるんだよ二人とも。」
すると母親、妻の伊都は自分の膝を叩きつけ怒りを爆発させる。
「あのクソ生意気な妹は私が何時も遊びに行くと言えば住所を変え連絡が途絶える。ジョン君合わせろと言えば死ねと言われ電話はブチ切れるわで一体何様なの!キィィィィィィィィムカつくぅ!絶対にジョン君をアメリカに連れて帰るんだから!」
「そうデース!ジョンを連れて帰って目一杯甘えてヤりまーす!」
「私も私もー!」
「二人とも、それは流石に犯罪「「USA!USA!USA!」」ねぇ、聞いてる?「「USA!USA!USA!」」はぁ、もう良いです....」
父親は諦めたように空港へと向かうのであった。因みに父親の名前はジャックで苗字はハサウェイである。
「はぁ、何か寒気がするわね。こう言う時はジョンの温もりを.....えへへ。」
瀬名の寝る寝室へと侵入し同じベッドへと入り抱き締めながら寝る一。その暑苦しさに眼を覚ました瀬名は原因が一である事を発見する。
「はぁ、母さん、コレで何度目だよ。」
(現実世界に置き換えて考えると14歳の娘のベッドに親父が忍びこんで一緒に寝るようなもんなんだぞ。)
だがあまり悪い気はしない瀬名でもあった。これくらいの事なら普通に形容範囲であり母親は自分にとっては此処まで育ててくれた偉大な存在だ。反抗期などと言うふざけた態度を取るくらいなら迷惑を掛けないように自分から家を飛び出してやるくらいの覚悟はある。
(まだ2時か.......寝よ。)
既に一週間は時間が経過し何事もなく穏やかな生活が続いていた。
「七時......母さんはもういないか。」
アラームが鳴り眼を覚ますと隣に母親の姿はなく自分は制服を取り着替える。
「おはよう、ジョン!」
一階へと降りると母が笑顔で出迎えてくれた。
「おはよう、母さん。」
この日常的な1ページがとてつもなく心地良く感じる。
「そう言えば最近、伊都叔母さんの事聞かないけど電話しないの?」
純粋にジョンが聞くと一は苦笑いを浮かべながら姉さんは忙しいのよと答えてくれた。
(嘘だな)
叔母さんは自分が幼少の頃、凄く溺愛してくれた記憶がある。欲しい物があれば指をさせば何でも買ってくれる程だ。だがこの世界の叔母さんは果たしてどうなのだろうか?
「あら、そろそろ時間ね、行きましょうか、ジョン。」
時刻は既に七時四十五分の針が差し掛かり車へと急いで乗り込む。そしてエンジンの音を吹かせ母さんは学校まで素早く送り届けてくれた。
「帰りは気おつけなさいよ!何かあれば直ぐに駆けつけるからね!」
一万円札を渡され母は直ぐに会社へと向かった。如何やら母は学校の日には毎日万札を手渡すようだ。月に20万円以上は貰う形となるため受け取れないと言ったところ軽く拒否された。
「それにしてもたまに一人でコンビニとかに行くとバッタリと母さんと会うのは何でだろう?)
実は瀬名の衣服にはGPSが付けられている事に本人は気づかないでいた。
「おはよう、瀬名君。」
「今日もマスクがチャーミングだね!」
教室へ入るとクラスメートが挨拶をする。
(........マスクがチャーミングって無理があるだろ。)
「おはよう、今日もいい天気だね。」
瀬名は挨拶を返し自分の机へと向かった。
(良し、順調だ。)
瀬名は安堵していた。教室での立場は口数少ない男子、そしてマスクと伊達メガネのお陰で他クラスの男子よりも目立たない存在としてこの学校を過ごしていた。
(......とは言っても胸や尻には流石に女子達の視線を感じる。まぁ、他の男子どもよりは大分、抑えられてはいるが。)
窓の外を眺めていると机をトントンと叩く音がする。チラリと其方を見ると紙切れが置いてあった。如何やら秋山が通り過ぎる時にでも置いて来たのだろう。
「.......昼休みに会おう、ね。」
小さく言葉に出すとその紙をポケットへとしまい授業の準備をすると担任の女教師が入って来た。
「おはよう、みんな!今日はなぁ、朝読書は無しだ!」
クラスメート達は本を手に何でだと女教師へと言うと女教師は口を吊り上げ言った。
「何と、転校生がいるんだ!」
「「男子か!!?」」
女子生徒一同は机を立ち叫ぶが女子である事を伝えられると興味が失せたのか着席した。
「お前らなぁ.......まぁいい、ハサウェイ!入って来い!」
ハサウェイと言う苗字を聞き瀬名は表情を硬くして行く。
「失礼しマース!」
教室の扉を勢いよく開け教室へと入ってくる金髪外人美少女に瀬名は反射的に顔を下に伏せる。
「え!?外人転校生って凄くね?」
「しかも、凄ぇイケメンだよな。」
「クソぉ、男子達が取られる!」
女子は悔しそうに嫉妬の視線を転校生へと向けるが転校生は気にせず黒板に自分の名前を書いていた。
「よーし書けたな、自己紹介頼むぞ!」
「ハーイデース!ケイトのお名前は、ケイト・ハサウェイデース!皆さん、これからよろしくお願いしマース!」
その後、クラスメート達はケイトへと沢山の質問をしケイトは嬉しそうに全てを答えた。そして最後の質問者は瀬名にとっての爆弾を投下した。
「ケイトは好きな人とか、恋人とかっているのー?」
するとケイトは教卓へと立ち力説を始め様とするが先生に叱られ渋々とした表情で降りる。
「このクラスルームにジョンってmale student(男子生徒)はいまーすか?」
ケイトはワザとらしく遠くを見るように両手を目の上へと置き探す素振りをしていると女子生徒達が一人の男子生徒を凝視しているの確認し其方へと視線を移すとケイトはぱあっと表情を明るくし直ぐさまその男子生徒、即ち瀬名の元へと駆け寄った。
「Oh〜ジョン❤︎ジョン❤︎ジョン❤︎」
顔を伏せる瀬名を無理やり立ち上がらせハグをする姿に一同は唖然としたが直ぐに正気に戻り止めに入る。
「ハサウェイさん、それはセクハラだぞ!」
「ずるっ.....此処は日本なんだよ!」
だがケイトは止まる事なく瀬名の手を握り教壇に立ち宣言した。
「関係ありませーん!ケイト達はフィアンセデース!」
瀬名は冷や汗をダラダラと流す。
(これは非常にヤバい........)
そして続けて手を握るケイトは御構い無しにとんでも無い事をして来た。
「何でラブリーなお顔を隠してるんデースか?邪魔デスーね、マスクとグラセスとっちゃいましょー!」
ケイトの手はマスクへと伸び止めようと手を伸ばすがもう遅い。目の前には止めに入ろうとする秋山の姿もあるが手遅れだろう。そして眼鏡もマスクと共に取られ素顔をクラスの全員が注目している中で晒す事になった。
「.......c...cool...oh my god.....I'm in love with u more deeper.....」
(か、カッコいい.....嘘でしょ......もっと深い恋に落ちてしまいました.....」
顔を赤面させその場へとうずくまるケイト。クラスメートの女子達、教師も同様に口を開け瀬名の美しさに言葉を出す事が出来なかった。
(不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味いっ!!)
瀬名はすかさず床に落ちたマスクと伊達メガネを拾い上げ教室から飛び出す。